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弾けない理由
26-6
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渉太は前方の二人の様子を伺っていると未だに攻防戦は続いているようだった。
「見かけるというか、俺らの目の前にマネージャーさんと一緒にいます」
『そっか……』
「何があったんですか?」
『尚弥くんが急に出ないって言い出したらしいんだ。あんなピアノ触れるかって。渉太、悪いんだけどそこに大樹いる?いたら代わって欲しいんだけど』
渉太の予想していたことにはあながち間違えではなかったようだ。藤咲が土壇場で出演拒否をしている理由が気になりはしたが、渉太はそのまま大樹先輩に電話を手渡した。
先輩は首を傾げながらも電話を受け取ると、
受話器の向こうの律仁さんの話を黙って頷いて聞いていた。
数回頷いているうちに、先輩の血相が変わっていく。律仁さんと何を話しているのだろうか……。
律仁さんの話から藤咲が『あんなピアノ触れるか』と言っていたらしい……。
大樹先輩の表情から全てを読み取るなど不可能で渉太は目の前の先輩の姿と藤咲とを交互に眺めることしかできなかった。
程なくして電話が切れたのか先輩は耳元から携帯を離し、渉太の胸元に押し付けてくる。何かを律仁さんから知ったのか、慌てたように「ごめん、渉太」と告げては木陰から飛び出して行ってしまった。
真っ先に藤咲とマネージャーさんの元へと向かっていく先輩。
ほんの数秒の出来事に驚きながらも、渉太も先輩を追いかけるようにして二人に近づいた。
先輩の姿を目の当たりにしてただ瞠るは藤咲と「あなたは…」と訝しげに問いかけるマネージャーさん。
先輩は「恭子さんご無沙汰してます。長山の弟の大樹です」と丁寧に挨拶をすると、藤咲の方に向き直り、深く、頭を下げた。
いつもしっかりしている先輩からは、なかなか目にすることのなかった光景。
渉太は先輩のその姿にギョッした。
「見かけるというか、俺らの目の前にマネージャーさんと一緒にいます」
『そっか……』
「何があったんですか?」
『尚弥くんが急に出ないって言い出したらしいんだ。あんなピアノ触れるかって。渉太、悪いんだけどそこに大樹いる?いたら代わって欲しいんだけど』
渉太の予想していたことにはあながち間違えではなかったようだ。藤咲が土壇場で出演拒否をしている理由が気になりはしたが、渉太はそのまま大樹先輩に電話を手渡した。
先輩は首を傾げながらも電話を受け取ると、
受話器の向こうの律仁さんの話を黙って頷いて聞いていた。
数回頷いているうちに、先輩の血相が変わっていく。律仁さんと何を話しているのだろうか……。
律仁さんの話から藤咲が『あんなピアノ触れるか』と言っていたらしい……。
大樹先輩の表情から全てを読み取るなど不可能で渉太は目の前の先輩の姿と藤咲とを交互に眺めることしかできなかった。
程なくして電話が切れたのか先輩は耳元から携帯を離し、渉太の胸元に押し付けてくる。何かを律仁さんから知ったのか、慌てたように「ごめん、渉太」と告げては木陰から飛び出して行ってしまった。
真っ先に藤咲とマネージャーさんの元へと向かっていく先輩。
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