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突然の…
突然の····· 12-2
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『なら早く来いよ。もう授業始まるぞ?あ、やべ。先生きたから切るな』
ざわざわと騒がしい人や物の音を拾いながら慌てたように通話が切れる。亨は未だ追いつかない状況のままベッドから体を起こして部屋の掛け時計に目線を移した。
時刻は午前9時。丁度一時限目が始まる頃だった。
目覚ましは毎朝7時にセットしているし、なんなら一度目を覚ましアラームを止めた記憶だってある。葵からの電話がくると信じて再び眠りへと落ちたのだ。亨は思い立ったように手元のスマホの着信履歴を確認したが、葵からの着信はなかった。
亨にとっては一つの楽しみなイベントの一つだっただけに落胆しながらも
、何か理由があるかもしれないと己を慰める。
気を落としながらも身支度を済ませると葵に真っ先に「今日学校いる?」とメールをした。こんなときチャットアプリだと既読表示で相手がメッセージを見てくれたか確認できるのにな·····とメール故の不憫さやもどかしさを感じながらも、葵が学校に来ていたら拗ねて困らせてやろうと心に決めて部屋を出た。
静まり返った校内を焦る様子もなくゆっくり歩いて教室へ向かうと丁度
、授業の終わりを告げる予鈴が鳴り、古文の教科担任が教室から出てきた。
何事もなく教室へ入ろうとしたところで呼び止められ、小言のように説教をされる。「初犯だから見逃してやるが、次からは生徒指導だぞ」ときつく注意喚起を受けたが、聞く耳など一切なく、早く終わらないかと教師の薄く地肌が見え隠れしている頭を眺めていた。
ふと思い立って今から次の授業の間までなら葵の教室へ顔を出すことくらいできるのではないかと思った亨は、鞄を置かずにそのまま踵を返して階段を駆け降りる。目指すは三年C組の教室。
すると次の授業が移動教室なのかC組から生徒が教科書を持って出ていく姿とすれ違った。葵はいるだろうか…。やはり江藤たちを気にして教室に来ていないのではないだろうか……。それとも別の理由で…。
ゆっくりとすれ違う生徒の合間を縫ってC組の教室の手前までたどり着いたとき、葵が教室の前方の入り口から出てくる姿があった。
「あおい!」
亨は迷わず名前を呼ぶと、葵はピタリと足を止めて此方を向いた。
視線がかち合ったのを認めて、亨は大きく手を振ってみると自分の元へと向かってくる葵の姿に今か今かと待ち構える。
葵に声をかける言葉を頭に浮かばせながらその時を待っていたが、彼は俺に近づいたところであからさまに深く俯くと、避けるようにして俺の真横を横切ってしまった。
「え…」
ざわざわと騒がしい人や物の音を拾いながら慌てたように通話が切れる。亨は未だ追いつかない状況のままベッドから体を起こして部屋の掛け時計に目線を移した。
時刻は午前9時。丁度一時限目が始まる頃だった。
目覚ましは毎朝7時にセットしているし、なんなら一度目を覚ましアラームを止めた記憶だってある。葵からの電話がくると信じて再び眠りへと落ちたのだ。亨は思い立ったように手元のスマホの着信履歴を確認したが、葵からの着信はなかった。
亨にとっては一つの楽しみなイベントの一つだっただけに落胆しながらも
、何か理由があるかもしれないと己を慰める。
気を落としながらも身支度を済ませると葵に真っ先に「今日学校いる?」とメールをした。こんなときチャットアプリだと既読表示で相手がメッセージを見てくれたか確認できるのにな·····とメール故の不憫さやもどかしさを感じながらも、葵が学校に来ていたら拗ねて困らせてやろうと心に決めて部屋を出た。
静まり返った校内を焦る様子もなくゆっくり歩いて教室へ向かうと丁度
、授業の終わりを告げる予鈴が鳴り、古文の教科担任が教室から出てきた。
何事もなく教室へ入ろうとしたところで呼び止められ、小言のように説教をされる。「初犯だから見逃してやるが、次からは生徒指導だぞ」ときつく注意喚起を受けたが、聞く耳など一切なく、早く終わらないかと教師の薄く地肌が見え隠れしている頭を眺めていた。
ふと思い立って今から次の授業の間までなら葵の教室へ顔を出すことくらいできるのではないかと思った亨は、鞄を置かずにそのまま踵を返して階段を駆け降りる。目指すは三年C組の教室。
すると次の授業が移動教室なのかC組から生徒が教科書を持って出ていく姿とすれ違った。葵はいるだろうか…。やはり江藤たちを気にして教室に来ていないのではないだろうか……。それとも別の理由で…。
ゆっくりとすれ違う生徒の合間を縫ってC組の教室の手前までたどり着いたとき、葵が教室の前方の入り口から出てくる姿があった。
「あおい!」
亨は迷わず名前を呼ぶと、葵はピタリと足を止めて此方を向いた。
視線がかち合ったのを認めて、亨は大きく手を振ってみると自分の元へと向かってくる葵の姿に今か今かと待ち構える。
葵に声をかける言葉を頭に浮かばせながらその時を待っていたが、彼は俺に近づいたところであからさまに深く俯くと、避けるようにして俺の真横を横切ってしまった。
「え…」
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