136 / 177
嫉妬から始まる恋心……
嫉妬から始まる恋心……①
しおりを挟む
デートの日から一週間ほど経った。
あれから亨は、通常通りお店に来て業務をこなし、僕との会話も仕事以外で会話をすることはなくなった。
時折感じていた熱を帯びたような視線も無くなった気がする。しかし、亨の好意によって心を乱されることはなくなった筈なのに、あの日の亨の姿や抱き竦められた時の感触を無意識に思い出している自分がいた。
6月中旬、来月からお盆に合わせてお店も繁忙期を迎える。例年通り今回は亨を迎えて三人でお店を回すとはいえ、亨は学校があるから出れる日は限られてくる。少し厳しいが乗り切るしかなかった。このままじゃ埒が明かないと思った百合が短期アルバイト募集を掛けた張り紙をしていたが、なかなか志願してくる人は現れてこない現状だった。
「葵。俺、定休日以外出るよ。百合さんも大変だろうし……夏休みに入ったら一日中入れるから.......」
お客さんのいない閉店間際の店内で、頬に手を当てて困り顔の百合とその話をしていると間を割って亨が会話に入ってきた。百合と僕を気遣ってそう言ってくれるが、雇っている側である以上規定もあるし、そう簡単にお願いしますとはならない。
「大丈夫です。アルバイトの貴方にそんなことさせられないので…」
「そうね、その気持ちは有難いけど、亨君に無理はさせられないわ」
「そうだよな…俺ができることは精一杯助けるんで……」
不甲斐なさそうに肩を落とし店内清掃へと戻る亨。ここで永遠と話していたところで人が来てくれないことには現状は変えられない。この話は一旦保留にして業務に戻ることにした。
「あのっ……」
暫くして、お店の鈴と共に一人の小柄な若い女性が入ってくる。
年齢的には同じくらいだろうか…ふわりとパーマが当てられた長い髪。
とても緊張しているのか、赤面させながらも、少しだけ額に汗を滲ませていた。同年代の人がこんな時間に慌てて花屋に来店してくるのは珍しいが、友達へのプレゼントだろうか。
葵がその人に歩み寄り、声を掛けようとしたところで背後から亨の
驚いたような声が聞こてきた。
「えっ、雛森さん…!?」
あれから亨は、通常通りお店に来て業務をこなし、僕との会話も仕事以外で会話をすることはなくなった。
時折感じていた熱を帯びたような視線も無くなった気がする。しかし、亨の好意によって心を乱されることはなくなった筈なのに、あの日の亨の姿や抱き竦められた時の感触を無意識に思い出している自分がいた。
6月中旬、来月からお盆に合わせてお店も繁忙期を迎える。例年通り今回は亨を迎えて三人でお店を回すとはいえ、亨は学校があるから出れる日は限られてくる。少し厳しいが乗り切るしかなかった。このままじゃ埒が明かないと思った百合が短期アルバイト募集を掛けた張り紙をしていたが、なかなか志願してくる人は現れてこない現状だった。
「葵。俺、定休日以外出るよ。百合さんも大変だろうし……夏休みに入ったら一日中入れるから.......」
お客さんのいない閉店間際の店内で、頬に手を当てて困り顔の百合とその話をしていると間を割って亨が会話に入ってきた。百合と僕を気遣ってそう言ってくれるが、雇っている側である以上規定もあるし、そう簡単にお願いしますとはならない。
「大丈夫です。アルバイトの貴方にそんなことさせられないので…」
「そうね、その気持ちは有難いけど、亨君に無理はさせられないわ」
「そうだよな…俺ができることは精一杯助けるんで……」
不甲斐なさそうに肩を落とし店内清掃へと戻る亨。ここで永遠と話していたところで人が来てくれないことには現状は変えられない。この話は一旦保留にして業務に戻ることにした。
「あのっ……」
暫くして、お店の鈴と共に一人の小柄な若い女性が入ってくる。
年齢的には同じくらいだろうか…ふわりとパーマが当てられた長い髪。
とても緊張しているのか、赤面させながらも、少しだけ額に汗を滲ませていた。同年代の人がこんな時間に慌てて花屋に来店してくるのは珍しいが、友達へのプレゼントだろうか。
葵がその人に歩み寄り、声を掛けようとしたところで背後から亨の
驚いたような声が聞こてきた。
「えっ、雛森さん…!?」
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
あなたの隣で初めての恋を知る
彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。
その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。
そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。
一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。
初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。
表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる