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呪い
盗み聞き
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昼食後、ミックはまだ移動まで時間があると聞き、クリフにブラシをかけに行こうと、集団の外れの馬たちが止めてある所へ来た。俺もクリフともっと仲良くなりたいと言うシュートも一緒だった。
馬達は干し草などの餌が入った馬車に手綱を括り付けられている。のんびりと餌を食んだり耳を小刻みに動かして周囲の様子を窺ったりと思い思いに過ごしている。ミックがクリフに声を掛けようとした時、誰かの切羽詰まったような声がした。
「ベルさん、お願いです!このまま鷹の塊に留まって…僕と付き合ってください。」
告白してる!ミックはドキドキして気まずくなり引き返そうかと思ったが、シュートは盗み聞きができるように、ミックを馬車の影へと引きずり込んだ。
告白したのは、鷹の塊のツイストだ。ミックは一緒に狩りに行ったことがある。弓矢の扱いが上手かったし、明るくて冗談を沢山言っていた。歳は恐らくベルよりはやや下だが、ベルにはお似合いな気がした。
一般的には、ベルは結婚していてもおかしくない年齢だ。本人が望んでいるかどうかはわからないが、もし将来的に家族を持ちたいのなら悪い話ではないかもしれない。
しかし、今は旅の途中だ。ベルはなんと返事をするのだろうか。ミックは気になって仕方なかった。隣で息を潜めているシュートは、ミック以上に気になっているようで、自分が告白しているかのように緊張した面持ちだ。
「ごめんなさい。あなたの気持ちには応えられないわ。私は大切な旅の途中なの。」
断った!シュートはガッツポーズをしている。ベルが旅から抜けてしまったら、戦力的にはもちろん、精神的にも辛い。ミックもツイストに同情しつつ良かったと思ってしまった。
「わかってます…。もし俺がその旅が終わるまで待つって言ったらどうしますか?」
ツイストは本気なようだ。ここまで言われても一度断ったベルは、きっと靡かない…多分。悪いと思いつつ、ベルの次の言葉がどんなものかとても気になり聞き耳を立ててしまう。シュートに至っては、額に汗をかいている。
「そんなことさせられないわ。あなたには私よりもっと相応しい人がいるわよ。」
「そんなこと…。」
ツイストの声は懇願するような響きを持っていたが、ベルは遮った。
「私は呪いが発動しているの。誰とも結ばれることはない。」
ベルの断固とした態度と言葉に、ツイストは衝撃を受けたようだった。ミックとシュートは顔を見合わせた。呪いが発動している?
「塊が違うから知らなかったでしょうけど…。とにかく、ごめんなさい。でも、あなたの気持ちは嬉しかったわ。」
頭を下げるベルに、ツイストは時間を取ったことに詫びと礼を述べ、去っていった。
ツイストはミック達のすぐ脇を通ったが、涙で視界がぼやけていたのかミック達には気付かなかった。
ミックは今聞いてしまった話を頭の中で繰り返した。呪い、結ばれることはない、塊が違うから知らない…塊が同じならば知っているということか。そして、塊が違ったとしても、その呪いについては秘密にする必要はない?昨日のスピアの「呪われている」という言葉は事実だったのだろうか。
「あなた達、いつからいたのよ?」
「うわぁっ!」
「うおおっ!」
考え込んでるミックとシュートの目の前に仁王立ちしたベルがいた。
「もしかして、最初から聞いてた?」
ベルは、仲良く驚き尻餅をついたミックとシュートをぐいっと引っ張り助け起こした。
「…ごめんなさい。」
「悪い。」
言い訳せずあっさりと認める二人をベルはしばらく睨みつけていたが、諦めたように溜息をついた。
「わかったわ。聞いてしまったのなら、教えましょう。中途半端に知られて、誤解されるのは嫌だもの。」
馬達は干し草などの餌が入った馬車に手綱を括り付けられている。のんびりと餌を食んだり耳を小刻みに動かして周囲の様子を窺ったりと思い思いに過ごしている。ミックがクリフに声を掛けようとした時、誰かの切羽詰まったような声がした。
「ベルさん、お願いです!このまま鷹の塊に留まって…僕と付き合ってください。」
告白してる!ミックはドキドキして気まずくなり引き返そうかと思ったが、シュートは盗み聞きができるように、ミックを馬車の影へと引きずり込んだ。
告白したのは、鷹の塊のツイストだ。ミックは一緒に狩りに行ったことがある。弓矢の扱いが上手かったし、明るくて冗談を沢山言っていた。歳は恐らくベルよりはやや下だが、ベルにはお似合いな気がした。
一般的には、ベルは結婚していてもおかしくない年齢だ。本人が望んでいるかどうかはわからないが、もし将来的に家族を持ちたいのなら悪い話ではないかもしれない。
しかし、今は旅の途中だ。ベルはなんと返事をするのだろうか。ミックは気になって仕方なかった。隣で息を潜めているシュートは、ミック以上に気になっているようで、自分が告白しているかのように緊張した面持ちだ。
「ごめんなさい。あなたの気持ちには応えられないわ。私は大切な旅の途中なの。」
断った!シュートはガッツポーズをしている。ベルが旅から抜けてしまったら、戦力的にはもちろん、精神的にも辛い。ミックもツイストに同情しつつ良かったと思ってしまった。
「わかってます…。もし俺がその旅が終わるまで待つって言ったらどうしますか?」
ツイストは本気なようだ。ここまで言われても一度断ったベルは、きっと靡かない…多分。悪いと思いつつ、ベルの次の言葉がどんなものかとても気になり聞き耳を立ててしまう。シュートに至っては、額に汗をかいている。
「そんなことさせられないわ。あなたには私よりもっと相応しい人がいるわよ。」
「そんなこと…。」
ツイストの声は懇願するような響きを持っていたが、ベルは遮った。
「私は呪いが発動しているの。誰とも結ばれることはない。」
ベルの断固とした態度と言葉に、ツイストは衝撃を受けたようだった。ミックとシュートは顔を見合わせた。呪いが発動している?
「塊が違うから知らなかったでしょうけど…。とにかく、ごめんなさい。でも、あなたの気持ちは嬉しかったわ。」
頭を下げるベルに、ツイストは時間を取ったことに詫びと礼を述べ、去っていった。
ツイストはミック達のすぐ脇を通ったが、涙で視界がぼやけていたのかミック達には気付かなかった。
ミックは今聞いてしまった話を頭の中で繰り返した。呪い、結ばれることはない、塊が違うから知らない…塊が同じならば知っているということか。そして、塊が違ったとしても、その呪いについては秘密にする必要はない?昨日のスピアの「呪われている」という言葉は事実だったのだろうか。
「あなた達、いつからいたのよ?」
「うわぁっ!」
「うおおっ!」
考え込んでるミックとシュートの目の前に仁王立ちしたベルがいた。
「もしかして、最初から聞いてた?」
ベルは、仲良く驚き尻餅をついたミックとシュートをぐいっと引っ張り助け起こした。
「…ごめんなさい。」
「悪い。」
言い訳せずあっさりと認める二人をベルはしばらく睨みつけていたが、諦めたように溜息をついた。
「わかったわ。聞いてしまったのなら、教えましょう。中途半端に知られて、誤解されるのは嫌だもの。」
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