35 / 465
この遺跡は逆に新しい
しおりを挟む
オレンジ色の光に照らされた小部屋に3人で入ると、たった今入って来たドアがユックリと閉まりだした。
「あぁ!まずいってアンディ!閉じ込められる!」
「大丈夫だ。閉じてもこっちから開けれるから心配するな。それよりも動くぞ。しっかり踏んばっとけ」
俺に背中を押されているシペアは閉じていくドアに危機感を覚えたが、この部屋はエレベータの役割があるはずなので問題ない。
オーゼルは難しい顔をしているが、特に慌てている様子はないので、シペアを落ち着かせるために肩をポンポンと叩いておく。
ドアが完全に閉じると、すぐに操作パネルと思われる白い光を見つけたのでそちらに近付いていく。
先程の外にあったプレートとは違い、此方はタッチパネルのような感じになっており、触れてみるとメニューがずらりと並んで表示されたが、その中にあった上下動を表す矢印のような項目があったので、下方向へと向かう矢印を押してみる。
ゴンという音と共に、あのエレベータ特有の浮遊感を感じたので、どうやら無事に下降したようだ。
遺跡にあって長年使われていない装置というのは不安を感じたが、意外とスムーズに動いているようで、これなら大丈夫だろうと自分を説得する。
「アンディ、少しよろしくて?」
「はい?なんでしょう?」
「うぇーなんだよ今の。気持ち悪ぃー」
真剣な顔で俺に話しかけてくるオーゼルに、ただならぬ雰囲気を感じて、少し身構えてしまったが、その後ろにいるシペアがエレベータの浮遊感に気持ち悪さを感じてお腹をさすっているのを見て緊張感は持てなかった。
「先程からあなたはこの遺跡の動かし方を知っているように動いていますわね。どういうことか説明していただける?」
どうやら俺がドアを開けたのにはじまり、エレベータを動かしたことがオーゼルに不審げ思えたようで、何故古代の遺跡を俺がこんなにあっさりと動かせるのかを問い詰めてきた。
「説明も何も、ただなんとなく動かしただけ「嘘ですわね」―…何を根拠にそう思うんです?」
バッサリと切り捨てられて少しムッとした口調になってしまう。
「ここの扉を開けた所までは幸運だったで済むでしょう。けれど、この部屋に入ってからの行動はまるで慣れ親しんだ宿に対するように迷いがありませんでしたわね?あなた、知っていたのではなくて?この部屋が移動するための装置だと!」
犯人を追い詰めた名探偵の様なオーゼルにズビシと指さされてしまい、どう返したものかと悩んでいると、それを俺が図星を突かれて狼狽えていると取ったようで、ドヤ顔を浮かべているオーゼルだが、その顔はちょっと腹立つな。
だがこの追い詰められ方は俺がザルモスにしたことを逆にされてるようで、変な気分だ。
まあ俺は別に悪いことをしているわけじゃないから追い詰められているわけでもないし、どうやって上手く説明しようか考えているだけなんだが。
そうしているとエレベータが止まったようで、微かな振動と共に入ってきたドアとは反対の壁が開き始めた。
全員が予想していなかった方向が開いたので、3人揃って意表を突かれた形になった。
ドアが開いたのでとりあえず出てみると、現在俺達の載ってきたエレベータの付いた場所はこの遺跡の内壁のかなり高い部分に設けられたメンテナンス用のキャットウォークと思われる所だった。
幅1メートル半ぐらいの通路は足元が網状になっており、本来は下の様子が見えるのだろうが、今はこの遺跡の中に明かりが無いため、暗闇が広がっている。
とりあえず明かりの確保が必要だと思い、持ってきていたランプを取り出して火をつける。
火花を出すくらいには魔力も回復しており、すぐに明るくなる。
「アンディ、俺のも頼む」
「あ、私のもお願いしますわ」
ズズイといっぺんに2つランプが突き出されたので、それぞれに火花を撃ちだしていっぺんに灯す。
火打石以外でランプに火を灯すのが珍しいらしく、明かりの灯ったランプを目の前に掲げて感心している2人。
「やっぱり魔術ってスゲー。俺も使えねーかな?」
「そうですわね。シペアに才能がないとは言いませんけど、あまり夢を見ないことですわよ?才能が有れば種火を出すぐらいはできるでしょうけど、ほとんどはその程度ですのよ」
ワイワイ言いながら騒ぐ2人を置いて、少し辺りを探ってみる。
今いる高さからだと明かりが地面までは届かないのだが、それでも多少の様子は分かって来たので、未だ話している2人の元へ戻り、行動の指針を決める。
「アンディみたいにこうパチンって火花ぐらいは行けないかな」
「あれを普通の魔術の範疇に入れていいのか、甚だ疑問ですわ。…あら、戻ってきましたのね。では…さっきの質問に答えて頂きましょうか!」
ちっ、覚えていたか。
なんやかんやで有耶無耶に出来そうだったんだが、そううまくはいかないか。
仕方ない、ある程度こちらの事情を明かしてとっとと話を終わらせよう。
「ハァ、わかりましたよ。そっちに座れる所がありましたからそこで話しませんか?」
「…いいでしょう。では案内をお願いします。シペア、行きますわよ」
手を突き出しながら魔術を発動させようとしているシペアに声をかけて、オーゼルが俺の後に続く。
置いて行かれると思ったのか、シペアも急いで着いて来た。
さっき見つけたベンチのある場所まで移動し、全員で腰かけてオーゼルの質問に答えていく。
とりあえずオーゼルの疑問であった遺跡の動かし方については、俺の故郷では似たような機構の道具が普及していて、それと同じようにいじってたら動いたという説明をした。
ついでに俺が記憶喪失だということも明かし、少しずつ思い出している記憶の中にあった知識であることも言ってある。
記憶喪失ということに衝撃を覚えたようだが、多少疑っている部分はありつつも、一応俺の言い分は信じてくれた。
「幾つか納得いかない部分もありましたが、概ね筋は通りますわね」
そりゃそうだろう。
なにせ嘘は記憶喪失の部分だけなのだから、微妙な嘘は真実味のある言葉に隠れると気付かれにくいものだ。
それ以外の部分では前世というとんでもない秘密があるのだが、それを今は言う必要はない。
「ではこれからのことについて話しましょう」
小型のランプ3つだけの明かりでは心許ないのでこの遺跡のどこかにあるはずの動力源を動かして機能の復活を試みたいと思う。
そうすれば探索もしやすくなるし、もしかしたらこの遺跡が何の施設だったのかもわかるかもしれない。
俺の予想では地下都市並みのシェルターか大規模生産の工場のどっちかだと思う。
「本当にこの中が明るくなるのか?俺にはとんてもない広さに感じるんだけど」
「ええ、城一つは軽くありそうですわよ?」
地下に広大な空間があるというのが2人には奇妙に映るのだろう。
俺だって映画や本の中でしかこれほどの地下空間は知らないのだから、本当は2人と同じくらいの驚きを抱くはずなのだが、先程のエレベータの存在がこの事実を俺に予想させていたのだ。
3人揃ってキャットウォークを歩いて行くと、端の方に螺旋階段があった。
「変な形の階段だなぁ。グルグル回ってるぞ」
シペアの好奇心をくすぐったようで、身を乗り出して下を覗き込むシペアが落ちないように隣に立って注意を払う。
「螺旋階段って言ってな、少ない面積で設置出来るんだ。ほら、ここの分だけで階段が続いてるだろ」
「なるほど、合理的ですわね」
オーゼルは螺旋階段の省スペースさと使われている技術の高さに気付いたようだ。
シペアはなぜ合理的なのか理解できないようで、オーゼルに説明してもらっている。
足元に気を付けて階段を下ると一番下に着いたのだが、地面の異変に気付いたのは俺だけだった。
「っとと、石畳か。へぇーすげーなぁ、継ぎ目がないのに全然凸凹が無いや」
「恐ろしく高度な技術で均されたとしか思えませんわね。一枚岩でも使っているのかしら?」
2人は石畳としか思っていないようだが、俺にはわかる。
これはコンクリートだ。
それも俺の知っている物よりも技術的にずっと先のものだと思う。
科学以外に魔術的な技術が使われているように感じた。
実際、今土魔術で干渉できるか試してみたのだが、全く受け付けてくれない。
岩ですら相応に魔力は喰うが干渉出来るのに、今立っているこの足元のコンクリは微塵も干渉できそうな気配がない。
恐らくだが、土魔術で地面を荒らされるのを防ぐために、何らかの魔術的な対策が取られているのだと思う。
それだけ安全に気を配って敷き詰められているのだろう。
俺の驚愕とは違う意味で驚いている2人に声をかけて探索を再開する。
今歩いている場所は多分だが道路だったと思われ、ランプに照らされて時折白線が目に入る。
片側2車線の計4車線で、昔はかなりの交通量があったのだろうか。
道路の左右には3階建てマンションほどの高さがある建物が等間隔に立っており、使われなくなって長い時間が経っているのにも関わらず、未だに綺麗な形を保っている。
道路を歩いて暫くすると十字路に着いたので、この辺りを少し探索してみると、案内板と思われるものを見つけた。
だが、どうやらこれは電子掲示板のような物で、かつては何かしら魔力を利用した技術で動いていたのだろうが、今はただのガラス板に過ぎない。
「ガラス?なぜこんなものがここに?家でもあったのかしら」
「へぇーこれ、ガラス?すげー透き通ってて綺麗じゃん」
本来の用途を知らないオーゼルは道の真ん中に、本来は窓に使うガラスが生えるように立っているのが妙に映るらしく、シペアは初めて見る透明度の高いガラスを触ったり叩いたりしている。
「シペア、あまり強く叩いてはいけませんよ。これほど薄くて透明なガラスなら壊れやすいでしょうから」
「いや、大丈夫ですよ。これはガラスとは違って、早々壊れる代物じゃないですから」
オーゼルに言われて素早くガラスから離れるシペアに苦笑しながら、強度からくる危険はないと説明する。
道のど真ん中に簡単に壊れるような物を置いておくわけがないし、アクリル板の存在を知っている身からすると、これほど進んだ技術の痕跡が感じられる遺跡であればそれぐらいは有り得そうな気がしていた。
「ガラスではない?ではこれはなんなのです?ガラス以外にこんなものが存在するはずが…あ、まさかそれもアンディの故郷にありますの?」
「全く同じではないですけど、似たようなのはありましたね。案内の立て札みたいなものだと思いますけど、今は何も表示されていませんね。動力が通ればわかるんですが」
恐る恐るといった感じで尋ねてくるオーゼルにシレッと言う。
ある程度、こちらの事情を話してしまった以上、今更隠すことも無いのでこのぐらいは言ってもいいだろう。
「…行って見たいですわね。アンディの故郷に。失われた技術が日常的にある光景…、あぁ!素晴らしいですわ!」
「姉ちゃん、大丈夫か?…おいアンディ、なんか姉ちゃんと目が合ってるのに見えてないみたいなんだけど」
シペアの言いたいのは焦点が合っていないということだろう。
「暫く放っておけ。そのうち正気に戻るから」
フーンと言ってオーゼルから離れて俺の方へと戻ってくるシペア。
オーゼルに構うより、俺が案内板を弄るのを見る方がおもしろそうだと判断したようだ。
自分の世界に浸っているオーゼルを放って置き、この案内板を調べてみる。
さっきのエレベータみたいに魔力を注げば動くかもしれないと思ったが、こちらの方は先程のとは違い、根元にあったメンテナンス用ハッチの中には緊急用のタンクのような物は存在しなかった。
エレベータと違って非常時の優先度はあまり高くないようだ。
その代わり、開いた蓋の裏側に何か書かれているのを見つけた。
恐らく、故障時の対処法や連絡先といったものが書かれているのではないだろうか。
「オーゼルさん。…オーゼルさん!「うぇへ…?は、はい何か!?」…これ、お願いします」
一度声をかけたが反応が無かったので、振り向いて強めに声を掛けた際に、とても年頃の令嬢が浮かべていいものではない、だらしない顔をしていたオーゼルに解読を頼む。
あのアヘ顔を見なかったことにしてやるのが優しさか。
「んー…これはちょっと難しいですわね。初めて見る単語も多いですし、何よりも言い回しが複雑すぎますわ」
機械の故障時の対処が書かれているはずなので、専門的な言葉が並ぶのは予想していた。
「連絡先や管理事務所とかの場所に関するものは無いですか?最初か最後の方に書かれてると思うんですけど」
「これかしら?管理団の先、2番の1通り井戸隣、なんのことやらわかりませんわね」
まあ翻訳の言葉が元々不完全だと想定していた俺からすると、これでも十分なヒントになる。
2番というのはおそらく2ブロック、1通りはストリート1、井戸というのは恐らく水道のことだろう。
つまり2ブロック1番ストリートにある水道施設の隣に管理事務所があるということだ。
問題は今いる場所がどこかということだが、それもすぐにわかった。
先程の文章に現在地が書かれており、しかもメンテナンスの順番を分かりやすくするためだろうと思われる、次の案内板の番号が載っていた。
早速逆算してすぐ近くにある別の案内板に向かい、そこのメンテナンスハッチを開けて中にあった文字を読む。
すると今いるこの場所が2ブロックの1番ストリートだと判明した。
辺りを見渡すと、一際大きな建物が目に入る。
3階建ての建物が多い中、その建物だけが5階建てほどの大きさだ。
「あそこに行って見ましょう。もしかしたら何かわかるかもしれませんよ」
「あら、周りのものより大きい建物ですわね。領主の館かしら?」
なかなかウィットにとんだ冗談を言うオーゼルに俺も何か気の利いた返し方をしようと考えたが、シペアの上げた声に一気にその気持ちが覚めていった。
「え!まじで!やべぇ、俺こんな格好で怒られないかな」
シペア、天然か。
「誰にだよ。今ここらにいるのは俺ら3人だけだろ」
その建物に近付いてみると、入り口らしき場所は完全に封鎖されており、2メートルほどの幅はある金属製の扉はしっかりと閉じられていた。
「他の建物とは違ってここだけ厳重に閉ざされてますのね。何か大事なものがしまってあるのかしら?」
ゴンゴンと鉄扉を叩きながらそう推測するオーゼルの考えはある意味では合っている。
「ここを調べられると困るから厳重に閉じたというのが正しいのかもしれませんよ?」
もしかしたらここから遺跡の情報が手に入るかもしれないと思うと、なんとしてでも開けたいところだ。
取っ手を持って押したり引いたり左右に引っ張ったりしたがやはり開きそうもなく、エレベータとの時のように開閉装置が周りに無いか探ってみるが、見当たらず。
こうなっては仕方ない、最後の手だ。
片方のドアの取っ手を握り、強化魔術で力を上げて一気に押す。
巨大な岩を押しているような手応えが返ってくるが、構わず押し続けると徐々に動き始める。
秒速数センチずつ開いていき、何とか人が通れそうなくらいの隙間は確保できた。
魔力が満足に回復していない状態ではこの状態を維持できるのは数秒ほどしかない。
「2人とも!速く中へ!」
その場で踏みとどまり隙間を維持し、2人を中へと滑り込ませる。
2人が中に入ったのを確認したら、俺も取っ手から手を放して飛び込んだ。
無事中に入ることが出来ると、先ほどまで開けていた扉がギギギという音を立てて閉じていく。
再び魔力が枯渇気味になってしまい、あまりの怠さに今度こそ地面にへたり込んでしまった。
「アンディ、大丈夫か?すげー辛そうだぞ」
「ああ、大丈夫だ。魔力が切れかけたから怠いだけだ。少し休めばよくなるさ」
座り込んだ俺の様子が気になるようで、心配そうに声をかけてくるシペアにそう答えて、少しの休憩をとる。
さっきの強化魔術は単純に筋力をアシストしただけのものなので、効果はすごいのだが単位時間当たりの魔力消費がでかいのが難点か。
「あれだけのことをしておいて、少し休むだけで済むなんて一体どんな体をしてますの?」
先程のドアの開け方に呆れ顔のオーゼルから俺の生き物としての存在を疑う発言が飛び出すが、それだけの無茶ができたのは強化魔術があったおかげだというのも説明したいが、今はそんな気力もない。
「魔力が回復するまで暫く休ませてもらいますけど、その間の暇つぶしにパルセア文字のことを教えてもらっていいですか?」
「ええ、構いませんわよ。そうですわねぇ、どこから話したら…」
3人車座になってその場に座り、オーゼル先生によるパルセア語講座が開講された。
遺跡の大半は太古の昔に栄えた魔導文明の物が多く、その遺跡で多く見つかる文字がパルセア文字だ。
この文字の発見当初はどの国の文字とも異なるため、解読が困難だとされていたのだが、ある時、一気にパルセア文字の解読が進む切っ掛けとなる出来事が起きる。
「わかった!パルセア文字の読める人間が蘇った!」
突然俺の横にいたシペアが大声で叫ぶものだから、ビクッと反応してしまった。
「はい、違いまーす。正解は「幼児向けの絵本が見つかったから…?」―ちょ、それ私が言う台詞でしてよ!」
独り言ぐらいのつもりで呟いたのだが、固まって話をしていた上に周りに音が響きやすいせいもあって、思いの外大きい声になってしまい、オーゼルの台詞を奪った形になった為不興を買ってしまったようだ。
いじけてしまったオーゼルを慰めるのに少し時間を使ったが、何とか立ち直って話を続けてもらえた。
ある遺跡から見つかった子供向けの教本からパルセア文字の単語と僅かな言い回しを解読し、現在の遺跡内に残される文字の判読に役立っている。
いわゆる絵本しか解読の手本がないため、あれほどに不自然な文章の解読がなされるのだろう。
何となくパルセア語の現在の形になった理由が見えた所で、活動に支障がない程度には魔力も回復したので探索を再開することにした。
「あぁ!まずいってアンディ!閉じ込められる!」
「大丈夫だ。閉じてもこっちから開けれるから心配するな。それよりも動くぞ。しっかり踏んばっとけ」
俺に背中を押されているシペアは閉じていくドアに危機感を覚えたが、この部屋はエレベータの役割があるはずなので問題ない。
オーゼルは難しい顔をしているが、特に慌てている様子はないので、シペアを落ち着かせるために肩をポンポンと叩いておく。
ドアが完全に閉じると、すぐに操作パネルと思われる白い光を見つけたのでそちらに近付いていく。
先程の外にあったプレートとは違い、此方はタッチパネルのような感じになっており、触れてみるとメニューがずらりと並んで表示されたが、その中にあった上下動を表す矢印のような項目があったので、下方向へと向かう矢印を押してみる。
ゴンという音と共に、あのエレベータ特有の浮遊感を感じたので、どうやら無事に下降したようだ。
遺跡にあって長年使われていない装置というのは不安を感じたが、意外とスムーズに動いているようで、これなら大丈夫だろうと自分を説得する。
「アンディ、少しよろしくて?」
「はい?なんでしょう?」
「うぇーなんだよ今の。気持ち悪ぃー」
真剣な顔で俺に話しかけてくるオーゼルに、ただならぬ雰囲気を感じて、少し身構えてしまったが、その後ろにいるシペアがエレベータの浮遊感に気持ち悪さを感じてお腹をさすっているのを見て緊張感は持てなかった。
「先程からあなたはこの遺跡の動かし方を知っているように動いていますわね。どういうことか説明していただける?」
どうやら俺がドアを開けたのにはじまり、エレベータを動かしたことがオーゼルに不審げ思えたようで、何故古代の遺跡を俺がこんなにあっさりと動かせるのかを問い詰めてきた。
「説明も何も、ただなんとなく動かしただけ「嘘ですわね」―…何を根拠にそう思うんです?」
バッサリと切り捨てられて少しムッとした口調になってしまう。
「ここの扉を開けた所までは幸運だったで済むでしょう。けれど、この部屋に入ってからの行動はまるで慣れ親しんだ宿に対するように迷いがありませんでしたわね?あなた、知っていたのではなくて?この部屋が移動するための装置だと!」
犯人を追い詰めた名探偵の様なオーゼルにズビシと指さされてしまい、どう返したものかと悩んでいると、それを俺が図星を突かれて狼狽えていると取ったようで、ドヤ顔を浮かべているオーゼルだが、その顔はちょっと腹立つな。
だがこの追い詰められ方は俺がザルモスにしたことを逆にされてるようで、変な気分だ。
まあ俺は別に悪いことをしているわけじゃないから追い詰められているわけでもないし、どうやって上手く説明しようか考えているだけなんだが。
そうしているとエレベータが止まったようで、微かな振動と共に入ってきたドアとは反対の壁が開き始めた。
全員が予想していなかった方向が開いたので、3人揃って意表を突かれた形になった。
ドアが開いたのでとりあえず出てみると、現在俺達の載ってきたエレベータの付いた場所はこの遺跡の内壁のかなり高い部分に設けられたメンテナンス用のキャットウォークと思われる所だった。
幅1メートル半ぐらいの通路は足元が網状になっており、本来は下の様子が見えるのだろうが、今はこの遺跡の中に明かりが無いため、暗闇が広がっている。
とりあえず明かりの確保が必要だと思い、持ってきていたランプを取り出して火をつける。
火花を出すくらいには魔力も回復しており、すぐに明るくなる。
「アンディ、俺のも頼む」
「あ、私のもお願いしますわ」
ズズイといっぺんに2つランプが突き出されたので、それぞれに火花を撃ちだしていっぺんに灯す。
火打石以外でランプに火を灯すのが珍しいらしく、明かりの灯ったランプを目の前に掲げて感心している2人。
「やっぱり魔術ってスゲー。俺も使えねーかな?」
「そうですわね。シペアに才能がないとは言いませんけど、あまり夢を見ないことですわよ?才能が有れば種火を出すぐらいはできるでしょうけど、ほとんどはその程度ですのよ」
ワイワイ言いながら騒ぐ2人を置いて、少し辺りを探ってみる。
今いる高さからだと明かりが地面までは届かないのだが、それでも多少の様子は分かって来たので、未だ話している2人の元へ戻り、行動の指針を決める。
「アンディみたいにこうパチンって火花ぐらいは行けないかな」
「あれを普通の魔術の範疇に入れていいのか、甚だ疑問ですわ。…あら、戻ってきましたのね。では…さっきの質問に答えて頂きましょうか!」
ちっ、覚えていたか。
なんやかんやで有耶無耶に出来そうだったんだが、そううまくはいかないか。
仕方ない、ある程度こちらの事情を明かしてとっとと話を終わらせよう。
「ハァ、わかりましたよ。そっちに座れる所がありましたからそこで話しませんか?」
「…いいでしょう。では案内をお願いします。シペア、行きますわよ」
手を突き出しながら魔術を発動させようとしているシペアに声をかけて、オーゼルが俺の後に続く。
置いて行かれると思ったのか、シペアも急いで着いて来た。
さっき見つけたベンチのある場所まで移動し、全員で腰かけてオーゼルの質問に答えていく。
とりあえずオーゼルの疑問であった遺跡の動かし方については、俺の故郷では似たような機構の道具が普及していて、それと同じようにいじってたら動いたという説明をした。
ついでに俺が記憶喪失だということも明かし、少しずつ思い出している記憶の中にあった知識であることも言ってある。
記憶喪失ということに衝撃を覚えたようだが、多少疑っている部分はありつつも、一応俺の言い分は信じてくれた。
「幾つか納得いかない部分もありましたが、概ね筋は通りますわね」
そりゃそうだろう。
なにせ嘘は記憶喪失の部分だけなのだから、微妙な嘘は真実味のある言葉に隠れると気付かれにくいものだ。
それ以外の部分では前世というとんでもない秘密があるのだが、それを今は言う必要はない。
「ではこれからのことについて話しましょう」
小型のランプ3つだけの明かりでは心許ないのでこの遺跡のどこかにあるはずの動力源を動かして機能の復活を試みたいと思う。
そうすれば探索もしやすくなるし、もしかしたらこの遺跡が何の施設だったのかもわかるかもしれない。
俺の予想では地下都市並みのシェルターか大規模生産の工場のどっちかだと思う。
「本当にこの中が明るくなるのか?俺にはとんてもない広さに感じるんだけど」
「ええ、城一つは軽くありそうですわよ?」
地下に広大な空間があるというのが2人には奇妙に映るのだろう。
俺だって映画や本の中でしかこれほどの地下空間は知らないのだから、本当は2人と同じくらいの驚きを抱くはずなのだが、先程のエレベータの存在がこの事実を俺に予想させていたのだ。
3人揃ってキャットウォークを歩いて行くと、端の方に螺旋階段があった。
「変な形の階段だなぁ。グルグル回ってるぞ」
シペアの好奇心をくすぐったようで、身を乗り出して下を覗き込むシペアが落ちないように隣に立って注意を払う。
「螺旋階段って言ってな、少ない面積で設置出来るんだ。ほら、ここの分だけで階段が続いてるだろ」
「なるほど、合理的ですわね」
オーゼルは螺旋階段の省スペースさと使われている技術の高さに気付いたようだ。
シペアはなぜ合理的なのか理解できないようで、オーゼルに説明してもらっている。
足元に気を付けて階段を下ると一番下に着いたのだが、地面の異変に気付いたのは俺だけだった。
「っとと、石畳か。へぇーすげーなぁ、継ぎ目がないのに全然凸凹が無いや」
「恐ろしく高度な技術で均されたとしか思えませんわね。一枚岩でも使っているのかしら?」
2人は石畳としか思っていないようだが、俺にはわかる。
これはコンクリートだ。
それも俺の知っている物よりも技術的にずっと先のものだと思う。
科学以外に魔術的な技術が使われているように感じた。
実際、今土魔術で干渉できるか試してみたのだが、全く受け付けてくれない。
岩ですら相応に魔力は喰うが干渉出来るのに、今立っているこの足元のコンクリは微塵も干渉できそうな気配がない。
恐らくだが、土魔術で地面を荒らされるのを防ぐために、何らかの魔術的な対策が取られているのだと思う。
それだけ安全に気を配って敷き詰められているのだろう。
俺の驚愕とは違う意味で驚いている2人に声をかけて探索を再開する。
今歩いている場所は多分だが道路だったと思われ、ランプに照らされて時折白線が目に入る。
片側2車線の計4車線で、昔はかなりの交通量があったのだろうか。
道路の左右には3階建てマンションほどの高さがある建物が等間隔に立っており、使われなくなって長い時間が経っているのにも関わらず、未だに綺麗な形を保っている。
道路を歩いて暫くすると十字路に着いたので、この辺りを少し探索してみると、案内板と思われるものを見つけた。
だが、どうやらこれは電子掲示板のような物で、かつては何かしら魔力を利用した技術で動いていたのだろうが、今はただのガラス板に過ぎない。
「ガラス?なぜこんなものがここに?家でもあったのかしら」
「へぇーこれ、ガラス?すげー透き通ってて綺麗じゃん」
本来の用途を知らないオーゼルは道の真ん中に、本来は窓に使うガラスが生えるように立っているのが妙に映るらしく、シペアは初めて見る透明度の高いガラスを触ったり叩いたりしている。
「シペア、あまり強く叩いてはいけませんよ。これほど薄くて透明なガラスなら壊れやすいでしょうから」
「いや、大丈夫ですよ。これはガラスとは違って、早々壊れる代物じゃないですから」
オーゼルに言われて素早くガラスから離れるシペアに苦笑しながら、強度からくる危険はないと説明する。
道のど真ん中に簡単に壊れるような物を置いておくわけがないし、アクリル板の存在を知っている身からすると、これほど進んだ技術の痕跡が感じられる遺跡であればそれぐらいは有り得そうな気がしていた。
「ガラスではない?ではこれはなんなのです?ガラス以外にこんなものが存在するはずが…あ、まさかそれもアンディの故郷にありますの?」
「全く同じではないですけど、似たようなのはありましたね。案内の立て札みたいなものだと思いますけど、今は何も表示されていませんね。動力が通ればわかるんですが」
恐る恐るといった感じで尋ねてくるオーゼルにシレッと言う。
ある程度、こちらの事情を話してしまった以上、今更隠すことも無いのでこのぐらいは言ってもいいだろう。
「…行って見たいですわね。アンディの故郷に。失われた技術が日常的にある光景…、あぁ!素晴らしいですわ!」
「姉ちゃん、大丈夫か?…おいアンディ、なんか姉ちゃんと目が合ってるのに見えてないみたいなんだけど」
シペアの言いたいのは焦点が合っていないということだろう。
「暫く放っておけ。そのうち正気に戻るから」
フーンと言ってオーゼルから離れて俺の方へと戻ってくるシペア。
オーゼルに構うより、俺が案内板を弄るのを見る方がおもしろそうだと判断したようだ。
自分の世界に浸っているオーゼルを放って置き、この案内板を調べてみる。
さっきのエレベータみたいに魔力を注げば動くかもしれないと思ったが、こちらの方は先程のとは違い、根元にあったメンテナンス用ハッチの中には緊急用のタンクのような物は存在しなかった。
エレベータと違って非常時の優先度はあまり高くないようだ。
その代わり、開いた蓋の裏側に何か書かれているのを見つけた。
恐らく、故障時の対処法や連絡先といったものが書かれているのではないだろうか。
「オーゼルさん。…オーゼルさん!「うぇへ…?は、はい何か!?」…これ、お願いします」
一度声をかけたが反応が無かったので、振り向いて強めに声を掛けた際に、とても年頃の令嬢が浮かべていいものではない、だらしない顔をしていたオーゼルに解読を頼む。
あのアヘ顔を見なかったことにしてやるのが優しさか。
「んー…これはちょっと難しいですわね。初めて見る単語も多いですし、何よりも言い回しが複雑すぎますわ」
機械の故障時の対処が書かれているはずなので、専門的な言葉が並ぶのは予想していた。
「連絡先や管理事務所とかの場所に関するものは無いですか?最初か最後の方に書かれてると思うんですけど」
「これかしら?管理団の先、2番の1通り井戸隣、なんのことやらわかりませんわね」
まあ翻訳の言葉が元々不完全だと想定していた俺からすると、これでも十分なヒントになる。
2番というのはおそらく2ブロック、1通りはストリート1、井戸というのは恐らく水道のことだろう。
つまり2ブロック1番ストリートにある水道施設の隣に管理事務所があるということだ。
問題は今いる場所がどこかということだが、それもすぐにわかった。
先程の文章に現在地が書かれており、しかもメンテナンスの順番を分かりやすくするためだろうと思われる、次の案内板の番号が載っていた。
早速逆算してすぐ近くにある別の案内板に向かい、そこのメンテナンスハッチを開けて中にあった文字を読む。
すると今いるこの場所が2ブロックの1番ストリートだと判明した。
辺りを見渡すと、一際大きな建物が目に入る。
3階建ての建物が多い中、その建物だけが5階建てほどの大きさだ。
「あそこに行って見ましょう。もしかしたら何かわかるかもしれませんよ」
「あら、周りのものより大きい建物ですわね。領主の館かしら?」
なかなかウィットにとんだ冗談を言うオーゼルに俺も何か気の利いた返し方をしようと考えたが、シペアの上げた声に一気にその気持ちが覚めていった。
「え!まじで!やべぇ、俺こんな格好で怒られないかな」
シペア、天然か。
「誰にだよ。今ここらにいるのは俺ら3人だけだろ」
その建物に近付いてみると、入り口らしき場所は完全に封鎖されており、2メートルほどの幅はある金属製の扉はしっかりと閉じられていた。
「他の建物とは違ってここだけ厳重に閉ざされてますのね。何か大事なものがしまってあるのかしら?」
ゴンゴンと鉄扉を叩きながらそう推測するオーゼルの考えはある意味では合っている。
「ここを調べられると困るから厳重に閉じたというのが正しいのかもしれませんよ?」
もしかしたらここから遺跡の情報が手に入るかもしれないと思うと、なんとしてでも開けたいところだ。
取っ手を持って押したり引いたり左右に引っ張ったりしたがやはり開きそうもなく、エレベータとの時のように開閉装置が周りに無いか探ってみるが、見当たらず。
こうなっては仕方ない、最後の手だ。
片方のドアの取っ手を握り、強化魔術で力を上げて一気に押す。
巨大な岩を押しているような手応えが返ってくるが、構わず押し続けると徐々に動き始める。
秒速数センチずつ開いていき、何とか人が通れそうなくらいの隙間は確保できた。
魔力が満足に回復していない状態ではこの状態を維持できるのは数秒ほどしかない。
「2人とも!速く中へ!」
その場で踏みとどまり隙間を維持し、2人を中へと滑り込ませる。
2人が中に入ったのを確認したら、俺も取っ手から手を放して飛び込んだ。
無事中に入ることが出来ると、先ほどまで開けていた扉がギギギという音を立てて閉じていく。
再び魔力が枯渇気味になってしまい、あまりの怠さに今度こそ地面にへたり込んでしまった。
「アンディ、大丈夫か?すげー辛そうだぞ」
「ああ、大丈夫だ。魔力が切れかけたから怠いだけだ。少し休めばよくなるさ」
座り込んだ俺の様子が気になるようで、心配そうに声をかけてくるシペアにそう答えて、少しの休憩をとる。
さっきの強化魔術は単純に筋力をアシストしただけのものなので、効果はすごいのだが単位時間当たりの魔力消費がでかいのが難点か。
「あれだけのことをしておいて、少し休むだけで済むなんて一体どんな体をしてますの?」
先程のドアの開け方に呆れ顔のオーゼルから俺の生き物としての存在を疑う発言が飛び出すが、それだけの無茶ができたのは強化魔術があったおかげだというのも説明したいが、今はそんな気力もない。
「魔力が回復するまで暫く休ませてもらいますけど、その間の暇つぶしにパルセア文字のことを教えてもらっていいですか?」
「ええ、構いませんわよ。そうですわねぇ、どこから話したら…」
3人車座になってその場に座り、オーゼル先生によるパルセア語講座が開講された。
遺跡の大半は太古の昔に栄えた魔導文明の物が多く、その遺跡で多く見つかる文字がパルセア文字だ。
この文字の発見当初はどの国の文字とも異なるため、解読が困難だとされていたのだが、ある時、一気にパルセア文字の解読が進む切っ掛けとなる出来事が起きる。
「わかった!パルセア文字の読める人間が蘇った!」
突然俺の横にいたシペアが大声で叫ぶものだから、ビクッと反応してしまった。
「はい、違いまーす。正解は「幼児向けの絵本が見つかったから…?」―ちょ、それ私が言う台詞でしてよ!」
独り言ぐらいのつもりで呟いたのだが、固まって話をしていた上に周りに音が響きやすいせいもあって、思いの外大きい声になってしまい、オーゼルの台詞を奪った形になった為不興を買ってしまったようだ。
いじけてしまったオーゼルを慰めるのに少し時間を使ったが、何とか立ち直って話を続けてもらえた。
ある遺跡から見つかった子供向けの教本からパルセア文字の単語と僅かな言い回しを解読し、現在の遺跡内に残される文字の判読に役立っている。
いわゆる絵本しか解読の手本がないため、あれほどに不自然な文章の解読がなされるのだろう。
何となくパルセア語の現在の形になった理由が見えた所で、活動に支障がない程度には魔力も回復したので探索を再開することにした。
93
あなたにおすすめの小説
ヒロイン? 玉の輿? 興味ありませんわ! お嬢様はお仕事がしたい様です。
彩世幻夜
ファンタジー
「働きもせずぐうたら三昧なんてつまんないわ!」
お嬢様はご不満の様です。
海に面した豊かな国。その港から船で一泊二日の距離にある少々大きな離島を領地に持つとある伯爵家。
名前こそ辺境伯だが、両親も現当主の祖父母夫妻も王都から戻って来ない。
使用人と領民しか居ない田舎の島ですくすく育った精霊姫に、『玉の輿』と羨まれる様な縁談が持ち込まれるが……。
王道中の王道の俺様王子様と地元民のイケメンと。そして隠された王子と。
乙女ゲームのヒロインとして生まれながら、その役を拒否するお嬢様が選ぶのは果たして誰だ?
※5/4完結しました。
新作
【あやかしたちのとまり木の日常】
連載開始しました
転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~
志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。
自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。
しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。
身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。
しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた!
第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。
側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。
厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。
後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。
【草】の錬金術師は辺境の地で【薬屋】をしながらスローライフを楽しみたい!
雪奈 水無月
ファンタジー
山と愛犬を愛する三十二歳サラリーマン・山神慎太郎。
愛犬を庇って命を落とした彼は、女神の手によって異世界へ転生する。
――ただし、十五歳の少女・ネムとして。
授けられた能力は【草限定の錬金術】。
使える素材は草のみ。
しかしその草は、回復薬にも、武器にも、時には常識外れの奇跡を生み出す。
新しい身体に戸惑いながらも、
「生きていること」そのものを大切にするネムは、静かに世界を歩き始める。
弱そう? 地味?
いいえ――草は世界に最も溢れる“最強素材”。
草を極めた少女が、やがて世界の常識を塗り替える。
最弱素材から始まる、成り上がり異世界ファンタジー!
氷弾の魔術師
カタナヅキ
ファンタジー
――上級魔法なんか必要ない、下級魔法一つだけで魔導士を目指す少年の物語――
平民でありながら魔法が扱う才能がある事が判明した少年「コオリ」は魔法学園に入学する事が決まった。彼の国では魔法の適性がある人間は魔法学園に入学する決まりがあり、急遽コオリは魔法学園が存在する王都へ向かう事になった。しかし、王都に辿り着く前に彼は自分と同世代の魔術師と比べて圧倒的に魔力量が少ない事が発覚した。
しかし、魔力が少ないからこそ利点がある事を知ったコオリは決意した。他の者は一日でも早く上級魔法の習得に励む中、コオリは自分が扱える下級魔法だけを極め、一流の魔術師の証である「魔導士」の称号を得る事を誓う。そして他の魔術師は少年が強くなる事で気づかされていく。魔力が少ないというのは欠点とは限らず、むしろ優れた才能になり得る事を――
※旧作「下級魔導士と呼ばれた少年」のリメイクとなりますが、設定と物語の内容が大きく変わります。
【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される
秋.水
ファンタジー
記憶を無くした主人公は魔法使い。しかし目立つ事や面倒な事が嫌い。それでも次々増える家族を守るため、必死にトラブルを回避して、目立たないようにあの手この手を使っているうちに、自分がかなりヤバい立場に立たされている事を知ってしまう。しかも異種族ハーレムの主人公なのにDTでEDだったりして大変な生活が続いていく。最後には世界が・・・・。まったり系異種族ハーレムもの?です。
小さいぼくは最強魔術師一族!目指せ!もふもふスローライフ!
ひより のどか
ファンタジー
ねぇたまと、妹と、もふもふな家族と幸せに暮らしていたフィリー。そんな日常が崩れ去った。
一見、まだ小さな子どもたち。実は国が支配したがる程の大きな力を持っていて?
主人公フィリーは、実は違う世界で生きた記憶を持っていて?前世の記憶を活かして魔法の世界で代活躍?
「ねぇたまたちは、ぼくがまもりゅのら!」
『わふっ』
もふもふな家族も一緒にたくましく楽しく生きてくぞ!
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる