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教壇に咲く夜葬花
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ウィンガルに人工翼の説明をした結果、飛空艇開発に応用は難しいという結論になった。
彼らが欲しているのは、あくまでも飛空艇のような人が乗って空を移動するタイプのものなので、人工翼のように個人が装着して飛ぶのは求められていないようだ。
とはいえ、今のところ飛空艇以外で空を飛んだ実績は見過ごせないらしく、開発者以外で人工翼を扱った人間の感想を聞こうと、後日ラサン族の誰か、恐らくクレインになるだろうが、学園へ呼び出すことが決まった。
こちらからラサン族の村へと連絡をして、誰かしらが学園にやって来るまでの間、ウィンガル達もディケットの街で滞在するそうだ。
そうなるとグロウズとキャシーも一緒にとどまることになるわけだが、キャシーはともかく、グロウズはあの顔を見るたびに殴りたくなってしまうので、出来れば早々に帰ってほしい。
しかし今現在のグロウズはキャシー預かりの身なので、一人だけ主都へ帰すという訳にはいかないため、しばらくはディケットの街で顔を合わせる確率は高まってしまう。
キャシーとウィンガルに窘められ、とりあえず今は俺を見てもいきなり殴りかからないという約束はさせられたみたいだが、それでもこっちの心情的にはなるべく顔を合わせないようにしたいものだ。
なお、グロウズが来ていることをパーラに教えたところ、これから一緒に殴りに行こうかと誘われたが、俺もキャシーから滞在中はグロウズともめない様にお願いされているので、なんとか宥めておいた。
しかしパーラもバイクを壊された恨みは忘れられないようで、向こうからやられたらやり返すと言っていたのが実に不穏だ。
ディケットの街に滞在することとなったウィンガル一行だが、滞在中には視察人としての立場のほかにも、ディケットにいる各国の人間と交流を持つのに忙しく過ごしているらしい。
やってきてもう四日は経つが、未だ落ち着いていない様子から、ウィンガルも伊達に偉ぶっていないということだろう。
そんな中、聖鈴騎士の二人はというと、こちらも中々忙しいようだ。
グロウズは処罰の一環として、随行している一団の取りまとめという地味で面倒な役目を負わされ、街の宿で缶詰め状態。
キャシーの方は、学園長に請われて魔術学科の特別講師として教壇に立つことになった。
本来は魔術学科の中でも成績優秀者だけが受けられるという形を予定していたが、夜葬花の呼び名で通った超一級の魔術師の授業ということで、参加を希望する嘆願が多数寄せられた。
あまりの多さに学園側も配慮し、急遽一番広い講堂を使った公開授業が開催され、当初の想定していた魔術学科の生徒にとどまらず、それ以外の学科の生徒も参加する、かなりの規模へと膨れ上がってしまう。
これはキャシーが聖鈴騎士でもトップクラスの実力者であることと、五十年という長い人生の中で豊富な実勢経験を持つ魔術師という点に、興味を持っている生徒がそれだけいるということだ。
俺の時もそうだったが、実戦を知る魔術師の話というのは意外と生徒達に受けが良く、そこからどんな教訓を得るかは彼ら次第だが、熱心に授業を受ける姿勢には教師役も気分が悪くはならない。
そしてこのキャシーの公開授業だが、不思議なことに俺もキャシー側として参加していたりする。
どうも学園長あたりが俺が前にやった講演をキャシーに教えたようで、同じ魔術師でしかも臨時で教壇に立ったことのある経験から、傍でサポートをして欲しいとキャシーに頼まれてしまった。
具体的に何をするという訳ではなく、教壇に上がるキャシーを袖で見守るだけだが、彼女がどんな授業をするのか興味はあるので、引き受けて損はないだろう。
普段は各教室で授業が行われている時間帯に、キャシーの公開授業が開かれている大講堂では大勢の生徒が詰めかけていた。
学年学科を問わず、学園中の生徒がだ。
この日ばかりは通常の授業は自学自習とされ、生徒は大講堂へ行くことが許されたおかげで、机は全て生徒で埋まり、あぶれた者は壁際で立ち見に徹し、そこへ教師や研究者まで並ぶほどの大盛況だ。
よっぽどキャシーの聖鈴騎士としての勇名が効いているようだ。
授業はキャシーが聖鈴騎士になるまでの道のりと、なってから得た教訓染みた失敗談を語って聞かせるという、まぁ俺がアドバイスした通りのものが披露され、学生たちの反応も上々の中、休憩を挟んでから生徒達からの質問にキャシーが答えるという時間へと移っていた。
俺の時にはやらなかった生徒と教師の質疑応答だが、これはキャシーが是非にと熱望したことで用意された時間と言っていい。
自分のことを話すだけでなく、生徒の悩みや疑問等にも応えたいという彼女の面倒見の良さが前面に出たもので、このタイミングで差し込んでくるのは悪くないチョイスだとは思う。
「なるほど、最近は勉強をしてもしても、成長を実感できてないと。君達ぐらい若いと、そういう時期はあるものよねぇ。うんうん、私にもあった、あったわぁ」
今はある女子生徒がした質問に答えるところで、昔を懐かしんでキャシーが何度も頷いている。
この年頃の子は、勉強にしろ身体にしろ、周りと成長スピードが違うことに翻弄されやすく、こういう質問は彼女達らしいと言えた。
「多分、今の質問は他の子達も抱えてるものだと思うの。…本当はそういうのって本職の先生方に相談する方がいいんだろうけど、今回に限っては私が答えるわね。あくまでも私個人の見解だということも忘れないで」
立ち見に加わっている学園の教師達をチラリと見て、一瞬口籠ったがそのまま話を続けた。
臨時で教師役をしている自分が答えていいのか迷ったようだったが、教師達の反応から問題ないと判断したらしい。
「成長するために努力するってよく言うけど、それってすごく分かりにくいものなのよね。だって、どれくらいの努力でどれくらい成長するかなんて人によって違うし、実感を覚えるのもずっと時間をかけてからでしょ?」
この世界にはゲームのような数値化された経験値やステータス画面なんてものは存在しない。
魔物を何匹倒したからレベルアップなんて、お手軽で分かりやすい物差しはあり得ないのだ。
あるのはひたすら現実に則った結果のみ。
それだけに、訳知り顔の他人から成長が見えないと罵られるのはそもそも筋違いだし、そんな言葉は当人にとっては毒にも薬にもならない、駄菓子のごとき雑音でしかない。
いっそ何も言わないことの方がためになりそうなぐらいだ。
「しかも、人から見た成長と自分が感じる成長ってのは必ずしも一致しないわよね?昨日よりは成長できたって自分は思っても、人から見たらまるで成長していないって思われるし。私だってそういう経験はあるもの。皆だってあるでしょ?」
聴衆へ投げかけたキャシーの問いで、賛同するように頷く姿があちこちで見えた。
この言葉には俺も頷かざるを得ない。
「周りと比べるのも悪くはないわ。でも、成長するっていうのは、結局自分との競争なの。だからこう思うようにすればいいの。努力を続けて、成長していると信じた上で、『昨日の私、悔しいでしょ。今日の私に超えられて。明日の私、待ってなさい。今日の私がもう追い抜くわよ』って」
昨日より今日、今日より明日の自分は成長していると信じているからこそ、人は努力を続けられるのだ。
ごく小さな成長だとしても、それを自分が認識していれば、前へと足を踏み出せる。
少なくとも、俺はそう信じているからこそ、日々の鍛錬を続けてこれた。
他人ではなく自分こそを超える壁とすることで、初めて肉体と精神が釣り合った成長を遂げられる。
「今成長を感じられないとしても、それは助走のための力を溜めているだけって思ったらどうかしら?弛まぬ努力をしているのなら、次に走り出したときにはもっと早く、遠いところへ辿りつけるかもしれないわね。そうして、昨日の自分に恥じない生き方を心がけなさい」
微笑みながらそう言うキャシーの言葉に、質問をした女生徒も笑みを返し、次の質問者へと主役は移っていった。
「大人気でしたね、キャシー先生」
公開授業が盛況のまま終わり、大講堂から人が出て行く中、壇上から袖へと戻ってきたキャシーに、少しからかい気味に声をかける。
この学園での教師役としては俺が先輩なので、ちょっとそういう言い方をしてみたかった。
「急になに?先生だなんて呼んじゃって」
「いえ、先程の授業の内容が実に教師らしいものでしたから。正直、本職かと思っちゃいましたよ」
「んー、まぁね、これでも聖鈴騎士でも古株だもの。若い子の悩み相談を受けたこともそれなりにあるわ。今回も、その経験のおかげで何とかなったってところかしら」
流石、伊達に五十年の人生を歩んでいないな。
聖職者の肩書も持つ聖鈴騎士のキャシーには、部下や後輩といった者も多くいるはずだし、説法の経験なんかもあるのかもしれない。
今回の授業も、そういう経験が生きたからこその充実した内容だったと思える。
特にあの成長を自覚できないという生徒の悩みに答えていた姿は、居合わせたほかの教師達にもいい刺激を与えたと思えるほど、立派な教師っぷりだ。
「私も最近はああいう若い子に何かを教えるってことはめっきり少なくなったもんだから、今回のはいい刺激になったわ」
「へぇ、聖鈴騎士ってこういうことしないんですか?弟子を取るみたいな、後進の育成とか」
「全くないわけじゃないけど、私みたいに序列が上がるとそういうのも難しくてね。誰かを育てようとすると、次の聖鈴騎士筆頭候補だとか騒がれて、結局潰されるってのを何度も見てきたから」
「…聖職者といえど、権力闘争からは逃れられないってことですか」
「他より戦う力も権力もあるだけになおさらね」
ヤゼス教の中でも別格の扱いをされる聖鈴騎士は、他の人間からの注目も当然ながら多い。
聖鈴騎士の序列上位者が後任を育てようとすると、それを快く思わない人間は妨害をするし、支持する人間は他よりも優遇しようと道理を抑えつける行動に出るため、結局どちらにしても周りに迷惑がかかる。
そうすると、その後任候補は多方面から色んな注目を浴び、遅かれ早かれ精神的にも肉体的にも参ってしまうのだろう。
「てことは、グロウズの教育係だった時はキャシーさんも聖鈴騎士の序列はまだ?」
「いや、その時にはもう序列は五位だったわね。あの頃は聖鈴騎士が大勢引退した時期で、ヒューイットは候補に挙げられた多くの人材の一人だったのよ。私が教育係になったのは本当に偶々。それがまさか、今じゃ序列二位だなんて。おかげで私は六位に落ちちゃったんだから、たまんないわよ、ほんと」
口ではそう言うが、キャシーの顔はどこか誇らし気だ。
弟のように思っていたグロウズの出世が、内心では嬉しいのだろう。
こういうのを見ると、序列なんか気にしない器のデカさを感じてしまう。
癪だが、グロウズにもそういう気があるのも、キャシーの教育が影響しているのかもしれない。
そんなことを話しつつも、手早く自分達の片付けを終えた俺達は、大講堂を後にして食堂へと歩き出す。
丁度昼時の時間なので、キャシーを誘ってこのままランチと洒落込むのだ。
多くの生徒が公開授業の終わったその足で食堂に着たせいか、俺達が食堂へやって来るとほぼすべての席が埋まりきっている状況だった。
「あら~参ったわね。出遅れたとは思ってたけどここまでだったなんて」
周りはキャシーの授業についての談義もしながらで食事のスピードは遅く、少し待っていただけでは空くような気配はない。
恐らく俺達以外にもこの食堂の状況を見て、テーブルをあきらめた人間は他にもいたはずだ。
「仕方ないですよ。今日はほとんどの生徒がいっぺんに食堂へ押しかけましたから」
普段なら授業が終わる時間に若干のずれがあったり、教室からの距離の差などでもう少しテーブルに空きがあったりするのだが、今日ばかりは大講堂から一斉に食堂へ移動してきたがためにこの惨状となったわけだ。
「こうなったら、どこか他のところで食べるとしましょうか。幸い、今日のメニューはどれも持ち帰りができるようですし」
―おーい、アンディくーん!
これほどの混雑なら、普段は配膳口でテイクアウト出来る料理だけを受け取り、どこかほかの場所で食べる人間もいるため、俺達もそうするかと思ったその時、遠くの方で俺の名前を呼びながら手を振る人影が見えた。
スーリアだ。
先にテーブルで食事をしていたようで、立ちすくむ俺を見て呼んでくれたらしい。
ほんま優しい子やで。
近づいてみると、そこではスーリアの友達数人で食事をとっていたのか、スーリア以外は知らない顔ばかりだ。
「ようスーリア。声をかけてくれたってことは、席を期待していいのか?」
「うん、勿論。私達はもうすぐ食べ終わるから、アンディ君ここ使ってよ。キャサリン先生もよろしければどうぞ。いいよね?」
有難いことに、スーリア達が席を譲ってくれるようで、同席している女子生徒達にそう声をかけると、何故か緊張した様子でコクコクと何度も頷いてきた。
何か様子がおかしいことに気付き、揃って向けられる視線を追ってみれば、それは一緒にいたキャシーへとたどり着く。
どうやらキャシーを見てのこの反応のようだが、まるでアイドルを見るような熱のこもった視線に、何となくその理由を察してしまう。
彼女達もここにいるということは大講堂でキャシーの授業を受けたはずで、あの授業に感銘を受けたか聖鈴騎士であるキャシーの元々のファンとかなのだろうか。
「ありがとう。それじゃあ料理を受け取りに行ってくるわね。あぁ、アンディ君はいいわ。私が二人分持ってくるから、友達と話でもして待ってなさい」
そう言って止める間もなくキャシーが配膳口の方へと行ってしまった。
俺の知り合いのおかげで席が使えるようになった礼のつもりなのだろうが、それならせめて希望するメニューを聞くぐらいはして欲しかったものだ。
とはいえ、俺は結局いつもの日替わりランチ的なものを選ぶつもりだったから、キャシーのセンスに任せても問題はない。
「ねぇアンディ君って、キャサリン先生と仲いいの?」
「あん?なんでそう思う?」
壁際から持ってきた椅子をテーブルに追加し、その一つに俺が腰かけるや否や、スーリアがそんなことを尋ねてきた。
「なんでって、今日の大講堂でもずっとキャサリン先生を補助してたじゃない。それにさっきだって、楽しそうに話しながら食堂に入ってきたし」
「あぁ、なるほどな。そう言われると、仲は悪くないな」
グロウズという前例はあるが、俺も聖鈴騎士全体を憎んでいるわけではないので、キャシーには思うところもなく普通に話はできる。
彼女自身、年の功か話しやすい相手でもあるので、会話が弾んでいるように見えるのもそのせいだろう。
普通に良好な関係を築けていると思う。
「もしかして、アンディ君ってキャサリン先生みたいな人が好みだったりするの?」
「はあ?どうしてそういう話になる」
「だってあんなに可愛いし、おまけに聖鈴騎士序列六位でしょ?男の人ってああいうのに弱いって、チェルシーちゃんも言ってたよ」
チェルシーの奴、またスーリアに変なこと吹き込んだのか。
遠学以来仲良くしているとは聞くが、あまり純真なスーリアに男への変な偏見を刷り込まないで欲しいものだ。
まぁ確かに、キャシーに関しては魅力のある人間だと思う。
ペルケティアでは相応の地位もある手練れの魔術師、おまけに年齢よりずっと若い見た目でかわいらしい。
あと乳でけぇし。
「あのな、確かに魅力的な人だけど、俺はそういう対象として見てないんだよ。年齢もだいぶ違うしな」
「…年齢が違うってどういうこと?あの人ってそんなに私達と離れてないと思うけど」
スーリアと同席する女子生徒は揃って不思議そうな顔をする。
キャシーの実年齢は見た目ではわからないから、こういう反応にもなるか。
「見た目こそああだけど、あの人本当はご「お待たせ―!」ぐふっ」
キャシーの年齢を明かそうとした俺だったが、横合いから現れたキャシーによって言葉を遮られた。
悪質なタックルを食らったようなものだが、キャシーが手に持ったトレイから料理が少しも零れていないあたり、そうするという確たる目的があっての行動だと思える。
「はいこれ、アンディ君には私と同じのを選んだけど、美味しそうだからいいでしょ。…あんまり乙女の年齢を人にバラすのは感心しないわよ」
「…サーセン」
実際の年齢と見た目が違うことをキャシーも気にはしているのか、俺の分のトレイをテーブルの置きながら、耳元で囁いてきたキャシーの言葉が頭に刺さるように響いた。
普段おっとりしている人だけに、この不意に見せた怒気が怖い。
しかしこればかりは俺が女性へのマナーを欠いたことなので、素直に謝っておく。
「結構…さあ、食べましょうか。午前いっぱいずっと喋りっぱなしの立ちっぱなしだったから、もうお腹が空いちゃって空いちゃって」
「せやな」
一瞬前のやり取りなどなかったことのようにふるまうキャシーに、俺もそれ以上何か言う気にはならず、昼食に手を付けていく。
目の前にあるのは肉と野菜を使った煮込み料理で、寒い季節になって美味しい煮込みを選ぶとは、キャシーも分かってるな。
「あの、キャサリン先生?」
「ん?ぶぁみ?」
「あ、やっぱり食べ終わってからでいいです…」
「ぼほ?」
おずおずと、スーリアの周りにいた女生徒が声をかけてきて、それにキャシーが顔を上げて返事をするが、リスのように頬が膨らむほど口に物が詰まっている様を見て引き下がる。
あれだけ立派な授業をやった人間の姿にしては見るに堪えない。
「ぐぁっんぐっくん…構わないわよ。私に何か聞きたいことがあるんでしょう?」
苦しそうに口の中身を飲み込み、優しく微笑んでそう言うキャシーだが、口の周りの汚れがそのままであるせいで色々台無しだ。
「じゃあお聞きしたいことが。さっきの授業でなんですけど―」
女生徒が先程の授業で感じたこと、思ったことを改めて同席している状況の中で口にし、それにキャシーが授業では語り切れなかったことを伝える場となり、気が付けば近くのテーブルにいる他の生徒達も聞き耳を立てるという、授業の延長のようなものが行われていた。
俺は食事を優先しているので特に口を挟まないが、キャシーは自分の食事を疎かにしてでも、律義に生徒達の質問に答えていく様は本当の教師よりも教師らしいように思えた。
「ところでキャサリン先生。僕からも一つ聞きたいことがあるんですが」
「あら、何かしら?」
後から話に加わってきた男子生徒が、キャシーに対して少し高揚した声で話しかけた。
ウキウキというほどではないが、これから言うことに対するキャシーの答えに何かの期待をしているように感じる。
「キャサリン先生は聖鈴騎士の中でも、魔術師としては頂点にいる方だと聞きました。実際、こうして相対して感じられる魔力量は並外れていると、僕でもわかります。その先生から見て、この学園の魔術師の印象はどういうものか、教えてください」
「えぇ?随分急なことを聞くのね。あなた、魔術学科?」
「はい。五年目です」
魔術学科五年生といえば、卒業まで残り一年になる。
学園で学べる基本的な魔術の運用にはもう慣れているだろうし、高等な応用にも手を出しているはずだ。
そんな人間からすれば、ペルケティア最高峰の魔術師と呼べるキャシーに、自分達のレベルがどの程度なのかを計ってもらいたいのだろう。
実力者だけに、もし高く評価してもらえれば自信にもなるというもの。
「うーん、そういうのって本当の先生から聞いた方がいいと思うのだけど…。いるでしょ?魔術学科にもちゃんと評価が下せる先生は」
「それはまぁ。ですが、僕はあなたの口から聞きたいんです。夜葬花の称号を持つあなたに!」
熱いな。
熱すぎて蕩けてしまいそうだ。
俺が思う以上に、夜葬花という称号はこの国で暮らす魔術師にとっては重いようだ。
キャシーに掴みかからんばかりに迫る男子生徒の姿からも、それはよくわかる。
「そ、そう。そこまで言うなら…そうねぇ、あなた達が魔術を使うところはまだ一度しか見てないから正確な評価じゃないかもしれないけど、なんというか…普通ね」
「普通、ですか」
「そう、普通。あ、いい意味でよ?」
ショボンとする男子生徒に、フォローのつもりか慌てるようにしてキャシーが付け加える。
普通か。
正直、キャシーのその評価は俺も同意できるな。
「一昨日、魔術学科の授業が行われてる場所に偶々遭遇したのよ。今日の授業の準備があって、その帰りにね。確か四年生のだったかしら?そこで色々と魔術が使われてのを見たけど、どれも癖のない基本をしっかり守った魔術を身に着けてるってよくわかるわ」
「あ、魔術学科の四年生で一昨日授業をしたのって私達のことだと思います」
それまで会話には加わっていなかったスーリアが、自分達のことと分かる内容にそう声を上げる。
「あら、そうなの?」
「…基本を抜け出ない、型通りの魔術だったと?」
「きつい言い方をすればそうね。まぁ四年生の授業を見て五年生のあなたに言うのもなんだけど、全体の基準にはなると判断したわ。もっとも、基本に忠実なのは悪いことじゃない。それが出来て初めて応用へと指がかかるの。あぁ、でも一人だけ凄い子がいたわね。水魔術で球を作って目標に見立てた案山子を打ち抜いた子。あれは凄かったわぁ」
「あぁ、それ多分シペア君ですね。私達の学年でそれだけの威力を出せる水魔術の使い手は一人しかいませんから」
魔術学科の四年生であるスーリアは、当然ながらキャシーが見たというその授業にも参加していたので、すぐに誰のことかはわかったようだ。
それに、シペア以上の水魔術の使い手が他にいないというのも決め手になったか。
「へぇ、シペア君って言うの?あの歳であそこまでやれるなんて将来有望ね。今後どういう成長するかは分からないけど、もしかしたら卒業後は聖鈴騎士の候補に推薦できるかもね」
皿を突きながらのほほんとした口調で言い放ったキャシーの言葉は、それを耳にした周りを著しく動揺させた。
―聖鈴騎士候補?今の段階で?
―卒業したらって話でしょ。そうと決まったわけじゃ…
―そのシペアってやつ、まだ四年生だろ?
―それぐらいキャサリン先生に認められたってことさ
ざわめきに乗って聞こえてくるのは、驚愕に羨望、嫉妬や少しの恐怖といった感情のこもった声だ。
現役の聖鈴騎士で高位の序列にいるキャシーが、まだ卒業してもいない一学生を聖鈴騎士候補に値すると言わんばかりに評価しているのが、よっぽど衝撃的なのだろう。
「シペア君が聖鈴騎士候補って…」
実力を認められたことは嬉しいが、遠い存在になるかもしれないという不安から、スーリアは複雑そうな顔を見せる。
「かもしれないって話よ。ただ魔術の扱いに優れているってだけでなれるほど、聖鈴騎士も甘くはないわ」
所詮候補は候補であり、それに選ばれたから聖鈴騎士に必ずしもなれるというものでもない。
戦闘能力以外での適正もあるし、その後の成長次第では評価が変わるのもあり得る。
もっとも、今のシペアはペルケティアの教会から後ろ盾を得ているので、本人が希望すれば聖鈴騎士への道も望めるはずだ。
どうなるかは本人次第だが、願わくはグロウズのような大人にだけはならない様に成長して欲しいと、ただそれを祈るのみだ。
「こういうのってどうかと思ったんですけど、正直なところ、キャサリン先生とアンディ君ってどっちが強いんですか?」
『え?』
唐突にスーリアが放った言葉に、俺もキャシーもそろって間抜けな声を上げてしまった。
急に何を言いだすんだ、この小娘は。
「いやだって、シペア君はいつも最強の魔術師はアンディ君だって言うし、私もそれにはいくらか同意できるもの。そのシペア君を評価したキャサリン先生も夜葬花の呼び名の通り、ペルケティア最高峰の魔術師でしょう?なら、二人が勝負したらどっちが勝つのかなぁって」
シペアが俺のことをそう思ってくれているのは素直に嬉しいが、だからといってキャシーと勝負しろだなんて急展開すぎる。
いくらなんでもそんな理由で俺とキャシーが勝負するわけが―
「勝負ねぇ…面白そうだわ。アンディ君、この案乗ってみない?正直、私もあなたが魔術師としてどれくらいやれるのか気になるし」
ないこともなかった。
そういうタイプとは思っていなかったが、魔術師同士の手合わせにキャシーは随分乗り気のようだ。
「いやですよ。なんで俺がそんなこと…。大体いいんですか?勝手にそんなことして、ウィンガル卿に知られたら怒られますよ」
既に一度グロウズが騒ぎを起こして学園に迷惑をかけているのに、ここでキャシーが魔術勝負をすると知られたら、ウィンガルがどういう反応をするかわかったものではない。
「大丈夫よ。何もそこらで暴れまわるわけでもなし。ちょっと手合わせをするだけ。日頃の訓練の延長みたいなものでしょ」
「そうは言っても…それに、勝っても負けてもお互いに得るものはないのはちょっと…」
強い魔術師と手合わせが出来るのはいい経験にはなるが、正直キャシーの魔術は未だ得体のしれないところがあるので、やるにしてももう少し向こうの情報を集めてからにしたい。
ぶっちゃけ、面倒くさいというのもある。
「ふぅむ、そうねぇ…あ!だったら、勝った方が負けた方に何でも一つ命令できるってのはどう?」
勝ったところで―ん?今なんでもって言った?
「お、いい反応。なんでもとは言ったけど、いやらしいのは無しよ?そういうの以外でならなんでもって意味ね」
ついついキャシーの言葉に反応してしまい、しっかり釘を刺されてしまったが、別に俺はいやらしいことなど考えていない。
おっぱいがどうとか胸をどうとかそういうのは一切、全くもって頭にはなかった。
いやほんと、乳がどうとかなんて、一度も思ったことはない。
とはいえ、何でも命令できるというのなら、実はキャシーには少しやってほしいことがある。
無論、無理矢理どうとかではなく、聖鈴騎士の職務に関わったりすることはないので、多分引き受けてくれるはず。
もっとも、勝ってからの話になるが。
「…わかりました。じゃあ一つ手合わせをしてみますか」
「そうこなくちゃ。じゃあ今日…は流石に準備が足りてないわね。明日辺りどうかしら?」
「俺は一向に構いません」
「じゃあ場所とかの手配はこっちでやっておくから、決まったらまた後で連絡するわ」
こうしてキャシーとの手合わせが決まったわけだが、この場にいた生徒達もまたそれぞれに動き出していた。
―夜葬花の手合わせ!
―実戦経験のある魔術師って、こりゃあ見逃がせないぞ
―胴元になれば儲けが…
聖鈴騎士序列六位の魔術師が戦うところを見たいという思いが口を突いて出ているようで、熱い視線が俺達に注がれていた。
ちょっとまずいことを口走った者もいたが、そこは学生の領分を弁えてくれることを祈る。
見たいというのなら好きにさせたいところだが、明日は普通に授業があるので、学生に授業をサボらせるのはまずい。
となれば、手合わせをする場所は秘匿して、生徒が見学に来ないようにした方が良さそうだ。
流石にこの場では言えないが、その辺りはキャシーもわかってくれると思うので、後で伝えておこう。
しかしキャシー相手の戦いとなると、情報収集から始めなくてはな。
気は進まないが、本人以外で彼女のことを一番知っているであろう人物に話を聞いてみるとしよう。
他にいないとはいえ、相手が相手だけに、本当に気は進まない。
向こうも簡単には教えてくれないかもしれないが、美食に目がない奴だし、適当に美味いもんでも差し入れれば口も軽くなるだろう。
毒でも入れてやろうかと一瞬考えたが、対価を貰う前に倒れられても困るのでグッと堪えよう。
彼らが欲しているのは、あくまでも飛空艇のような人が乗って空を移動するタイプのものなので、人工翼のように個人が装着して飛ぶのは求められていないようだ。
とはいえ、今のところ飛空艇以外で空を飛んだ実績は見過ごせないらしく、開発者以外で人工翼を扱った人間の感想を聞こうと、後日ラサン族の誰か、恐らくクレインになるだろうが、学園へ呼び出すことが決まった。
こちらからラサン族の村へと連絡をして、誰かしらが学園にやって来るまでの間、ウィンガル達もディケットの街で滞在するそうだ。
そうなるとグロウズとキャシーも一緒にとどまることになるわけだが、キャシーはともかく、グロウズはあの顔を見るたびに殴りたくなってしまうので、出来れば早々に帰ってほしい。
しかし今現在のグロウズはキャシー預かりの身なので、一人だけ主都へ帰すという訳にはいかないため、しばらくはディケットの街で顔を合わせる確率は高まってしまう。
キャシーとウィンガルに窘められ、とりあえず今は俺を見てもいきなり殴りかからないという約束はさせられたみたいだが、それでもこっちの心情的にはなるべく顔を合わせないようにしたいものだ。
なお、グロウズが来ていることをパーラに教えたところ、これから一緒に殴りに行こうかと誘われたが、俺もキャシーから滞在中はグロウズともめない様にお願いされているので、なんとか宥めておいた。
しかしパーラもバイクを壊された恨みは忘れられないようで、向こうからやられたらやり返すと言っていたのが実に不穏だ。
ディケットの街に滞在することとなったウィンガル一行だが、滞在中には視察人としての立場のほかにも、ディケットにいる各国の人間と交流を持つのに忙しく過ごしているらしい。
やってきてもう四日は経つが、未だ落ち着いていない様子から、ウィンガルも伊達に偉ぶっていないということだろう。
そんな中、聖鈴騎士の二人はというと、こちらも中々忙しいようだ。
グロウズは処罰の一環として、随行している一団の取りまとめという地味で面倒な役目を負わされ、街の宿で缶詰め状態。
キャシーの方は、学園長に請われて魔術学科の特別講師として教壇に立つことになった。
本来は魔術学科の中でも成績優秀者だけが受けられるという形を予定していたが、夜葬花の呼び名で通った超一級の魔術師の授業ということで、参加を希望する嘆願が多数寄せられた。
あまりの多さに学園側も配慮し、急遽一番広い講堂を使った公開授業が開催され、当初の想定していた魔術学科の生徒にとどまらず、それ以外の学科の生徒も参加する、かなりの規模へと膨れ上がってしまう。
これはキャシーが聖鈴騎士でもトップクラスの実力者であることと、五十年という長い人生の中で豊富な実勢経験を持つ魔術師という点に、興味を持っている生徒がそれだけいるということだ。
俺の時もそうだったが、実戦を知る魔術師の話というのは意外と生徒達に受けが良く、そこからどんな教訓を得るかは彼ら次第だが、熱心に授業を受ける姿勢には教師役も気分が悪くはならない。
そしてこのキャシーの公開授業だが、不思議なことに俺もキャシー側として参加していたりする。
どうも学園長あたりが俺が前にやった講演をキャシーに教えたようで、同じ魔術師でしかも臨時で教壇に立ったことのある経験から、傍でサポートをして欲しいとキャシーに頼まれてしまった。
具体的に何をするという訳ではなく、教壇に上がるキャシーを袖で見守るだけだが、彼女がどんな授業をするのか興味はあるので、引き受けて損はないだろう。
普段は各教室で授業が行われている時間帯に、キャシーの公開授業が開かれている大講堂では大勢の生徒が詰めかけていた。
学年学科を問わず、学園中の生徒がだ。
この日ばかりは通常の授業は自学自習とされ、生徒は大講堂へ行くことが許されたおかげで、机は全て生徒で埋まり、あぶれた者は壁際で立ち見に徹し、そこへ教師や研究者まで並ぶほどの大盛況だ。
よっぽどキャシーの聖鈴騎士としての勇名が効いているようだ。
授業はキャシーが聖鈴騎士になるまでの道のりと、なってから得た教訓染みた失敗談を語って聞かせるという、まぁ俺がアドバイスした通りのものが披露され、学生たちの反応も上々の中、休憩を挟んでから生徒達からの質問にキャシーが答えるという時間へと移っていた。
俺の時にはやらなかった生徒と教師の質疑応答だが、これはキャシーが是非にと熱望したことで用意された時間と言っていい。
自分のことを話すだけでなく、生徒の悩みや疑問等にも応えたいという彼女の面倒見の良さが前面に出たもので、このタイミングで差し込んでくるのは悪くないチョイスだとは思う。
「なるほど、最近は勉強をしてもしても、成長を実感できてないと。君達ぐらい若いと、そういう時期はあるものよねぇ。うんうん、私にもあった、あったわぁ」
今はある女子生徒がした質問に答えるところで、昔を懐かしんでキャシーが何度も頷いている。
この年頃の子は、勉強にしろ身体にしろ、周りと成長スピードが違うことに翻弄されやすく、こういう質問は彼女達らしいと言えた。
「多分、今の質問は他の子達も抱えてるものだと思うの。…本当はそういうのって本職の先生方に相談する方がいいんだろうけど、今回に限っては私が答えるわね。あくまでも私個人の見解だということも忘れないで」
立ち見に加わっている学園の教師達をチラリと見て、一瞬口籠ったがそのまま話を続けた。
臨時で教師役をしている自分が答えていいのか迷ったようだったが、教師達の反応から問題ないと判断したらしい。
「成長するために努力するってよく言うけど、それってすごく分かりにくいものなのよね。だって、どれくらいの努力でどれくらい成長するかなんて人によって違うし、実感を覚えるのもずっと時間をかけてからでしょ?」
この世界にはゲームのような数値化された経験値やステータス画面なんてものは存在しない。
魔物を何匹倒したからレベルアップなんて、お手軽で分かりやすい物差しはあり得ないのだ。
あるのはひたすら現実に則った結果のみ。
それだけに、訳知り顔の他人から成長が見えないと罵られるのはそもそも筋違いだし、そんな言葉は当人にとっては毒にも薬にもならない、駄菓子のごとき雑音でしかない。
いっそ何も言わないことの方がためになりそうなぐらいだ。
「しかも、人から見た成長と自分が感じる成長ってのは必ずしも一致しないわよね?昨日よりは成長できたって自分は思っても、人から見たらまるで成長していないって思われるし。私だってそういう経験はあるもの。皆だってあるでしょ?」
聴衆へ投げかけたキャシーの問いで、賛同するように頷く姿があちこちで見えた。
この言葉には俺も頷かざるを得ない。
「周りと比べるのも悪くはないわ。でも、成長するっていうのは、結局自分との競争なの。だからこう思うようにすればいいの。努力を続けて、成長していると信じた上で、『昨日の私、悔しいでしょ。今日の私に超えられて。明日の私、待ってなさい。今日の私がもう追い抜くわよ』って」
昨日より今日、今日より明日の自分は成長していると信じているからこそ、人は努力を続けられるのだ。
ごく小さな成長だとしても、それを自分が認識していれば、前へと足を踏み出せる。
少なくとも、俺はそう信じているからこそ、日々の鍛錬を続けてこれた。
他人ではなく自分こそを超える壁とすることで、初めて肉体と精神が釣り合った成長を遂げられる。
「今成長を感じられないとしても、それは助走のための力を溜めているだけって思ったらどうかしら?弛まぬ努力をしているのなら、次に走り出したときにはもっと早く、遠いところへ辿りつけるかもしれないわね。そうして、昨日の自分に恥じない生き方を心がけなさい」
微笑みながらそう言うキャシーの言葉に、質問をした女生徒も笑みを返し、次の質問者へと主役は移っていった。
「大人気でしたね、キャシー先生」
公開授業が盛況のまま終わり、大講堂から人が出て行く中、壇上から袖へと戻ってきたキャシーに、少しからかい気味に声をかける。
この学園での教師役としては俺が先輩なので、ちょっとそういう言い方をしてみたかった。
「急になに?先生だなんて呼んじゃって」
「いえ、先程の授業の内容が実に教師らしいものでしたから。正直、本職かと思っちゃいましたよ」
「んー、まぁね、これでも聖鈴騎士でも古株だもの。若い子の悩み相談を受けたこともそれなりにあるわ。今回も、その経験のおかげで何とかなったってところかしら」
流石、伊達に五十年の人生を歩んでいないな。
聖職者の肩書も持つ聖鈴騎士のキャシーには、部下や後輩といった者も多くいるはずだし、説法の経験なんかもあるのかもしれない。
今回の授業も、そういう経験が生きたからこその充実した内容だったと思える。
特にあの成長を自覚できないという生徒の悩みに答えていた姿は、居合わせたほかの教師達にもいい刺激を与えたと思えるほど、立派な教師っぷりだ。
「私も最近はああいう若い子に何かを教えるってことはめっきり少なくなったもんだから、今回のはいい刺激になったわ」
「へぇ、聖鈴騎士ってこういうことしないんですか?弟子を取るみたいな、後進の育成とか」
「全くないわけじゃないけど、私みたいに序列が上がるとそういうのも難しくてね。誰かを育てようとすると、次の聖鈴騎士筆頭候補だとか騒がれて、結局潰されるってのを何度も見てきたから」
「…聖職者といえど、権力闘争からは逃れられないってことですか」
「他より戦う力も権力もあるだけになおさらね」
ヤゼス教の中でも別格の扱いをされる聖鈴騎士は、他の人間からの注目も当然ながら多い。
聖鈴騎士の序列上位者が後任を育てようとすると、それを快く思わない人間は妨害をするし、支持する人間は他よりも優遇しようと道理を抑えつける行動に出るため、結局どちらにしても周りに迷惑がかかる。
そうすると、その後任候補は多方面から色んな注目を浴び、遅かれ早かれ精神的にも肉体的にも参ってしまうのだろう。
「てことは、グロウズの教育係だった時はキャシーさんも聖鈴騎士の序列はまだ?」
「いや、その時にはもう序列は五位だったわね。あの頃は聖鈴騎士が大勢引退した時期で、ヒューイットは候補に挙げられた多くの人材の一人だったのよ。私が教育係になったのは本当に偶々。それがまさか、今じゃ序列二位だなんて。おかげで私は六位に落ちちゃったんだから、たまんないわよ、ほんと」
口ではそう言うが、キャシーの顔はどこか誇らし気だ。
弟のように思っていたグロウズの出世が、内心では嬉しいのだろう。
こういうのを見ると、序列なんか気にしない器のデカさを感じてしまう。
癪だが、グロウズにもそういう気があるのも、キャシーの教育が影響しているのかもしれない。
そんなことを話しつつも、手早く自分達の片付けを終えた俺達は、大講堂を後にして食堂へと歩き出す。
丁度昼時の時間なので、キャシーを誘ってこのままランチと洒落込むのだ。
多くの生徒が公開授業の終わったその足で食堂に着たせいか、俺達が食堂へやって来るとほぼすべての席が埋まりきっている状況だった。
「あら~参ったわね。出遅れたとは思ってたけどここまでだったなんて」
周りはキャシーの授業についての談義もしながらで食事のスピードは遅く、少し待っていただけでは空くような気配はない。
恐らく俺達以外にもこの食堂の状況を見て、テーブルをあきらめた人間は他にもいたはずだ。
「仕方ないですよ。今日はほとんどの生徒がいっぺんに食堂へ押しかけましたから」
普段なら授業が終わる時間に若干のずれがあったり、教室からの距離の差などでもう少しテーブルに空きがあったりするのだが、今日ばかりは大講堂から一斉に食堂へ移動してきたがためにこの惨状となったわけだ。
「こうなったら、どこか他のところで食べるとしましょうか。幸い、今日のメニューはどれも持ち帰りができるようですし」
―おーい、アンディくーん!
これほどの混雑なら、普段は配膳口でテイクアウト出来る料理だけを受け取り、どこかほかの場所で食べる人間もいるため、俺達もそうするかと思ったその時、遠くの方で俺の名前を呼びながら手を振る人影が見えた。
スーリアだ。
先にテーブルで食事をしていたようで、立ちすくむ俺を見て呼んでくれたらしい。
ほんま優しい子やで。
近づいてみると、そこではスーリアの友達数人で食事をとっていたのか、スーリア以外は知らない顔ばかりだ。
「ようスーリア。声をかけてくれたってことは、席を期待していいのか?」
「うん、勿論。私達はもうすぐ食べ終わるから、アンディ君ここ使ってよ。キャサリン先生もよろしければどうぞ。いいよね?」
有難いことに、スーリア達が席を譲ってくれるようで、同席している女子生徒達にそう声をかけると、何故か緊張した様子でコクコクと何度も頷いてきた。
何か様子がおかしいことに気付き、揃って向けられる視線を追ってみれば、それは一緒にいたキャシーへとたどり着く。
どうやらキャシーを見てのこの反応のようだが、まるでアイドルを見るような熱のこもった視線に、何となくその理由を察してしまう。
彼女達もここにいるということは大講堂でキャシーの授業を受けたはずで、あの授業に感銘を受けたか聖鈴騎士であるキャシーの元々のファンとかなのだろうか。
「ありがとう。それじゃあ料理を受け取りに行ってくるわね。あぁ、アンディ君はいいわ。私が二人分持ってくるから、友達と話でもして待ってなさい」
そう言って止める間もなくキャシーが配膳口の方へと行ってしまった。
俺の知り合いのおかげで席が使えるようになった礼のつもりなのだろうが、それならせめて希望するメニューを聞くぐらいはして欲しかったものだ。
とはいえ、俺は結局いつもの日替わりランチ的なものを選ぶつもりだったから、キャシーのセンスに任せても問題はない。
「ねぇアンディ君って、キャサリン先生と仲いいの?」
「あん?なんでそう思う?」
壁際から持ってきた椅子をテーブルに追加し、その一つに俺が腰かけるや否や、スーリアがそんなことを尋ねてきた。
「なんでって、今日の大講堂でもずっとキャサリン先生を補助してたじゃない。それにさっきだって、楽しそうに話しながら食堂に入ってきたし」
「あぁ、なるほどな。そう言われると、仲は悪くないな」
グロウズという前例はあるが、俺も聖鈴騎士全体を憎んでいるわけではないので、キャシーには思うところもなく普通に話はできる。
彼女自身、年の功か話しやすい相手でもあるので、会話が弾んでいるように見えるのもそのせいだろう。
普通に良好な関係を築けていると思う。
「もしかして、アンディ君ってキャサリン先生みたいな人が好みだったりするの?」
「はあ?どうしてそういう話になる」
「だってあんなに可愛いし、おまけに聖鈴騎士序列六位でしょ?男の人ってああいうのに弱いって、チェルシーちゃんも言ってたよ」
チェルシーの奴、またスーリアに変なこと吹き込んだのか。
遠学以来仲良くしているとは聞くが、あまり純真なスーリアに男への変な偏見を刷り込まないで欲しいものだ。
まぁ確かに、キャシーに関しては魅力のある人間だと思う。
ペルケティアでは相応の地位もある手練れの魔術師、おまけに年齢よりずっと若い見た目でかわいらしい。
あと乳でけぇし。
「あのな、確かに魅力的な人だけど、俺はそういう対象として見てないんだよ。年齢もだいぶ違うしな」
「…年齢が違うってどういうこと?あの人ってそんなに私達と離れてないと思うけど」
スーリアと同席する女子生徒は揃って不思議そうな顔をする。
キャシーの実年齢は見た目ではわからないから、こういう反応にもなるか。
「見た目こそああだけど、あの人本当はご「お待たせ―!」ぐふっ」
キャシーの年齢を明かそうとした俺だったが、横合いから現れたキャシーによって言葉を遮られた。
悪質なタックルを食らったようなものだが、キャシーが手に持ったトレイから料理が少しも零れていないあたり、そうするという確たる目的があっての行動だと思える。
「はいこれ、アンディ君には私と同じのを選んだけど、美味しそうだからいいでしょ。…あんまり乙女の年齢を人にバラすのは感心しないわよ」
「…サーセン」
実際の年齢と見た目が違うことをキャシーも気にはしているのか、俺の分のトレイをテーブルの置きながら、耳元で囁いてきたキャシーの言葉が頭に刺さるように響いた。
普段おっとりしている人だけに、この不意に見せた怒気が怖い。
しかしこればかりは俺が女性へのマナーを欠いたことなので、素直に謝っておく。
「結構…さあ、食べましょうか。午前いっぱいずっと喋りっぱなしの立ちっぱなしだったから、もうお腹が空いちゃって空いちゃって」
「せやな」
一瞬前のやり取りなどなかったことのようにふるまうキャシーに、俺もそれ以上何か言う気にはならず、昼食に手を付けていく。
目の前にあるのは肉と野菜を使った煮込み料理で、寒い季節になって美味しい煮込みを選ぶとは、キャシーも分かってるな。
「あの、キャサリン先生?」
「ん?ぶぁみ?」
「あ、やっぱり食べ終わってからでいいです…」
「ぼほ?」
おずおずと、スーリアの周りにいた女生徒が声をかけてきて、それにキャシーが顔を上げて返事をするが、リスのように頬が膨らむほど口に物が詰まっている様を見て引き下がる。
あれだけ立派な授業をやった人間の姿にしては見るに堪えない。
「ぐぁっんぐっくん…構わないわよ。私に何か聞きたいことがあるんでしょう?」
苦しそうに口の中身を飲み込み、優しく微笑んでそう言うキャシーだが、口の周りの汚れがそのままであるせいで色々台無しだ。
「じゃあお聞きしたいことが。さっきの授業でなんですけど―」
女生徒が先程の授業で感じたこと、思ったことを改めて同席している状況の中で口にし、それにキャシーが授業では語り切れなかったことを伝える場となり、気が付けば近くのテーブルにいる他の生徒達も聞き耳を立てるという、授業の延長のようなものが行われていた。
俺は食事を優先しているので特に口を挟まないが、キャシーは自分の食事を疎かにしてでも、律義に生徒達の質問に答えていく様は本当の教師よりも教師らしいように思えた。
「ところでキャサリン先生。僕からも一つ聞きたいことがあるんですが」
「あら、何かしら?」
後から話に加わってきた男子生徒が、キャシーに対して少し高揚した声で話しかけた。
ウキウキというほどではないが、これから言うことに対するキャシーの答えに何かの期待をしているように感じる。
「キャサリン先生は聖鈴騎士の中でも、魔術師としては頂点にいる方だと聞きました。実際、こうして相対して感じられる魔力量は並外れていると、僕でもわかります。その先生から見て、この学園の魔術師の印象はどういうものか、教えてください」
「えぇ?随分急なことを聞くのね。あなた、魔術学科?」
「はい。五年目です」
魔術学科五年生といえば、卒業まで残り一年になる。
学園で学べる基本的な魔術の運用にはもう慣れているだろうし、高等な応用にも手を出しているはずだ。
そんな人間からすれば、ペルケティア最高峰の魔術師と呼べるキャシーに、自分達のレベルがどの程度なのかを計ってもらいたいのだろう。
実力者だけに、もし高く評価してもらえれば自信にもなるというもの。
「うーん、そういうのって本当の先生から聞いた方がいいと思うのだけど…。いるでしょ?魔術学科にもちゃんと評価が下せる先生は」
「それはまぁ。ですが、僕はあなたの口から聞きたいんです。夜葬花の称号を持つあなたに!」
熱いな。
熱すぎて蕩けてしまいそうだ。
俺が思う以上に、夜葬花という称号はこの国で暮らす魔術師にとっては重いようだ。
キャシーに掴みかからんばかりに迫る男子生徒の姿からも、それはよくわかる。
「そ、そう。そこまで言うなら…そうねぇ、あなた達が魔術を使うところはまだ一度しか見てないから正確な評価じゃないかもしれないけど、なんというか…普通ね」
「普通、ですか」
「そう、普通。あ、いい意味でよ?」
ショボンとする男子生徒に、フォローのつもりか慌てるようにしてキャシーが付け加える。
普通か。
正直、キャシーのその評価は俺も同意できるな。
「一昨日、魔術学科の授業が行われてる場所に偶々遭遇したのよ。今日の授業の準備があって、その帰りにね。確か四年生のだったかしら?そこで色々と魔術が使われてのを見たけど、どれも癖のない基本をしっかり守った魔術を身に着けてるってよくわかるわ」
「あ、魔術学科の四年生で一昨日授業をしたのって私達のことだと思います」
それまで会話には加わっていなかったスーリアが、自分達のことと分かる内容にそう声を上げる。
「あら、そうなの?」
「…基本を抜け出ない、型通りの魔術だったと?」
「きつい言い方をすればそうね。まぁ四年生の授業を見て五年生のあなたに言うのもなんだけど、全体の基準にはなると判断したわ。もっとも、基本に忠実なのは悪いことじゃない。それが出来て初めて応用へと指がかかるの。あぁ、でも一人だけ凄い子がいたわね。水魔術で球を作って目標に見立てた案山子を打ち抜いた子。あれは凄かったわぁ」
「あぁ、それ多分シペア君ですね。私達の学年でそれだけの威力を出せる水魔術の使い手は一人しかいませんから」
魔術学科の四年生であるスーリアは、当然ながらキャシーが見たというその授業にも参加していたので、すぐに誰のことかはわかったようだ。
それに、シペア以上の水魔術の使い手が他にいないというのも決め手になったか。
「へぇ、シペア君って言うの?あの歳であそこまでやれるなんて将来有望ね。今後どういう成長するかは分からないけど、もしかしたら卒業後は聖鈴騎士の候補に推薦できるかもね」
皿を突きながらのほほんとした口調で言い放ったキャシーの言葉は、それを耳にした周りを著しく動揺させた。
―聖鈴騎士候補?今の段階で?
―卒業したらって話でしょ。そうと決まったわけじゃ…
―そのシペアってやつ、まだ四年生だろ?
―それぐらいキャサリン先生に認められたってことさ
ざわめきに乗って聞こえてくるのは、驚愕に羨望、嫉妬や少しの恐怖といった感情のこもった声だ。
現役の聖鈴騎士で高位の序列にいるキャシーが、まだ卒業してもいない一学生を聖鈴騎士候補に値すると言わんばかりに評価しているのが、よっぽど衝撃的なのだろう。
「シペア君が聖鈴騎士候補って…」
実力を認められたことは嬉しいが、遠い存在になるかもしれないという不安から、スーリアは複雑そうな顔を見せる。
「かもしれないって話よ。ただ魔術の扱いに優れているってだけでなれるほど、聖鈴騎士も甘くはないわ」
所詮候補は候補であり、それに選ばれたから聖鈴騎士に必ずしもなれるというものでもない。
戦闘能力以外での適正もあるし、その後の成長次第では評価が変わるのもあり得る。
もっとも、今のシペアはペルケティアの教会から後ろ盾を得ているので、本人が希望すれば聖鈴騎士への道も望めるはずだ。
どうなるかは本人次第だが、願わくはグロウズのような大人にだけはならない様に成長して欲しいと、ただそれを祈るのみだ。
「こういうのってどうかと思ったんですけど、正直なところ、キャサリン先生とアンディ君ってどっちが強いんですか?」
『え?』
唐突にスーリアが放った言葉に、俺もキャシーもそろって間抜けな声を上げてしまった。
急に何を言いだすんだ、この小娘は。
「いやだって、シペア君はいつも最強の魔術師はアンディ君だって言うし、私もそれにはいくらか同意できるもの。そのシペア君を評価したキャサリン先生も夜葬花の呼び名の通り、ペルケティア最高峰の魔術師でしょう?なら、二人が勝負したらどっちが勝つのかなぁって」
シペアが俺のことをそう思ってくれているのは素直に嬉しいが、だからといってキャシーと勝負しろだなんて急展開すぎる。
いくらなんでもそんな理由で俺とキャシーが勝負するわけが―
「勝負ねぇ…面白そうだわ。アンディ君、この案乗ってみない?正直、私もあなたが魔術師としてどれくらいやれるのか気になるし」
ないこともなかった。
そういうタイプとは思っていなかったが、魔術師同士の手合わせにキャシーは随分乗り気のようだ。
「いやですよ。なんで俺がそんなこと…。大体いいんですか?勝手にそんなことして、ウィンガル卿に知られたら怒られますよ」
既に一度グロウズが騒ぎを起こして学園に迷惑をかけているのに、ここでキャシーが魔術勝負をすると知られたら、ウィンガルがどういう反応をするかわかったものではない。
「大丈夫よ。何もそこらで暴れまわるわけでもなし。ちょっと手合わせをするだけ。日頃の訓練の延長みたいなものでしょ」
「そうは言っても…それに、勝っても負けてもお互いに得るものはないのはちょっと…」
強い魔術師と手合わせが出来るのはいい経験にはなるが、正直キャシーの魔術は未だ得体のしれないところがあるので、やるにしてももう少し向こうの情報を集めてからにしたい。
ぶっちゃけ、面倒くさいというのもある。
「ふぅむ、そうねぇ…あ!だったら、勝った方が負けた方に何でも一つ命令できるってのはどう?」
勝ったところで―ん?今なんでもって言った?
「お、いい反応。なんでもとは言ったけど、いやらしいのは無しよ?そういうの以外でならなんでもって意味ね」
ついついキャシーの言葉に反応してしまい、しっかり釘を刺されてしまったが、別に俺はいやらしいことなど考えていない。
おっぱいがどうとか胸をどうとかそういうのは一切、全くもって頭にはなかった。
いやほんと、乳がどうとかなんて、一度も思ったことはない。
とはいえ、何でも命令できるというのなら、実はキャシーには少しやってほしいことがある。
無論、無理矢理どうとかではなく、聖鈴騎士の職務に関わったりすることはないので、多分引き受けてくれるはず。
もっとも、勝ってからの話になるが。
「…わかりました。じゃあ一つ手合わせをしてみますか」
「そうこなくちゃ。じゃあ今日…は流石に準備が足りてないわね。明日辺りどうかしら?」
「俺は一向に構いません」
「じゃあ場所とかの手配はこっちでやっておくから、決まったらまた後で連絡するわ」
こうしてキャシーとの手合わせが決まったわけだが、この場にいた生徒達もまたそれぞれに動き出していた。
―夜葬花の手合わせ!
―実戦経験のある魔術師って、こりゃあ見逃がせないぞ
―胴元になれば儲けが…
聖鈴騎士序列六位の魔術師が戦うところを見たいという思いが口を突いて出ているようで、熱い視線が俺達に注がれていた。
ちょっとまずいことを口走った者もいたが、そこは学生の領分を弁えてくれることを祈る。
見たいというのなら好きにさせたいところだが、明日は普通に授業があるので、学生に授業をサボらせるのはまずい。
となれば、手合わせをする場所は秘匿して、生徒が見学に来ないようにした方が良さそうだ。
流石にこの場では言えないが、その辺りはキャシーもわかってくれると思うので、後で伝えておこう。
しかしキャシー相手の戦いとなると、情報収集から始めなくてはな。
気は進まないが、本人以外で彼女のことを一番知っているであろう人物に話を聞いてみるとしよう。
他にいないとはいえ、相手が相手だけに、本当に気は進まない。
向こうも簡単には教えてくれないかもしれないが、美食に目がない奴だし、適当に美味いもんでも差し入れれば口も軽くなるだろう。
毒でも入れてやろうかと一瞬考えたが、対価を貰う前に倒れられても困るのでグッと堪えよう。
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