追放女騎士 地上最強の料理人と旅をする(宗教上の理由で追放されました)

チョーカ-

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第18話 『黒龍』 勇者たちの希望と絶望

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 一夜明けた。 いや、正確に言えばこのダンジョンに夜も朝もなかった。

 1日中、昼間のように明るい。光源は何か知らない。

 おかげで寝苦しかった反面、モンスターが闇夜に紛れて襲ってくるという事もなかった。


「さて、どうだ? リューナ」

 離れた場所にいるリューナに念話で呼び掛ける。

 念話というのは魔法の1種だ。 離れた相手と魔力化した言葉を飛ばし合って会話をすることができる。 すぐに彼女からの返事が聞こえてくる。

「はぁい! こっちはリューナ。 階層主に変化はなし。外に出る様子はないスね!」

 基本的に階層主がダンジョンの内部を徘徊することはない。 

 だが、安心はできない。

「油断するなよ。今回のターゲットはドラゴンだ。 いつ、部屋を飛びだし、ダンジョンを飛びだし、外の町を襲いに行くかもしれないぞ」

 俺たちの目標は────黒龍《ブラックドラゴン》 

 そうドラゴンだ。 ドラゴンは自由だ。 階層主と枠組みに囚われない。

 気まぐれに、村を、町を、城を襲い、人間を食らう。

 だからこそ、邪悪な存在とされる。 それがドラゴンだ。

「────今日、ここで仕留めるぞ!」と俺は静かに宣言した。

「エリスは召喚魔法を使え! リアとミカヅキは俺の強化を!」

「わかったわ」とエリスは地面に召喚魔法を浮かべる。

 リザードマンの召喚魔法だ。 エリスは神妙な顔で集中力を高めている。 

 時おり、召喚に成功する巨大な個体。 しかし、それを高確率で呼び寄せるコツを掴んだと豪語していた。

 それを今────発揮しようとしている。

「まずは1ぴき」と彼女の言葉通りに巨大な影が浮き出てくる。

 成功だ。 巨大リザードマンを最初に引いた。

「次に2匹め!」

 新たに浮かび上がった魔方陣から、続けて巨大な影が生まれる。

 その姿に俺も、力が入る。 

「連続成功・・・・・・これは、本当に3匹目もあり得るぞ」

「もちろん、そのつもり! これで最後!」

 最後の影も巨大! 3連続、巨大リザードマンの召喚に成功してみせたエリス。

 まるで、戦闘の後のように大きな汗が落ちていく。

「キリツ神父さん、悪いけど回復薬《ポーション》をくださらない?」

「・・・・・・はい、実に見事でした」

「いいえ、まだこれからよ!」と彼女は回復薬を飲み干すと、再び魔力を展開させていく。

「おぉ!」とキリツ神父は感動したように驚きと称賛を漏らした。 

「これは噂に聞いていた彼女自身が生み出したと言う固有の召喚魔法ですかな!」

 キリツ神父の言う通りだ。 ここからは彼女の固有魔法《オリジナル》。

 そして、召喚するための詠唱が始まる。

 「喝采を! そして刮目せよ! 今から呼び出すは、火と炎の化身 栄光を! そして勝利を────」

 炎魔神《イフリート》

 召喚と同時に、周囲には爆音と業火によって大地が揺さぶられる。 

 エリスが口にした詠唱の通りだ。 魔方陣から出現した存在は、まさに火と炎の化身。

 人の形をした炎の魔神。 それは、巨大リザードマンと並べても───人間の倍であるはずの彼らと並べても────遥かにデカイ。

 その存在に階層主も気づいたのだろう。 リューナから緊急の念話が飛んで来る。 

「階層主の部屋────開きます」

「────よし! エリス! まずは先手はこちらがいただく。ぶっとばせ!」

 俺の合図に受けてエリスは、巨大リザードマンだちと共に炎魔神に命令を出した。

「私の魔力を贄に捧げるわ。だから、お願い・・・・・・あれを倒して!」

 巨大リザードマンが駆け出す。 しかし、それを追い抜いて──── 

 扉が開き終わるよりも早く────

 黒龍が姿を現すよりも早く───

 炎魔神の拳が、扉ごと──── その扉の背後にいる黒龍をぶん殴った。

 ・・・

 ・・・・・・

 ・・・・・・・・・

 『黒龍《ブラックドラゴン》』

 初めて見る、その姿は普通のドラゴンと変わらない。

 すなわち、巨大で、禍々しく、簡単に人を殺しそうな形状をしている。

 しかし、そのドラゴンは、ダメージを受けて不様に倒れているではないか。

「これは────勝てる! 勝てるぞ!」

 俺は、この時点で勝利を確信していた。 

「ドラゴン? 最強の幻想種? 恐れるに足りない!」 

 いつも通り、俺は司令官として仲間に指示を飛ばす。

「みんなは、取り巻きの召喚を警戒。エリスの守護に集中してくれ! リューナは後衛の位置から弓で攻撃を────」

「────俺は前にいく!」

 俺は前にと飛ぶ。 黒龍《ブラックドラゴン》は炎魔神《イフリート》との力比べ。 
 
 互いに均衡しているように見えるが、恐いもの知らずのリザードマンたちが黒龍《ブラックドラゴン》の足元を狙って剣を振るっている。

「さすがに凄いぞ。ドラゴンの鱗を切り裂いて、ダメージを与えている。俺も────」

 空中で抜刀。 抜き身になった聖剣を掲げると同時に詠唱を開始する。

「目覚めよ────聖剣。 我らが目前に望むのは灰塵のみ。ならば、その煌めきを示せ────聖剣エックスカリバー!」

 因縁のミノタウロスを倒した一撃。 その時と同じで、輝きが黒龍を襲う。

 聖なる閃光が、斬撃に代わる。 堅固なはずの鱗、それも黒龍の頭部を切り裂いた。

  勝機! 戦いが始まって、まだ僅かな時間しか経過していない。 

 すでに何度、勝機を感じ取ったか。 もう負ける気はしない。

 だが、その直後だった。

 黒龍が地を踏み鳴らす。それと同時に、大地が揺れた。

 激しい地震。 巨大リザードマンも炎魔神も攻撃の手が止まる。

「エリス、命令を! 攻撃を続けさせろ!」

 だが、その指示も間に合わなかった。

 黒龍の鋭い目が輝く。黒龍は隙を見逃さなかったのだ。

 力で抑えつけられていた炎魔神が地震により動きを乱す。 黒龍への拘束が緩む。

 黒龍の巨大な爪が炎魔神の首元を正確に捕らえ、一撃で撥ね飛ばした。

 炎魔神の首が落ち、炎が霧散して消滅した。さらに口を大きく開く。

 その動きモーションから、何が来るか想像がついた。

 「龍炎《ブレス》だ! 龍炎が来るぞ! リアは防御壁を張ってくれ!」

 黒龍は灼熱の炎を吐き出す。その炎がリザードマンたちを巻き込み、一瞬で彼らを蹴散らした。

「くっ! 一発でリザードマンたちが全滅を。これが黒龍《ブラックドラゴン》の力か!」

 しかも、その炎は後方にいるリアたちまで迫って行った。

「リア! 耐えろ!」

「はい!」と彼女は魔法による防御壁を張った。

 その直後、彼女たちは炎の津波に飲み込まれて見えなくなったが───

「こちらは全員無事です……なんとか」とリアから念話が届いた。

 僅かな安堵。 しかし、確かな劣勢。 

 そんな中、俺は黒龍の鋭い瞳と視線を交わした。

「笑っている……」

 俺にはそう感じられた。黒龍は戦いの中で勝利を確信したかのように、嘲笑のような雰囲気を漂わせていた。

 「上等だ! まだ、終わってない……! ここからが本当の俺たちだ!」

 その叫びに合わせて、黒い影が黒龍に接近する。 白刃が黒龍を切り裂いて行く。

 後衛に備えていたミカヅチが、前衛に参加。

 さらに俺の体を防御壁が包み、守られる。 リアも前に出て本格的な支援を始めた。

「エリス、リューナ、援護を頼む!」

 俺の指示を受け、エリスが渾身の魔法を唱える。

「雷よ! 炎よ! 同調せよ! 魔力の奔流を受けよ────雷炎《サンダーボルト》!」

 魔力によって生まれた赤い雷。 それは黒龍の顔面を直撃した。

 「グオォォォォッ!」と黒龍が叫ぶ。 明らかに痛みと熱により怯み始めた。

「今だ! リューナ!」

「了解ッ! これは特別級スよ!」

 その言葉通り、彼女は通常の弓とは違う武器を手にしたいた。

 彼女の切り札である巨大な弩──── 風神の弩ゴッド・オブ・ザ・ゲイル

 リューナが正確な矢を放ち、黒龍の片目を貫く。

 「グオォォォォォォッッッ!」と断末魔のような悲鳴が上がる。

「その隙────突かせてもらう! これで終わりだ!」

 聖剣を握りしめて黒龍の喉元に飛び込んだ。

 無論、狙うはドラゴンの弱点。 喉元にあるという逆鱗。

 「唸れ! 聖剣!」とかけ声と共に一撃が黒龍の喉を貫いた。

 咆哮をあげた黒龍は、ついにその巨体を崩れさせた。

「やった……! 勝った、あの黒龍に!」

 仲間たちの間に安堵の声が広がる。 

 あぁ、そうだ。俺たちは勝ったのだ。 そして、ここからが勇者である俺の再出発───

 勝利の余韻に浸っている所だった。

「ねぇ……あれって、ねぇ!」とリューナが悲鳴のような声を上げた。

 何が起きたのか? 彼女を目で追う。

 すると、そこには信じられない攻撃が広がっていた。
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