レンズ越しの彼は……

なめめ

文字の大きさ
14 / 33
無意識の恋心

無意識の恋心④

しおりを挟む
昼のピークが過ぎた時間だからか、御客さんは二人ほどしかいない。

仕事中だとしても忙しくない時は、遼人は旭の前で寛いでいることは日常茶飯事なので旭も気にせず麺を啜る。小母さんたちも容認しているようだった。

旭の目の前でスマホを弄る遼人に時折「遼、いる?」とチャーハンを蓮華で掬って渡してみたが「さっき食った」と断られてしまった。

 ふと、店内の壁に貼られているポスターを見遣る。そこには花火のイラストに大きく『8月×日 19:00  開催場所:××河川敷』と書かれていた。


毎年恒例の花火大会。今年ももうそうな時期が来たらしい。縁日の日の後は決まって町の河川敷で花火大会がある。

 人混みが得意ではない旭は毎年行ってはいなかったが、遼人と星杏ちゃんはきっと行くのだろう。

「旭……」
「何?遼……」
「花火大会さ……。いや、何でもない。旭は人混み嫌いだもんな」
「あーうん。まぁ、遼は星杏ちゃんと行くんでしょ?」
「いや、星杏。今年は一緒に行きたい人がいるって言ってた」
「へぇー……」

 だから、旭に浴衣をお願いしてきたのだと納得した。

旭は比較的に恋愛や色恋話に疎いが、星杏ちゃんだって好きな人ができる年頃なのだろう。
何だか寂しい気もするが、幼馴染である星杏ちゃんには心の底から幸せでいて欲しいと思う。

「心配?」
「別に……。あいつも年頃だし」

 僅かに浮かない表情をしている遼人に問うてみると、首を左右に振っていた。表には出さないが兄として心配しているのは当然のことだった。現に旭だって少し心配である。


「遼は?遼は行って来ないの?」
「俺はいい。いっつも星杏の付き添いで行ってただけだし……」
「でも、遼だって年頃なんだからいるんじゃないの?」

 普段、色恋の話などしてきたことはなかったが、何気なく問うてみると遼人の耳が赤くなっていく。

「居ないわけじゃないけど……」
「ほぉー兄妹揃って隅に置けないなー」

あんな自由気ままの遼人に好きな人が居ることに驚くと同時に、胸の内に靄がかかったような感覚を覚える。

寂しいとは違う気がするが、遼人が離れていってしまうような焦りのようなもの。

「そういう、旭はっ‼いないのかよ……好きな奴とか」

肘をついて口元に右手を当てて問うてくる遼人は未だに赤面している。恥ずかしさを引きずっているようだった。

「僕はそういうの疎いから」

誰かを『好きだ』とか『愛している』だとか考えたことなかった。もちろん、好きな人は沢山いる。

佐野夫婦だって、此処のラーメン屋のおばちゃん、おじちゃんだって……星杏ちゃんだって……。

もちろん……遼人も……。

でも、遼人が言っているのは違う種類のものなのだろう。

「だよな、旭はまだお子ちゃまだもんなー」

一瞬だけ眉を八の字した遼人は、ケタケタと小馬鹿にしたように笑いながら「そんな旭に旗つけてやるよ」と爪楊枝でできた日の丸の旗をチャーハンに差してきた。

これじゃ洋食屋のお子様ランチだ……。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。

ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。 幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。 逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。 見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。 何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。 しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。 お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。 主人公楓目線の、片思いBL。 プラトニックラブ。 いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。 2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。 最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。 (この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。) 番外編は、2人の高校時代のお話。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

【完結】恋した君は別の誰かが好きだから

海月 ぴけ
BL
本編は完結しました。後日、おまけ&アフターストーリー随筆予定。 青春BLカップ31位。 BETありがとうございました。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 俺が好きになった人は、別の誰かが好きだからーー。 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 二つの視点から見た、片思い恋愛模様。 じれきゅん ギャップ攻め

ある日、友達とキスをした

Kokonuca.
BL
ゲームで親友とキスをした…のはいいけれど、次の日から親友からの連絡は途切れ、会えた時にはいつも僕がいた場所には違う子がいた

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

寡黙な剣道部の幼馴染

Gemini
BL
【完結】恩師の訃報に八年ぶりに帰郷した智(さとし)は幼馴染の有馬(ありま)と再会する。相変わらず寡黙て静かな有馬が智の勤める大学の学生だと知り、だんだんとその距離は縮まっていき……

【完結】期限付きの恋人契約〜あと一年で終わるはずだったのに〜

なの
BL
「俺と恋人になってくれ。期限は一年」 男子校に通う高校二年の白石悠真は、地味で真面目なクラスメイト。 ある日、学年一の人気者・神谷蓮に、いきなりそんな宣言をされる。 冗談だと思っていたのに、毎日放課後を一緒に過ごし、弁当を交換し、祭りにも行くうちに――蓮は悠真の中で、ただのクラスメイトじゃなくなっていた。 しかし、期限の日が近づく頃、蓮の笑顔の裏に隠された秘密が明らかになる。 「俺、後悔しないようにしてんだ」 その言葉の意味を知ったとき、悠真は――。 笑い合った日々も、すれ違った夜も、全部まとめて好きだ。 一年だけのはずだった契約は、運命を変える恋になる。 青春BL小説カップにエントリーしてます。応援よろしくお願いします。 本文は完結済みですが、番外編も投稿しますので、よければお読みください。

処理中です...