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無意識の恋心
無意識の恋心④
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昼のピークが過ぎた時間だからか、御客さんは二人ほどしかいない。
仕事中だとしても忙しくない時は、遼人は旭の前で寛いでいることは日常茶飯事なので旭も気にせず麺を啜る。小母さんたちも容認しているようだった。
旭の目の前でスマホを弄る遼人に時折「遼、いる?」とチャーハンを蓮華で掬って渡してみたが「さっき食った」と断られてしまった。
ふと、店内の壁に貼られているポスターを見遣る。そこには花火のイラストに大きく『8月×日 19:00 開催場所:××河川敷』と書かれていた。
毎年恒例の花火大会。今年ももうそうな時期が来たらしい。縁日の日の後は決まって町の河川敷で花火大会がある。
人混みが得意ではない旭は毎年行ってはいなかったが、遼人と星杏ちゃんはきっと行くのだろう。
「旭……」
「何?遼……」
「花火大会さ……。いや、何でもない。旭は人混み嫌いだもんな」
「あーうん。まぁ、遼は星杏ちゃんと行くんでしょ?」
「いや、星杏。今年は一緒に行きたい人がいるって言ってた」
「へぇー……」
だから、旭に浴衣をお願いしてきたのだと納得した。
旭は比較的に恋愛や色恋話に疎いが、星杏ちゃんだって好きな人ができる年頃なのだろう。
何だか寂しい気もするが、幼馴染である星杏ちゃんには心の底から幸せでいて欲しいと思う。
「心配?」
「別に……。あいつも年頃だし」
僅かに浮かない表情をしている遼人に問うてみると、首を左右に振っていた。表には出さないが兄として心配しているのは当然のことだった。現に旭だって少し心配である。
「遼は?遼は行って来ないの?」
「俺はいい。いっつも星杏の付き添いで行ってただけだし……」
「でも、遼だって年頃なんだからいるんじゃないの?」
普段、色恋の話などしてきたことはなかったが、何気なく問うてみると遼人の耳が赤くなっていく。
「居ないわけじゃないけど……」
「ほぉー兄妹揃って隅に置けないなー」
あんな自由気ままの遼人に好きな人が居ることに驚くと同時に、胸の内に靄がかかったような感覚を覚える。
寂しいとは違う気がするが、遼人が離れていってしまうような焦りのようなもの。
「そういう、旭はっ‼いないのかよ……好きな奴とか」
肘をついて口元に右手を当てて問うてくる遼人は未だに赤面している。恥ずかしさを引きずっているようだった。
「僕はそういうの疎いから」
誰かを『好きだ』とか『愛している』だとか考えたことなかった。もちろん、好きな人は沢山いる。
佐野夫婦だって、此処のラーメン屋のおばちゃん、おじちゃんだって……星杏ちゃんだって……。
もちろん……遼人も……。
でも、遼人が言っているのは違う種類のものなのだろう。
「だよな、旭はまだお子ちゃまだもんなー」
一瞬だけ眉を八の字した遼人は、ケタケタと小馬鹿にしたように笑いながら「そんな旭に旗つけてやるよ」と爪楊枝でできた日の丸の旗をチャーハンに差してきた。
これじゃ洋食屋のお子様ランチだ……。
仕事中だとしても忙しくない時は、遼人は旭の前で寛いでいることは日常茶飯事なので旭も気にせず麺を啜る。小母さんたちも容認しているようだった。
旭の目の前でスマホを弄る遼人に時折「遼、いる?」とチャーハンを蓮華で掬って渡してみたが「さっき食った」と断られてしまった。
ふと、店内の壁に貼られているポスターを見遣る。そこには花火のイラストに大きく『8月×日 19:00 開催場所:××河川敷』と書かれていた。
毎年恒例の花火大会。今年ももうそうな時期が来たらしい。縁日の日の後は決まって町の河川敷で花火大会がある。
人混みが得意ではない旭は毎年行ってはいなかったが、遼人と星杏ちゃんはきっと行くのだろう。
「旭……」
「何?遼……」
「花火大会さ……。いや、何でもない。旭は人混み嫌いだもんな」
「あーうん。まぁ、遼は星杏ちゃんと行くんでしょ?」
「いや、星杏。今年は一緒に行きたい人がいるって言ってた」
「へぇー……」
だから、旭に浴衣をお願いしてきたのだと納得した。
旭は比較的に恋愛や色恋話に疎いが、星杏ちゃんだって好きな人ができる年頃なのだろう。
何だか寂しい気もするが、幼馴染である星杏ちゃんには心の底から幸せでいて欲しいと思う。
「心配?」
「別に……。あいつも年頃だし」
僅かに浮かない表情をしている遼人に問うてみると、首を左右に振っていた。表には出さないが兄として心配しているのは当然のことだった。現に旭だって少し心配である。
「遼は?遼は行って来ないの?」
「俺はいい。いっつも星杏の付き添いで行ってただけだし……」
「でも、遼だって年頃なんだからいるんじゃないの?」
普段、色恋の話などしてきたことはなかったが、何気なく問うてみると遼人の耳が赤くなっていく。
「居ないわけじゃないけど……」
「ほぉー兄妹揃って隅に置けないなー」
あんな自由気ままの遼人に好きな人が居ることに驚くと同時に、胸の内に靄がかかったような感覚を覚える。
寂しいとは違う気がするが、遼人が離れていってしまうような焦りのようなもの。
「そういう、旭はっ‼いないのかよ……好きな奴とか」
肘をついて口元に右手を当てて問うてくる遼人は未だに赤面している。恥ずかしさを引きずっているようだった。
「僕はそういうの疎いから」
誰かを『好きだ』とか『愛している』だとか考えたことなかった。もちろん、好きな人は沢山いる。
佐野夫婦だって、此処のラーメン屋のおばちゃん、おじちゃんだって……星杏ちゃんだって……。
もちろん……遼人も……。
でも、遼人が言っているのは違う種類のものなのだろう。
「だよな、旭はまだお子ちゃまだもんなー」
一瞬だけ眉を八の字した遼人は、ケタケタと小馬鹿にしたように笑いながら「そんな旭に旗つけてやるよ」と爪楊枝でできた日の丸の旗をチャーハンに差してきた。
これじゃ洋食屋のお子様ランチだ……。
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