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第五章 宝刀

第27話

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 マシューのところまで戻ってくると、マシューはすでに表の世界から宝刀を一時的に持ち出すことに成功しており、二本の刀を手に持って俺を待っていてくれた。

「早かったね。何も変わったことはなかったかい?」

 マシューは、息を切らしながら走ってきた大祇に尋ねた。

「あぁ、大丈夫だったよ。鬼にも出くわさなかった。ところで、この太さの枝で柄と鞘ってできそう?」
 
 拾ってきた長めの枝を大祇はマシューに手渡した。

「ありがとう。博物館に返却する時には元の状態で戻すし、仮につけておくだけだから大丈夫だよ」
 
 そういうと、まるで手品でもしたかのように、大祇に返事をし終わった時には、鞘に収められた柄のついた刀が出来上がっていた。

「早すぎて、何が起こったのか確認する間もなかったよ」

 何度見てもマシューの手際の良さと素早さに大祇は驚いてしまう。

(相変わらず、マシューは仕事が早いし、この任務を受ける為にどんな訓練をしてきたのだろうな)

 大祇はいとも簡単にこなしてしまうマシューの人知れない努力を考えた。それから、左手に握り込んだままの物があったことを思い出す。

「あとさ……これ拾ったんだ」

 大祇は、さっき見つけた黄色いおはじきを一つ、マシューに見せた。

 何も言わなくても、マシューはそれが大祇のおはじきではなくて、まりなが持っていたものだと察してくれる。

「そっか。このおはじきが落ちていた方向に、ひとまず行ってみよう。それから、さっき酒呑童子を目撃した、あの吊り橋まで行ってみよう。手がかりが何かあるかもしれない」

「うん。日が暮れるまでにまりなを救出したい。あいつ、暗いところが苦手だから……」

 大祇は、まりなが小さい頃からおばけが出てきそうな暗い場所やジメジメした場所が苦手なのを思い出す。小学生の頃に家族ぐるみでキャンプに行ったことがあるけれど、人気のない夜のトイレを恐がるので、日が暮れてからはよく建物まで付き添ったものだ。キャンプに行ったのは数年前だけど、今もまだ暗いところは苦手なんじゃないかと思っている。

「たいきの言う通りだね。日が暮れると鬼は夜目が効くから、僕たちには不利になってしまう」
 
 そう言うと、マシューは大祇に先ほど手を加えた宝刀の一つを手渡した。

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