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ピンチのときの
ピンチのときの④
しおりを挟む「先生のクラスの吉岡千晃ですけど」
水澤を見た瞬間に先程のいつもの吉岡の柔らかい表情が消えた気がした。
眉間に皺を寄せ怒りを表しているような険しい表情·····そして鋭さのある声音。
「そう、何か用でも?」
ふいに吉岡に右腕を掴まれては力を込めて彼の方へと引き寄せられた。
それがまるで水澤から自分を遠ざけようとしているみたいで、不覚にもトクリと胸が鳴る。
初めてみる、吉岡に驚いた。
「優の事、もういいですか?昼休み終わるんで」
「あぁ·····まだ話は終わってなかったけど構わないよ」
「話ってなんですかね?赴任初日で生徒を呼び出す程話すことってあるんですかね?」
どこか他人行儀で冷たくて·····。
いつも見ない吉岡なだけに少し怖くもあった。
完全に何時もの笑顔は消えてるし、これを自分に向けられたらと思うと生きた心地がしないかもしれない。
「吉岡くんってやけにつっかかってくるね。
初日で既に嫌われちゃったかな?僕」
「別に、これが普通ですけど」
「もしかし隣の子、吉岡くんの恋人だったりした?だから僕が彼と関係を持ったことに·····」
「吉岡は別に関係ないんで、行くぞ」
これ以上は吉岡に聞かれたくない。例え偶然だとしても水澤と関係を持ってしまったことを知られて幻滅などされたくなかった。そう思ったら優作は吉岡の右手を掴んでは一刻も早く奴から離れようと走ってその場を去った。
「優っ!」
話を聞かれたくないのもあったが、吉岡と水澤を関わらせたくなかった。
彼は既に自分の素行を知っていたとしても迷惑は掛けられない。
これ以上、修羅場に巻き込んで今度こそ愛想をつかされたくなかった。
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