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第42話 お母様『ほしなぎ るな』
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『VTuberのママ』
VTuberの体をデザインする絵師《イラストレーター》さんの事をママと呼ぶ。
業界の専門用語である。絵師さんが男性の場合でも、『ママ』という場合もある。
ただし、『ママ』と呼ばれる事を極端に嫌がる絵師さんもいるので注意が必要だ。
中には───
「仕事としてデザインを請負っただけ。VTuberと関わるつもりはない」
───と言い切る人までいる。 とは言え、VTuberも絵師の代表作としてなり得るわけで・・・・・・
普通のVTuberはママと仲が良い。 親子のように振る舞う関係性も少なくはない。
「ママ! ママ!」と美声で慕ってくれるVTuberを雑に扱えないのかもしれない。
では、俺───獅堂ライガのママは?
「はぁ~ 気が重いなぁ」と俺は待ち合わせ場所の喫茶店に来た。
おしゃれなカフェと言うよりは、格調が高い喫茶店って感じだ。
俺1人なら入るのを躊躇するほどに・・・・・・
中に入ると、客同士の話し声が耳に入った。
「ねぇねぇ、見て見て! あの女の子。可愛い!」
「本当だ。日本人じゃないわね。髪の色を抜いても、あんな絹みたいな金髪にならないでしょ」
「何歳くらいかな? 小学生? 中学生?」
その客だけではなかった。 他の客も、バイトらしき女の子ですら・・・・・・
喫茶店の奥に座っている少女に見惚れている。
あれが俺のママだ。 名前は───ほしなぎ るな。
小学生、中学生に間違われているが、本人は19歳・・・・・・たしか、今は仕事をしながら大学に通っているはずだ。
今から、あの席に行くの? マジで?
「───」と覚悟を決めて、彼女の前に立った。
「ご無沙汰しています、お母様」
ピキッ! 店内が凍りついたような音が聞こえた気がした。
え? バイトさん、スマホを取り出して、通報しようとしている?
「あっ! ライガくん、待ってたよ。 遅刻したから、ここはライガくんの奢りだよ!」
妙な緊張感が生まれていたが、彼女の言葉で緩みが生じた。
「あっ、お兄さんかな? 変質者かと思って構えちゃった」
「でも、あんまり似てない兄妹ね」
そんな声が聞こえてきた。 わりと失礼だぞ。
都会は他人に興味がないみたいな俗説は、どこに消えた?
「ほらほら、座って! 座って!」とポンポンとお母様は椅子を叩いた。
いや、横には座らないだろ。俺は対面の席に座った。
「むっ!」と何が気に入れなかったのかお母様は頬を膨らませて抗議をしてくる。
すでに机にはモーニングセットとホットケーキ。 2種類のパフェが食べ終わっていた。
「相変わらずの健啖家ですね」
「けんたんか? ライガくんは難しい言葉をしているね」
「大食いという意味ですよ」
「にゃに! ライガくん、ママをバカにしているのかな!」
こんな感じだ。 俺は、ほしなぎるなさんと有効な関係を築けている・・・・・・はずだ。
「お母様、今日は折り入ってのご相談があります」
「ん? 何かな? そんなにかしこまって。ママにできる事ならなんでも言いなさい」
彼女は、「お任せあれ!」と薄い胸板とどーんと叩いて見せた。
うん、言質は取れたな。 俺は机に頭を伏せて、
「実は、お母様に配信に出演をして欲しいのですが・・・・・・?」
チラッと視線を上げる。 彼女は狼狽していた。
「にゃ、にゃにを! 恥ずかしい・・・・・・でも、ライガくんの、可愛い息子のためなら!」
こうして、俺はお母様の出演許可を取る事に成功したのだった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「───というわけで、俺のお母様、ほしなぎるなさんに出演していただきます!」
今回の配信趣旨を説明した。
『イチャイチャしてて草』
『仲良き事は良い事』
『絶対、ライガのこと好き過ぎてるやろ』
ほぼ、初めての1対1コラボ(花峰ココロさんとのインタビューは除いて)
VTuber界のコラボ王、兎岸たましぃさんに、アドバイスを貰って練習した。
「さて、ほしなぎるなさんですが……今回は俺に合わせて、ライブ2D……配信用の体を作って貰いました」
『え! マジかよ!』
『ほしなぎるな、VTuberデビュー!?!?』
『超人気絵師さまやぞ!』
ライブ2D─── 俺がダンジョン配信用に使う3Dとは違い、顔の表情など平面的な動きに特化したVTuberのシステムと言ったらわかりやすいかな?
「それじゃ、お母様! ほしなぎお母様!」
「はい! ライガのためにVTuberデビューした神絵師 ほしなぎるなですよ!」
VTuberのモデルお披露目。 足元からゆっくりと焦らすように公開していくのがお約束だ。
お母様もその例に則って、靴からゆっくりと披露していく。
靴から、ドレスのスカートを……そうドレスだ。
クラシックなドレス。ゴシックロリータと言えば良いのだろうか?
それから、本人の髪を再現するように流れる金髪が見えて───
「はい、どうもみなさん! あらためまして、ほしなぎるなです!」
本人に似せたアバター。
それでいて、俺───獅堂ライガを意識しているのか、八重歯や金色の髪に赤のラインが入っていたりする。
『衣装代 ¥10000』
『るなママのデビュー記念スパチャ ¥10000』
『初スパチャ ¥5000』
コメントを見れば、真っ赤なスパチャが大量に流れて来る。
「いや、俺のチャンネルで投げても、お母様に入らないぜ!落ち着いてくれ!」
このスパチャは、俺が責任をもってお母様に渡すので安心してくれ!
───と言うわけで、VTuberになったお母様と対談バトル(?)と始める事になった。
VTuberの体をデザインする絵師《イラストレーター》さんの事をママと呼ぶ。
業界の専門用語である。絵師さんが男性の場合でも、『ママ』という場合もある。
ただし、『ママ』と呼ばれる事を極端に嫌がる絵師さんもいるので注意が必要だ。
中には───
「仕事としてデザインを請負っただけ。VTuberと関わるつもりはない」
───と言い切る人までいる。 とは言え、VTuberも絵師の代表作としてなり得るわけで・・・・・・
普通のVTuberはママと仲が良い。 親子のように振る舞う関係性も少なくはない。
「ママ! ママ!」と美声で慕ってくれるVTuberを雑に扱えないのかもしれない。
では、俺───獅堂ライガのママは?
「はぁ~ 気が重いなぁ」と俺は待ち合わせ場所の喫茶店に来た。
おしゃれなカフェと言うよりは、格調が高い喫茶店って感じだ。
俺1人なら入るのを躊躇するほどに・・・・・・
中に入ると、客同士の話し声が耳に入った。
「ねぇねぇ、見て見て! あの女の子。可愛い!」
「本当だ。日本人じゃないわね。髪の色を抜いても、あんな絹みたいな金髪にならないでしょ」
「何歳くらいかな? 小学生? 中学生?」
その客だけではなかった。 他の客も、バイトらしき女の子ですら・・・・・・
喫茶店の奥に座っている少女に見惚れている。
あれが俺のママだ。 名前は───ほしなぎ るな。
小学生、中学生に間違われているが、本人は19歳・・・・・・たしか、今は仕事をしながら大学に通っているはずだ。
今から、あの席に行くの? マジで?
「───」と覚悟を決めて、彼女の前に立った。
「ご無沙汰しています、お母様」
ピキッ! 店内が凍りついたような音が聞こえた気がした。
え? バイトさん、スマホを取り出して、通報しようとしている?
「あっ! ライガくん、待ってたよ。 遅刻したから、ここはライガくんの奢りだよ!」
妙な緊張感が生まれていたが、彼女の言葉で緩みが生じた。
「あっ、お兄さんかな? 変質者かと思って構えちゃった」
「でも、あんまり似てない兄妹ね」
そんな声が聞こえてきた。 わりと失礼だぞ。
都会は他人に興味がないみたいな俗説は、どこに消えた?
「ほらほら、座って! 座って!」とポンポンとお母様は椅子を叩いた。
いや、横には座らないだろ。俺は対面の席に座った。
「むっ!」と何が気に入れなかったのかお母様は頬を膨らませて抗議をしてくる。
すでに机にはモーニングセットとホットケーキ。 2種類のパフェが食べ終わっていた。
「相変わらずの健啖家ですね」
「けんたんか? ライガくんは難しい言葉をしているね」
「大食いという意味ですよ」
「にゃに! ライガくん、ママをバカにしているのかな!」
こんな感じだ。 俺は、ほしなぎるなさんと有効な関係を築けている・・・・・・はずだ。
「お母様、今日は折り入ってのご相談があります」
「ん? 何かな? そんなにかしこまって。ママにできる事ならなんでも言いなさい」
彼女は、「お任せあれ!」と薄い胸板とどーんと叩いて見せた。
うん、言質は取れたな。 俺は机に頭を伏せて、
「実は、お母様に配信に出演をして欲しいのですが・・・・・・?」
チラッと視線を上げる。 彼女は狼狽していた。
「にゃ、にゃにを! 恥ずかしい・・・・・・でも、ライガくんの、可愛い息子のためなら!」
こうして、俺はお母様の出演許可を取る事に成功したのだった。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
「───というわけで、俺のお母様、ほしなぎるなさんに出演していただきます!」
今回の配信趣旨を説明した。
『イチャイチャしてて草』
『仲良き事は良い事』
『絶対、ライガのこと好き過ぎてるやろ』
ほぼ、初めての1対1コラボ(花峰ココロさんとのインタビューは除いて)
VTuber界のコラボ王、兎岸たましぃさんに、アドバイスを貰って練習した。
「さて、ほしなぎるなさんですが……今回は俺に合わせて、ライブ2D……配信用の体を作って貰いました」
『え! マジかよ!』
『ほしなぎるな、VTuberデビュー!?!?』
『超人気絵師さまやぞ!』
ライブ2D─── 俺がダンジョン配信用に使う3Dとは違い、顔の表情など平面的な動きに特化したVTuberのシステムと言ったらわかりやすいかな?
「それじゃ、お母様! ほしなぎお母様!」
「はい! ライガのためにVTuberデビューした神絵師 ほしなぎるなですよ!」
VTuberのモデルお披露目。 足元からゆっくりと焦らすように公開していくのがお約束だ。
お母様もその例に則って、靴からゆっくりと披露していく。
靴から、ドレスのスカートを……そうドレスだ。
クラシックなドレス。ゴシックロリータと言えば良いのだろうか?
それから、本人の髪を再現するように流れる金髪が見えて───
「はい、どうもみなさん! あらためまして、ほしなぎるなです!」
本人に似せたアバター。
それでいて、俺───獅堂ライガを意識しているのか、八重歯や金色の髪に赤のラインが入っていたりする。
『衣装代 ¥10000』
『るなママのデビュー記念スパチャ ¥10000』
『初スパチャ ¥5000』
コメントを見れば、真っ赤なスパチャが大量に流れて来る。
「いや、俺のチャンネルで投げても、お母様に入らないぜ!落ち着いてくれ!」
このスパチャは、俺が責任をもってお母様に渡すので安心してくれ!
───と言うわけで、VTuberになったお母様と対談バトル(?)と始める事になった。
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