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第五章 宝刀

第26話

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 大祇は歩いてきた道には似たような木ばかりなので、迷子にならないように大きな岩を目印にして方向を失わないように歩き出した。

「そういえば、大江山の中を歩き回るのは、今回が始めてだなぁ。さっきはマシューが高く飛んで連れていってくれたから、だいぶ楽をさせてもらったよなぁ」

 大祇は独り言をつぶやきながら、手ごろな大きさの倒木がないかゆっくり歩いて確認する。

 木の種類まではわからなかったけれど、直径が十センチくらいの倒木を見つけたので、大祇はそれを二本拾い上げる。そして、目印にしていた岩を見つけながら来た道を戻って行った。

 さっきは気が付かなかったけれど、まりなが宿題をしていた木、つまり今、マシューがいる場所に戻る途中、土の上にキラリと光る黄色いものを見つけた。

 大祇は、見覚えのある形を見て、慌ててかけよると、手に抱えていた倒木を地面に下ろし、しゃがみこんだ。

 そして制服のポケットに手を突っ込み、自分が落としたのだろうかと自分のおはじきの枚数を数える。

「俺のおはじきでは……ないよな。ということは、まりなが落としたのか」

 大祇は、土のついた黄色いおはじきをそっと拾って、ハンカチで汚れを拭きとる。左手でグッとおはじきを握りしめて、まりなが通ったと思われる道を凝視する。

「この方向に行けば、まりなに辿り着けるのかな」

(早く見つけ出すから、無事でいてくれ……)

 大祇は心の中で呟きながら、急いでマシューのところまで再び戻って行った。

 
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