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ファミレス
ファミレス②
百合に背中を押されるがままに、二人の前に立たされると、案の定、注目が此方へと集中する。
「あおいっ…」
「葵くんどうしたの?」
葵が目の前に来た途端に背筋を伸ばし、目を伏せる亨と不思議そうに首を傾げてくる慎文さん。慎文さんはいいとしてやっぱりこの男と親睦を深めるなどしたくない…助けを求める様に振り返ってみると、気づいたら百合の姿はカウンターの方へと戻っていて「はよ行け」と言わんばかりにしっしと手の甲を払われてしまった。ここは我慢して親孝行をするしかないらしい。
「えっと…母さんが三人でお昼行ってきなさいって」
「お店大丈夫なの?もし心配なら二人で行ってきたら?俺、百合さんと店番してるから」
気遣いのできる慎文さんらしい返答ではあるが、葵の警戒度の高い男との二人きりはこの間のようになりかねない。
亨は何も言わずに俯いているだけだし、お昼を避けられないというのであれば、慎文さんには、居てもらいたかった。
「あ、いや。母が言っているので大丈夫かと…」
「そっか、じゃあお言葉に甘えて行ってこようか」
大袈裟かもしれないがお兄さんのように頼れる慎文さんが居てくれて心底良かったと思う。あくまで亨は慎文さんが辞める代わり。あと一か月もすれば彼が居なくなってしまうのだと思うと不安でしかなかった。
エプロンだけは外し、カーディガンを羽織り、お店近くのファミレスで昼休憩をとる。本当は母の分っと自分の分でお弁当を持参してきたが、晩御飯に回すしかない。ボックス席に亨と慎文さんが隣同士に座り、亨の向かいに自分が座る。
「何頼もうか」
着席と同時に店員からお冷とおしぼりを渡され、慎文さんが率先してメニュー表を僕に見やすいように広げてくれた。ファミレスなんて一年に一回行くか行かないか、母親と二人暮らしで店のことで大変な母親に代わり、普段は葵が料理をしている。何が美味しいだとか分からなかったが、ひとつだけ目に留まったものがあったのでそれを指さした。
「じゃあ僕、海老ドリアで」
途端に向かい側から「あ…」と呟く声が聞こえて顔を上げると、「……なんでもない」と直ぐに俯かれてしまった。
「亨くんは?」
「じゃあ、ハンバーグステーキで…」
「じゃあ僕も亨くんと同じのにしようかな」
慎文さんに聞かれたはずなのに、僕の方をチラチラと伺ってくる亨に不信感を覚えながらも、慎文さんに「ボタンお願いできる?」と頼まれたので手元にあった呼び出しボタンを押した。
「あおいっ…」
「葵くんどうしたの?」
葵が目の前に来た途端に背筋を伸ばし、目を伏せる亨と不思議そうに首を傾げてくる慎文さん。慎文さんはいいとしてやっぱりこの男と親睦を深めるなどしたくない…助けを求める様に振り返ってみると、気づいたら百合の姿はカウンターの方へと戻っていて「はよ行け」と言わんばかりにしっしと手の甲を払われてしまった。ここは我慢して親孝行をするしかないらしい。
「えっと…母さんが三人でお昼行ってきなさいって」
「お店大丈夫なの?もし心配なら二人で行ってきたら?俺、百合さんと店番してるから」
気遣いのできる慎文さんらしい返答ではあるが、葵の警戒度の高い男との二人きりはこの間のようになりかねない。
亨は何も言わずに俯いているだけだし、お昼を避けられないというのであれば、慎文さんには、居てもらいたかった。
「あ、いや。母が言っているので大丈夫かと…」
「そっか、じゃあお言葉に甘えて行ってこようか」
大袈裟かもしれないがお兄さんのように頼れる慎文さんが居てくれて心底良かったと思う。あくまで亨は慎文さんが辞める代わり。あと一か月もすれば彼が居なくなってしまうのだと思うと不安でしかなかった。
エプロンだけは外し、カーディガンを羽織り、お店近くのファミレスで昼休憩をとる。本当は母の分っと自分の分でお弁当を持参してきたが、晩御飯に回すしかない。ボックス席に亨と慎文さんが隣同士に座り、亨の向かいに自分が座る。
「何頼もうか」
着席と同時に店員からお冷とおしぼりを渡され、慎文さんが率先してメニュー表を僕に見やすいように広げてくれた。ファミレスなんて一年に一回行くか行かないか、母親と二人暮らしで店のことで大変な母親に代わり、普段は葵が料理をしている。何が美味しいだとか分からなかったが、ひとつだけ目に留まったものがあったのでそれを指さした。
「じゃあ僕、海老ドリアで」
途端に向かい側から「あ…」と呟く声が聞こえて顔を上げると、「……なんでもない」と直ぐに俯かれてしまった。
「亨くんは?」
「じゃあ、ハンバーグステーキで…」
「じゃあ僕も亨くんと同じのにしようかな」
慎文さんに聞かれたはずなのに、僕の方をチラチラと伺ってくる亨に不信感を覚えながらも、慎文さんに「ボタンお願いできる?」と頼まれたので手元にあった呼び出しボタンを押した。
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