邪王さま誕生物語

文月 水涸

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第2話天使の主人公は俺が守る!

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 「この子がシリウスです。出来損ないには出来損ないの子守りがつくのね。ふ、ギルドも堕ちたものね…こんな男を寄越すなんて」
 神殿に着いた途端に神官から侮蔑な言葉を喰らった俺は思わず拳を握り締めた。出来損ない?出来損ないって俺に言ってるのか?
 …ん、間違いは無いな…薬草取りも失敗するぐらいだし。
 イヤイヤ、それは仕方無いけどシリウスは英雄になる子どもだぞ!お前まさかシリウスも含めて言ってんのか???
 紹介された幼い子どもは俯いたままだった。柔らかい黄金の髪。あ、つむじが見えた。かわいい…。
 白い手足は細く傷だらけで…。本当に細いな…。子どもってこんなに細かったっけ?ん?んんんん????何で傷だらけなんだ????なんか服も汚れてねぇか?
 「ええと、トバリさん?ふ、変な名前。おまけに平民って…」
 おま、お前!神官だからって俺を馬鹿にするのもいい加減にしろ!なんなんだ!コイツ!俺の履歴書(大したことは書いてない)を片手にクスクス嗤ってる。
 …悔しいが…。神官を殴ることは出来ない。神官は神に選ばれし者、この世界で王様の次に偉い。特に上神官は圧倒的な聖神力というパワーを持っていて魔物に対抗出来る超人。そんな上神官に成りうる神官を殴ればどうなるか?
 牢屋行きに決まってるからだ。牢屋だけなら運がいい方だ。ギロチンになる奴だっている。だからか、神官が平民…特に秀でて才能無い俺みたいな奴は道端に落ちてるクソと同類に見えるらしい。と言っても俺と対面するくらいなら大してランクが高い神官じゃないのは解るが。
 はいはい、あんた今は道端のクソを馬鹿にしたんですよ~と心の中で舌を出す。
 「シリウスくん。トバリです。宜しくお願いしますね~」
 俺が神官をムシしてシリウスに挨拶すると気にくわなかったのか「は?私より先に子どもに挨拶なんて」と言いかけ俺の顔を見てヒッと悲鳴を上げた。俺はシリウスの身長に合わせて屈んでいるので見上げるようになったからだろう。俺の笑顔に神官は「な、なんて邪悪なんだ…」と後退る。
 …確かに怖い顔だけど…邪悪って…。
 はっ!もしかしてシリウスも…?恐る恐るシリウスに視線を向けると彼は瞳をキラキラして俺を見つめていた。
 おお…幼少期は回想シーンしか無かったから、うろ覚えだったけど…なんて、かわいいンだよー!
 まさしく、天使じゃん!天使がいる!さらさらの黄金の髪に色白な肌、そして澄んだ水色の瞳…!うっすらと頬には朱色が浮かぶ。
 あー、わかる!絶世の美青年と言われる程の英雄なるの、わかる!だって、今が天使だもんなー!
 「シリウスで、いいです。…トバリさん」
 声変り前の声!かわいい!女の子みたいな高音!それが低音ボイスなるの?ええええー?!信じられないよ~!
 俺たちが見つめ合っていると神官がドンッ!とシリウスを押した。シリウスの軽い体がスポンっと俺の腕の中に飛び込んできた。
 「こ、この野郎…!子どもに何する…」あまりの怒りで立ち上がろうとする俺の服をギュッとシリウスは握り締め首を左右に振る。シリウスが止めなければ俺は殴ってたかもしれない。
 「出来損ないは、出来損ない同士。とてもお似合いですね。シリウス、彼に部屋を案内してあげなさい。部屋は同室ですが朝一番にトバリさんは神殿の庭の掃除を、き・ち・ん・と、してくださいね」
 話は終わりだと背中を見せるとサッサと去って行く。
 なん、なんだよ!さっきから出来損ない出来損ないって!ムッカつくなぁ!!!
 「ごめんなさい…トバリさん。僕のとばっちりを受けてしまいましたね」
 はぁ~?意味わかんねぇんだけど?!
 シリウスは部屋を案内しますと先を歩く。ひょこひょこと左足を庇うような歩き方。明らかに合わない大きめな靴から足首が見えた。…腫れている。
 「わぁ!」
 俺が抱き上げると、どうしてと聞いてきた。
 「足、挫いてるんじゃねぇのか?案内は指差しで大丈夫だから」
 部屋につくと俺は持参した麻袋から薬を取り出しシリウスの足首を巻いた。
 「薬と包帯…?そんな、勿体ない!」
 「確かに、この世界では薬は高価な物だけどな。気にするな。俺も良く怪我するし。それにこの包帯も正直あまり良い品物じゃないからさ」
 この世界?と首を傾げるシリウスに間違えた!この国と慌てて言い換える。おー、危ない!
 「トバリさんは、この国の人じゃないんですか?」
 うん、まぁ。転生したけど…トバリは、この国の髪と顔つきじゃねーな。知らねぇけど。
 「うん、まぁそう…ほら、三白眼で怖い顔してるし!」
 怖いですか?とキョトンと不思議そうな目で見てくるから俺の方が驚いた。
 「怖…いだろ、その笑顔とか…特に邪悪らしい…し…」
 言ってて…悲しくなってきた…この顔でどれだけ損したことか…もー…。
 「かわいいですよ?」
 は?
 シリウスくんは目が悪ぃんだな…。ジッと見つめるとシリウスは頬を赤くして俯く。もじもじしてる。ほら、やっぱり怖いんじゃないか。それなのに…優しい子なんだな…。
 「それにしても…質素な部屋だな」
 案内された部屋はベッドと小さな机と椅子。あとは…クローゼットもどきな置物。明らかに壊れている、扉が外れかかってる。ガタガタと俺は扉を嵌めようとしてガタン!と外れた。壊した…!
 「僕は…私生児なんです…公爵家の…」
 ん?慌てる俺に気にならないようにシリウスは語り始めた。
 「義理の…姉さんと兄さんの前で聖神力を暴発させて…。その…怪我を…。そのせいで神殿に来たんです…」
 は?初耳…というか、そんな設定は知らねぇぞ?俺が観たアニメでそんな話は無かったけど???
 「暴発させたのは、その一回だけで。だけど…あれ以来、聖神力を使う事ができなくなってしまって…だから、神官のみんなからは出来損ないって…う、ううう…ごめんなさい、ごめんなさい…」 
 えーと…いわゆる、よくある話で公爵家から追い出されたってことか?なんかラノベで流行ってるって友人が言ってたな。悪役令嬢が修道院に追放。それの男の子版で神殿に追放ってことか?つまりは怪我をさせてしまった為に怖くなってパワーを使えない。神官見習いなのに聖神力を使えないから出来損ないと神官達に虐められる…ってことか??!
そう考えると全てが繋がる。
 グスグスと泣くシリウスを抱き締め「怪我をさせたくてしたんじゃないだろう?今は怖くて使えなくても、とんでもねぇパワーを使いこなすようになる。お前は立派な上神官になれるよ」背中をぽんぽんしながら、そう伝える。
 神官じゃなく英雄だけどな。
 出来るかな…と泣き続ける幼子に俺は大丈夫だと耳打ちする。だってお前は世界を救う英雄になるって俺は知ってるから。
 もしかして過去を振り返るシーンは俺が現れてから実現するんじゃないだろうか。だったら俺がこれから幸せにしてやる!
これからの計画!絶対に神官達の苛めを許さないぜ!
 

  



 
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