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第六章 まりなの居場所
第33話
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しばらくすると、また物がどこかに当たる音が聞こえる。
ドーン ドーン ドーン
大祇に向かって投げているようではないが、大きな木を持ち上げて一か所に投げ続けている酒呑童子を見つけた。
(あいつ、俺と戦っている最中に何をしているんだ?)
何かの作戦か罠とも考えたが、何をしているのかわからない。静かに酒呑童子の背後に近寄り、『童子切』を一気に酒呑童子の背中めがけて刃を突き立てる。
力いっぱい踏み込んだけれど、大祇の宝刀は空を切り、何も手ごたえがない。
「おっと。危ない、危ない」
そう言うと、すでに酒呑童子は離れた木の上に立って、こちらを見下ろしている。それを確認すると、また瞬きをした瞬間には姿が消えていた。
「速すぎるだろう……。スピードで勝てる気がしないし、背後からの不意打ちも読まれてしまう……」
大祇は、軽く息を整えて、さっき酒呑童子が投げ続けていた木をチラッと横目で確認する。
酒呑童子がさっきまで、なぜ木を集めていたのか理由がわからない。この戦いには関係がないことなのだろうか。
大祇は不可思議な酒呑童子の行動を考えながら、彼の姿を探すがもうどこにもいない。大祇は、鬼たちの宴会が開かれていた、先ほどの洞窟にまた戻っていく。
一対一で戦っているはずの酒呑童子は、洞窟内で手に飲み物を持っている。
「遅かったな。待ちくたびれたぞ。えっと、お前の名前はなんだ?」
お酒がすでに入っているのか、酒呑童子の会話が、さきほどよりも迫力に欠けている気がする。
そういえば、自宅で酒呑童子について調べていたら、酒呑童子は酒好きと書いてあったのを思い出した。呼び名にも「酒」という漢字が入っているくらいなのだから、相当好きなのだろう。
「俺は、源 大祇」
大祇は『童子切』を構えたまま、洞窟の中に入っていく。
「ああ、その響きたまらないなぁ。本当にあいつそっくりな名乗り方だよな」
酒呑童子が、誰のことを話しているかはわからなかったけれど、大祇は刀を座っている酒呑童子の首に当てようとした。
しかし、またもや一瞬のうちに目の前から消えてしまう。
「おい、小僧。いつまでそんなところに突っ立ってるんだ。さっさと決着つけてしまおうぜ。そろそろかくれんぼにも飽きてきたしな」
さっきまで、座っていた酒呑童子は、また洞窟の外に立ってこちらに来いよと言うかのように、大祇に手招きしている。
(こんなに動きが速いと、負けてしまうかもしれない。完全に弄ばれているような気がする)
大祇の心は少し弱気になってきた。
洞窟の外では、フクロウの声が聞こえている。満月も高い位置まで上り、酒呑童子の顔をはっきりと映し出す。
大祇は、もう一度『童子切』を両手で正面に構えると、酒呑童子の目をにらみつけた。
「ははは。その目、好きだぜ」
酒呑童子は余裕があるのか、口の端を持ち上げて、笑いかけてくる。
「そうそう、まりなって名前だったか? あいつとは夫婦にならせてもらうからな」
その言葉を聞くと、大祇の血が一気に熱くたぎり、それだけは譲ることができないと刀を持つ手に力が入る。
「それだけは、譲れないんだよ!」
そういうと、大祇は一気に酒呑童子に向かって、宝刀を突き立てた。
すると簡単に避けられるはずの大祇の刀を避けることもせずに、酒呑童子はそこに突っ立ったまま受け止めた。
『童子切』は一閃の強い光を放ち、酒呑童子の腹部に溶けていくかのように突き刺さる。
しかし、大祇の手は何も手ごたえがなくそのまま突き進み、酒呑童子の体に大祇の左肩が当たったところで止まった。
あまりに酒呑童子に近すぎて、彼の吐く息が大祇の髪に当たる。苦しくはないのだろうか。
光を放っていた『童子切』はまた、何事も無かったかのように光を弱めていき、最後は光らなくなったところで、大祇は刀を酒呑童子の腹部から引き抜く。
引き抜いた刀を見ても、血はついていないし、酒呑童子の腹部にも切れた痕もなければ、血も流れていない。
(これで、彼の力を削ぎ落せたのか?)
大祇は、半信半疑で酒呑童子のうつむいている顔を見つめる。彼は大祇を見て、にやりと笑ったが、さきほどまで見えていた牙はもう見当たらなかった。
ドーン ドーン ドーン
大祇に向かって投げているようではないが、大きな木を持ち上げて一か所に投げ続けている酒呑童子を見つけた。
(あいつ、俺と戦っている最中に何をしているんだ?)
何かの作戦か罠とも考えたが、何をしているのかわからない。静かに酒呑童子の背後に近寄り、『童子切』を一気に酒呑童子の背中めがけて刃を突き立てる。
力いっぱい踏み込んだけれど、大祇の宝刀は空を切り、何も手ごたえがない。
「おっと。危ない、危ない」
そう言うと、すでに酒呑童子は離れた木の上に立って、こちらを見下ろしている。それを確認すると、また瞬きをした瞬間には姿が消えていた。
「速すぎるだろう……。スピードで勝てる気がしないし、背後からの不意打ちも読まれてしまう……」
大祇は、軽く息を整えて、さっき酒呑童子が投げ続けていた木をチラッと横目で確認する。
酒呑童子がさっきまで、なぜ木を集めていたのか理由がわからない。この戦いには関係がないことなのだろうか。
大祇は不可思議な酒呑童子の行動を考えながら、彼の姿を探すがもうどこにもいない。大祇は、鬼たちの宴会が開かれていた、先ほどの洞窟にまた戻っていく。
一対一で戦っているはずの酒呑童子は、洞窟内で手に飲み物を持っている。
「遅かったな。待ちくたびれたぞ。えっと、お前の名前はなんだ?」
お酒がすでに入っているのか、酒呑童子の会話が、さきほどよりも迫力に欠けている気がする。
そういえば、自宅で酒呑童子について調べていたら、酒呑童子は酒好きと書いてあったのを思い出した。呼び名にも「酒」という漢字が入っているくらいなのだから、相当好きなのだろう。
「俺は、源 大祇」
大祇は『童子切』を構えたまま、洞窟の中に入っていく。
「ああ、その響きたまらないなぁ。本当にあいつそっくりな名乗り方だよな」
酒呑童子が、誰のことを話しているかはわからなかったけれど、大祇は刀を座っている酒呑童子の首に当てようとした。
しかし、またもや一瞬のうちに目の前から消えてしまう。
「おい、小僧。いつまでそんなところに突っ立ってるんだ。さっさと決着つけてしまおうぜ。そろそろかくれんぼにも飽きてきたしな」
さっきまで、座っていた酒呑童子は、また洞窟の外に立ってこちらに来いよと言うかのように、大祇に手招きしている。
(こんなに動きが速いと、負けてしまうかもしれない。完全に弄ばれているような気がする)
大祇の心は少し弱気になってきた。
洞窟の外では、フクロウの声が聞こえている。満月も高い位置まで上り、酒呑童子の顔をはっきりと映し出す。
大祇は、もう一度『童子切』を両手で正面に構えると、酒呑童子の目をにらみつけた。
「ははは。その目、好きだぜ」
酒呑童子は余裕があるのか、口の端を持ち上げて、笑いかけてくる。
「そうそう、まりなって名前だったか? あいつとは夫婦にならせてもらうからな」
その言葉を聞くと、大祇の血が一気に熱くたぎり、それだけは譲ることができないと刀を持つ手に力が入る。
「それだけは、譲れないんだよ!」
そういうと、大祇は一気に酒呑童子に向かって、宝刀を突き立てた。
すると簡単に避けられるはずの大祇の刀を避けることもせずに、酒呑童子はそこに突っ立ったまま受け止めた。
『童子切』は一閃の強い光を放ち、酒呑童子の腹部に溶けていくかのように突き刺さる。
しかし、大祇の手は何も手ごたえがなくそのまま突き進み、酒呑童子の体に大祇の左肩が当たったところで止まった。
あまりに酒呑童子に近すぎて、彼の吐く息が大祇の髪に当たる。苦しくはないのだろうか。
光を放っていた『童子切』はまた、何事も無かったかのように光を弱めていき、最後は光らなくなったところで、大祇は刀を酒呑童子の腹部から引き抜く。
引き抜いた刀を見ても、血はついていないし、酒呑童子の腹部にも切れた痕もなければ、血も流れていない。
(これで、彼の力を削ぎ落せたのか?)
大祇は、半信半疑で酒呑童子のうつむいている顔を見つめる。彼は大祇を見て、にやりと笑ったが、さきほどまで見えていた牙はもう見当たらなかった。
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