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コレガ マホウ トイウ チカラカ
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小鳥の鳴き声で目が覚めるのは、たとえ世界が異なっていても気持ちがいいのに変わりはない。
目覚めがスッキリだとこれからの活動にも張りが出る、気がする。
昨日行かなかった水場を確認がてら、顔を洗ってこよう。
起き上がり家を出て目星をつけていた場所に向けて歩く。
水は生活に欠かせないため、毎日人が行き交う結果道ができていたのだろう。
村の西側に藪を踏み慣らされた細い道があったので、そこを進んでいくとやはり川があった。
川幅は約4メートル、深さは恐らく50㎝程だろうか。
水は澄んでいて流れも穏やかだ。
川底には小魚が泳いでいる。
捕まえようにも道具がないし、なにより小さ過ぎて満腹になるには何匹必要になることやら。
ともかく顔を洗いさっぱりしたし、喉の渇きも癒すことができた。
水筒でもあれば水を持ち帰れるのだが。
村をもっとしっかり探せば桶ぐらいはあるかもしれない。
後で探してみよう。
ここで暮らす以上、自分以外誰もいないが故の孤独感に襲われることも心配したが、そもそも前世では家族から離れて、人がほとんど来ない山奥でほぼ自給自足の一人暮らしだったのだ。
今更人恋しい気持ちが芽生えることはないだろう。
だが、いずれ生活に余裕が出来たらペットを飼うのもいいかもしれない。
ベストなのは犬だが、こんな所に都合よく人になつく動物がいるかははなはだ疑問だ。
まずは小動物から始めるべきか。
頭の中で計画を立てていると、盛大に腹の音が鳴った。
そういえば昨日は何も食べていなかったため、ひどく腹が減っていた。
このまま食料の調達に行こうかと森のほうに目を向ける。
果物の一つでも見つかればと思った矢先、少し奥にある茅のような植物に見覚えのある蔓が絡まっている。
蔓についてる葉っぱの形も知ってるものと同じ。
運がいい。恐らく自然薯だろう。
あの蔓をたどった先の地面を掘ればきっとあるはず。
だが自然薯というのは掘り出すのに時間がかかる。
地中に曲がりくねった形で芋がなるので、ただ掘ればいいというものではない。
商品としての価値を損ねないために、なるべく形を保って掘り出すのは手間がかかる。
だが今はとにかく腹が減っていた。
別に売り物にするわけではないのでそこまで神経を使わずにさっさと掘ってしまおう。
途中で折れてしまったとしても食えれば問題ない。
空腹に急かされていざ掘ろうとして困った。
穴を掘る道具がない。
自然薯を掘る際、本来であれば先の細いシャベルを使うのだが、そんな気の利いた道具などここには無い。
手で掘ることも出来るが、えらく時間がかかる。
村のどこかにもしかしたら道具があるかもしれないが、一旦帰って、探して、使えるか点検して、またここに戻ってくる。
すべて順調にいけばいいが、そうもいかないだろう。
もしかしたら掘り出すのは今日中に終わらない可能性もある。
道具が無いと時間がかかる。
道具を探してくると時間が足りなくなる。
どっちを選んでも今日中に食べ物を手に入れることはできないだろう。
潔く諦めて他の食べられるものを探しに行くという選択肢もあるが、今目の前に食べ物があるのに見つかるかもわからない食料を求めて森をさ迷い歩く気になるだろうか。
俺はならない。
仕方ない。
泣く泣く俺は道具を探して戻ってくる道を選択した。
立ち上がる際、悔しさを抑えられず地面にバンバンと両手を叩きつけてしまった。
―この土さえ除ければ手に入ったのにっ!
無念さ、怒り、様々な思いが入り混り、強い渇望が内から湧き出た瞬間、異変は起きた。
叩きつけた両手を基点に周囲の地面がモコモコと蠢き始めたのだ。
なにか大きな管が地面の下をうねり動いているような、土をひっくり返す意思のようなものがあるかのようだ。
「なんだ…これ…モグラか!?にしては規模がでかい…ってか危ねぇっ!」
このまま留まると地面のうねりに飲み込まれるかもしれない。
それでなくとも地面がグネグネと動いているのだ。
その内立っていられなくなる恐れもある。
万が一を考え、異変の起こっていない後ろ側に向かって飛び石を刻むように下がった。
ここなら安全だろうと思う場所に立ち、冷静に見れるようになってくると、異変が起きている場所で段々と土の盛り上がりがはっきりとわかるようになってきた。
先ほど手を置いた場所から放射状に地面が掘り返され、土が除けられ、向かって右側がうず高く盛られていく。
どうやら下の土が右側に寄せられて行って、土が小山になっているようだ。
しばらくすると、徐々に土の動きが収まり、目の前には直径5メートルほどのちいさなクレーターが出来上がった。
もう落ち着いたのだろうと判断し、穴に向かってそっと近づく。
穴をのぞき込むと深さは1メートルってところか。
認めたくないがこの惨状を引き起こしたのは俺だろう。
突然巻き起こした超常現象に恐怖心や疑問が湧き上がってきたが、それはあまり重要ではなかった。
なぜなら、これによって本来時間がかかるはずだった穴掘りの工程を省き、目当てだった自然薯を手に入れることができたからだ。
自然薯は穴の中にポツンと残されていた。
所々折れているが、それは仕方のないことだ。
あれだけ土が動いたのだ。
当然の結果だろう。
改めて穴から自然薯を全て回収し、少し離れてから地面に並べてみた。
「…デカくね?自然薯ってここまで育つものだったか?」
こうしてみると相当太いし重い。
折れる前の長さは1メートルほどはあったようだ。
これはいい。
長い方だが、ありえない長さではない。
だが太さが尋常じゃない。
凸凹している分を差し引いても子供の頭ほどの太さがある。
2年や3年の大きさじゃないぞ。
見たことはないが10年物とかの感じっぽい?
これ本当に自然薯か?食って大丈夫なのか?とか疑問は色々ある。
だがそういった心配は食いでがありそうな食料の前には些細なことだった。
着ていた麻のシャツの首の穴を内側に巻き込むように袖を結び、即席の袋として中に収穫物を詰め込む。
3分の2が入ったところで袋はパンパンになってしまい、残ったものは可能な限り手で持っていく。
残りはさっき開いた穴に入れ、周りの土を被せていく。
もしかしたら、しばらく後でまた収穫できるかもしれない。
盛った土の近くに落ちていた、目印にいい感じの木の棒を、たった今埋めた穴の上に刺してその場を後にした。
川辺に戻ってくると、まずは芋についた土を洗って落とす。
ついでに自分も川に入って体についた汚れも落とす。
「おほぉー、冷てー。チョー気持ちいいーー」
夏の空気で火照った体には水が冷たくて気持ちい。
しばらくして水から上がり、川辺の大き目な石の上に横になり、日差しで体を乾かす。
落ち着いてくると先ほどのことが気になってきた。
土が勝手に横に退いて行って、自然薯だけが穴の底に残された。
あの場所がそういう現象が時たま起きる場所なのだろうか。
「いや、ないな。あるはずがない」
あれは俺にとって必要なタイミングで、最良の結果が残された。
つまり俺が無意識に望んだ現象が、何らかの超常の力によって引き起こされた。
土を掘るという意志をもって、土を除けたいと心の奥で強く望んだから起きたのだとしたら。
あれこれ考えてみたが、やはり答えは出ない。
いや、恐らく答えはもう出ている。
突然、異世界に迷い込み、まったく見知らぬ他人の肉体に魂だけが宿った。
もしこの世界では自分が知らない、なんらかの能力を日常的に使う世界だったとしたら?
この肉体が元々持っていた能力が、あの土を操る能力なのではないだろうか。
自分の目的を達成するために、意思をもって超常の力を起こす。
これではまるで『魔法』のようではないか。
いや、もうこれは『魔法』で決まりだろう。
異世界には魔法が存在する。
この一事を思うだけで、なんだか子供の頃に戻ったようにワクワクしてきた。
さらに想像は膨らんでいく。
魔法で世界に覇を唱える?
名を挙げて英雄に成り上がる?
それとも森の賢者として国を導く?
いやいや、そんな大袈裟なことに使うなんてとんでもない。
魔法を上手く使えば今の生活も便利になるのではないか?
今回は土だったが、他に火を出せれば煮炊きに使えるし、水を出せるようになればいちいち川に行かずに済む。
夢が広がってきた。
まずは自分の能力の応用範囲を探ることから始めよう。
何が出来て、何が出来ないのかを見極め、便利な使い方を開発する。
そうと決まればやる気が湧いてきた。
気力も充実してきた気がして体に熱が入ると、催促するように腹の音が鳴った。
「…とりあえず食事にしよう…」
来た時よりポジティブな気持ちが強まり、足取りも軽くなった気がする。
定めた目標が自分の中に落ち着いたところで入手した食材を抱えて家に帰っていった。
目覚めがスッキリだとこれからの活動にも張りが出る、気がする。
昨日行かなかった水場を確認がてら、顔を洗ってこよう。
起き上がり家を出て目星をつけていた場所に向けて歩く。
水は生活に欠かせないため、毎日人が行き交う結果道ができていたのだろう。
村の西側に藪を踏み慣らされた細い道があったので、そこを進んでいくとやはり川があった。
川幅は約4メートル、深さは恐らく50㎝程だろうか。
水は澄んでいて流れも穏やかだ。
川底には小魚が泳いでいる。
捕まえようにも道具がないし、なにより小さ過ぎて満腹になるには何匹必要になることやら。
ともかく顔を洗いさっぱりしたし、喉の渇きも癒すことができた。
水筒でもあれば水を持ち帰れるのだが。
村をもっとしっかり探せば桶ぐらいはあるかもしれない。
後で探してみよう。
ここで暮らす以上、自分以外誰もいないが故の孤独感に襲われることも心配したが、そもそも前世では家族から離れて、人がほとんど来ない山奥でほぼ自給自足の一人暮らしだったのだ。
今更人恋しい気持ちが芽生えることはないだろう。
だが、いずれ生活に余裕が出来たらペットを飼うのもいいかもしれない。
ベストなのは犬だが、こんな所に都合よく人になつく動物がいるかははなはだ疑問だ。
まずは小動物から始めるべきか。
頭の中で計画を立てていると、盛大に腹の音が鳴った。
そういえば昨日は何も食べていなかったため、ひどく腹が減っていた。
このまま食料の調達に行こうかと森のほうに目を向ける。
果物の一つでも見つかればと思った矢先、少し奥にある茅のような植物に見覚えのある蔓が絡まっている。
蔓についてる葉っぱの形も知ってるものと同じ。
運がいい。恐らく自然薯だろう。
あの蔓をたどった先の地面を掘ればきっとあるはず。
だが自然薯というのは掘り出すのに時間がかかる。
地中に曲がりくねった形で芋がなるので、ただ掘ればいいというものではない。
商品としての価値を損ねないために、なるべく形を保って掘り出すのは手間がかかる。
だが今はとにかく腹が減っていた。
別に売り物にするわけではないのでそこまで神経を使わずにさっさと掘ってしまおう。
途中で折れてしまったとしても食えれば問題ない。
空腹に急かされていざ掘ろうとして困った。
穴を掘る道具がない。
自然薯を掘る際、本来であれば先の細いシャベルを使うのだが、そんな気の利いた道具などここには無い。
手で掘ることも出来るが、えらく時間がかかる。
村のどこかにもしかしたら道具があるかもしれないが、一旦帰って、探して、使えるか点検して、またここに戻ってくる。
すべて順調にいけばいいが、そうもいかないだろう。
もしかしたら掘り出すのは今日中に終わらない可能性もある。
道具が無いと時間がかかる。
道具を探してくると時間が足りなくなる。
どっちを選んでも今日中に食べ物を手に入れることはできないだろう。
潔く諦めて他の食べられるものを探しに行くという選択肢もあるが、今目の前に食べ物があるのに見つかるかもわからない食料を求めて森をさ迷い歩く気になるだろうか。
俺はならない。
仕方ない。
泣く泣く俺は道具を探して戻ってくる道を選択した。
立ち上がる際、悔しさを抑えられず地面にバンバンと両手を叩きつけてしまった。
―この土さえ除ければ手に入ったのにっ!
無念さ、怒り、様々な思いが入り混り、強い渇望が内から湧き出た瞬間、異変は起きた。
叩きつけた両手を基点に周囲の地面がモコモコと蠢き始めたのだ。
なにか大きな管が地面の下をうねり動いているような、土をひっくり返す意思のようなものがあるかのようだ。
「なんだ…これ…モグラか!?にしては規模がでかい…ってか危ねぇっ!」
このまま留まると地面のうねりに飲み込まれるかもしれない。
それでなくとも地面がグネグネと動いているのだ。
その内立っていられなくなる恐れもある。
万が一を考え、異変の起こっていない後ろ側に向かって飛び石を刻むように下がった。
ここなら安全だろうと思う場所に立ち、冷静に見れるようになってくると、異変が起きている場所で段々と土の盛り上がりがはっきりとわかるようになってきた。
先ほど手を置いた場所から放射状に地面が掘り返され、土が除けられ、向かって右側がうず高く盛られていく。
どうやら下の土が右側に寄せられて行って、土が小山になっているようだ。
しばらくすると、徐々に土の動きが収まり、目の前には直径5メートルほどのちいさなクレーターが出来上がった。
もう落ち着いたのだろうと判断し、穴に向かってそっと近づく。
穴をのぞき込むと深さは1メートルってところか。
認めたくないがこの惨状を引き起こしたのは俺だろう。
突然巻き起こした超常現象に恐怖心や疑問が湧き上がってきたが、それはあまり重要ではなかった。
なぜなら、これによって本来時間がかかるはずだった穴掘りの工程を省き、目当てだった自然薯を手に入れることができたからだ。
自然薯は穴の中にポツンと残されていた。
所々折れているが、それは仕方のないことだ。
あれだけ土が動いたのだ。
当然の結果だろう。
改めて穴から自然薯を全て回収し、少し離れてから地面に並べてみた。
「…デカくね?自然薯ってここまで育つものだったか?」
こうしてみると相当太いし重い。
折れる前の長さは1メートルほどはあったようだ。
これはいい。
長い方だが、ありえない長さではない。
だが太さが尋常じゃない。
凸凹している分を差し引いても子供の頭ほどの太さがある。
2年や3年の大きさじゃないぞ。
見たことはないが10年物とかの感じっぽい?
これ本当に自然薯か?食って大丈夫なのか?とか疑問は色々ある。
だがそういった心配は食いでがありそうな食料の前には些細なことだった。
着ていた麻のシャツの首の穴を内側に巻き込むように袖を結び、即席の袋として中に収穫物を詰め込む。
3分の2が入ったところで袋はパンパンになってしまい、残ったものは可能な限り手で持っていく。
残りはさっき開いた穴に入れ、周りの土を被せていく。
もしかしたら、しばらく後でまた収穫できるかもしれない。
盛った土の近くに落ちていた、目印にいい感じの木の棒を、たった今埋めた穴の上に刺してその場を後にした。
川辺に戻ってくると、まずは芋についた土を洗って落とす。
ついでに自分も川に入って体についた汚れも落とす。
「おほぉー、冷てー。チョー気持ちいいーー」
夏の空気で火照った体には水が冷たくて気持ちい。
しばらくして水から上がり、川辺の大き目な石の上に横になり、日差しで体を乾かす。
落ち着いてくると先ほどのことが気になってきた。
土が勝手に横に退いて行って、自然薯だけが穴の底に残された。
あの場所がそういう現象が時たま起きる場所なのだろうか。
「いや、ないな。あるはずがない」
あれは俺にとって必要なタイミングで、最良の結果が残された。
つまり俺が無意識に望んだ現象が、何らかの超常の力によって引き起こされた。
土を掘るという意志をもって、土を除けたいと心の奥で強く望んだから起きたのだとしたら。
あれこれ考えてみたが、やはり答えは出ない。
いや、恐らく答えはもう出ている。
突然、異世界に迷い込み、まったく見知らぬ他人の肉体に魂だけが宿った。
もしこの世界では自分が知らない、なんらかの能力を日常的に使う世界だったとしたら?
この肉体が元々持っていた能力が、あの土を操る能力なのではないだろうか。
自分の目的を達成するために、意思をもって超常の力を起こす。
これではまるで『魔法』のようではないか。
いや、もうこれは『魔法』で決まりだろう。
異世界には魔法が存在する。
この一事を思うだけで、なんだか子供の頃に戻ったようにワクワクしてきた。
さらに想像は膨らんでいく。
魔法で世界に覇を唱える?
名を挙げて英雄に成り上がる?
それとも森の賢者として国を導く?
いやいや、そんな大袈裟なことに使うなんてとんでもない。
魔法を上手く使えば今の生活も便利になるのではないか?
今回は土だったが、他に火を出せれば煮炊きに使えるし、水を出せるようになればいちいち川に行かずに済む。
夢が広がってきた。
まずは自分の能力の応用範囲を探ることから始めよう。
何が出来て、何が出来ないのかを見極め、便利な使い方を開発する。
そうと決まればやる気が湧いてきた。
気力も充実してきた気がして体に熱が入ると、催促するように腹の音が鳴った。
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