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嫉妬から始まる恋心……
嫉妬から始まる恋心……④
前方の二人を眺めながら遠い目をして、話し始める百合の隣で、葵は黙って聞いていた。百合と父親の話を全部知っているわけではないが、父が別の人の元へ行くために自分たちのことをしてたのは知っている。父はいなくなる数ヵ月前から家に帰らなくなっていたし、5歳の記憶ながら母親に「葵ちゃん、ごめんね。パパ忙しくて…」と何度も悲しい顔で謝られた記憶が根強くあるからだった。そんな母親に悲しい思いをさせた父を許そうなんて思ったことはない。
だから、いい加減な気持ちで本気で好意を寄せている相手と付き合う亨のことも許せなかった。
「葵ちゃんにはちゃんと話してなかったけど、貴方のパパ。本当は好きな人がいたの。ほんとずっと前の話よ、私たちが学生の頃のね。私が介入できないほどその人とパパはお互い惹かれ合ってたのよ。だけど、大学生にあがったある日突然、彼女が留学して彼の前からいなくなってね、憔悴しきっていた彼を慰め続けたのが私なの」
百合はひとつひとつ思い出すように話し出した。
百合は父のことが好きだったから、何度も何度も父に歩み寄って献身的に支えてきたことにより次第に父も心を開いていった。そして、在学中に葵を身ごもり、そのまま結婚したのだと…。葵が生まれて四年経った頃、父の想い人が戻ってきて余命宣告された病気だと告げられた父は、百合と葵を放ってその人に会いに行くようになったこと。
「でもね、後悔してないのよ。こんなに可愛くて頼もしい息子がいるんだもの。あの人と別れた当初は恨みつらみで葵ちゃんに嫌な父親だって捏造して刷り込んでだけど。あの人も葵ちゃんを愛してなかったわけじゃないのよ?だだ彼は優しいだけだったの」
「そんなの結果的に僕たちを捨てたのと一緒だよ」
「そうね、でも人を恨み続けるって労力のいることなのよ。どうにもならないこと考えてるくらいならこうやって綺麗な花に囲まれて、葵ちゃんと一緒にいる方が幸せじゃない?過去のことは過去の事として、よくも悪くても思い出として胸に仕舞っておくのが一番よ。ほら、あなたの好きなシクラメンだって、枯れてもまた次の季節に向けて花を芽吹かせるじゃない?」
百合の芯の強さに心打たれながらも、いつまでも過去に縛られているのは自分の方ではないかとさえ思えた。高校生の時の彼はいい加減な付き合い方をしていたかもしれないけど、今はどうだろうか。
今の彼なら信じても……。
自然と足が亨に向かって一歩を踏み出したところで隣の百合が「そろそろ、あの子たち帰してあげなきゃね」と呟いては、先に行かれてしまった。
だから、いい加減な気持ちで本気で好意を寄せている相手と付き合う亨のことも許せなかった。
「葵ちゃんにはちゃんと話してなかったけど、貴方のパパ。本当は好きな人がいたの。ほんとずっと前の話よ、私たちが学生の頃のね。私が介入できないほどその人とパパはお互い惹かれ合ってたのよ。だけど、大学生にあがったある日突然、彼女が留学して彼の前からいなくなってね、憔悴しきっていた彼を慰め続けたのが私なの」
百合はひとつひとつ思い出すように話し出した。
百合は父のことが好きだったから、何度も何度も父に歩み寄って献身的に支えてきたことにより次第に父も心を開いていった。そして、在学中に葵を身ごもり、そのまま結婚したのだと…。葵が生まれて四年経った頃、父の想い人が戻ってきて余命宣告された病気だと告げられた父は、百合と葵を放ってその人に会いに行くようになったこと。
「でもね、後悔してないのよ。こんなに可愛くて頼もしい息子がいるんだもの。あの人と別れた当初は恨みつらみで葵ちゃんに嫌な父親だって捏造して刷り込んでだけど。あの人も葵ちゃんを愛してなかったわけじゃないのよ?だだ彼は優しいだけだったの」
「そんなの結果的に僕たちを捨てたのと一緒だよ」
「そうね、でも人を恨み続けるって労力のいることなのよ。どうにもならないこと考えてるくらいならこうやって綺麗な花に囲まれて、葵ちゃんと一緒にいる方が幸せじゃない?過去のことは過去の事として、よくも悪くても思い出として胸に仕舞っておくのが一番よ。ほら、あなたの好きなシクラメンだって、枯れてもまた次の季節に向けて花を芽吹かせるじゃない?」
百合の芯の強さに心打たれながらも、いつまでも過去に縛られているのは自分の方ではないかとさえ思えた。高校生の時の彼はいい加減な付き合い方をしていたかもしれないけど、今はどうだろうか。
今の彼なら信じても……。
自然と足が亨に向かって一歩を踏み出したところで隣の百合が「そろそろ、あの子たち帰してあげなきゃね」と呟いては、先に行かれてしまった。
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