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第11話 病院
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全てを終わらせた私は、手についた血を舐めとる。が、直ぐに吐き出す。
「……まっずい。飲めたものじゃないわね」
……で、この状況どうしよう。
ユースリアを倒したのは良いけど、人間たちの前で思いっきり目立ってしまった……。
「えー、えーと……すいません。帰ります」
いたたまれなくなった私はそそくさとその場を後にしようとする。すると、リクに手を掴まれた。
「待て! 」
そして彼は泣きながら私を抱き締めた。
「きゃっ! 」
「……本当にありがとう。君は、命の恩人だ」
「あ、いえいえ……」
男性に抱き締められたことなんてない私は思わず固まる。
えーっとこういうときはどうしたら良いんだろう?
抱き締め返した方が良いんだろうか?
「カミルさん……」
そしてよろよろとミルファも近づいてくると、私に抱きついた。
「ありがとう、ありがとうございます……!! 私、本当は死にたくなかった! 皆と一緒に生きたかった……!!」
兄妹に抱き付かれてワンワン泣き叫ぶ二人。私はどうすれば良いのか分からず、ただされるがままだ。
「えーっと、その、ルイスさんを病院に連れていった方が良いかもです」
「そ、そうだわ!! 誰か! ルイスを病院へ!! 」
慌てたミルファがルイスの方に走り寄ると、村人の何人かも救護にあたった。
意識は失っているものの、命には別状なさそうだ。
「……ごめん、俺も、気分が悪い」
「リクさん!! 」
そうだった。私が彼から大量の血を吸ったのだ。貧血になってもおかしくない。
私に寄りかかるように倒れた彼を、慌てて病院へ連れていった。
◇◇◇
「軽い貧血やの、しばらく安静にしていれば治るやろ」
「良かった……」
やはり血を吸いすぎた故の貧血だったようだ。リクには申し訳ないことをしてしまった。
医者はジロジロと私を見ると、興味深そうに話始める。
眼鏡をかけたその男性は、いかにも学者肌のようだ。クリーム色の髪を後ろに束ね、まるで尻尾のように揺れる。そしてつり目がちなその灰色瞳から、狐を連想させる。
「それにしてもまさか吸血鬼が存在したとは驚いたわ。見た目は……人間とそこまで違いはなさそうやのう」
どこか異国の人なのだろうか、言葉遣いが独特だ。
「そうですね……瞳の色と牙ぐらいでしょうか」
「ああすまんなジロジロと。いや、わしはね人を超えた者たちに興味がありましてね。こういう話が好きなんや」
「なるほど、もしかしたら期待外れだったかもしれませんね」
「とんでもない、本物の吸血鬼に会えるなんて光栄ですわ。欲を言えば解剖とか……」
「駄目に決まってます」
バラバラにされるなんてたまったもんじゃない!!
「ですよね、ああわしはユキト。ここで医者をやらせて貰ってます」
「カミルです。よろしくお願いします」
今さら自己紹介するのも変なかんじ……。すると「うう……」と呻き声をあげてリクが目を覚ました。
「あ、リクさん。目が覚め……」
見開いたリクの瞳を見て驚いた。
彼の焦げ茶色の瞳は、私と同じような赤に染まっているではないか。
そして彼の口許には先程まではなかった鋭い牙が覗く。
「カミルさん……? 」
「嘘……」
リクも吸血鬼……?
いや、そんなことはない。
同類だったら分かるはずだ。
「ふむ、やっぱり」
ユキトはまるで分かってたかのように頷く。
「やっぱり、とは……? 」
「なんや自分吸血鬼なのに知らんかったんか? 吸血鬼は人間を吸血することで殖えるんや。女吸血鬼なら男を、男吸血鬼なら女を吸えば良い」
「え……? 」
「ただ吸われたからと言って必ずなるという訳でもない。これは本人の意思やら運やらが絡むんやろな」
「え、えっとじゃあリクさんは……」
「吸血鬼になったようやの。お前さんがしてしまったんだ。そうするとリクは息子に当たるんか……? それとも旦那……? いや弟……? 」
「何の話だ……? うっ……頭が痛い……」
「リクさん……ごめんなさい!!!!!! 」
私は弾かれたようにリクに土下座をするのだった。
「……まっずい。飲めたものじゃないわね」
……で、この状況どうしよう。
ユースリアを倒したのは良いけど、人間たちの前で思いっきり目立ってしまった……。
「えー、えーと……すいません。帰ります」
いたたまれなくなった私はそそくさとその場を後にしようとする。すると、リクに手を掴まれた。
「待て! 」
そして彼は泣きながら私を抱き締めた。
「きゃっ! 」
「……本当にありがとう。君は、命の恩人だ」
「あ、いえいえ……」
男性に抱き締められたことなんてない私は思わず固まる。
えーっとこういうときはどうしたら良いんだろう?
抱き締め返した方が良いんだろうか?
「カミルさん……」
そしてよろよろとミルファも近づいてくると、私に抱きついた。
「ありがとう、ありがとうございます……!! 私、本当は死にたくなかった! 皆と一緒に生きたかった……!!」
兄妹に抱き付かれてワンワン泣き叫ぶ二人。私はどうすれば良いのか分からず、ただされるがままだ。
「えーっと、その、ルイスさんを病院に連れていった方が良いかもです」
「そ、そうだわ!! 誰か! ルイスを病院へ!! 」
慌てたミルファがルイスの方に走り寄ると、村人の何人かも救護にあたった。
意識は失っているものの、命には別状なさそうだ。
「……ごめん、俺も、気分が悪い」
「リクさん!! 」
そうだった。私が彼から大量の血を吸ったのだ。貧血になってもおかしくない。
私に寄りかかるように倒れた彼を、慌てて病院へ連れていった。
◇◇◇
「軽い貧血やの、しばらく安静にしていれば治るやろ」
「良かった……」
やはり血を吸いすぎた故の貧血だったようだ。リクには申し訳ないことをしてしまった。
医者はジロジロと私を見ると、興味深そうに話始める。
眼鏡をかけたその男性は、いかにも学者肌のようだ。クリーム色の髪を後ろに束ね、まるで尻尾のように揺れる。そしてつり目がちなその灰色瞳から、狐を連想させる。
「それにしてもまさか吸血鬼が存在したとは驚いたわ。見た目は……人間とそこまで違いはなさそうやのう」
どこか異国の人なのだろうか、言葉遣いが独特だ。
「そうですね……瞳の色と牙ぐらいでしょうか」
「ああすまんなジロジロと。いや、わしはね人を超えた者たちに興味がありましてね。こういう話が好きなんや」
「なるほど、もしかしたら期待外れだったかもしれませんね」
「とんでもない、本物の吸血鬼に会えるなんて光栄ですわ。欲を言えば解剖とか……」
「駄目に決まってます」
バラバラにされるなんてたまったもんじゃない!!
「ですよね、ああわしはユキト。ここで医者をやらせて貰ってます」
「カミルです。よろしくお願いします」
今さら自己紹介するのも変なかんじ……。すると「うう……」と呻き声をあげてリクが目を覚ました。
「あ、リクさん。目が覚め……」
見開いたリクの瞳を見て驚いた。
彼の焦げ茶色の瞳は、私と同じような赤に染まっているではないか。
そして彼の口許には先程まではなかった鋭い牙が覗く。
「カミルさん……? 」
「嘘……」
リクも吸血鬼……?
いや、そんなことはない。
同類だったら分かるはずだ。
「ふむ、やっぱり」
ユキトはまるで分かってたかのように頷く。
「やっぱり、とは……? 」
「なんや自分吸血鬼なのに知らんかったんか? 吸血鬼は人間を吸血することで殖えるんや。女吸血鬼なら男を、男吸血鬼なら女を吸えば良い」
「え……? 」
「ただ吸われたからと言って必ずなるという訳でもない。これは本人の意思やら運やらが絡むんやろな」
「え、えっとじゃあリクさんは……」
「吸血鬼になったようやの。お前さんがしてしまったんだ。そうするとリクは息子に当たるんか……? それとも旦那……? いや弟……? 」
「何の話だ……? うっ……頭が痛い……」
「リクさん……ごめんなさい!!!!!! 」
私は弾かれたようにリクに土下座をするのだった。
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