Broken Flower

なめめ

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open your flower

open your flower③

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「百合さん、おかえりなさい」

ほんの数秒前まで、キスをしようとしていたのが嘘だったかのような亨の平常心に驚きもあったが、実母に見られてしまった羞恥心の方が大きい。顔中が熱くなり、穴があったら入りたい衝動に駆られた。

「別にイチャイチャなんか、し、してないよ」

今更否定したところで現場を目撃されてしまったのは百合の表情が物語っている。無駄だと分かっていても、実母だからこそ恋人との自分を見られる恥ずかしさや気まずさから反射的に否定せずに居られなかった。

「いいのよ。私としては葵ちゃんが亨くんと仲良くしてくれた方が嬉しいもの。私が引退したらお店は二人に任せられそうね」

「母さん……っ!!」

口元に手を当てて笑みを浮かべる百合。
百合は亨と僕がお付き合いをしていることは知っている。亨と結ばれた日から百合には話そうとは思っていたが、なかなか自ら切り出す勇気がなく、亨から話そうかと提案されたがこういうことは自分の口で言うべきだと断っていた。

そんなモダモダと百合に隠れてるように交際を続けて数ヶ月経ったある日、亨と閉店作業をしている時に「もしかして、葵ちゃんと亨くんってお付き合いしてるの?」と言われたのがきっかけだった。

母親の感はよく働くというべきなのか、亨くんが葵ちゃんのことが好きなのは薄々気づいていたという。

亨が風邪で倒れた時、葵を家に向かわせたのも素直じゃない葵ちゃんの何かのきっかけになればと思っていたと言われ、百合に全てお見通しされ、上手いこと手の内に転がされていたと思うとぐうの音も出なかった。

「もちろん、百合さんに心配かけないように俺がしっかり葵を支えるんで任せてください」

百合を目の前にして堂々とこめかみに唇を寄せてくる。母親の前でも包み隠さず愛情表現をしてくる亨に葵は狼狽えた。

「亨くんっ……。母の前ではやめて下さいっ」
「なんで?本当の事だけど。百合さん俺、嫁ぐ気まんまんなんでよろしくお願いしますね」

「やだぁ、亨くんってほんとイケメンなんだからー。もちろんよ。葵ちゃんもこんなに愛されて幸せものね」

交際を機に百合と亨の団結力というか絆も深まった気がして葵の心は乱されてばかりである。これじゃあ、プロポーズ云々にもう将来確定も同然だ。

恥ずかしいけど大切な母と亨と大好きな花とお店と過ごせていること時間が愛おしい。



ふと、店の外に並べてあるシクラメンが目に入り、葵は店外へと出ると屈んでそろそろ花数を減らし休眠期を迎えそうな鉢植えを眺めていた。

「そういえば、うちの球根ももうそろそろ寿命かな……。葵と結ばれること願って大切に育ててきたから少し寂しい……」

そんな葵に亨も近づいてくると隣に並んで屈んでくる。

「最後まで亨くんが丁寧に手をかけてお世話してくれたから、お花も喜んでくれていると思いますよ」

「終わったからって……葵とのこの先もこれっきりとか言わないよね?」

「ないです。さっきあんなに母に堂々と宣言してたのは何だったんですか?」

「それは……。葵のこと信じてない訳じゃないけど縁起が悪いような気がしたから……」

確かに五年程で寿命を迎えるガーデンシクラメンは人の人生に置き換えると長いようで短いかもしれない。でも亨との関係はそんな浅はかなものじゃない。不安の表情を浮かべる亨に、葵は目の前のガーデンシクラメンの鉢植えを手に取ると彼に差し出した。

「これから末永くよろしくお願いします」
「葵っ……」

照れ笑いを浮かべながら亨に告げると彼は顔を真っ赤にして感極まったように、鉢植えごと抱きすくめてきた。

一度枯らしてしまったけど、五度目の春を迎えることのできた亨の家のシクラメンとともに育んできたこの愛をもう二度と枯らしたくないと思う。

そしてまたこの花と共に育んでいけたら……。


END




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