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52、秘密基地のこと
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たいへんに間が空きまして申し訳ないです。これからもゆるっと嫌にならない程度に頑張っていきたいと思います。
白ネコたちの本拠点へ招かれた回です。
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トルクの案内に従ってしばらく歩き、私には見覚えのある景色が見えてきた。皆さまには珍しい景色だろう。恐ろし気に、だけどそわそわと時折よそ見をしている弟妹さまたちはどこか浮かれて見える。ほぼ初めての遠出だし、やっと監禁から抜け出せたのだし、仕方ないっちゃ仕方ないか。出歩かれるとちょっとどころじゃなく困るので、勝手に遊びに行かないよう後で色々話し合っておかなければ。
「ここです。えっと……こっから入るんですけど」
拠点へ案内してくれたトルクが不安げな顔をしている。コンラッド様たち、地味な色した私と違っていかにも貴族ですって配色と容姿だもんな……廃屋に廃材と瓦礫で補強された拠点に案内して良いものかと不安に思うのは仕方がない。
「とりあえず見られる前に隠れてしまいましょう。皆さま、どうぞ」
「ん。お邪魔します」
改めてフードを引き下げたコンラッド様が、急ぎ足に入り口をくぐって中へ通される。少々不安げに家屋を見ながら、弟妹さまたちもそれに続いた。トルクが後ろにいる私とディーンさんを振り返る。私がディーンさんへ声をかけようと口を開いたのと同時に、バツが悪そうな顔をした大人はぼそりと呟いた。
「俺そのへんで待ってっから。……不安ならうろつかないでここでいるし」
「ああー……トルク、どっちがいい?」
トルクたち「白ネコ」は、そもそも子供だけの集まりだ。拠点も全てが子供仕様だし、ある程度成長して拠点にサイズが合わなくなれば、別の寝床を見つけて独り立ちするのが暗黙の了解らしい。そもそも私が来る前はそこまで組織的な集まりでもなかったようで、そのあたりのルールはあやふやだが。言い方は悪いが、死ぬ人数が減ったことで長いこと組織にいる人物が増えた結果の規律整備なのだろう。
初めから大人が入るために出来ていないこの拠点に、いくら私の連れとはいえ怪しげなおじさんを入れるのは遠慮したいに違いない。
「んん……どっか……いや、ここで待ってろよおっさん。物乞いの真似事くらい出来んだろ、あんた」
「おう」
私には分からないが、彼らには彼らなりに通じるものがあるらしい。ディーンさんはそのままそこで待機してくれるようだ。それで良いなら良いのだろうと、先に拠点内へ。入口をくぐった途端、不安げにこちらを見るコンラッド様たちの視線が向いた。ついさっきまでいた廃砦より酷い拠点だというか、ほぼゴミの山だもんな。
「えっと、一応こっち来るってのは聞いたから、出来るだけ綺麗な寝床とか用意したんですけど……」
トルク達も対応を迷っているようだ。双方を知っているのは私しかいない、気まずげな空気が流れるのは仕方なかろう。慌てて間に入ってお互いを紹介する。夜中だったが、寝ていた子供たちも数人起きてきてしまった。明らかに身内と毛色が違う4人だから、遠巻きに眺めている。
「ありがとう、助かるよ。しばらく追手が無いか警戒してくれ。皆さま、まずそこで手洗いとうがいをしましょうね。そしたら少し休ませてもらいましょう」
表に自称暗殺者がいるから大丈夫だろうが、用心するにこしたことはない。土地勘のある白ネコたちに警備を頼み、私が来た時と同じルーティンをコンラッド様たちにやってもらう。寝床を用意してくれているなら、疲れているだろう弟妹様たちには早く寝てもらった方が良いかもしれないな。
「ミーシャ、寝床案内してくれる? 荷物に毛布入れてあるから置かせて。あと現金に変えられる物いくらか持ってるからユーリかルカか……、誰でも良いけど持ってくの手伝って」
元気良く返される了承の言葉に、少々気分が良くなった。いつまでここにいることになるかは分からないけれど、先立つものがあるに越したことはない。不安げな顔をしつついうことを聞いてくれる白ネコたちと、私が勝手を分かっていると知って少し緊張の緩んだコンラッド様たち。悪いがコンラッド様と年長組は夜更かしに付き合って貰おう。
明日から何をするべきかと計画を練りながら、最初の仕事として、まずは今日の寝床を整えることにした。
白ネコたちの本拠点へ招かれた回です。
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トルクの案内に従ってしばらく歩き、私には見覚えのある景色が見えてきた。皆さまには珍しい景色だろう。恐ろし気に、だけどそわそわと時折よそ見をしている弟妹さまたちはどこか浮かれて見える。ほぼ初めての遠出だし、やっと監禁から抜け出せたのだし、仕方ないっちゃ仕方ないか。出歩かれるとちょっとどころじゃなく困るので、勝手に遊びに行かないよう後で色々話し合っておかなければ。
「ここです。えっと……こっから入るんですけど」
拠点へ案内してくれたトルクが不安げな顔をしている。コンラッド様たち、地味な色した私と違っていかにも貴族ですって配色と容姿だもんな……廃屋に廃材と瓦礫で補強された拠点に案内して良いものかと不安に思うのは仕方がない。
「とりあえず見られる前に隠れてしまいましょう。皆さま、どうぞ」
「ん。お邪魔します」
改めてフードを引き下げたコンラッド様が、急ぎ足に入り口をくぐって中へ通される。少々不安げに家屋を見ながら、弟妹さまたちもそれに続いた。トルクが後ろにいる私とディーンさんを振り返る。私がディーンさんへ声をかけようと口を開いたのと同時に、バツが悪そうな顔をした大人はぼそりと呟いた。
「俺そのへんで待ってっから。……不安ならうろつかないでここでいるし」
「ああー……トルク、どっちがいい?」
トルクたち「白ネコ」は、そもそも子供だけの集まりだ。拠点も全てが子供仕様だし、ある程度成長して拠点にサイズが合わなくなれば、別の寝床を見つけて独り立ちするのが暗黙の了解らしい。そもそも私が来る前はそこまで組織的な集まりでもなかったようで、そのあたりのルールはあやふやだが。言い方は悪いが、死ぬ人数が減ったことで長いこと組織にいる人物が増えた結果の規律整備なのだろう。
初めから大人が入るために出来ていないこの拠点に、いくら私の連れとはいえ怪しげなおじさんを入れるのは遠慮したいに違いない。
「んん……どっか……いや、ここで待ってろよおっさん。物乞いの真似事くらい出来んだろ、あんた」
「おう」
私には分からないが、彼らには彼らなりに通じるものがあるらしい。ディーンさんはそのままそこで待機してくれるようだ。それで良いなら良いのだろうと、先に拠点内へ。入口をくぐった途端、不安げにこちらを見るコンラッド様たちの視線が向いた。ついさっきまでいた廃砦より酷い拠点だというか、ほぼゴミの山だもんな。
「えっと、一応こっち来るってのは聞いたから、出来るだけ綺麗な寝床とか用意したんですけど……」
トルク達も対応を迷っているようだ。双方を知っているのは私しかいない、気まずげな空気が流れるのは仕方なかろう。慌てて間に入ってお互いを紹介する。夜中だったが、寝ていた子供たちも数人起きてきてしまった。明らかに身内と毛色が違う4人だから、遠巻きに眺めている。
「ありがとう、助かるよ。しばらく追手が無いか警戒してくれ。皆さま、まずそこで手洗いとうがいをしましょうね。そしたら少し休ませてもらいましょう」
表に自称暗殺者がいるから大丈夫だろうが、用心するにこしたことはない。土地勘のある白ネコたちに警備を頼み、私が来た時と同じルーティンをコンラッド様たちにやってもらう。寝床を用意してくれているなら、疲れているだろう弟妹様たちには早く寝てもらった方が良いかもしれないな。
「ミーシャ、寝床案内してくれる? 荷物に毛布入れてあるから置かせて。あと現金に変えられる物いくらか持ってるからユーリかルカか……、誰でも良いけど持ってくの手伝って」
元気良く返される了承の言葉に、少々気分が良くなった。いつまでここにいることになるかは分からないけれど、先立つものがあるに越したことはない。不安げな顔をしつついうことを聞いてくれる白ネコたちと、私が勝手を分かっていると知って少し緊張の緩んだコンラッド様たち。悪いがコンラッド様と年長組は夜更かしに付き合って貰おう。
明日から何をするべきかと計画を練りながら、最初の仕事として、まずは今日の寝床を整えることにした。
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