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偏在する風
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夕暮れ迫る帝都の街に鐘の音が響く。
街の中央に設置されている半鐘を叩き、住民に家屋への避難を指示して回る兵士達は、一見すると職務に忠実な姿ではあるが、実際は侯爵の命令で俺達を探し回っているだけだ。
大通りはもちろん、小道から路地裏までを探し回る兵士達の目を避け、俺達は工事中だった水路へと身を潜めていた。
本当ならとっくに街の外へ出ているはずが、侯爵の手配が思いのほか早かったようで、見張りが増員された城壁を前にこうして隠れることを選んだのだ。
暗い水路はまだ水がないものの、冬の空気に冷やされた石造りの空間は刺すような寒さがあり、焚火などもってのほかの俺達は身を寄せ合わせて耐えるしかない。
そして、そんな俺達の中心には、城を脱出した時点で虫の息となっていたソニアの姿がある。
傷口からの出血自体は穏やかになっているが、それはもう血液がほとんど残っていないからだ。
水魔術で傷口を塞ごうと試みるが、やはり人体の内部では魔術の効きが悪い。
とりわけ魔力の通り道としての役割が大きい血管は、他者からの魔力による干渉を受けにくく、特に繊細な魔力コントロールと大出力によるゴリ押しでしか、動脈を繋ぎ合わせられないレベルだ。
とはいえ、痛々しい傷跡をそのままにしておくわけにもいかず、魔力に物を言わせた治療で深刻な傷は塞いでおく。
ロイドはソニアの顔色が気になっているせいか、俺が傷口に何かしているのは気付いていないようなので、面倒な説明を避けられるのは楽でいい。
重篤な場所の傷口こそ塞いだが、失われた血液を魔術で補充することなどできるはずもなく、結局ソニアが失血死となる未来はすぐそこまで迫っている。
死にゆく様をただ見ているしかできない俺とパーラは、無力さにただ歯を食いしばって耐えるだけだが、姉弟であるロイドは俺達などよりもずっと苦しい顔をしてソニアの手を握り締めて縋りついていた。
「姉さんっ目を開けてくれ、頼む…」
城を出るまではソニアにも多少反応はあったが、今ではもう目を瞑ったまま身動ぎ一つせず、ほんのわずかに呼吸しているだけの容態となっている。
正直、この状態で生きているのが不思議なくらいで、普通ならとっくに死んでいてもおかしくはない。
そのソニアの様子で、一つ気になることがある。
意識のないソニアだが、しきりに瞼がピクピクとしているうえに、唇も何か言いたげに震えているのだ。
まるで最後の力を振り絞って何かを伝えようとしているように見える。
「ロイドさん、ソニアさんの様子なんですが…」
あくまでも俺の感じた印象という前置きがあったうえで、ソニアの様子を教えると、しばしジッと姉の顔を見つめたロイドの目が一気に見開かれる。
どうやら俺の感じたものはロイドにも理解してもらえたようだ。
「なんだ!?何が言いたいんだ姉さん!姉さん!」
「ちょっと!落ち着いて!」
ただ姉の声をもう一度聞きたいという思いからだろう。
今にもソニアを抱き上げそうな勢いで声をかけるロイドを、パーラが落ち着かせようと肩を押さえるが、今の彼の目にはソニアしか映っていないらしい。
「ソニアさんは意識がないの!無理をさせたら死んじゃう!」
「ぐっ…わかってる!けど!」
意識がない姉の声を聞きたいが、それをさせると命の残り火を奪うことも理解しているだけに、もどかしさがロイドを焦燥に駆り立て、握り締めている拳からは血が滴り始めていた。
ソニアが何かを伝えようとしているのはなんとなくわかり、ロイドはそれを聞きたいと強く願っている。
ならばなんとかしてやりたいと思うのが人の情というもの。
姉弟二人、このまま最後の言葉もなくお別れではあまりにも忍びない。
「ロイドさん、これを」
少し悩み、俺は腰の小物入れから一本の小瓶を取り出し、ロイドへと手渡す。
突然差し出されたものを反射的に受け取りはしたが、自分の手の中の十センチもない小瓶を訝しげに見つめている。
「ネデットの秘薬です。僅かな時間だけ死傷の痛みを忘れさせ、また意識を覚醒させる効果があるそうです。それをソニアさんに飲ませてください。ただし、命を長らえさせるものではありませんので、最後の言葉を交わすだけと考えてください」
こんなこともあろうかと―ではないが、秘蔵の逸品をここで解放する。
これを使えば、ソニアは一時的にだが意識をとり戻すはずだ。
「まさか…なぜこんなものを持っている!?」
黄級の冒険者だけあって、ロイドはネデットの秘薬を知っていた。
そして、今ここで俺がそれを持っていることを心底驚いている。
それもそうだろう。
この秘薬は非常に高価で、なおかつその中毒性の高さからほとんどの国で製造・所持が認められないご法度の品だ。
幸いにして俺は使ったことはないが、効能を語ったある医者曰く、『一口含むだけであらゆる痛みから解放され、意識を失ったとしても即座に目覚めて戦うことができる』とのこと。
もう命が助からないソニアであっても、投与すれば死の間際に会話をするぐらいは可能だと思われる。
非常に高い鎮痛効果を持つ薬だが、同時に強力な麻薬としても効果があり、大瓶半杯程度の量でちょっとした村なら住民を丸ごと麻薬中毒者にできるという。
危険な麻薬であると同時に、戦士が死を飲み込んで戦う手段としても知られているため、所持しているだけでも重罪に問われるとわかっていても、手に入れようとする人間は少なくない。
俺がこれを持っていたのは、いつか守るべき者のために命を燃やし尽くしてでも戦う時に備えてだ。
手配してくれたのは某医者でありながら司祭を務めている人物で、ある依頼の報酬として要求したら大いに渋られ、派手に説教までされたが、どうにか説き伏せて用意してもらった。
ちなみに、実はペルケティア教国だとネデットの秘薬は製造が禁じられていない。
某司祭が言うには、ヤゼス教の儀式で使うある道具を作る際、意図せずネデットの秘薬が稀に作れてしまうそうで、完全に禁じては教会の運営に支障が出かねないからだそうだ。
ただし所持自体は認められていないので、持ち歩いているのが法執行機関あたりにでも見つかれば、問答無用で重罪に裁かれる点はよその国と同じだ。
「ある伝手で、としか言えません。非合法なものだとも知っています。ですが、今だけは忘れてください」
もはや死を免れないソニアの意識を呼び戻すためとはいえ、どの国でも禁じている薬を姉に投与するということへの抵抗は隠せないらしい。
ロイドはしばらく小瓶をジッと見つめていたが、ついに覚悟を決めたようにソニアの首を支えてわずかに上向かせると、その口内へと小瓶の中身を流し込んだ。
意識のない人間に薬を嚥下させることは実に難しい。
粘度の高いこの薬は特に喉を通るのも遅く、ソニアの唇の端からは流し込んだ端から薬が漏れているほどだ。
「頼む、姉さん。飲んでくれっ」
漏れ出る薬を指ですくってはソニアの口へ運ぶ、そんな作業を何度か繰り返していると、不意にソニアの呼吸がはっきりと音になって聞こえるほどに深くなる。
明らかにこれまでとは異なる様子に、俺とパーラは揃ってソニアの顔を覗き込む。
顔色は変わらず悪い。
だが、呼吸には明らかに力強さが戻っており、瞼が痙攣するように大きく動いた次の瞬間、ソニアの目が開かれた。
「……あ、な、に?私…なん、で」
意識を取り戻したソニアは朦朧とした顔で俺達を見ると、小さく驚きに顔を歪ませた後、何かを察したように小さく笑った。
「ふ、ふふふ…最後に、まさか話が、できる…なんてね」
「姉さん!最後だなんて言うな!大丈夫だ!きっと助かる!こんな傷なんてっ…傷なんて、ぅぐっ」
それが叶わぬと、気休めにもならない願望だと分かっているからこそ、自分の口から出してしまった言葉の残酷さこそがロイドの目から涙を引き出していく。
「大の男が…泣くんじゃない、の。あんたは昔っから、泣き虫な…んだから」
「…誰がだよ。もうここ何年、姉さんの前で泣いたことなんてないだろっ」
「そうだった…かしら、ね。心配、だわ、あん、たは、一人で生きなきゃいけない、のにね」
「一人なんて嫌だよ。姉さんが一緒にいてくれよ。弟を引っ張っていくのが姉の役目なんだろ?」
「ふふっ、そうしたい…けど、もう無理、よ。寂しいけど、姉離れの時が来た、の。これからは、あんた自身が全部決めて、歩いていきなさい」
秘薬の効果は個人差があるが、さほど長く持つものではない。
怪我の重さによっては、秘薬で生かされる時間はかなり短くなると聞く。
ソニアの呼吸が再び弱くなりはじめ、目の焦点も合わなくなってきている。
残念だが、もう時間だ。
俺とパーラも何か話したかったが、限られた時間はせめて姉弟のために使ってほしいと、ただ黙って二人を見守るだけだ。
ソニアも自分に残された時間がもうないと理解してか、自分を抱くロイドの手に自らの手を重ねた。
二つ重なった手を愛おし気に見つめ、微笑を浮かべたソニアは閉じていく瞼の重さに逆らわず、しかし最後までロイドへと言葉をかける。
「泣き虫なロイド…じゃあ私、は、風になるわ。風になって、世界をめぐって、あんたを守るの。お姉ちゃんが、あんたを守ってあげる…からね」
人は死ねば燃やされた肉体が煙となって天に上り、魂は星の意思と一つになる。
当たり前に考えられる概念だが、ソニアはそれに逆らうという。
ひとえに、弟への愛ゆえに。
「うっぅ、何言ってんだよ、そんなの無理に決まってんだろ」
もはやロイドは涙を堪えることなどできず、溢れるままにソニアの髪を濡らしていく。
抱えるその手に込める力を強くして、終わりのほんの一瞬まで、ソニアの声と体温を逃すまいとするロイドの姿を、ついに俺は見てられなくなった。
「無理じゃない、わ。そうしたいって…そうする、って」
―私が決めた
それはソニアがよく口にしていた、口癖だった。
その言葉を最後に、ソニアの呼吸が途絶える。
秘薬が与えた残り香のような時間は終わり、最後まで弟を愛していた姉の亡骸が残されるのみだ。
そして、残された弟は、姉の体に覆いかぶさるようにして声を上げずに泣き、その様はまるで冷たく暗い世界に沈んでいきそうな、そんな錯覚を覚える光景だった。
どれくらい経っただろうか。
体感的には一時間かそこらといったところだが、その間にロイドは十分に泣いて姉の死を受け入れ、涙を枯らした瞳は赤く充血しているが、表情は幾分かさっぱりとしたものとなっている。
ソニアの死は俺とパーラも辛いものではあるが、ロイドほど取り乱すほどではなく、今は遺体を整える時間を過ごしていた。
替えなどないため血で濡れた服はそのままだが、せめて剣で貫かれた傷跡ぐらいは隠そうと、衣服の合わせを変えたり、一部を裂いて別の部分と結んだりと、今やれることをやっていく。
一通り作業を終え、地面に横たえられたソニアの全身を見てみると、血塗れの部分にさえ目をつぶれば、穏やかな顔で眠る厳かな姿と言える程度には整えられたと思う。
この後アンデッド対策として遺体は焼かれることにはなるが、それまでの間は静かな別れの時間を過ごすのになにも不足はない。
「…ロイドさん、形見として持っていきますか?」
傍に膝をつき、綺麗な死に顔を時折撫でていたロイドに、先程の作業中に取り分けておいたソニアの持ち物を差し出す。
捕まっていたのだから当然だが、ほとんど持ち物らしいものはなかったものの、唯一、ポケットには小さな布袋が入っていた。
手に取った瞬間、爽やかな香りが辺りに漂う。
「香房か。ああ、もちろんだ」
攫われてかなり経っているというのに、香房はまだ匂いを保っており、この寒々しい空気を慰めるように、香りが俺達を包みこむ。
確かにソニアからはこんな匂いがよくしていたと、改めて思い出し、今は亡きソニアの笑顔が不意に頭をよぎった。
この世界で随分生きてきたが、やはり親しい人間の死に慣れることはない。
特に一緒に働き、酒を酌み交わした相手ともなれば尚更だ。
俺達でこうなのだから、ロイドの悲しみを本当の意味で理解することはできないだろう。
香房をロイドは胸元へしまうと、服の上からそっと撫でるように触れて目を閉じる。
そして、その閉じた目の端には一滴の涙があった。
匂いは記憶と強く結びつく。
ロイドの脳裏にも、きっとソニアの笑顔が浮かび上がっていると、そう思わせる姿だった。
「…二人とも、そろそろ姉さんの遺体を燃やそうか」
次にロイドの目が開いた時には、そこには迷いや憂いといった感情はなく、ただやるべき事を見据えた男の顔があった。
「いいの?私たちなら気にしないでいいよ。もう少しソニアさんと一緒にいても…」
姉と兄という違いはあれど、パーラもかつては家族を殺され、遺体を埋葬するところを見届けた。
パーラの方は幸いと言っていいのか、村の方針で遺体を燃やさなかったが、それでも永遠の別れを前に肉親のそばを離れがたい思いは身をもって知っている。
この寒さなら腐敗も遅いし、アンデッド化するにしてもまだまだ時間はある。
いつまでも水路に隠れてはいられないが、今のところ追っ手がここに迫っている気配はなく、もう少しだけソニアと一緒にいても困ることはない。
「いや、いいんだ。俺達もずっとはここにいられない。帝都を離れる前に、俺の手で姉さんの体を天に返したい」
アンデッド対策に遺体を燃やすのはこの世界の常識だが、身内を自分の手で焼くのは辛いものがある。
最後の孝行として身内の火葬を自分の手でという考えは少なくないが、それでもロイドはソニアの最期を看取ってからの時間がまだ浅い。
ソニアの火葬は俺が引き受けるつもりだったが、ロイドは自分の手でやるという。
だが、姉の体に火をつけるという行為が大きなストレスにならないか少し心配ではある。
とはいえ、ロイドも大の男だ。
姉を送る火を自分が使うことで、一つの区切りとするのかもしれない。
本人が望むのなら任せるとしよう。
「そうなると、ソニアさんをどこで火葬するかですが…」
「ここでやるしかないだろ。姉さんを担いで外に出て、火を使ったりしたら兵士にすぐ見つかるぞ」
「まぁそれしかないか。ロイドさんはいいんですか?ソニアさんをこんな寒くて暗い場所で火葬してしまっても」
決して清潔とはいえず、狭い水路は決して火葬に相応しい場所とはいいがたい。
あんな殺され方をしたのだから、せめて火葬ぐらいは厳かに執り行ってやりたいものだが。
「言わんとしていることはわかるが、姉さんなら気にしなさそうだがな」
確かに。
生前はカラッとした性格だったソニアだ。
死んだ後の自分の体に執着してロイドを危険に晒すよりは、さっさと火葬を済ませろと思っていそうな気がする。
「それに…」
「それに?」
「姉さんは風になったんだ。どこで火葬しようが、魂はもう世界をめぐってるさ」
それはソニアが死の間際に残した言葉だったが、まさかそれをロイドが口にするとは。
少し照れくさそうな顔をしているあたり、絶対にそうだと思い込んではいないにしても、姉の最後の願いに自分の思いを重ねてみたいのだろう。
しかしこれで火葬はここで行う方向で決まり、後は燃料となる油や薪といったものを用意するだけだ。
それぐらいなら街中で探せばすぐに手に入るだろうが、問題は街に侯爵の息のかかった兵がうろついている点だ。
のこのこと出て行って追いかけられ、しまいにこの隠れ場所まで嗅ぎつけられるのは流石にまずい。
そこらへんは二人も懸念しており、調達先について一緒になって頭をひねる。
「うーん、順当に考えれば適当な商人から買うのでいいんじゃない?」
「俺もそれがいいとは思うが…じきに日が落ちる頃だ。もう店じまいの時間なんじゃないか?」
基本的に火葬は明るいうちに行うのが慣例であり、夜に燃料を買いに来る人間はまずいない。
自然と薪を扱う商人の朝は早く、店じまいも早くなる。
今からその手の商人を訪ねたとして、売ってくれるかは時間的に厳しい。
「そうですね。閉店している扉を叩いて大声で燃料を要求する人間が、目立たないわけがない。兵士に見つかったら追いかけられますよ、絶対」
「となると、教会を頼るのがいいかもしれん。火葬のためってことなら、安く融通してくれるはずだ」
「でも教会ってもう帝国から手を引いてるんでしょ?」
「手を引いたといっても、去ったのは法術師や地位の高い連中がほとんどだそうだ。末端の、特に平民と触れ合う機会の多い人間は、教義を伝え守るって名目でそれなりの数が残ったらしい。帝都にもその口の者がいたはずだ」
ヤゼス教はほぼ全ての国に勢力を伸ばしている。
帝国も例外ではなかったが、反乱が起きた際に撤退したヤゼス教のお偉いさん以外には、この国で布教を続けるべく残った人間もいたようだ。
往々にして、末端の人間ほど宗教には真摯に取り組むもので、こんな状況でもヤゼス教としての活動を続けている人間には頭が下がる。
教会の仕事には冠婚葬祭の取り仕切りが多く、家計に余裕のない人間には火葬の際に必要な燃料を格安で融通することもしている。
つまり、教会になら火葬に使う燃料はストックしているはずで、そして教会はいつでも迷える者へ門を開いている。
俺達は金に困ってはいないが、それ以外の部分では困っているので、頼み込めば協力してくれるに違いない。
「では教会には俺が行きますよ。ロイドさんはパーラと一緒にここで待機を。何かあった時は、迷わずソニアさんを置いて逃げてください。いいですね?」
「ああ、わかっている。君こそ気をつけろよ。街は俺達を探す兵であふれてるんだからな」
「ええ、いざという時は全力で逃げますよ。パーラ、緊急時の合流地点の目印は覚えてるな?」
「もちろん」
「よし。じゃあ行ってくる」
ロイド達と別れ、人目がないのを確かめてから水路を出る。
冬の暮れは早く、もう辺りはかなり暗くなっていた。
今の帝都はあちこちで改修や取り壊しがあるらしく、逃亡者から見るとこの手の隠れ場所には事欠かない。
侯爵の息のかかった兵士も探す場所がありすぎて、ここに捜索の手が及ぶのはまだ先だろう。
一応追われる身なので物陰から物陰へ身を隠しながら移動し、ロイドから聞いていた教会の建つという場所へ向かうと、そこには一軒の小さな民家があるだけだった。
他に並ぶ家と外見はそう変わらず、一見すると教会の施設とは思えないが、よく見ると玄関扉にはヤゼス教の十字架が彫り込まれていた。
熱心な信者でも家にそんなことはしないので、この民家が帝都における今のヤゼス教の教会ということなのだろう。
他の国では立派な建物が教会としてあるのに、ルガツェン帝国ではこうも侘しくなるとは。
しかし清貧を旨としているのならこれはある意味で正しい姿とも言え、俺としてはこちらの方がむしろ好感を持てる。
建物の意外性に驚きはしたが、今は目的が先と扉をノックして少し待つ。
すぐに扉が開き、そこから老人が姿を見せた。
ヤゼス教における助祭の衣装を着ていることから、彼がここの責任者だろうか。
「おや、初めて見る方だ。何かお困りですかな?」
街の住民とは親しく付き合っているのだろう。
見慣れない人間を前に一瞬驚いたような顔を見せたが、すぐに神父としての表情を見せる。
「実は知り合いが今日亡くなりまして。弔おうと思いましたが、火葬に使う油などが足りていないのです。この時間では店が開いておらず、手に入れるのに難儀しています。よろしければ、教会で使う分を分けていただけないでしょうか?」
「おぉ、それはお気の毒に。しかし、火葬ならば朝を待ってはいかがかな?店も朝になれば開くし、この時期ならご遺体も傷みにくい。今は、亡くなった方とともに最後の時を過ごすとよいでしょう」
教会の人間なら、火葬は明るい内にと勧めるのが当然だ。
火葬に使う燃料を惜しむわけではなく、単純に聖職者として正しいものの考え方だ。
「いえ、あいにくですが今夜中に街を離れようと思っておりまして、朝を待つわけにはいきません。故人には生前世話になったので、ここを去る前に弔ってやりたいのです」
「なるほど、ではこうしたらいかがかな?そのご遺体を私が預かりましょう。朝には責任をもって、私が火葬しておきますよ」
それができないわけがあると、言えてしまえば楽なのだが、俺達のために、また目の前の老人のためにも、知らなくていいことはなるべく伏せたい。
「恩人ともいえる人物なのです。私の手で天に送ってやらねばと思っています」
「左様ですか。わかりました、すぐにご用意しましょう。少々お待ちを」
うまく切り抜けられたか。
このまま問答を続けていたら、面倒になって老人を気絶させてでも頂戴していかねばならなかったが、最後の手段を取らずに済んで何よりだ。
しばらくして老人が薪と油が入った木箱を手にして戻ってきた。
小振りの薪が二十かそこら、燃焼を助ける特殊な油が小壺で一つと、人一人を火葬するのに丁度良いといった量だ。
ずっしりとした重さのある木箱を受け取り、老人に代金を渡す。
手持ちにある銀貨の中で、この国で流通していそうなレベルの摩耗具合のものを全て放出した。
教会に火葬の燃料を求めてくる人間の多くは困窮していることが多く、大抵は施しとして無償に近い提供をするが、俺はその例に当てはまらないので、代金は過剰なぐらい払っておいた。
その額に驚かれてしまったが、急な用立てで助かったのはこちらなので、そのあたりはしっかりと礼を言ってその場を後にした。
水路へ戻ると、さっそく二人とともに火葬の準備に入る。
手順としては特に難しいことはなく、薪を並べて台にした上に遺体を乗せて、特殊な油を上からかけるか、布に染み込ませて遺体に被せるかして火をつけるだけだ。
今回は薪の上に乗せた遺体に油をかける方式だ。
薪を台にして組むのは俺とパーラがやり、ソニアをその上にのせて油をかけるのはロイドが引き受けた。
全員が無言では動き、悲しさや寂しさは確かにあるが、奇妙なことに決してそれだけではない、何か満たされるものを感じてもいた。
恐らく俺以外の二人もそれは同じで、不思議な雰囲気のまま、ソニアの遺体に火がつけられた。
薪よりも先に油が燃え、ソニアの体を舐めるように炎が覆う。
火葬の際に使われる油は、燃焼時に淡い青色の光が出るのが特徴だ。
これは高温の炎が出す青ではなく、特殊な油に含まれる成分が燃焼時に出す色だとか。
明るい時にはそうでもないが、暗いところで見るとこの青がなんとも幻想的で美しい。
人体が燃える時に出る嫌な臭いについ顔をしかめるが、しかし炎から目を逸らすことなく、俺達はソニアの体が灰になるまでをただジッと見続けた。
「じゃあやるよ?外に撒くだけでいいんだね?」
「ああ、頼む」
薪と油、ソニアと衣服だったものが混ざり合った灰を、パーラが風魔術で外へ飛ばす。
精密にコントロールされた風は、灰を一筋の雲のように連れていき、あっという間にソニアだったものは痕跡すらなく消え去ってしまった。
本当なら灰くらいはどこかに埋めてやりたかったが、ロイドの希望でこうすることになった。
連れて行くのは香房だけでいいと、これで風となったソニアは本当に世界をめぐるのだと、意外とロマンチストなことをロイドは口にしていたが、本人がいいなら俺が何か言うことはない。
一つの儀式を終え、俺達はすっかり闇に包まれた帝都の空を渡って城壁外へ向かう。
こんな時間でも街中では兵士が松明を片手に歩き回っており、侯爵はよほど俺達を逃がしたくないと見える。
ただ、扉こそ閉ざされているが城壁上の見張りはなぜか減っていたため、噴射装置であっさりと街の外へと降りることができた。
「すんなりと来れたね」
「街中に兵士を多く配置してるみたいだからな。城壁を越えるってことを考えないんだろ。ロイドさん、今日はもう飛空艇に戻りますか?」
「そうだな。例の…ミュリクだったか?そこにも行くべきなんだろうか、今日はもう、眠りたいな」
「え、行くんだ?別にこのまま国を出ちゃってもよくない?」
「それもいいが、そこに俺が会うべき人間がいるって言われたしな。まずは行くだけ行ってみるさ。二人はどうする?ここからは付き合う義理はないが、できれば一緒に来てくれると心強い」
「俺は構いませんよ。どうせ他に用事もないんで」
「私もいいよ。誰が待ってるのかちょっと気になるし。それに、ロイドさんを一人にするのも…ね」
少し茶化すように言うパーラだが、その目は真剣なものだ。
「おいおい、やめてくれ。子供じゃないんだ。寂しくて泣くって質でもないぞ」
「そうじゃなくて、たった一人の家族が死んだんだよ?一人でいちゃいけないよ、今は」
そう言うパーラの顔は慈愛と悲しみに満ちており、それを受けてロイドも何かを耐えるように目を伏せた。
今のロイドを一人にさせるべきか、それとも誰かと一緒にいるべきか、どちらがいいかを俺は断定できない。
多分、この場ではロイドの気持ちをパーラが一番理解できている。
そのパーラがこういうとなると、それは正しい見立てなのだろう。
「…二十年前、帝都を出たときは姉さんが一緒だった。だが今はいない。この国はいつだって、俺の大切なものを奪っていく。大切な……。俺は、一人になっちまったんだな」
「でも今は私達がいるよ。それじゃだめ?」
俺達はロイドの家族ではないが、それでも一緒に旅をして、戦ってきた絆がある。
独りぼっちになるロイドにずっと寄り添えるとは限らないが、今だけは一緒の悲しみを分け合うことはできる。
「…いや、そんなことはない。そうだな、今は君達がいる。十分だ」
ロイドがふと顔を上げるのにつられて俺も空を見上げてみると、雲の切れ間に煌めく星が見えた。
流れ星だ。
珍しいものではあるが全く見ないわけでもないその流れ星が、なんだか今はロイドに代わって天が流した涙のような気がしたのは、俺の感傷だろうか。
ただ、ポツリと雪の上に落ちた水の音が、その思いは間違いではないと教えてくれた気がした。
街の中央に設置されている半鐘を叩き、住民に家屋への避難を指示して回る兵士達は、一見すると職務に忠実な姿ではあるが、実際は侯爵の命令で俺達を探し回っているだけだ。
大通りはもちろん、小道から路地裏までを探し回る兵士達の目を避け、俺達は工事中だった水路へと身を潜めていた。
本当ならとっくに街の外へ出ているはずが、侯爵の手配が思いのほか早かったようで、見張りが増員された城壁を前にこうして隠れることを選んだのだ。
暗い水路はまだ水がないものの、冬の空気に冷やされた石造りの空間は刺すような寒さがあり、焚火などもってのほかの俺達は身を寄せ合わせて耐えるしかない。
そして、そんな俺達の中心には、城を脱出した時点で虫の息となっていたソニアの姿がある。
傷口からの出血自体は穏やかになっているが、それはもう血液がほとんど残っていないからだ。
水魔術で傷口を塞ごうと試みるが、やはり人体の内部では魔術の効きが悪い。
とりわけ魔力の通り道としての役割が大きい血管は、他者からの魔力による干渉を受けにくく、特に繊細な魔力コントロールと大出力によるゴリ押しでしか、動脈を繋ぎ合わせられないレベルだ。
とはいえ、痛々しい傷跡をそのままにしておくわけにもいかず、魔力に物を言わせた治療で深刻な傷は塞いでおく。
ロイドはソニアの顔色が気になっているせいか、俺が傷口に何かしているのは気付いていないようなので、面倒な説明を避けられるのは楽でいい。
重篤な場所の傷口こそ塞いだが、失われた血液を魔術で補充することなどできるはずもなく、結局ソニアが失血死となる未来はすぐそこまで迫っている。
死にゆく様をただ見ているしかできない俺とパーラは、無力さにただ歯を食いしばって耐えるだけだが、姉弟であるロイドは俺達などよりもずっと苦しい顔をしてソニアの手を握り締めて縋りついていた。
「姉さんっ目を開けてくれ、頼む…」
城を出るまではソニアにも多少反応はあったが、今ではもう目を瞑ったまま身動ぎ一つせず、ほんのわずかに呼吸しているだけの容態となっている。
正直、この状態で生きているのが不思議なくらいで、普通ならとっくに死んでいてもおかしくはない。
そのソニアの様子で、一つ気になることがある。
意識のないソニアだが、しきりに瞼がピクピクとしているうえに、唇も何か言いたげに震えているのだ。
まるで最後の力を振り絞って何かを伝えようとしているように見える。
「ロイドさん、ソニアさんの様子なんですが…」
あくまでも俺の感じた印象という前置きがあったうえで、ソニアの様子を教えると、しばしジッと姉の顔を見つめたロイドの目が一気に見開かれる。
どうやら俺の感じたものはロイドにも理解してもらえたようだ。
「なんだ!?何が言いたいんだ姉さん!姉さん!」
「ちょっと!落ち着いて!」
ただ姉の声をもう一度聞きたいという思いからだろう。
今にもソニアを抱き上げそうな勢いで声をかけるロイドを、パーラが落ち着かせようと肩を押さえるが、今の彼の目にはソニアしか映っていないらしい。
「ソニアさんは意識がないの!無理をさせたら死んじゃう!」
「ぐっ…わかってる!けど!」
意識がない姉の声を聞きたいが、それをさせると命の残り火を奪うことも理解しているだけに、もどかしさがロイドを焦燥に駆り立て、握り締めている拳からは血が滴り始めていた。
ソニアが何かを伝えようとしているのはなんとなくわかり、ロイドはそれを聞きたいと強く願っている。
ならばなんとかしてやりたいと思うのが人の情というもの。
姉弟二人、このまま最後の言葉もなくお別れではあまりにも忍びない。
「ロイドさん、これを」
少し悩み、俺は腰の小物入れから一本の小瓶を取り出し、ロイドへと手渡す。
突然差し出されたものを反射的に受け取りはしたが、自分の手の中の十センチもない小瓶を訝しげに見つめている。
「ネデットの秘薬です。僅かな時間だけ死傷の痛みを忘れさせ、また意識を覚醒させる効果があるそうです。それをソニアさんに飲ませてください。ただし、命を長らえさせるものではありませんので、最後の言葉を交わすだけと考えてください」
こんなこともあろうかと―ではないが、秘蔵の逸品をここで解放する。
これを使えば、ソニアは一時的にだが意識をとり戻すはずだ。
「まさか…なぜこんなものを持っている!?」
黄級の冒険者だけあって、ロイドはネデットの秘薬を知っていた。
そして、今ここで俺がそれを持っていることを心底驚いている。
それもそうだろう。
この秘薬は非常に高価で、なおかつその中毒性の高さからほとんどの国で製造・所持が認められないご法度の品だ。
幸いにして俺は使ったことはないが、効能を語ったある医者曰く、『一口含むだけであらゆる痛みから解放され、意識を失ったとしても即座に目覚めて戦うことができる』とのこと。
もう命が助からないソニアであっても、投与すれば死の間際に会話をするぐらいは可能だと思われる。
非常に高い鎮痛効果を持つ薬だが、同時に強力な麻薬としても効果があり、大瓶半杯程度の量でちょっとした村なら住民を丸ごと麻薬中毒者にできるという。
危険な麻薬であると同時に、戦士が死を飲み込んで戦う手段としても知られているため、所持しているだけでも重罪に問われるとわかっていても、手に入れようとする人間は少なくない。
俺がこれを持っていたのは、いつか守るべき者のために命を燃やし尽くしてでも戦う時に備えてだ。
手配してくれたのは某医者でありながら司祭を務めている人物で、ある依頼の報酬として要求したら大いに渋られ、派手に説教までされたが、どうにか説き伏せて用意してもらった。
ちなみに、実はペルケティア教国だとネデットの秘薬は製造が禁じられていない。
某司祭が言うには、ヤゼス教の儀式で使うある道具を作る際、意図せずネデットの秘薬が稀に作れてしまうそうで、完全に禁じては教会の運営に支障が出かねないからだそうだ。
ただし所持自体は認められていないので、持ち歩いているのが法執行機関あたりにでも見つかれば、問答無用で重罪に裁かれる点はよその国と同じだ。
「ある伝手で、としか言えません。非合法なものだとも知っています。ですが、今だけは忘れてください」
もはや死を免れないソニアの意識を呼び戻すためとはいえ、どの国でも禁じている薬を姉に投与するということへの抵抗は隠せないらしい。
ロイドはしばらく小瓶をジッと見つめていたが、ついに覚悟を決めたようにソニアの首を支えてわずかに上向かせると、その口内へと小瓶の中身を流し込んだ。
意識のない人間に薬を嚥下させることは実に難しい。
粘度の高いこの薬は特に喉を通るのも遅く、ソニアの唇の端からは流し込んだ端から薬が漏れているほどだ。
「頼む、姉さん。飲んでくれっ」
漏れ出る薬を指ですくってはソニアの口へ運ぶ、そんな作業を何度か繰り返していると、不意にソニアの呼吸がはっきりと音になって聞こえるほどに深くなる。
明らかにこれまでとは異なる様子に、俺とパーラは揃ってソニアの顔を覗き込む。
顔色は変わらず悪い。
だが、呼吸には明らかに力強さが戻っており、瞼が痙攣するように大きく動いた次の瞬間、ソニアの目が開かれた。
「……あ、な、に?私…なん、で」
意識を取り戻したソニアは朦朧とした顔で俺達を見ると、小さく驚きに顔を歪ませた後、何かを察したように小さく笑った。
「ふ、ふふふ…最後に、まさか話が、できる…なんてね」
「姉さん!最後だなんて言うな!大丈夫だ!きっと助かる!こんな傷なんてっ…傷なんて、ぅぐっ」
それが叶わぬと、気休めにもならない願望だと分かっているからこそ、自分の口から出してしまった言葉の残酷さこそがロイドの目から涙を引き出していく。
「大の男が…泣くんじゃない、の。あんたは昔っから、泣き虫な…んだから」
「…誰がだよ。もうここ何年、姉さんの前で泣いたことなんてないだろっ」
「そうだった…かしら、ね。心配、だわ、あん、たは、一人で生きなきゃいけない、のにね」
「一人なんて嫌だよ。姉さんが一緒にいてくれよ。弟を引っ張っていくのが姉の役目なんだろ?」
「ふふっ、そうしたい…けど、もう無理、よ。寂しいけど、姉離れの時が来た、の。これからは、あんた自身が全部決めて、歩いていきなさい」
秘薬の効果は個人差があるが、さほど長く持つものではない。
怪我の重さによっては、秘薬で生かされる時間はかなり短くなると聞く。
ソニアの呼吸が再び弱くなりはじめ、目の焦点も合わなくなってきている。
残念だが、もう時間だ。
俺とパーラも何か話したかったが、限られた時間はせめて姉弟のために使ってほしいと、ただ黙って二人を見守るだけだ。
ソニアも自分に残された時間がもうないと理解してか、自分を抱くロイドの手に自らの手を重ねた。
二つ重なった手を愛おし気に見つめ、微笑を浮かべたソニアは閉じていく瞼の重さに逆らわず、しかし最後までロイドへと言葉をかける。
「泣き虫なロイド…じゃあ私、は、風になるわ。風になって、世界をめぐって、あんたを守るの。お姉ちゃんが、あんたを守ってあげる…からね」
人は死ねば燃やされた肉体が煙となって天に上り、魂は星の意思と一つになる。
当たり前に考えられる概念だが、ソニアはそれに逆らうという。
ひとえに、弟への愛ゆえに。
「うっぅ、何言ってんだよ、そんなの無理に決まってんだろ」
もはやロイドは涙を堪えることなどできず、溢れるままにソニアの髪を濡らしていく。
抱えるその手に込める力を強くして、終わりのほんの一瞬まで、ソニアの声と体温を逃すまいとするロイドの姿を、ついに俺は見てられなくなった。
「無理じゃない、わ。そうしたいって…そうする、って」
―私が決めた
それはソニアがよく口にしていた、口癖だった。
その言葉を最後に、ソニアの呼吸が途絶える。
秘薬が与えた残り香のような時間は終わり、最後まで弟を愛していた姉の亡骸が残されるのみだ。
そして、残された弟は、姉の体に覆いかぶさるようにして声を上げずに泣き、その様はまるで冷たく暗い世界に沈んでいきそうな、そんな錯覚を覚える光景だった。
どれくらい経っただろうか。
体感的には一時間かそこらといったところだが、その間にロイドは十分に泣いて姉の死を受け入れ、涙を枯らした瞳は赤く充血しているが、表情は幾分かさっぱりとしたものとなっている。
ソニアの死は俺とパーラも辛いものではあるが、ロイドほど取り乱すほどではなく、今は遺体を整える時間を過ごしていた。
替えなどないため血で濡れた服はそのままだが、せめて剣で貫かれた傷跡ぐらいは隠そうと、衣服の合わせを変えたり、一部を裂いて別の部分と結んだりと、今やれることをやっていく。
一通り作業を終え、地面に横たえられたソニアの全身を見てみると、血塗れの部分にさえ目をつぶれば、穏やかな顔で眠る厳かな姿と言える程度には整えられたと思う。
この後アンデッド対策として遺体は焼かれることにはなるが、それまでの間は静かな別れの時間を過ごすのになにも不足はない。
「…ロイドさん、形見として持っていきますか?」
傍に膝をつき、綺麗な死に顔を時折撫でていたロイドに、先程の作業中に取り分けておいたソニアの持ち物を差し出す。
捕まっていたのだから当然だが、ほとんど持ち物らしいものはなかったものの、唯一、ポケットには小さな布袋が入っていた。
手に取った瞬間、爽やかな香りが辺りに漂う。
「香房か。ああ、もちろんだ」
攫われてかなり経っているというのに、香房はまだ匂いを保っており、この寒々しい空気を慰めるように、香りが俺達を包みこむ。
確かにソニアからはこんな匂いがよくしていたと、改めて思い出し、今は亡きソニアの笑顔が不意に頭をよぎった。
この世界で随分生きてきたが、やはり親しい人間の死に慣れることはない。
特に一緒に働き、酒を酌み交わした相手ともなれば尚更だ。
俺達でこうなのだから、ロイドの悲しみを本当の意味で理解することはできないだろう。
香房をロイドは胸元へしまうと、服の上からそっと撫でるように触れて目を閉じる。
そして、その閉じた目の端には一滴の涙があった。
匂いは記憶と強く結びつく。
ロイドの脳裏にも、きっとソニアの笑顔が浮かび上がっていると、そう思わせる姿だった。
「…二人とも、そろそろ姉さんの遺体を燃やそうか」
次にロイドの目が開いた時には、そこには迷いや憂いといった感情はなく、ただやるべき事を見据えた男の顔があった。
「いいの?私たちなら気にしないでいいよ。もう少しソニアさんと一緒にいても…」
姉と兄という違いはあれど、パーラもかつては家族を殺され、遺体を埋葬するところを見届けた。
パーラの方は幸いと言っていいのか、村の方針で遺体を燃やさなかったが、それでも永遠の別れを前に肉親のそばを離れがたい思いは身をもって知っている。
この寒さなら腐敗も遅いし、アンデッド化するにしてもまだまだ時間はある。
いつまでも水路に隠れてはいられないが、今のところ追っ手がここに迫っている気配はなく、もう少しだけソニアと一緒にいても困ることはない。
「いや、いいんだ。俺達もずっとはここにいられない。帝都を離れる前に、俺の手で姉さんの体を天に返したい」
アンデッド対策に遺体を燃やすのはこの世界の常識だが、身内を自分の手で焼くのは辛いものがある。
最後の孝行として身内の火葬を自分の手でという考えは少なくないが、それでもロイドはソニアの最期を看取ってからの時間がまだ浅い。
ソニアの火葬は俺が引き受けるつもりだったが、ロイドは自分の手でやるという。
だが、姉の体に火をつけるという行為が大きなストレスにならないか少し心配ではある。
とはいえ、ロイドも大の男だ。
姉を送る火を自分が使うことで、一つの区切りとするのかもしれない。
本人が望むのなら任せるとしよう。
「そうなると、ソニアさんをどこで火葬するかですが…」
「ここでやるしかないだろ。姉さんを担いで外に出て、火を使ったりしたら兵士にすぐ見つかるぞ」
「まぁそれしかないか。ロイドさんはいいんですか?ソニアさんをこんな寒くて暗い場所で火葬してしまっても」
決して清潔とはいえず、狭い水路は決して火葬に相応しい場所とはいいがたい。
あんな殺され方をしたのだから、せめて火葬ぐらいは厳かに執り行ってやりたいものだが。
「言わんとしていることはわかるが、姉さんなら気にしなさそうだがな」
確かに。
生前はカラッとした性格だったソニアだ。
死んだ後の自分の体に執着してロイドを危険に晒すよりは、さっさと火葬を済ませろと思っていそうな気がする。
「それに…」
「それに?」
「姉さんは風になったんだ。どこで火葬しようが、魂はもう世界をめぐってるさ」
それはソニアが死の間際に残した言葉だったが、まさかそれをロイドが口にするとは。
少し照れくさそうな顔をしているあたり、絶対にそうだと思い込んではいないにしても、姉の最後の願いに自分の思いを重ねてみたいのだろう。
しかしこれで火葬はここで行う方向で決まり、後は燃料となる油や薪といったものを用意するだけだ。
それぐらいなら街中で探せばすぐに手に入るだろうが、問題は街に侯爵の息のかかった兵がうろついている点だ。
のこのこと出て行って追いかけられ、しまいにこの隠れ場所まで嗅ぎつけられるのは流石にまずい。
そこらへんは二人も懸念しており、調達先について一緒になって頭をひねる。
「うーん、順当に考えれば適当な商人から買うのでいいんじゃない?」
「俺もそれがいいとは思うが…じきに日が落ちる頃だ。もう店じまいの時間なんじゃないか?」
基本的に火葬は明るいうちに行うのが慣例であり、夜に燃料を買いに来る人間はまずいない。
自然と薪を扱う商人の朝は早く、店じまいも早くなる。
今からその手の商人を訪ねたとして、売ってくれるかは時間的に厳しい。
「そうですね。閉店している扉を叩いて大声で燃料を要求する人間が、目立たないわけがない。兵士に見つかったら追いかけられますよ、絶対」
「となると、教会を頼るのがいいかもしれん。火葬のためってことなら、安く融通してくれるはずだ」
「でも教会ってもう帝国から手を引いてるんでしょ?」
「手を引いたといっても、去ったのは法術師や地位の高い連中がほとんどだそうだ。末端の、特に平民と触れ合う機会の多い人間は、教義を伝え守るって名目でそれなりの数が残ったらしい。帝都にもその口の者がいたはずだ」
ヤゼス教はほぼ全ての国に勢力を伸ばしている。
帝国も例外ではなかったが、反乱が起きた際に撤退したヤゼス教のお偉いさん以外には、この国で布教を続けるべく残った人間もいたようだ。
往々にして、末端の人間ほど宗教には真摯に取り組むもので、こんな状況でもヤゼス教としての活動を続けている人間には頭が下がる。
教会の仕事には冠婚葬祭の取り仕切りが多く、家計に余裕のない人間には火葬の際に必要な燃料を格安で融通することもしている。
つまり、教会になら火葬に使う燃料はストックしているはずで、そして教会はいつでも迷える者へ門を開いている。
俺達は金に困ってはいないが、それ以外の部分では困っているので、頼み込めば協力してくれるに違いない。
「では教会には俺が行きますよ。ロイドさんはパーラと一緒にここで待機を。何かあった時は、迷わずソニアさんを置いて逃げてください。いいですね?」
「ああ、わかっている。君こそ気をつけろよ。街は俺達を探す兵であふれてるんだからな」
「ええ、いざという時は全力で逃げますよ。パーラ、緊急時の合流地点の目印は覚えてるな?」
「もちろん」
「よし。じゃあ行ってくる」
ロイド達と別れ、人目がないのを確かめてから水路を出る。
冬の暮れは早く、もう辺りはかなり暗くなっていた。
今の帝都はあちこちで改修や取り壊しがあるらしく、逃亡者から見るとこの手の隠れ場所には事欠かない。
侯爵の息のかかった兵士も探す場所がありすぎて、ここに捜索の手が及ぶのはまだ先だろう。
一応追われる身なので物陰から物陰へ身を隠しながら移動し、ロイドから聞いていた教会の建つという場所へ向かうと、そこには一軒の小さな民家があるだけだった。
他に並ぶ家と外見はそう変わらず、一見すると教会の施設とは思えないが、よく見ると玄関扉にはヤゼス教の十字架が彫り込まれていた。
熱心な信者でも家にそんなことはしないので、この民家が帝都における今のヤゼス教の教会ということなのだろう。
他の国では立派な建物が教会としてあるのに、ルガツェン帝国ではこうも侘しくなるとは。
しかし清貧を旨としているのならこれはある意味で正しい姿とも言え、俺としてはこちらの方がむしろ好感を持てる。
建物の意外性に驚きはしたが、今は目的が先と扉をノックして少し待つ。
すぐに扉が開き、そこから老人が姿を見せた。
ヤゼス教における助祭の衣装を着ていることから、彼がここの責任者だろうか。
「おや、初めて見る方だ。何かお困りですかな?」
街の住民とは親しく付き合っているのだろう。
見慣れない人間を前に一瞬驚いたような顔を見せたが、すぐに神父としての表情を見せる。
「実は知り合いが今日亡くなりまして。弔おうと思いましたが、火葬に使う油などが足りていないのです。この時間では店が開いておらず、手に入れるのに難儀しています。よろしければ、教会で使う分を分けていただけないでしょうか?」
「おぉ、それはお気の毒に。しかし、火葬ならば朝を待ってはいかがかな?店も朝になれば開くし、この時期ならご遺体も傷みにくい。今は、亡くなった方とともに最後の時を過ごすとよいでしょう」
教会の人間なら、火葬は明るい内にと勧めるのが当然だ。
火葬に使う燃料を惜しむわけではなく、単純に聖職者として正しいものの考え方だ。
「いえ、あいにくですが今夜中に街を離れようと思っておりまして、朝を待つわけにはいきません。故人には生前世話になったので、ここを去る前に弔ってやりたいのです」
「なるほど、ではこうしたらいかがかな?そのご遺体を私が預かりましょう。朝には責任をもって、私が火葬しておきますよ」
それができないわけがあると、言えてしまえば楽なのだが、俺達のために、また目の前の老人のためにも、知らなくていいことはなるべく伏せたい。
「恩人ともいえる人物なのです。私の手で天に送ってやらねばと思っています」
「左様ですか。わかりました、すぐにご用意しましょう。少々お待ちを」
うまく切り抜けられたか。
このまま問答を続けていたら、面倒になって老人を気絶させてでも頂戴していかねばならなかったが、最後の手段を取らずに済んで何よりだ。
しばらくして老人が薪と油が入った木箱を手にして戻ってきた。
小振りの薪が二十かそこら、燃焼を助ける特殊な油が小壺で一つと、人一人を火葬するのに丁度良いといった量だ。
ずっしりとした重さのある木箱を受け取り、老人に代金を渡す。
手持ちにある銀貨の中で、この国で流通していそうなレベルの摩耗具合のものを全て放出した。
教会に火葬の燃料を求めてくる人間の多くは困窮していることが多く、大抵は施しとして無償に近い提供をするが、俺はその例に当てはまらないので、代金は過剰なぐらい払っておいた。
その額に驚かれてしまったが、急な用立てで助かったのはこちらなので、そのあたりはしっかりと礼を言ってその場を後にした。
水路へ戻ると、さっそく二人とともに火葬の準備に入る。
手順としては特に難しいことはなく、薪を並べて台にした上に遺体を乗せて、特殊な油を上からかけるか、布に染み込ませて遺体に被せるかして火をつけるだけだ。
今回は薪の上に乗せた遺体に油をかける方式だ。
薪を台にして組むのは俺とパーラがやり、ソニアをその上にのせて油をかけるのはロイドが引き受けた。
全員が無言では動き、悲しさや寂しさは確かにあるが、奇妙なことに決してそれだけではない、何か満たされるものを感じてもいた。
恐らく俺以外の二人もそれは同じで、不思議な雰囲気のまま、ソニアの遺体に火がつけられた。
薪よりも先に油が燃え、ソニアの体を舐めるように炎が覆う。
火葬の際に使われる油は、燃焼時に淡い青色の光が出るのが特徴だ。
これは高温の炎が出す青ではなく、特殊な油に含まれる成分が燃焼時に出す色だとか。
明るい時にはそうでもないが、暗いところで見るとこの青がなんとも幻想的で美しい。
人体が燃える時に出る嫌な臭いについ顔をしかめるが、しかし炎から目を逸らすことなく、俺達はソニアの体が灰になるまでをただジッと見続けた。
「じゃあやるよ?外に撒くだけでいいんだね?」
「ああ、頼む」
薪と油、ソニアと衣服だったものが混ざり合った灰を、パーラが風魔術で外へ飛ばす。
精密にコントロールされた風は、灰を一筋の雲のように連れていき、あっという間にソニアだったものは痕跡すらなく消え去ってしまった。
本当なら灰くらいはどこかに埋めてやりたかったが、ロイドの希望でこうすることになった。
連れて行くのは香房だけでいいと、これで風となったソニアは本当に世界をめぐるのだと、意外とロマンチストなことをロイドは口にしていたが、本人がいいなら俺が何か言うことはない。
一つの儀式を終え、俺達はすっかり闇に包まれた帝都の空を渡って城壁外へ向かう。
こんな時間でも街中では兵士が松明を片手に歩き回っており、侯爵はよほど俺達を逃がしたくないと見える。
ただ、扉こそ閉ざされているが城壁上の見張りはなぜか減っていたため、噴射装置であっさりと街の外へと降りることができた。
「すんなりと来れたね」
「街中に兵士を多く配置してるみたいだからな。城壁を越えるってことを考えないんだろ。ロイドさん、今日はもう飛空艇に戻りますか?」
「そうだな。例の…ミュリクだったか?そこにも行くべきなんだろうか、今日はもう、眠りたいな」
「え、行くんだ?別にこのまま国を出ちゃってもよくない?」
「それもいいが、そこに俺が会うべき人間がいるって言われたしな。まずは行くだけ行ってみるさ。二人はどうする?ここからは付き合う義理はないが、できれば一緒に来てくれると心強い」
「俺は構いませんよ。どうせ他に用事もないんで」
「私もいいよ。誰が待ってるのかちょっと気になるし。それに、ロイドさんを一人にするのも…ね」
少し茶化すように言うパーラだが、その目は真剣なものだ。
「おいおい、やめてくれ。子供じゃないんだ。寂しくて泣くって質でもないぞ」
「そうじゃなくて、たった一人の家族が死んだんだよ?一人でいちゃいけないよ、今は」
そう言うパーラの顔は慈愛と悲しみに満ちており、それを受けてロイドも何かを耐えるように目を伏せた。
今のロイドを一人にさせるべきか、それとも誰かと一緒にいるべきか、どちらがいいかを俺は断定できない。
多分、この場ではロイドの気持ちをパーラが一番理解できている。
そのパーラがこういうとなると、それは正しい見立てなのだろう。
「…二十年前、帝都を出たときは姉さんが一緒だった。だが今はいない。この国はいつだって、俺の大切なものを奪っていく。大切な……。俺は、一人になっちまったんだな」
「でも今は私達がいるよ。それじゃだめ?」
俺達はロイドの家族ではないが、それでも一緒に旅をして、戦ってきた絆がある。
独りぼっちになるロイドにずっと寄り添えるとは限らないが、今だけは一緒の悲しみを分け合うことはできる。
「…いや、そんなことはない。そうだな、今は君達がいる。十分だ」
ロイドがふと顔を上げるのにつられて俺も空を見上げてみると、雲の切れ間に煌めく星が見えた。
流れ星だ。
珍しいものではあるが全く見ないわけでもないその流れ星が、なんだか今はロイドに代わって天が流した涙のような気がしたのは、俺の感傷だろうか。
ただ、ポツリと雪の上に落ちた水の音が、その思いは間違いではないと教えてくれた気がした。
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