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御礼がしたいです
御礼がしたいです 5-2
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星野がいなくなったのを見届け、向き直ると、葵は俯いたままで顔をあげようとしない。
不思議なもので、周りは下校時間の騒がしさで五月蝿い筈なのに葵を見ているだけで時間が止まったような感覚がする。
俯いた小さめの頭も色素の薄い髪も、細い指も何だか頼りないのに·····。
「すみません·····教室はジャージ借りた時に覚えていて……」
漸く振り絞ったかのような、小さめの声に
我に返っては耳を傾ける。
微かに聞き取れたけど、如何せん周りが騒がしくて聞き取りにくかった。
「ごめん、もう一度いい?周り煩くて」
もっと聞き取れるように数歩近づいて見ると、葵はビクリと身体を震わせては、耳朶が真っ赤になっていた。
「お、お礼をっ!!どうしても、し、塩谷くんにお礼がしたいんです」
俺がもう一度聞き返したからか、葵は両手を握っては先程の声量とは、やや大きめに強く訴えかけてきた。
「お礼って?」
「塩谷くんには、沢山の助けてもらったので……。僕から何かお礼をさせてください」
「いいよ。別に」
葵に御礼をされるようなことはしていない。
先日のだって、事を収めたのは教師だ。
俺は教師の力を借りて、奴らを追っ払っただけで、自ら葵を助けるようなことはしていない。
亨は男の提案を断ったが、葵はイマイチ納得していないのか首を左右に振り「いいえ、僕の気が収まらないのでお礼させてください」の一点張りだった。
自分が「いいよ」と言って此方が遠慮しても口を一文字にして食い下がる気配はない。
亨にとってこのやり取りは何だかイタチごっこで面倒くさく思えてしまい、「じゃあ、なんか奢ってよ」と提案すると葵は少し顔を綻ばせては返事をした。
それに、丁度良かったかもしれない。
あまり乗り気ではなかった星野の誘いを断る口実ができた。
「じゃあ、行こうか」
「えっ·····」
軽い感覚で亨は何も意識をせずに男の手を取ろうとした時、スッと避けられ、驚いた表情をしていた。
「えっ·····って、今日じゃダメだった?」
戸惑ったように葵の目線が泳ぐ。
その場のノリでご飯に行くことなんて良くあること。それとも今日は葵に用事があるのだろうか……。
「僕は大丈夫ですけど、塩谷くん先約があるんじゃ·····」
「別にいいよ、断れば。乗り気じゃなかったし」
葵自身のことではなく、自分の先約のことを気にしていたのかと思うと、少しホッとした自分がいた。
「ダメです。先約があるならそっち優先して下さい。僕のことはいいので·····明日、空いてますか?」
頑固だと思ったら真面目になって、見た目の雰囲気からして薄々感じてはいたが、亨は葵の発言にギョっとした。
たかだか男子高校生の誘い。世の中にこんな約束をしっかり守るような真面目ちゃんがいたことに驚く。
「空いてるけど·····」
「じゃあ、また明日、放課後にきますね」
葵はそう終始笑顔で言うとお辞儀をしては自分の横を通り過ぎていった。
不思議なもので、周りは下校時間の騒がしさで五月蝿い筈なのに葵を見ているだけで時間が止まったような感覚がする。
俯いた小さめの頭も色素の薄い髪も、細い指も何だか頼りないのに·····。
「すみません·····教室はジャージ借りた時に覚えていて……」
漸く振り絞ったかのような、小さめの声に
我に返っては耳を傾ける。
微かに聞き取れたけど、如何せん周りが騒がしくて聞き取りにくかった。
「ごめん、もう一度いい?周り煩くて」
もっと聞き取れるように数歩近づいて見ると、葵はビクリと身体を震わせては、耳朶が真っ赤になっていた。
「お、お礼をっ!!どうしても、し、塩谷くんにお礼がしたいんです」
俺がもう一度聞き返したからか、葵は両手を握っては先程の声量とは、やや大きめに強く訴えかけてきた。
「お礼って?」
「塩谷くんには、沢山の助けてもらったので……。僕から何かお礼をさせてください」
「いいよ。別に」
葵に御礼をされるようなことはしていない。
先日のだって、事を収めたのは教師だ。
俺は教師の力を借りて、奴らを追っ払っただけで、自ら葵を助けるようなことはしていない。
亨は男の提案を断ったが、葵はイマイチ納得していないのか首を左右に振り「いいえ、僕の気が収まらないのでお礼させてください」の一点張りだった。
自分が「いいよ」と言って此方が遠慮しても口を一文字にして食い下がる気配はない。
亨にとってこのやり取りは何だかイタチごっこで面倒くさく思えてしまい、「じゃあ、なんか奢ってよ」と提案すると葵は少し顔を綻ばせては返事をした。
それに、丁度良かったかもしれない。
あまり乗り気ではなかった星野の誘いを断る口実ができた。
「じゃあ、行こうか」
「えっ·····」
軽い感覚で亨は何も意識をせずに男の手を取ろうとした時、スッと避けられ、驚いた表情をしていた。
「えっ·····って、今日じゃダメだった?」
戸惑ったように葵の目線が泳ぐ。
その場のノリでご飯に行くことなんて良くあること。それとも今日は葵に用事があるのだろうか……。
「僕は大丈夫ですけど、塩谷くん先約があるんじゃ·····」
「別にいいよ、断れば。乗り気じゃなかったし」
葵自身のことではなく、自分の先約のことを気にしていたのかと思うと、少しホッとした自分がいた。
「ダメです。先約があるならそっち優先して下さい。僕のことはいいので·····明日、空いてますか?」
頑固だと思ったら真面目になって、見た目の雰囲気からして薄々感じてはいたが、亨は葵の発言にギョっとした。
たかだか男子高校生の誘い。世の中にこんな約束をしっかり守るような真面目ちゃんがいたことに驚く。
「空いてるけど·····」
「じゃあ、また明日、放課後にきますね」
葵はそう終始笑顔で言うとお辞儀をしては自分の横を通り過ぎていった。
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