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選ばれた理由
脱出経路
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入ってすぐのところは、もう人気がなかった。すぐに階段を駆け上がり、ラズの病室へと向かった。
シュートは服の裾をやぶき、口と鼻をそれで覆った。少し異臭がした。
病室の前で倒れている人影が見えた。これ以上ないくらい急いで駆け寄ると、やはりラズだった。
「シュート…なぜここに?」
かろうじて顔を上げて苦しそうにラズは言った。
「お前、まだ体の痺れが取れてないな?」
シュートは向かいの研究室のドアを氷で覆い、これ以上薬品が漏れ出さないようにしてから、ラズを担いで駆け出した。
階段まで来たところで、くらりとしてシュートは足を止めた。少し眩暈がする。歩くことはできるが、ラズを担いで階段を下りるのは危険だ。二人で転がり落ちて、打ち所が悪ければ死んでしまう。
かといって窓から飛び降りるにしてもここは四階だ。体調が万全でシュート一人ならまだ怪我で済むかもしれないが、今はラズを抱えているし、ふらふらして上手く受け身を取れる気がしない。そんな危険は冒せない。
「くそっ…何かねぇのか…何か…。」
窓の外には、病院の前庭の公園に多くの人が避難しているのが見えた。心配そうに病院を見たり、避難するよう指示を出したりしている人がいる。シュートは公園の遊具に目を留めた。
「あれだ!ラズ、ちょっとしんどいかもしれねぇけど、少しの間だから我慢してくれ。」
ラズが頷く気配がした。
シュートは窓を開けて、窓枠に手を当てた。頭の中で具体的にイメージすることに集中した。イメージが固まったところで、魔力を一気に手から流した。
病院の窓から公園まで長い氷のすべり台ができた。強度に自信はないが、今は行くしかない。
シュートはラズを前にして後ろから抱えるように腹に手を回し、すべり台に乗った。すーっと思ったよりずっと滑らかに滑っていく。…滑らかどころかスピードがすごい。
着地が心配になってきた。もう半分過ぎた。すべり台が壊れないのは良かったが、予想外の勢いだ。どうにかラズだけでも怪我をしないようにしなくては。
「そのまま来てー!!こっちで受け止める!」
ミックだ。すべり台の終わるところにいる。ベルとディルが、大きくシーツを広げている。
シュートは仲間を信じそのまま勢いよく、シーツに突っ込んでいった。ベルとディルは上手に勢いを殺してシーツにシュートとラズを収めた。
「すべり台とは考えたね。てっきり窓からそのまま跳んでくるかと思って用意したんだけど。」
にっこり笑ってディルがシュートを助け起こした。ベルとミックはラズを折りたたんだシーツの上に寝かせた。
「何で…?いや、後でいい。ラズを見せてくれ。」
シュートは気を失っているラズを診察した。見た感じでは、特に悪いところはなさそうだ。もう少し安静にしていれば、きっと前のように動けるようになる。
「みなさん!もっと離れて!!」
消防隊が到着した。シュートは研究室の扉を凍らせたことを伝えた。
「あれもあなたですか?」
消防隊員は氷のすべり台を指さした。
先程まで全く気づいていなかったが、逃げ遅れた患者が何人もすべり台を使って避難していた。シュートは頷いた。
「素晴らしい魔法ですね!ありがとうございます。あとは、我々にお任せください。」
シュートは面食らった。ラズと自分のことしか考えていなかったのにお礼を言われてしまった。
「シュート、宿に一緒に戻ろう。ラズの経過観察もしてほしいし!」
どうしたものかと返事を考えている途中で、シュートは目の前が真っ暗になり何もわからなくなってしまった。
シュートは服の裾をやぶき、口と鼻をそれで覆った。少し異臭がした。
病室の前で倒れている人影が見えた。これ以上ないくらい急いで駆け寄ると、やはりラズだった。
「シュート…なぜここに?」
かろうじて顔を上げて苦しそうにラズは言った。
「お前、まだ体の痺れが取れてないな?」
シュートは向かいの研究室のドアを氷で覆い、これ以上薬品が漏れ出さないようにしてから、ラズを担いで駆け出した。
階段まで来たところで、くらりとしてシュートは足を止めた。少し眩暈がする。歩くことはできるが、ラズを担いで階段を下りるのは危険だ。二人で転がり落ちて、打ち所が悪ければ死んでしまう。
かといって窓から飛び降りるにしてもここは四階だ。体調が万全でシュート一人ならまだ怪我で済むかもしれないが、今はラズを抱えているし、ふらふらして上手く受け身を取れる気がしない。そんな危険は冒せない。
「くそっ…何かねぇのか…何か…。」
窓の外には、病院の前庭の公園に多くの人が避難しているのが見えた。心配そうに病院を見たり、避難するよう指示を出したりしている人がいる。シュートは公園の遊具に目を留めた。
「あれだ!ラズ、ちょっとしんどいかもしれねぇけど、少しの間だから我慢してくれ。」
ラズが頷く気配がした。
シュートは窓を開けて、窓枠に手を当てた。頭の中で具体的にイメージすることに集中した。イメージが固まったところで、魔力を一気に手から流した。
病院の窓から公園まで長い氷のすべり台ができた。強度に自信はないが、今は行くしかない。
シュートはラズを前にして後ろから抱えるように腹に手を回し、すべり台に乗った。すーっと思ったよりずっと滑らかに滑っていく。…滑らかどころかスピードがすごい。
着地が心配になってきた。もう半分過ぎた。すべり台が壊れないのは良かったが、予想外の勢いだ。どうにかラズだけでも怪我をしないようにしなくては。
「そのまま来てー!!こっちで受け止める!」
ミックだ。すべり台の終わるところにいる。ベルとディルが、大きくシーツを広げている。
シュートは仲間を信じそのまま勢いよく、シーツに突っ込んでいった。ベルとディルは上手に勢いを殺してシーツにシュートとラズを収めた。
「すべり台とは考えたね。てっきり窓からそのまま跳んでくるかと思って用意したんだけど。」
にっこり笑ってディルがシュートを助け起こした。ベルとミックはラズを折りたたんだシーツの上に寝かせた。
「何で…?いや、後でいい。ラズを見せてくれ。」
シュートは気を失っているラズを診察した。見た感じでは、特に悪いところはなさそうだ。もう少し安静にしていれば、きっと前のように動けるようになる。
「みなさん!もっと離れて!!」
消防隊が到着した。シュートは研究室の扉を凍らせたことを伝えた。
「あれもあなたですか?」
消防隊員は氷のすべり台を指さした。
先程まで全く気づいていなかったが、逃げ遅れた患者が何人もすべり台を使って避難していた。シュートは頷いた。
「素晴らしい魔法ですね!ありがとうございます。あとは、我々にお任せください。」
シュートは面食らった。ラズと自分のことしか考えていなかったのにお礼を言われてしまった。
「シュート、宿に一緒に戻ろう。ラズの経過観察もしてほしいし!」
どうしたものかと返事を考えている途中で、シュートは目の前が真っ暗になり何もわからなくなってしまった。
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