邪王さま誕生物語

文月 水涸

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第3話主人公の想いは通じない

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 「トバリ!見て!」 
 ぱぁああ…と光の粒が舞い上がる。一粒一粒が七色に輝いている。俺の目にはシリウスの背中に大きな翼が見えた(幻覚)
 おお!なんて幻想的で綺麗な…と感動した俺の目の前で光の粒ひとつひとつがシャキーンっと槍になり丸太にドドドド!と突き刺さる。 
 「…、…」
 おう…エグいな…丸太が粉々になってしまったぞ…。
 「成功だー!」
 嬉しそうに飛び跳ねる天使に拍手しながら俺は後方でブルブル震えている上神官に目で訴える。
 「エグい!」
 ですよねー!
 
 俺の毎日の献身な?掃除と怖顔で(普通に挨拶してるだけだが)神官からの嫌がらせは無くなった。それと共にシリウスの聖神力も使えるようになってきた。どうやら信じてくれる俺がいるから怖く無くなったらしい!俺がいるから!
 はい、そこ!大事!
 いや~…語れば、そう…。
 「…、…?」
 何もしてないけどね?うん、何もしてない。特に何かした覚えねぇな?神官たち許さねーぞ!と力んだが特に何もしてない事に今更、ガックリと肩を落とす。
 ところでなんで俺が修行の場にいるかと言うと…。
 「聖神力を使える理由が…俺がいるからって可笑しくねーか?」
 最近なってシリウスは上神官から直接に指導を受けていた。常に役にたたない俺もセットである。
 「僕はトバリが居なきゃ…力が出ないだよ!」
 聞けば、こう答える。いや、俺が居なくても大丈夫だと思うけどなぁ?
 修行が終わると俺に抱きつく。それを引き離す。その繰り返し。
 「あまりにも貴方に依存してますね。何か直接、彼を救ったのですか?」
 上神官の質問に俺は首を振る。
 「ええ…と、僕のクローゼットを直してくれたじゃないか」
 シリウスが慌てて口をはさむ。
 ああ、あれか壊したクローゼットね。スキルで直さないなんて…てびっくりしてたな。そもそもスキルねぇもんな。こんなものスキル要らねぇよ!なんて格好つけたのは秘密だけど。案外、簡単に直ったから良かった。 
 「クローゼット…?」
 上神官が、だから何?みたいな顔してる。確かに…。
 「あと、食事にたいして苦情を直接、上神官様達に物申してくれたよ!」
 う、と上神官は顔を顰めた。
 あーそれね?まだシリウスの修行をする前の話だ。上神官達がいつ街に現れるのかギルドのマスターに頼んでたからさ。あんたら、いつも神殿の奥で何かしてんだよな。なかなか出会えないもん。でも街に現れる日が必ずある。まぁ宗教ってんのは何処の世界でも信者で成り立っているからな。常に信仰心を集めなきゃならない。ただでさえシリウスは食が細いのに出された食事は明らかに腐ってた飯ばかりだったから俺の堪忍袋の緒が切れるのも仕方無いだろ?
 「忘れもしません…祭殿が初めて中止になった日ですね…」
 頭を押さえた上神官。そりゃそうだろーな…。 
 『俺は神官見習いのシリウスさまの付人です!優しいシリウスさまが俺に食事を分けてくださったのです…が、それを食べてから日々、吐気と下痢が…うえええええ…!治まらなくてエエェ!助けてくれぇえええー!』
 目の前で転げまわり大げさに吐く真似をしたらヒラ神官達は真っ青。上神官達は、どういう事だと怒りまくり。せっかくの祭殿も信者たちの疑心暗鬼に包まれちゃ続けられない。あの演技は俺の中でピカ一だったと思うぜ。
 まさか俺のスキルってそれじゃねーよな???
 「あとあと街で買ってきてくれた串刺しを一緒に食べたよ。凄く美味しかった!あんなに美味しい物、初めてだよ。だって…僕と一緒に食べてくれるのはトバリだけだもの…」
 潤んだ瞳で俺を見つめる。
 「シリウス…お前…!」
 あんな安物の食い物がそんなに美味かったのかよ!!正直、高級品は俺は買えない!パサパサで硬い肉だったのに…!!!なんて事だと俺は、よろけた。
 「済まない…俺の給料ではあれが精いっぱいなんだ…」
 ギロリっと上神官を睨む。
 「あんたら!今まで、神殿でどれだけ不味い飯を食わせてるんだって話だ!」
俺が怒ってるとシリウスはそうじゃなくて…一緒に食べる人がいることに幸せを感じてるんだと服を引っ張って俺を止める。
 「解ってる、解ってるぜ…。食事は本当に改善されて良かったな!そのうち見習いから神官になれば大勢で食事できるぜ!」
 神官達は集いをしながら食事すると聞いたからな!
 「…、…どうすれば伝わるだろう…僕はトバリさえ居ればいいのに!」
 そんな事ねーさ、給食もみんなで食うから美味しかったんだよな。あ~懐かしいなぁ。
 「…。…ところでシリウスも成長期ですし。そろそろ付人のトバリ殿も別の部屋に…」  
 「え?!」シリウスが青ざめた。
 「あ~確かに!狭くなってきて時々、ベッドから俺が落ちてるンすよねー!」
 ?!と今度は上神官が青ざめた。
 「い…い、い、一緒に眠ってるんですか?!」
 「おう、寂しがり屋さんなんだよな。ん~、まぁそろそろ確かに添寝する時期は過ぎて…」
 やだ!とシリウスは俺にタックルしてきた。やだやだと背中に頭を擦付け「トバリと離れたくないよぉ」と甘える。
 かわいいーー!うちの子一番!なんか父性愛ってこのことか!あー!シリウスかわいいなぁ!
 「幼少期って短いって言うから、もう少し一緒にいます!」
 「どこが幼少期なんですか…!トバリ殿、彼の身長を見てください!」
 ふむ、確かに。今までは脚にタックルだったのに、いつの間にか腰を掴まれてる。う!シリウス…お前、力も付いたな。外れんー!ぐぉ?!締めるなー!
 「今日の修行は終わりですよね、師匠」
 なんでわざと耳元で喋るンだよ!くすぐったいだろー!俺が耳が弱い事はシリウスによって知った。ぬぅ、腰を掴まれているから屈んだ格好なる。苦しい…あと、顔を俺の肩に乗せて喋るなってば!
 「…、そうですね。では、また明日」 
 シリウスは俺を引きずるように上神官から離れる。
 「トバリ!僕が居ない時に上神官様とは会わないでよ!」
 「はー?」
 そもそも俺が上神官と話す事ねーだろ?話題もねーのに。あれ?なんか上服のポケットに紙が入ってる。上神官さんか…いつの間に?シリウスにわからないように奥に突っ込む。
 「あのなぁ、お前の師匠っていうだけで俺は上神官さんの顔は知ってるけど名前も知らねぇの。シリウスが居ない時に話す話題もねーの。はっ!もしかして…ふふふふ。大丈夫、大丈夫。今だに夜が怖いってことは誰にも言わねーからさ」
 そっか、そっかー。秘密をバラされるかハラハラしてたのか!
 「?!…いつの話だよ!そうじゃなくて…」
 そう、シリウスと添寝し始めた理由がコレなんだよな。こいつ、闇が呼んでるから怖いとシーツに包まっていたっけ。
 「僕は…トバリが居なくなる事が怖いよ」
 ギュと抱き締められた。いつまでも甘えっ子だな…。抱きしめ返して告げる。
 「俺は…何処にも行かないよ」
 お前が成長して…英雄なったら老後安泰なんて最初は考えてたけど…。 
 今は…その先までお前を守りたい。

 天女と出会っても…死なない様に教育しなきゃならねーもんな。
 
 
 
 
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