真の聖女が現れたと追放されたら、森の中で真っ白もふもふに出会いました。帰って来いと言われても、聖龍様の番になったのでもう遅い

信楽ぽんた

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癒しの力

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 ほとんど神聖力を持たない自称「真の聖女」を伴ったリーベル殿下に追放宣言されてしまったあたし。
 あまりに理不尽な言い分に呆然としていると、エリスが勝ち誇った様子で言いつのった。

「ごめんなさいねぇ。このあたくしが真の聖女として目覚めちゃったから、あたくし以外の聖女……いいえ、偽聖女はみぃんな要らなくなっちゃったの」

「そうだそうだ。薄汚い平民の偽聖女どもがこの神聖な大神殿の中をうろつくなど、汚らわしいことこの上ない! 聖女を騙った大罪人として今すぐ処刑されないだけありがたいと思え!」

「そういうことだから、あなたたちはみぃんなお役ごめんよ。目障りだからさっさと出て行ってね」

 色鮮やかなルージュを塗りたくった唇の端をきゅぅっと持ち上げ、にたりと笑った「聖女」エリスがねっとりとした口調で言えば、リーベル殿下も尻馬に乗る勢いできゃんきゃんと吠えたてる。
 そういえば、どこかの国に弱い犬ほどよく吠えるって言葉があるんだっけ。今あたしの目の前の光景がほんとそれなんだろうなー。

「真の聖女って言いますけど、エリス様の神聖力ってすんごく弱いですよ。そんなんじゃ災害の予知どころか、結界に力を注ぐこともできないのに、他の聖女をみんな追い出しちゃったら、後の務めをどうするつもりなんですか?」

 彼女の神聖力は聖女どころか神子と名乗らせるのもためらうくらいに弱い。むしろ、かろうじてゼロではありませんよ……という程度。
 正直、本当にアストレイア様のお声が聞こえるかも怪しいくらい。

 よっぽど必死になって修行して神聖力を伸ばさなければ、聖女になるのすら難しいんだけど。まして、見習いを含めて10人ちょっとで分担してやってる聖女の務めを、たった一人でぜんぶ果たすのって絶対無理だと思う。

「何を言う。エリスはな、女神様から特別に、希少にして神聖な癒しの力を授かっているんだ!」

「そうよぉ。あたくし、殿下の傷を一瞬で治しちゃったんだから! 結界だの天候の予知だのなんて、他の神子にもできるようなありふれた力とは格が違うのぉ」

 あたしの当たり前の指摘に、リーベル殿下が得意満面に答えた。続けてエリスのねっとりした声。

「え……それってただの光の精霊魔法……」

 思わず呆れてぼやいてしまった。殿下たちが不愉快そうに眉をひそめてる。
 聖女たるもの、平常心を忘れずに……なんて大神官様に言われてたのに。
 でも、話を聞いてるとエリス様の「癒しの力」って、ただの治癒魔法としか思えない。
 これは神聖力と全く無関係の、光の精霊の力を借りた魔法だ。別に神子や聖女じゃなくても使えるし、たいして珍しいものでもない。
 ただ、大きな問題があってほとんど使われてないだけなんだけど……

「何を言う、癒しの力だぞ! 下らない天気予報など、下賤な平民の役にしか立たん。結界なんぞ、本当にあるかどうかも疑わしい! それに引き換えエリスはこの俺の名誉の負傷を一瞬できれいに治してみせたのだ! この高貴で希少な力のありがたみがなぜわからん!!」

 なるほど。殿下は結界の役割も気象を予測することの大切さもまったくわかってないのね。
 それと、王侯貴族が「高貴」な存在でいられるのは、平民たちからの税収が自分たちを支えているからだという、当たり前のことも。

 これは、つける薬がないかもなー。さて……どう言えばこの人たちに自分のおバカ加減を理解してもらえるんだろうか。
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