90 / 177
フラワー大藪
フラワー大藪 13-5
しおりを挟む
相変わらずの優しそうな葵の表情とふわっと柔らかそうに風に靡く髪。
遠目からではあるが、あんなに傍に居た時は頼りなく感じていた背中が少しだけ逞しさを醸し出していた。
当時は蚊の鳴くような声ばかり出していた葵からは考えられないほど、従業員の男相手にはっきりとした声音で物を言っていたことに驚いた。
機敏に配達車に乗り込むと遠ざかっていく車。
ゆっくりと店の前まで近寄ると見上げた先には「フラワー大藪」と書かれた看板。以前葵は母親が花屋で自分も手伝っていると言っていた。
こんな大学の近くにあったとは思わなかった·····。
店の前に飾られた花の傍にはイーゼルに立て掛けられた黒板ボード。
【ギフト用のアレンジメント、花束etc…承ります。お気軽にご相談ください
植物と共にあなたの毎日が素敵に彩られますように·····】
チョークで書かれた文字とイラストは誰が書いたものなのだろうか。
凄く心が温まるメッセージが葵が書いたものであればなんて勝手に想像しては口元が自然と綻んでいた。
「おい、塩谷。止まったと思ったら勝手に先に行くなよー。つか帽子返せよ」
久しぶりに見た想い人の姿と外観に気を取られていてすっかり星野のことを忘れてしまっていた。小走りで追いかけてきたのか、少しだけ息を乱しながら帽子を奪い返されて、漸く我に返る。
「何か探してる?」
すると店の前に立っていた、男と目が合った。黒いシャツにベージュのエプロン。明るめの茶髪で柔らかい表情で微笑んでくる男。長身で包容力のありそうなほど体格がよくて、自分よりも遥かにイケメンと称される顔立ち。
この店の看板でも背負えそうなほど愛嬌がある店員だ。
「あのっ彼女が今日誕生日なんで花束を贈りたくて·····」
男の問いに咄嗟に隣にいた星野がそう答えると「素敵な彼氏だね。彼女はどんな花が好きとかある?」と気さくに声を掛けてきては店の中へと促された。
「やべぇ塩谷、彼女なんの花好きだろ」と落ち着かない星野の傍らで亨は店内を見渡しては此処が葵がいる店だと思うと胸が詰まるような思いでいた。
遠目からではあるが、あんなに傍に居た時は頼りなく感じていた背中が少しだけ逞しさを醸し出していた。
当時は蚊の鳴くような声ばかり出していた葵からは考えられないほど、従業員の男相手にはっきりとした声音で物を言っていたことに驚いた。
機敏に配達車に乗り込むと遠ざかっていく車。
ゆっくりと店の前まで近寄ると見上げた先には「フラワー大藪」と書かれた看板。以前葵は母親が花屋で自分も手伝っていると言っていた。
こんな大学の近くにあったとは思わなかった·····。
店の前に飾られた花の傍にはイーゼルに立て掛けられた黒板ボード。
【ギフト用のアレンジメント、花束etc…承ります。お気軽にご相談ください
植物と共にあなたの毎日が素敵に彩られますように·····】
チョークで書かれた文字とイラストは誰が書いたものなのだろうか。
凄く心が温まるメッセージが葵が書いたものであればなんて勝手に想像しては口元が自然と綻んでいた。
「おい、塩谷。止まったと思ったら勝手に先に行くなよー。つか帽子返せよ」
久しぶりに見た想い人の姿と外観に気を取られていてすっかり星野のことを忘れてしまっていた。小走りで追いかけてきたのか、少しだけ息を乱しながら帽子を奪い返されて、漸く我に返る。
「何か探してる?」
すると店の前に立っていた、男と目が合った。黒いシャツにベージュのエプロン。明るめの茶髪で柔らかい表情で微笑んでくる男。長身で包容力のありそうなほど体格がよくて、自分よりも遥かにイケメンと称される顔立ち。
この店の看板でも背負えそうなほど愛嬌がある店員だ。
「あのっ彼女が今日誕生日なんで花束を贈りたくて·····」
男の問いに咄嗟に隣にいた星野がそう答えると「素敵な彼氏だね。彼女はどんな花が好きとかある?」と気さくに声を掛けてきては店の中へと促された。
「やべぇ塩谷、彼女なんの花好きだろ」と落ち着かない星野の傍らで亨は店内を見渡しては此処が葵がいる店だと思うと胸が詰まるような思いでいた。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる