VTuberでもできるダンジョン配信!

チョーカ-

文字の大きさ
42 / 92

第42話 お母様『ほしなぎ るな』

しおりを挟む
 『VTuberのママ』 

 VTuberの体をデザインする絵師《イラストレーター》さんの事をママと呼ぶ。
 
 業界の専門用語である。絵師さんが男性の場合でも、『ママ』という場合もある。

 ただし、『ママ』と呼ばれる事を極端に嫌がる絵師さんもいるので注意が必要だ。

 中には───

「仕事としてデザインを請負っただけ。VTuberと関わるつもりはない」

 ───と言い切る人までいる。 とは言え、VTuberも絵師の代表作としてなり得るわけで・・・・・・   
 
 普通のVTuberはママと仲が良い。 親子のように振る舞う関係性も少なくはない。 

 「ママ! ママ!」と美声で慕ってくれるVTuberを雑に扱えないのかもしれない。 

 では、俺───獅堂ライガのママは?

「はぁ~ 気が重いなぁ」と俺は待ち合わせ場所の喫茶店に来た。

 おしゃれなカフェと言うよりは、格調が高い喫茶店って感じだ。 

 俺1人なら入るのを躊躇するほどに・・・・・・

 中に入ると、客同士の話し声が耳に入った。

「ねぇねぇ、見て見て! あの女の子。可愛い!」

「本当だ。日本人じゃないわね。髪の色を抜いても、あんな絹みたいな金髪にならないでしょ」

「何歳くらいかな? 小学生? 中学生?」

 その客だけではなかった。  他の客も、バイトらしき女の子ですら・・・・・・

 喫茶店の奥に座っている少女に見惚れている。

 あれが俺のママだ。 名前は───ほしなぎ るな。

 小学生、中学生に間違われているが、本人は19歳・・・・・・たしか、今は仕事をしながら大学に通っているはずだ。
 
 今から、あの席に行くの? マジで?

 「───」と覚悟を決めて、彼女の前に立った。 

「ご無沙汰しています、お母様」 

 ピキッ! 店内が凍りついたような音が聞こえた気がした。

 え? バイトさん、スマホを取り出して、通報しようとしている?

「あっ! ライガくん、待ってたよ。 遅刻したから、ここはライガくんの奢りだよ!」

 妙な緊張感が生まれていたが、彼女の言葉で緩みが生じた。

「あっ、お兄さんかな? 変質者かと思って構えちゃった」

「でも、あんまり似てない兄妹ね」

 そんな声が聞こえてきた。 わりと失礼だぞ。

 都会は他人に興味がないみたいな俗説は、どこに消えた?

「ほらほら、座って! 座って!」とポンポンとお母様は椅子を叩いた。

 いや、横には座らないだろ。俺は対面の席に座った。

「むっ!」と何が気に入れなかったのかお母様は頬を膨らませて抗議をしてくる。

 すでに机にはモーニングセットとホットケーキ。 2種類のパフェが食べ終わっていた。

「相変わらずの健啖家ですね」

「けんたんか? ライガくんは難しい言葉をしているね」 

「大食いという意味ですよ」

「にゃに! ライガくん、ママをバカにしているのかな!」

 こんな感じだ。 俺は、ほしなぎるなさんと有効な関係を築けている・・・・・・はずだ。

「お母様、今日は折り入ってのご相談があります」

「ん? 何かな? そんなにかしこまって。ママにできる事ならなんでも言いなさい」

 彼女は、「お任せあれ!」と薄い胸板とどーんと叩いて見せた。

 うん、言質は取れたな。  俺は机に頭を伏せて、 

「実は、お母様に配信に出演をして欲しいのですが・・・・・・?」

 チラッと視線を上げる。 彼女は狼狽していた。

「にゃ、にゃにを! 恥ずかしい・・・・・・でも、ライガくんの、可愛い息子のためなら!」

 こうして、俺はお母様の出演許可を取る事に成功したのだった。   

・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・・

「───というわけで、俺のお母様、ほしなぎるなさんに出演していただきます!」

 今回の配信趣旨を説明した。

『イチャイチャしてて草』

『仲良き事は良い事』

『絶対、ライガのこと好き過ぎてるやろ』

 ほぼ、初めての1対1コラボ(花峰ココロさんとのインタビューは除いて)

 VTuber界のコラボ王、兎岸たましぃさんに、アドバイスを貰って練習した。

「さて、ほしなぎるなさんですが……今回は俺に合わせて、ライブ2D……配信用の体を作って貰いました」

『え! マジかよ!』

『ほしなぎるな、VTuberデビュー!?!?』

『超人気絵師さまやぞ!』

 ライブ2D─── 俺がダンジョン配信用に使う3Dとは違い、顔の表情など平面的な動きに特化したVTuberのシステムと言ったらわかりやすいかな?

「それじゃ、お母様! ほしなぎお母様!」

「はい! ライガのためにVTuberデビューした神絵師 ほしなぎるなですよ!」

 VTuberのモデルお披露目。 足元からゆっくりと焦らすように公開していくのがお約束だ。

 お母様もその例に則って、靴からゆっくりと披露していく。

 靴から、ドレスのスカートを……そうドレスだ。 

 クラシックなドレス。ゴシックロリータと言えば良いのだろうか?

 それから、本人の髪を再現するように流れる金髪が見えて───

「はい、どうもみなさん! あらためまして、ほしなぎるなです!」

 本人に似せたアバター。 

 それでいて、俺───獅堂ライガを意識しているのか、八重歯や金色の髪に赤のラインが入っていたりする。

『衣装代 ¥10000』

『るなママのデビュー記念スパチャ ¥10000』

『初スパチャ ¥5000』

 コメントを見れば、真っ赤なスパチャが大量に流れて来る。

「いや、俺のチャンネルで投げても、お母様に入らないぜ!落ち着いてくれ!」

 このスパチャは、俺が責任をもってお母様に渡すので安心してくれ!

 ───と言うわけで、VTuberになったお母様と対談バトル(?)と始める事になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

処理中です...