Broken Flower

なめめ

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突然の…

突然の····· 12-16

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「大藪にもう関わろうとすんのやめろ」

振り返ったと同時に真顔で男の口がそう動く。
江藤に言われなくても、俺のことに拒絶を示している彼を待ち伏せするような真似をして自分のやっていることは葵の迷惑であることは自覚している。

だけどちゃんと話せば俺の気持ちが本物であることを分かってもらえると信じたかった。

騒がしい放課後の下駄箱。意識が全て男に集中して周りなど見えなくなる程に
頭に血が上っていた。絡む気はなかったが、激昂に任せて江藤に詰め寄ると胸倉を掴んでいた。この口に言われたくない。葵をいじめていた奴に言われる筋合いはない。

「は?」

亨が怒りを露わにしている一方で気だるそうに深く溜息をついて至って冷静な装いの江藤。

自分がこんなに沸点の低い人間だったのかと思い知らされるほど、葵のことになると余裕がなくなる。江藤へと嫉妬と、葵に対してのやるせなさが交じり合い、心も身体も攻撃的にならざる負えない。

今まで真面に相手と付き合わず、別れることの苦しみを知らなかった亨にとってこの痛みを乗り越えられるほどの精神的な強さを持てていなかった。
楽な方へと逃げてきた罰なのだろうか。

葵への気持ちを諦めて、断ち切る勇気がない……。

「離せよ。お前また謹慎くらいたいの?二年は気楽でいいよな」

自分よりも体格がどっしりとしている見かけ通りに掴んだ胸倉を江藤の拳を握りつぶされそうな強い力で引き剥がされ、あまりの痛みに亨は顔を歪めた。
右手を抑えながらも江藤を睨みつけるのは止めない。

「大藪があんたに毎回待ってられると迷惑なんだって、あいつも受験なんだからいい加減諦めろ」

彼が将来のために大事な時期なのは分かってる。
あんなに嬉しそうに車の免許の勉強をしていた彼を思えば、今は引くべき時期であることなんて俺も馬鹿じゃない。
話を聞いてくれるのは葵の余裕があるときで構わない、だから約束を取り付けたかった。

「それは葵に本人に聞かなきゃわからないだろ·····せめてお互いちゃんと話がしたい。あんた葵の傍にいんだろ·····葵と話させてもらえませんか·····お願いします」

絶対に頭なんか下げたくない相手だったが、葵と繋がりを持つには連絡手段がない以上江藤に頼み込むしか方法が見当たらなかった。

葵と江藤にどういう事情があったのか分からないが、今、葵の隣にいるのは紛れもなく江藤だ。江藤に取り持ってもらえたら、葵と話ができるんじゃないだろうか。亨はプライドを捨ててまで頭を下げるしかなかった。



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