Broken Flower

なめめ

文字の大きさ
上 下
42 / 94
突然の告白

突然の告白 7-4

しおりを挟む
放課後、HRが終わると亨は一目散に教室を出て行った。

何度もスマホ画面を凝視したところで、葵からの返信が来ることはなく、内心焦っていた。電話でも鳴らせられればいいが、肝心の番号が知らない。この時ばかり自分が一方的に連絡先を教えただけで、相手のを聞いていなかったことに酷く後悔した。

連絡手段がないのならば、教室へと思って階段を駆け上がったが三年生の教室に葵の姿はなく、それなら一刻も早く昇降口へと向かい、三年生の下駄箱の前まで行き、葵を待ち伏せするしか方法しかなかった。
玄関扉の前で突っ立っては、ごった返す生徒の中から懸命に葵を探す。

その中に、金髪の連中を見掛けたが葵の姿は一向に現れなかった。

そもそも人を避けがちの葵が、混雑時の下駄箱に現れるかは、賭けに出る様なものだが、メールの返事を大人しく待っているより幾分マシだった。

このまま待っても来なかったら保健室に行くべきだろうか……しかし、西田には会いたくないし、会えたとしても葵と関わることに対して悪く思っている西田の前でこんな話はできない。

「塩谷、まだ居たのかよ。あんな勢いよく教室出てったからビックリしたんだけど、どうしたよ?」 

下校のピークが過ぎて人の並が落ち着いて来た頃、二つ隣の下駄箱から名前を呼ばれて振り返ると星野が、佐和田を置いて此方へと向かってくる。佐和田も慌てて星野の後についてきたので、亨は佐和田に向かって一礼をした。

「ああ…まあ、ちょっと」
「何、西田でも待ってんの?」
「違う……」

昼に謝りに行ってくるなどと呟いていたので
喧嘩をして泣きついてきていた男は、どうやら彼女と仲直りできたらしい。

「お前仲直りしたんだな」
「まぁね。塩谷のおかげだよ」

星野に助言をした覚えはなかったが、肩を叩かれ、お礼を言われ「そっか…良かったな」と在り来りな反応しかできなかった。
それよりも、待ち人が気になって仕方がない。

星野のどうでもいい仲直りエピソードを聞きながらも周りに注意を払っていると、佐和田の後ろを背中を丸めながら足早に駆け出す人物に見覚えがあり、亨は慌ててその後ろ姿を追いかけた。

しおりを挟む

処理中です...