吸血姫と赤薔薇の騎士

寿司

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第1話 妹

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「え? わ、私が魔女? 」

 いきなりの通達に困惑する私、カミル=エルステッド。

「そうだカミル。お前が魔法を使っているのを見た、とミストが言っている」

「お父様お待ち下さい! 私は魔法など使っておりません! 」

 今まで見たことのないような顔で私を睨み付けるお父様。そしてその背後には可愛い妹、ミストがカタカタと震えている。

「口答えをするな! 」

 パァンと小気味良い音が鳴り響き、私の頬に鋭い痛みが走る。

「きゃあ!! 」

 ミストが可愛らしく悲鳴をあげる。しかしその口許には笑みが浮かんでいる。

 ……そういうことか。

 私はその表情を見て、全てを察した。

 私とミストは腹違いの姉妹。黒髪に鋭い目付きの私とは違い、金色のふわふわロングにほんわりとした表情のミストはまさにお姫様だった。

 お父様もミストの方ばかり可愛がっていたし、従者たちもミストを贔屓していたのだろう。

 でも表面上は私とミストは仲良し姉妹と言っても良い関係だった。

 ーー私の婚約が決まるまでは

 ハルツ=アレキサンドリア。
 アレキサンドリア王国の第二王子であり、れっきとした王子様だ。
 そんな彼がそこそこの位であるエルステッド家から嫁を貰いたいと話が来たのである。

 お父様たちは勿論乗り気で、何としてでも王家との繋がりを持ちたいと思ったらしい。

 そしてその結婚相手はミスト……ではなく、私になった。

 理由は簡単だ。私が長女だからである。
 それにお父様も、可愛い娘は手元に置いておきたいと思ったのだろう。私は、邪魔だったのだ。

 私とて別に不満はなかった。
 伯爵令嬢として生まれたからにはお家のために結婚するのは当たり前だ。

 それも王家の者となんて文句はない。しかし、ミストはそれを良しとしなかった。

 どうやら彼女はハルツ様に恋をしたらしい。寝ても覚めても彼のことばかり考えてしまうようで、毎日泣いていた。

 私だって譲れるもんなら譲ったって良い。でもこれは、お父様が決めたことなのだ。

 ハルツ様も、私より可愛いミストを妻にしたいんだなと言うのは薄々感じていた。

 ーーそれだったのに今の状況は何!?

 まさかそんな私が魔女であると疑惑をかけられ、裁かれようとしているの!?

「カミル、残念だが。お前は命を持って償え」

「お、お父様……!? 冗談ですよね!? 」

「刑は明日の夜だ! カミルを地下牢へ繋いでおけ!! 」

 お父様の合図と共に、たくさんの兵士たちが私に群がったかと思うと、あっという間に拘束された。

「お父様ーーーー!!!!!! 」

 私の悲痛な悲鳴も、もはや彼の耳には届かないようだった。
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