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闘技大会の街 コロセウム
第14話 逃亡者も楽じゃない
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西へ西へと進む僕ら、辺りは一面牧草地帯で、地平線に太陽が沈んでいく様子がくっきりと見えている。
後ろを振り返っても、ヤンさんの村はもう見えなくなっていた。
スキップしながらヤンさんから貰ったサンドイッチを頬張るリオンはご機嫌だ。心底チーズが気に入ったのだろう。
ペロリと平らげたリオンはご馳走さまでしたー! と手を合わせる。口はチーズでベトベトだ。
その表情をもう一度見たくて、僕は思わず自分のサンドイッチを彼女に差し出した。
「そんなに気に入ったなら僕の分も食べて良いぞ」
「え!? そんな訳にはいかないよ。ノアも食べてみて! 美味しいよ」
必死に首を振ってはいるものの、体は正直だ。ヨダレ、垂れてるぞ。
「僕はお腹一杯だから」
「えーっと……」
しばし考え込むような仕草をしたリオンだったがそうだ! と手を叩くと僕のサンドイッチを半分にしてこちらに一欠片渡して来た。
「半分こね! 」
「はは、ありがと」
僕はその半分になったサンドイッチを一口で食べる。なるほど美味しい。これはリオンが夢中になるのも分かる気がした。
◇◇◇
「辺りも暗いしここらで野宿するか」
「はーい! 」
てきぱきと焚き火をするリオンはもう馴れた様子だ。
僕もカバンから毛布を取りだし、寝る準備を始める。
どっぷりと夜に包まれた世界では、数メートル先も見えない。たださわさわと木の葉が風に吹かれてる音とぱちぱちという焚き火の音だけが聞こえていた。
「じゃあリオン、僕が見張ってるからゆっくり寝な。疲れただろう」
「大丈夫、先にノアが寝て」
焚き火を眺めながらリオンが言う。
「僕は平気さ、明日にはコロセウムに着くんだからゆっくり宿で眠れるよ」
わずかではあるがヤンさんから報酬金を貰うことが出来たので、一晩ぐらいは宿に泊まることが出来そうだった。
「私まだ目が冴えて眠れないの。ノアは眠そうだよ? 」
ギクッ。確かにレッド・ドラゴンとの戦闘やギルドからの逃亡で体はクタクタだった。それをリオンに見透かされてしまうとは……。
図星を突かれた僕は渋々と先に眠ることにした。何か起きたらすぐに起こすんだぞ、という伝言を残して。
「おやすみなさい」
というリオンの声を聞いた気がした。
……
ーーその日、僕は不思議な夢を見た。
荒れた大地
倒れ伏す大きな白い塊
そしてそれを囲む数人の人たち
人々は何やら魔法を唱えながら魔法陣を展開している
(あれ? この光景……どこかで)
しかし僕は声は出せない。
「ごめんなさいリヒト、貴方には辛い役目を押し付けるね」
一人の女性が僕に声をかけた。
長い髪が特徴的な美人で、面識はない。しかしどこか懐かしさを感じる。
リヒト?
その名前、どこかで……。
「必ず再会しよう。何があったって僕たちは仲間だ」
大盾を構えた大柄な男性が親指を立てて白い歯を見せた。
「まだ俺たちは負けた訳じゃない。これはあくまでも作戦だ」
「ん~、でも負けっちゃ負けなんじゃない? 」
「うるさいぞヴァイス! せっかく決まったのに口出すな! 」
盗賊らしき少女と、戦士らしい青年が取っ組み合いを始めた。緊張感があるのかないのか良く分からない場面である。
「はいはい、ヴァイスもルカリも喧嘩しない。私たちにはやらなきゃいけないことがあるんだからね」
先ほどの長髪の美人が呆れた様に腰に手を当てている。
「分かってる。××××だけは死なせてはいけない」
そしてその五人は僕の方を向くと、しっかりと目を見て頷いた。
すると、夢の中の僕は白い塊に向かって、剣を振り下ろしたーー。
後ろを振り返っても、ヤンさんの村はもう見えなくなっていた。
スキップしながらヤンさんから貰ったサンドイッチを頬張るリオンはご機嫌だ。心底チーズが気に入ったのだろう。
ペロリと平らげたリオンはご馳走さまでしたー! と手を合わせる。口はチーズでベトベトだ。
その表情をもう一度見たくて、僕は思わず自分のサンドイッチを彼女に差し出した。
「そんなに気に入ったなら僕の分も食べて良いぞ」
「え!? そんな訳にはいかないよ。ノアも食べてみて! 美味しいよ」
必死に首を振ってはいるものの、体は正直だ。ヨダレ、垂れてるぞ。
「僕はお腹一杯だから」
「えーっと……」
しばし考え込むような仕草をしたリオンだったがそうだ! と手を叩くと僕のサンドイッチを半分にしてこちらに一欠片渡して来た。
「半分こね! 」
「はは、ありがと」
僕はその半分になったサンドイッチを一口で食べる。なるほど美味しい。これはリオンが夢中になるのも分かる気がした。
◇◇◇
「辺りも暗いしここらで野宿するか」
「はーい! 」
てきぱきと焚き火をするリオンはもう馴れた様子だ。
僕もカバンから毛布を取りだし、寝る準備を始める。
どっぷりと夜に包まれた世界では、数メートル先も見えない。たださわさわと木の葉が風に吹かれてる音とぱちぱちという焚き火の音だけが聞こえていた。
「じゃあリオン、僕が見張ってるからゆっくり寝な。疲れただろう」
「大丈夫、先にノアが寝て」
焚き火を眺めながらリオンが言う。
「僕は平気さ、明日にはコロセウムに着くんだからゆっくり宿で眠れるよ」
わずかではあるがヤンさんから報酬金を貰うことが出来たので、一晩ぐらいは宿に泊まることが出来そうだった。
「私まだ目が冴えて眠れないの。ノアは眠そうだよ? 」
ギクッ。確かにレッド・ドラゴンとの戦闘やギルドからの逃亡で体はクタクタだった。それをリオンに見透かされてしまうとは……。
図星を突かれた僕は渋々と先に眠ることにした。何か起きたらすぐに起こすんだぞ、という伝言を残して。
「おやすみなさい」
というリオンの声を聞いた気がした。
……
ーーその日、僕は不思議な夢を見た。
荒れた大地
倒れ伏す大きな白い塊
そしてそれを囲む数人の人たち
人々は何やら魔法を唱えながら魔法陣を展開している
(あれ? この光景……どこかで)
しかし僕は声は出せない。
「ごめんなさいリヒト、貴方には辛い役目を押し付けるね」
一人の女性が僕に声をかけた。
長い髪が特徴的な美人で、面識はない。しかしどこか懐かしさを感じる。
リヒト?
その名前、どこかで……。
「必ず再会しよう。何があったって僕たちは仲間だ」
大盾を構えた大柄な男性が親指を立てて白い歯を見せた。
「まだ俺たちは負けた訳じゃない。これはあくまでも作戦だ」
「ん~、でも負けっちゃ負けなんじゃない? 」
「うるさいぞヴァイス! せっかく決まったのに口出すな! 」
盗賊らしき少女と、戦士らしい青年が取っ組み合いを始めた。緊張感があるのかないのか良く分からない場面である。
「はいはい、ヴァイスもルカリも喧嘩しない。私たちにはやらなきゃいけないことがあるんだからね」
先ほどの長髪の美人が呆れた様に腰に手を当てている。
「分かってる。××××だけは死なせてはいけない」
そしてその五人は僕の方を向くと、しっかりと目を見て頷いた。
すると、夢の中の僕は白い塊に向かって、剣を振り下ろしたーー。
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