Broken Flower

なめめ

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亨の痛み

亨の痛み①

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繁忙期も過ぎ、近隣に学校やオフィスが多いせいか土日は比較的客足が少ない。百合を店でひとりにしておくのは気が引けたが、お互いに学校のない日を選ぶのであれば土日しかない。

定休日の授業終わった足で行くことを考えてみたものの、此処から四十分くらいかかる会場では、閉園時間までに間に合うか間に合わないかの瀬戸際だった。

百合にダメ元で交渉してみると彼女は嬉しそうに「折角だから亨くんと仲良くね」と背中を押されて土曜日のお昼に約束をした。

フラワー大藪で待ち合わせをし、百合に見送られながら葵の運転する軽自動車で会場へと向かう。

「やっぱり俺が運転しようか……?」

カーラジオが流れる車内で助手席でそわそわと落ち着きない亨がそう零す。

「大丈夫です。塩谷さんは慣れてないようなので」
「だよな……」

隣でガクリと肩を落とした亨。ペーパーではあるが免許はもっていると話していたが、亨の運転は未知数すぎてとてもじゃないが任せられない。ましてや会場は遠いのでそれなりの走行距離になる。

本人は以前、葵とどこかへ行ってみたいと言っていたことから僕のことを亨が運転する車に乗せたい気持ちがあるのだろうけど……。

しかし、折角免許をもっているのだからいつまでも乗らずにいる訳にはいかないだろうし、少しづつでもいいから仕事で乗せて上げられればなと思っていた。

「今度、配達してみませんか?その時は僕も付き添うので……。塩谷さんの運転の練習になれば……。でも、無理にとは言わないです。塩谷さんも本業は学生ですし、負担はかけさせられないので」

慎文さんがいなくなった今、配達は百合と自分が請け負っている。そこに亨が配達をできるようになれば、葵が手伝えないときの百合の負担が減る。もちろん亨も亨で忙しい身ではあるし、この間のように体調を崩すまで無理はさせたくない。

「それ、いいな……。俺は大丈夫だから葵が良ければ俺の練習相手になってほしい。百合さんの手助けしたいし、それに……」

それに……から亨の言葉が途絶えたので横目で助手席を見遣ると耳朶を真っ赤にして俯いていた。

「それに……葵と一緒の時間が増えるかなって」

恥も知らずにそんなことをサラッと言ってくる亨に葵は胸を掴まれた気分になり、途端に恥ずかしくなった。亨も亨で照れているから余計に羞恥心が増す。

「言っておきますけど、運転は遊びじゃないので僕はスパルタで行きますよ?」

葵はもだついた空気に一喝を入れるべく、咳払いをすると少しキツめの口調で亨に問うた。
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