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第8話
8-6+
しおりを挟む表面をわずかにこすりあわせ、吐息を食むような子供騙しのくちづけ。
「っ……」
甘い味がふんわりと口腔にひろがり、無理やりに抑え込んでいた慾がはじける。
無意識のうちに肌香があふれていくのを感じた。縋るようにもう一度目の前のくちびるに噛みつけば、翠玲がほんのりと微笑を漏らす。
「いけませんよ、そんな可愛らしいことをなさっては」
咎めるような口調なのに、声音には甘さがにじんでいた。
視線を搦めれば、深くやわらかなくちづけを返される。翠玲の指が髪の奥へ差し入れられ、呼吸を紡ぐ合間に幾度もくちびるを食まれた。舌先が口蓋をくすぐり、ひくつく喉をじゃらすかのようにやさしく吸われる。
「ぅん、ん……ぁ」
くちゅくちゅとあやすように粘膜を愛撫され、躰から力が抜けていく。
褥にゆっくりと押し倒され、とろけるような琥珀瞳に見つめられると背筋が戦慄いた。
「仁瑶様」
身をふるわせた仁瑶の頬や首筋にくちづけを降らせながら、翠玲は愛おしげに名前を呼んでくる。
耳朶を撫でられ、輪郭のかたちをなぞるようにくちびるを這わされて、たまらず腰が跳ねた。
「ぁ、ッ、あ、は、ぁ……っすぃ、翠玲、っ」
甘くあたたかな感触が触れたところから、熱がひらいていく。
寝衣の襟もとを乱され、鎖骨に吸いつかれただけで官能で脳が痺れた。
「愛しいかた。くちづけだけで、もうこんなに肌を染めてしまわれたのですか?」
「んンぅ……ッぁ、ひあ……っ」
「仁瑶様がこんなに可愛らしくては、翠玲は心配になってしまいます。他の天陽種に見つからぬよう、隠してしまいたいくらい」
「ふぁ、あ……っゃ、あぁっ、すいれ、ぇ」
胸の粒をやさしくこねられ、引き攣れた声が漏れる。
翠玲の指がこすれるたびに快感が駆け抜け、仁瑶は逃れるように身をよじった。
けれど、うつ伏せになった躰はすぐに翠玲の腕に閉じ込められ、背後から再び胸をいじられてしまう。突起を指先ではじかれ、やわく摘ままれるとはしたない嬌声があふれた。
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