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風対水 アリスVSミライの戦いは?

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 アリスとミライ。 砂浜で迎え合った2人――――

「それで、ルールは?」とミライ。

「ルール? 魔法使いが2人で戦うんだ。参ったを言わせるか、行動不能にさせるか……基本はこの2つだろ?」

「基本じゃないわ。実質、ルールなしだろ? 野蛮が過ぎる!」

「そうかい? でも、アリスの方はやる気みてぇだぜ?」

「なに?」とミライは対戦相手を見る。

 これから危険な戦いが始めると言うのに、緊張した様子がない。

 軽く準備体操をしている。 まるで、これから、体を使った軽めの運動を始めるかのように――――

(いや、コイツにとっては本当にそのつもりなんだ。 俺と戦うなんて軽い運動……その感覚)

 人の心を読み解く能力に秀でているミライ。 アリスの心を読む。

(――――舐めてる。本当に魔法を使って俺と遊ぶ気でいやがる。なんだ、こいつは?)

 ピリピリとひりついていたミライは、さらに苛立ち始めた。それに輪をかけるように――――

「よろしくね! ミライくん」とアリスは微笑んでみせた。

「――――ッ!(先手必勝で行かせてもらう!)」

 勝負開始の合図もなく、ミライは奇襲の如く攻撃を開始した。

「集え! 我が邪水よ そして、聖なる者を貫くがいい……邪水閃光波!」

 ここは浜辺。豊潤な水を腕に吸収すると、すぐさまアリスに向かって水圧を放った。

「えい!」と軽いかけ声でアリスは、ミライの攻撃を防御する。

 彼女の周囲には、魔力を帯びた風が結界のように張り巡らされた。強烈な攻撃魔法であって、容易に貫くことはできない。しかし――――

「あのミゲールの直弟子だ。お前、才能があるんだろ? その歳で正攻法じゃ普通の魔法使いなら完封できるくらいに強いだろ? でも、俺は外法を考えて、外法で戦う手段を求めてきたんだ!」

 アリスの結界に付着したミライの水分。 すぐに、それが粘着性を有した物だとアリスも気づく。

「どうだ? 結界で身を守るなら、その結界ごと閉じ込めてやればいい。暗闇の中で食事もとらず、1日でも耐えれるかな?」

「いえ、別に……そこまで、結界を重要視していませんよ?」

 そう言うとアリスはあっさり結界を解いた。 結界が消えたことで、粘着性の液体は彼女の頭に振って行くも――――

「……今、魔法で掃除したのか? 見えなかった」

 ミライは、アリスから目を逸らしていない。しかし、気づかない間に彼が生み出した液体は消えていた。

(あの一瞬、風魔法で掃除しやがった。俺が見えない速度で風を操って来る?)

 その予想に寒気を感じるミライ。 それは、知覚できない速度で攻撃が襲ってくるという意味だから。

「それじゃ……卑怯って言わないよな?」とミライは、足元に水を呼び込む。

 それは海水だ。 地面を通じて、足元に穴を――――海に通じる穴を開通させた。つまり―――― 
  
「つまり、ここから俺は無限に等しい水が使えることになる。ここが戦いの場になったのは、運が悪かったな」

「え? 別に気にしてませんが?」

「――――ッ!」と今までのミライと違い、アリスの言葉に冷静になった。 

(あの女の言葉。挑発のように思えたが、実力に裏付けされた言葉だった。それじゃ――――物量を武器にした攻撃に対して、何かある?)
 
 迷い。

 冷静になれば、洞察力に優れたミライは心理戦には強い。

 考えれば、考えるほどにミライは強くなる。

(水と風……相性は、風が有利だが、覆せないほどの絶対的な差ではない。 しかし――――俺が武器として使用するつもりだったのは物量だ)

 物量。 水と風ならば……地面から海水を補給するよりも、風を、空気をぶつけた方が遥かに速い。

(純粋な物量勝負なら負け……だったら、量より質――――いや――――)

 再び、ミライの足元から腕に水が集中していく。

(重視するのは質量だ。一撃に貫通力を高めて――――放つ!)

「これよる振るうは、心の刃……

 我が腕に宿るは漆黒の闇。 

 ――――放て 邪業暗黒波動!」
 
鋭い一撃。 固めたアリスの防御壁を貫いた。 ――――少なくともそう見えた。

「――――あ! しまった。やり過ぎたかもしれない……」

 怪我をさせたかもしれない。場合によっては、それ以上のことも……ミライは慌てて駆け出した。

 しかし、魔法による結界。 その中には――――

「いない!? だれも?」

「すごいですね。私の結界を壊したのは、ミゲール先生以外にはいませんでした」

 その声はミライの頭上から聞こえた。 見上げればユラユラと飛んでいるアリス。

「――――っ!」と体を反転させて攻撃を放とうとするミライ。

 しかし、もう遅い。既にアリスは、いつでも攻撃が可能な体勢に入っている。

(――――だが、それでも俺は負け……)

 と、そこでミライは攻撃ができなくなった。 

 体が膠着した。それは、アリスの攻撃によるものではない。

 彼女も「?」と動きが止まったミライを不思議そうに眺めている。

 やがて、顔を赤く染めてミライは――――

「お、女の子が男の頭上を飛ぶもんじゃねぇ。見えてるんだよ……」と小さな声で呟いた。
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