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よろしくお願いします。だめそうだったら逃げてください。
――――――――――――――――――――
「あーーーー……あ……あああぁあ……ぁあーーーー」
呆けたような声が聞こえる。荒く甘い吐息と粘着音。ギシギシと寝具の軋む音。腹を中から押し広げる圧迫感と、全身に何度も強く響く快楽の波。恍惚と涙に滲む視界の端で、橙色の灯りがゆらゆら揺れている。ふと、そんなことに意識が向いた。はて、と内心首を傾げて、だけどそれも絶え間無く襲う快に流されていく。
「あぅ、ぁ、あ、っぁあ……」
はふ、と息をして、蕩けた声が自分の喉から出ているのに気が付いた。あれ、と思って、それも内臓を抉るような苦しい快感で塗られていく。目の前にいるのが誰かも分からない。ただ、見覚えの……ここで暮らしている、という意味ではなく……見覚えのあるような、寝具からの景色。自分に覆い被さる、美しい赤毛の男性。
「んぁっ……ァ、う、にぃさ……?」
覚えがある。ちょっと固くて跳ねた赤毛に、きゅっと険に眇められた眉根。滲んだ視界でも分かる、強い緑の瞳。大きく舌打ちが聞こえて、腹の中の物が強く打ち付けられた。ぎゅうと腹の中に力が入り、勝手に腰が浮かぶ。
「ッぁああ!」
「てめーと兄弟なんて冗談じゃねぇ」
低くてキツい声。覚えがある。自分はこれを覚えている。イヤホン越しで聞いた声と、液晶越しに見た景色。
「あー……出る」
これ、昔めっちゃやってたエロゲのベッドシーンだ。
じんわりと腹の中にあたたかな物が広がる。あ、と思った途端、腹を押し広げていた物がずるりと抜けていく。散々に突き上げられた体はそれにすらびくりと反応して、絶頂から下りていくのさえ緩慢だった。中から力が抜けないのに、四肢は震えるだけで動いてくれない。さっさと身なりを整えた相手は、ただこちらを不快げに見下ろしただけで踵を返し、靴を鳴らして部屋を出て行った。
しん、と静かになった部屋は、先ほどまでの淫臭に満ちてねばつくようだった。なんとか動くようになった体を引きずって、どろどろに汚れたシーツから起き上がる。近くに設置された姿見に、自分の姿が写っていた。ああ、見覚えがある。画面の向こうで散々見た姿だ。
「BLの方かよ……」
あからさまに、そういうプレイ用として設置された鏡を見つめて、思わず漏れた声は掠れていた。散々喘がされた後だから、仕方ないと言えば仕方ない。喉が渇いたし、頭も腰も痛い。身動ぎするたびに、出された物が中から漏れてくる。考えたいことは山とあれど、一旦この現状をどうにかしなければなるまい。幸いと言うべきか、裏ルートまで何度もやり込んだゲームの間取りは覚えている。のろのろとシャワーを浴び、事後処理を済ませてシーツを洗濯籠に放り込む。きっちりとベッドメイクする余裕はなく、しわくちゃのまま適当に広げて終わらせた。
「……あ、辞典あった」
眠い目を擦ってサイドテーブルを漁り、分厚い本を見つける。これがあるなら後はいいやと、一旦それだけ持ってシーツに飛び込んだ。
自分が数年前に散々やり込んだ18禁ゲーム、『肉欲の館』。ありがちな剣と魔法の世界が舞台のエロゲーで、ダンジョンへ潜っていろんな素材を集めつつ、主人公の所有する屋敷を改築装飾したり、所有する奴隷や召使・仲間たちを屋敷に配置して色々エロい事ができるしエロでいろんな恩恵が得られる、というゲームだった。主体にR要素が据えられているだけあってエロ方面の機能が充実しており、基本パックで男女その他人外を含めた全ての組み合わせに対応してあるという、いろんな性癖に優しい仕様。メインストーリーは短いがしっかりしていて、その方面でも人気が高かったと記憶している。
自分はどうやら、そのゲームのチュートリアル的存在になってしまっているらしい。しかもBLモードの初期キャラ。自分がプレイしていた時は特にそれが好きというわけでもなく、ゲーム自体に惚れて全てのモードに手を出していた。何の因果でこのモードを実体験しているのかは全く分からない。先程の男にも見覚えがあり、初めての部屋でも困惑せず使用出来ている。万が一の可能性として盛大に酔っ払って彼とラブホに入った可能性もなくはない、が、それにしたってこれだけ合致するのは有り得ないと思う。予想通りの所に予想通りのアイテムも見つけてしまったことだし……小説やら漫画やらでありがちな展開を認めるしか無かろう。
「どうしよう。帰りたい」
チュートリアル初期キャラのステータスなんて最低値も良いところだ。自分を使うということは、さっきのキャラだって高レベルというわけではあるまい。ダンジョンの1、2階層をやっとこ探索できる、そんな程度の能力値しかないはずだ。それよりも低い、己の能力値。わりとあっさり多種多様なイベントでゲームオーバーになるこのゲームで、それはかなりいただけない。
ついでに言うなら、何がどうなって今ここにいるのかは分からないが、自己認識としての自分は、あまり掘られて喜ぶ質ではない。散々やり込んだ知識を活用して、どうにか下克上を目指したいものだ。
「とりあえず……あいつが帰ってくる前にアイテム回収したいな」
今にも寝落ちそうに疲れているが、休めるのは随分先になりそうだった。
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「あーーーー……あ……あああぁあ……ぁあーーーー」
呆けたような声が聞こえる。荒く甘い吐息と粘着音。ギシギシと寝具の軋む音。腹を中から押し広げる圧迫感と、全身に何度も強く響く快楽の波。恍惚と涙に滲む視界の端で、橙色の灯りがゆらゆら揺れている。ふと、そんなことに意識が向いた。はて、と内心首を傾げて、だけどそれも絶え間無く襲う快に流されていく。
「あぅ、ぁ、あ、っぁあ……」
はふ、と息をして、蕩けた声が自分の喉から出ているのに気が付いた。あれ、と思って、それも内臓を抉るような苦しい快感で塗られていく。目の前にいるのが誰かも分からない。ただ、見覚えの……ここで暮らしている、という意味ではなく……見覚えのあるような、寝具からの景色。自分に覆い被さる、美しい赤毛の男性。
「んぁっ……ァ、う、にぃさ……?」
覚えがある。ちょっと固くて跳ねた赤毛に、きゅっと険に眇められた眉根。滲んだ視界でも分かる、強い緑の瞳。大きく舌打ちが聞こえて、腹の中の物が強く打ち付けられた。ぎゅうと腹の中に力が入り、勝手に腰が浮かぶ。
「ッぁああ!」
「てめーと兄弟なんて冗談じゃねぇ」
低くてキツい声。覚えがある。自分はこれを覚えている。イヤホン越しで聞いた声と、液晶越しに見た景色。
「あー……出る」
これ、昔めっちゃやってたエロゲのベッドシーンだ。
じんわりと腹の中にあたたかな物が広がる。あ、と思った途端、腹を押し広げていた物がずるりと抜けていく。散々に突き上げられた体はそれにすらびくりと反応して、絶頂から下りていくのさえ緩慢だった。中から力が抜けないのに、四肢は震えるだけで動いてくれない。さっさと身なりを整えた相手は、ただこちらを不快げに見下ろしただけで踵を返し、靴を鳴らして部屋を出て行った。
しん、と静かになった部屋は、先ほどまでの淫臭に満ちてねばつくようだった。なんとか動くようになった体を引きずって、どろどろに汚れたシーツから起き上がる。近くに設置された姿見に、自分の姿が写っていた。ああ、見覚えがある。画面の向こうで散々見た姿だ。
「BLの方かよ……」
あからさまに、そういうプレイ用として設置された鏡を見つめて、思わず漏れた声は掠れていた。散々喘がされた後だから、仕方ないと言えば仕方ない。喉が渇いたし、頭も腰も痛い。身動ぎするたびに、出された物が中から漏れてくる。考えたいことは山とあれど、一旦この現状をどうにかしなければなるまい。幸いと言うべきか、裏ルートまで何度もやり込んだゲームの間取りは覚えている。のろのろとシャワーを浴び、事後処理を済ませてシーツを洗濯籠に放り込む。きっちりとベッドメイクする余裕はなく、しわくちゃのまま適当に広げて終わらせた。
「……あ、辞典あった」
眠い目を擦ってサイドテーブルを漁り、分厚い本を見つける。これがあるなら後はいいやと、一旦それだけ持ってシーツに飛び込んだ。
自分が数年前に散々やり込んだ18禁ゲーム、『肉欲の館』。ありがちな剣と魔法の世界が舞台のエロゲーで、ダンジョンへ潜っていろんな素材を集めつつ、主人公の所有する屋敷を改築装飾したり、所有する奴隷や召使・仲間たちを屋敷に配置して色々エロい事ができるしエロでいろんな恩恵が得られる、というゲームだった。主体にR要素が据えられているだけあってエロ方面の機能が充実しており、基本パックで男女その他人外を含めた全ての組み合わせに対応してあるという、いろんな性癖に優しい仕様。メインストーリーは短いがしっかりしていて、その方面でも人気が高かったと記憶している。
自分はどうやら、そのゲームのチュートリアル的存在になってしまっているらしい。しかもBLモードの初期キャラ。自分がプレイしていた時は特にそれが好きというわけでもなく、ゲーム自体に惚れて全てのモードに手を出していた。何の因果でこのモードを実体験しているのかは全く分からない。先程の男にも見覚えがあり、初めての部屋でも困惑せず使用出来ている。万が一の可能性として盛大に酔っ払って彼とラブホに入った可能性もなくはない、が、それにしたってこれだけ合致するのは有り得ないと思う。予想通りの所に予想通りのアイテムも見つけてしまったことだし……小説やら漫画やらでありがちな展開を認めるしか無かろう。
「どうしよう。帰りたい」
チュートリアル初期キャラのステータスなんて最低値も良いところだ。自分を使うということは、さっきのキャラだって高レベルというわけではあるまい。ダンジョンの1、2階層をやっとこ探索できる、そんな程度の能力値しかないはずだ。それよりも低い、己の能力値。わりとあっさり多種多様なイベントでゲームオーバーになるこのゲームで、それはかなりいただけない。
ついでに言うなら、何がどうなって今ここにいるのかは分からないが、自己認識としての自分は、あまり掘られて喜ぶ質ではない。散々やり込んだ知識を活用して、どうにか下克上を目指したいものだ。
「とりあえず……あいつが帰ってくる前にアイテム回収したいな」
今にも寝落ちそうに疲れているが、休めるのは随分先になりそうだった。
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