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第八章 恋のライバル⁉
第42話
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次の日、大祇の体はやけに重たかった。久しぶりに走り回って体中が筋肉痛になっているのと、背中を強打したところがまだジンジンと痛んだ。
幸い、打撲だけだったから数日すればよくなるだろうと元医師だった酒呑童子が昨日、診てくれていたから、重い身体のまま、いつも通り学校に登校した。
この日は、何時間目になってもマシューは学校に姿を現さなかった。
昨日は、大江山から時空を通って表の世界に戻ってくる前に、マシューは宝刀の『童子切』と『鬼切丸』を鞘をはずし、元の状態に戻して、裏の世界から手だけを突っ込んで、博物館に返却する作業を行っていた。
ちゃんと返却できたってマシューは言っていたし、大丈夫だよねぇ……。
大祇はマシューが窃盗犯で捕まったりしていないか、少し不安になったけれど、表の世界の時間は止まっているから大丈夫だと、マシューの言葉を信じて自分に言い聞かせる。
(でも、何かあったのかな……)
大祇の心配をよそに、その後、マシューは一週間、学校には姿を見せなかった。
幸い、クラスメートがマシューの話をしているので、時空のどこかで命を落としているわけではないということだけは、わかった。みんながマシューを記憶しているというが、彼が生きているという確証が持てて、大祇の不安は軽減されていた。
一週間経った日の放課後、何気なく第二理科室に大祇は足を運んでみる。
「あった、あった」
まだ教師用理科実験台の下には刀文様通行証は貼り付けられたままだった。
すると、第二理科室の入口扉が開く。
顔を上げた大祇は、とても懐かしい気持ちになる。
「マシュー。しばらく学校に来ないから、心配していたんだ」
マシューはその言葉を聞くと、はにかみながら、ひすい色の瞳で笑いかけてくる。
「国に報告書を書くのに、時間がかかっていたんだ。たいきとまりなも巻き込んでしまったから、いろいろとね」
「俺が加わったから、怒られたりしたの?」
「ううん、大丈夫だよ。その刀文様通行証の取り扱いを今後どうするべきか……とか議論していたんだ」
「そっか、俺とまりなは一般人でマシューみたいに国に雇われているわけではないから、勝手に持っていたらいけないものね」
大祇はそういうと、ブレザーのボタンに被せていた刀文様通行証を返却しようとした。
大祇の手の上からマシューは手を置いて、その必要はないと押さえる。
「この通行証はまだたいきが持っていて。僕たち時空捜査クラブの部員でしょ?」
酒呑童子の力を削ぎ落したから、もう時空捜査クラブは自然に解散したものだと大祇は考えていたけれど、そうではなかったようだ。
「まだ時空捜査クラブの部員のままでいていいの? 俺もまりなも?」
マシューは、静かに頷く。
「良かった。マシューとのつながりがなくなるんじゃないかと思って、不安だったんだ」
「そう言ってもらえて、嬉しいよ」
「でも、任務は完了したんだろう? またどこか他の任務に赴くんじゃないの?」
「そうだね。次の任務はまだ決まっていないから、それまでこの学校で普通の中学生活を楽しませてもらうよ」
「それは、いいね。明日の体育はバレーボールだってさ。一学期の終わりに球技大会があるから、欠席していたけれど、勝手に背の高いマシューは俺と同じバレーボールチームに割り振ったんだ」
「それは面白そうだね」
人前では、さすがに大江山で見せたような木に飛び乗るような跳躍はしないだろうけど、大祇は純粋にマシューと授業を受けられることが幸せに感じた。
幸い、打撲だけだったから数日すればよくなるだろうと元医師だった酒呑童子が昨日、診てくれていたから、重い身体のまま、いつも通り学校に登校した。
この日は、何時間目になってもマシューは学校に姿を現さなかった。
昨日は、大江山から時空を通って表の世界に戻ってくる前に、マシューは宝刀の『童子切』と『鬼切丸』を鞘をはずし、元の状態に戻して、裏の世界から手だけを突っ込んで、博物館に返却する作業を行っていた。
ちゃんと返却できたってマシューは言っていたし、大丈夫だよねぇ……。
大祇はマシューが窃盗犯で捕まったりしていないか、少し不安になったけれど、表の世界の時間は止まっているから大丈夫だと、マシューの言葉を信じて自分に言い聞かせる。
(でも、何かあったのかな……)
大祇の心配をよそに、その後、マシューは一週間、学校には姿を見せなかった。
幸い、クラスメートがマシューの話をしているので、時空のどこかで命を落としているわけではないということだけは、わかった。みんながマシューを記憶しているというが、彼が生きているという確証が持てて、大祇の不安は軽減されていた。
一週間経った日の放課後、何気なく第二理科室に大祇は足を運んでみる。
「あった、あった」
まだ教師用理科実験台の下には刀文様通行証は貼り付けられたままだった。
すると、第二理科室の入口扉が開く。
顔を上げた大祇は、とても懐かしい気持ちになる。
「マシュー。しばらく学校に来ないから、心配していたんだ」
マシューはその言葉を聞くと、はにかみながら、ひすい色の瞳で笑いかけてくる。
「国に報告書を書くのに、時間がかかっていたんだ。たいきとまりなも巻き込んでしまったから、いろいろとね」
「俺が加わったから、怒られたりしたの?」
「ううん、大丈夫だよ。その刀文様通行証の取り扱いを今後どうするべきか……とか議論していたんだ」
「そっか、俺とまりなは一般人でマシューみたいに国に雇われているわけではないから、勝手に持っていたらいけないものね」
大祇はそういうと、ブレザーのボタンに被せていた刀文様通行証を返却しようとした。
大祇の手の上からマシューは手を置いて、その必要はないと押さえる。
「この通行証はまだたいきが持っていて。僕たち時空捜査クラブの部員でしょ?」
酒呑童子の力を削ぎ落したから、もう時空捜査クラブは自然に解散したものだと大祇は考えていたけれど、そうではなかったようだ。
「まだ時空捜査クラブの部員のままでいていいの? 俺もまりなも?」
マシューは、静かに頷く。
「良かった。マシューとのつながりがなくなるんじゃないかと思って、不安だったんだ」
「そう言ってもらえて、嬉しいよ」
「でも、任務は完了したんだろう? またどこか他の任務に赴くんじゃないの?」
「そうだね。次の任務はまだ決まっていないから、それまでこの学校で普通の中学生活を楽しませてもらうよ」
「それは、いいね。明日の体育はバレーボールだってさ。一学期の終わりに球技大会があるから、欠席していたけれど、勝手に背の高いマシューは俺と同じバレーボールチームに割り振ったんだ」
「それは面白そうだね」
人前では、さすがに大江山で見せたような木に飛び乗るような跳躍はしないだろうけど、大祇は純粋にマシューと授業を受けられることが幸せに感じた。
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