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婚約なんかしてましたっけ?
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「だいたい、婚約者なんて言ってたの殿下だけですよね?」
夜のお祈りの真っ最中に乱入してきて、いきなり婚約破棄だの騒ぎ出した第一王子。
どうせいつもみたいにあたしのことをビシっと指さして、ひっくり返りそうなくらいにふんぞり返っていることだろう。鼻の穴のふくらんだみっともないドヤ顔を見る気にもなれず、祭壇を向いて跪いたまま冷たく言い捨てた。
「あたし、何度もお断りしたはずですけど? まだ言ってたんですか?」
「何ぃっ!? 高貴な第一王子であるこの俺が、お前のようなどこの馬の骨とも知れない孤児上りと婚約してやると言ってやったんだぞ!! 泣いて喜ぶのが道理だろう!!」
うっわ。それが本音だったんだ。
もともと最低だと思ってたけど、さらに評価を下方修正しなきゃいけないかも。
「あのねぇ……たしかにあたしは孤児出身です。でも、今は女神アストレイア様から神託を受けた神子……その中でも結界の維持を任された聖女ですよ」
女神アストレイア様はこの国の建国女神。瘴気で汚染されたこの土地を浄化して、戦乱で故郷を追われて困っていた人々を導いてくださったんだ。
でも、その時に人間界に干渉しすぎたって他の神様たちにとがめられて、地上に降り立つことを禁じられてしまってる。だから、ご自身とと波長の近い少女を神子として特別な力……神聖力を授けて自分の代わりにこの国を守護する役目を与えているんだ。
その中でも力が強く、瘴気を浄化したり国を守護する結界を維持する役目を担う神子を聖女と呼んでいる。
あたしは五歳の誕生日にアストレイア様のお声を聞いて神子になった。それ以来十年間、毎日欠かさず祈りを捧げ続けることで神聖力が強くなり、今では当代一の力を持つ聖女と言われている。
「つまり、あたしたち聖女は女神アストレイア様の代理人ってわけ」
国土の浄化や守護結界の維持だけじゃない。天候の予測や災害の予知、あたしたち聖女が担う役割は大きい。だから、聖女は王族と同等……ううん、それ以上の権威を与えられている。
だって、この国は聖女がいなければとても人が住める環境じゃないんだもの。できの悪い王族が気まぐれでちょっかいかけられると、国全体が滅びてしまう。
「たとえ第一王子殿下といえども、あまりに礼を欠いた態度は許されないはずですけど?」
むしろ大司教様と同等の立場にあるあたしの方が、ただの王子にすぎないリーベル殿下よりも地位は上なんだけど。威張り散らすのは趣味じゃないから普通に振舞ってるだけで。
だってみっともないじゃない? そこで顔真っ赤にしてる王子見てれば心の底からそう思う。
「とにかく、あたしとの婚約は諦めるってことですよね。用件はわかったので、さっさと出て行ってください」
あたしは自慢の白い髪をかき上げながら言った。
元々は明るめの茶色だったんだけど、毎日しっかりとお祈りを捧げ、練り上げた神聖力を浄化に使っているうちにすっかり色素が抜けて、今では雪のように真っ白だ。
つまり、この真っ白な髪はあたしの信仰と献身の証。アストレイア様にこの身を捧げ、真剣にお役目をはたしている動かぬ証拠なの。
「あなたと結婚しないで済んで、本当に良かったわ」
思わず口をついて出た言葉に、背後の王子の気配が一変した。なんか、瘴気に取りつかれた動物が魔物に変化する時みたい。
うわ、ちょっとやばい気がする。
礼拝堂の外にいらっしゃるはずの司祭様たちに神殿騎士団を呼んでもらった良いかもしれない。
瘴気に汚染された地を浄化して動物たちに囲まれるアストレイア様
夜のお祈りの真っ最中に乱入してきて、いきなり婚約破棄だの騒ぎ出した第一王子。
どうせいつもみたいにあたしのことをビシっと指さして、ひっくり返りそうなくらいにふんぞり返っていることだろう。鼻の穴のふくらんだみっともないドヤ顔を見る気にもなれず、祭壇を向いて跪いたまま冷たく言い捨てた。
「あたし、何度もお断りしたはずですけど? まだ言ってたんですか?」
「何ぃっ!? 高貴な第一王子であるこの俺が、お前のようなどこの馬の骨とも知れない孤児上りと婚約してやると言ってやったんだぞ!! 泣いて喜ぶのが道理だろう!!」
うっわ。それが本音だったんだ。
もともと最低だと思ってたけど、さらに評価を下方修正しなきゃいけないかも。
「あのねぇ……たしかにあたしは孤児出身です。でも、今は女神アストレイア様から神託を受けた神子……その中でも結界の維持を任された聖女ですよ」
女神アストレイア様はこの国の建国女神。瘴気で汚染されたこの土地を浄化して、戦乱で故郷を追われて困っていた人々を導いてくださったんだ。
でも、その時に人間界に干渉しすぎたって他の神様たちにとがめられて、地上に降り立つことを禁じられてしまってる。だから、ご自身とと波長の近い少女を神子として特別な力……神聖力を授けて自分の代わりにこの国を守護する役目を与えているんだ。
その中でも力が強く、瘴気を浄化したり国を守護する結界を維持する役目を担う神子を聖女と呼んでいる。
あたしは五歳の誕生日にアストレイア様のお声を聞いて神子になった。それ以来十年間、毎日欠かさず祈りを捧げ続けることで神聖力が強くなり、今では当代一の力を持つ聖女と言われている。
「つまり、あたしたち聖女は女神アストレイア様の代理人ってわけ」
国土の浄化や守護結界の維持だけじゃない。天候の予測や災害の予知、あたしたち聖女が担う役割は大きい。だから、聖女は王族と同等……ううん、それ以上の権威を与えられている。
だって、この国は聖女がいなければとても人が住める環境じゃないんだもの。できの悪い王族が気まぐれでちょっかいかけられると、国全体が滅びてしまう。
「たとえ第一王子殿下といえども、あまりに礼を欠いた態度は許されないはずですけど?」
むしろ大司教様と同等の立場にあるあたしの方が、ただの王子にすぎないリーベル殿下よりも地位は上なんだけど。威張り散らすのは趣味じゃないから普通に振舞ってるだけで。
だってみっともないじゃない? そこで顔真っ赤にしてる王子見てれば心の底からそう思う。
「とにかく、あたしとの婚約は諦めるってことですよね。用件はわかったので、さっさと出て行ってください」
あたしは自慢の白い髪をかき上げながら言った。
元々は明るめの茶色だったんだけど、毎日しっかりとお祈りを捧げ、練り上げた神聖力を浄化に使っているうちにすっかり色素が抜けて、今では雪のように真っ白だ。
つまり、この真っ白な髪はあたしの信仰と献身の証。アストレイア様にこの身を捧げ、真剣にお役目をはたしている動かぬ証拠なの。
「あなたと結婚しないで済んで、本当に良かったわ」
思わず口をついて出た言葉に、背後の王子の気配が一変した。なんか、瘴気に取りつかれた動物が魔物に変化する時みたい。
うわ、ちょっとやばい気がする。
礼拝堂の外にいらっしゃるはずの司祭様たちに神殿騎士団を呼んでもらった良いかもしれない。
瘴気に汚染された地を浄化して動物たちに囲まれるアストレイア様
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