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第八章 恋のライバル⁉

第45話

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 大江山から帰ってきてから、ひと月が過ぎ、もうじき夏休みになろうとしている。

「今日の放課後、第二理科室に来てくれるかな」
「大丈夫だよ。まりなにも声をかけておくね」
「うん。宜しく」

 マシューはクラスにも馴染んで、毎日、学校生活を楽しんでいる。中でも、給食の時間が楽しいらしい。七夕の日には、星型ハンバーグが出たり、天の川を模した七夕ゼリーなど給食センターが工夫を凝らして考えたメニューがとても嬉しいらしい。でも、冷凍みかんだけは、慣れないらしく、

「こんなに歯がキンキンと刺激が強いのによくそんなに大口で食べられるね」

と、大祇の一口でかぶりつく食べ方に驚いたりもしていた。

 今は、二学期にある『国際給食週間』を楽しみにしているようだ。インド料理、韓国料理、スペイン料理などいろんな国の味を毎日食べられるというお楽しみ給食週間があるからだ。

 大祇は放課後、一番乗りで第二理科室に到着した。
 心の中では、マシューが新しい任務で別の国に行ってしまうという話ではないかとドキドキしている。
 
 ガラッ

 続いてまりなが入室し、五分ほど遅れてマシューがやってくる。

「ごめんね、待たせちゃって」

 マシューは二人に椅子に座るように勧める。

「改まって、話っていうからずっとドキドキしているんだけど」

 大祇は正直な気持ちを述べる。まりなも今日は授業中も気になって、ソワソワしていたのだと話してくれる。

「いや。僕はまだこの学校の生徒として過ごせそうだよ」

 その言葉を聞いて、まりなと大祇は2人揃って「良かった~」と安堵の言葉を漏らす。

「実はこれが新しい任務なんだ」

 そう言って、実験台の上に裏向きで新しい任務について書かれた用紙を一枚マシューは置いた。

「どうする? 夏休みに入るけど、時空捜査クラブの部員として活動するかい?」

 マシューは、大祇とまりなが何て返事をするのかは、もうわかりきっているはずなのに、あえて確認してくる。

 こういうわざとらしいマシューの素振りも大祇は大好きだった。

「返事はもちろん……」

 大祇はまりなと顔を見合わせて、視線を一度合わすと、静かに頷く。そして、マシューの綺麗なひすい色の瞳を見つめて、同時に答えた。

「イエス!!」

                                      



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