吸血姫と赤薔薇の騎士

寿司

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第13話 住処

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「話を整理しよう。俺はカミルさんに血を吸われて吸血鬼になった」

「そうです」

「その結果怪力と永遠の命を得た」

「永遠かどうかは分かりません。私もその……二十そこそこしか生きてませんので」

 なるほど、とリクは思ったより冷静そうだった。

「なってしまったものは仕方ないだろう。むしろカミルさんに感謝してるんだ。俺に君を責める権利なんてない」

「リクさん……」

 何て良い人なんだろう……。

「ええなぁ、わしも噛んでくれんか? 自分が吸血鬼になればその性質が分かる気がするんやけど」

「嫌ですよ! 」

「ええやん、ちょろっと血を吸ってくれればええんやから! 」

 じりじりと迫るユキト。
 ……このままだと私が襲われそうだ。
 しかし済んでのところでリクが割り込むと、引き剥がしてくれた。

「その辺にしとけ、変態医者」

「軽い冗談やないか、つれないの」

 冗談には見えなかったけどな……。
 
 すると、ん? とユキトが不意に声をあげる。

「のうリク、その腕の痣はなんや? 」

「痣? 」

 ユキトの指差す方向に視線を移すと、リクの右腕に花弁のような形をした痣がある。

「何だこれ、どこかでぶつけたかな」

 それにしてはくっきり花びらの形に見える……。

「前はこんなもんなかったよなぁ。これも吸血鬼の証だったり……? 」

「知らない! 知りませんよ!! 」

 無実を必死に訴える私。
 それに吸血したのは首からだ! 腕なんて噛んでない!

「まあ特に痛みもないし……いずれ消えるだろ。それよりこのことをミルファやルイスにどう説明すれば良いんだ……」

「そうだわ! 私も早くこの村から出ていかなきゃ! 」

 すっかり忘れてた。
 いくらミルファやルイスを助けるためとはいえ、この村の神をぶっ殺してしまったのだ。よく思わない人がいてもおかしくない。

 それに吸血鬼ということもバレたし、パニックになる前に逃げなければ……。

「それは無責任ちゃう? リクをこんな体にした責任は取らなきゃあかん」

「……た、確かに」

「え!? 」

 三人でワーワー言い争っていると、一人の訪問者が現れた。

「お取り込み中すまんな、カミルさんはいるかい? 」

 しわがれた声。あ、この人は村長と呼ばれてた男性だ。

「は、はい! こ、この度はとんでもないことを……」

 慌てて頭を下げる私。罵声の一つや二つ、飛んできてもおかしくない状況だ。

 しかし、村長の言葉は私の予想とは違っていた。

「顔をあげてください、私はあなたに感謝を伝えに来たのです」

「へ、感謝……? 」

 顔をあげるとそこには深々と頭を下げる村長。

「蛇神も元々は心優しくれっきとした善神でした。しかし時が経つに連れて悪神へと堕ち、人を食うようになりました」

「我らはいつ神の気まぐれで若者の命を奪われるか気が気でない日々を送っていたのです」

「あのニョロニョロは気まぐれだったのー」

 うんうんと頷くユキト。

「だからこそカミルさんに打ち倒されたのも避けられぬ運命。ミルファをルイスを、そして私たちを救ってくれて本当にありがとうございました」

「いえ、そんな、顔をあげてください」

「カミルさんさえ良ければこの村に住んでくれても構いません。ミルファに聞きました。帰る家がないと」

「うん、そうですね、確かに家はないです」

 もう私はお屋敷には帰れないし、いく宛もない。

「それにカミルさんがいてくれれば私たちも心強い。どうですか? 」

「そうですね……」

 でもここにいれば迷惑をかけるかもしれない。そんな思いが強かった。

「それにリクのことも吸血鬼にしてしもうたやないか。同じ村に住んでればいざってとき対処しやすいやろ」

「リクのことも吸血鬼……? 」

 村長が目を開く。ユキトがやべ、と言った風に口を押さえる。

「……すいませんでした」

 私はリクに起きたことを村長に説明した。村長は怒りはしなかったものの、私がこの村に住むことはほぼ確定となった。

……まあ特に行くところもないし構わないのだけど。
 
 
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