33 / 50
学術都市 アルカデラ
第33話 どこへ逃げる?
しおりを挟む
二人を連れて走り回る僕たち。
しかし一体ここはどこなのだろうか? まるで迷路のように入り組んでいる。
「ちょ……ちょっと……ま、待って……」
ぜーぜーと肩で息をするソフィア。ええい、こんなところで立ち止まってる場合ではないのに!
仕方ないと思った僕は、ソフィアをひょいと抱き上げると、そのまま走り出す。
「えええ!?!? ちょっと!!! 」
「早く逃げなきゃ、我慢して」
顔を真っ赤にしてばたつくソフィアだったが、今はそんなことをしてる場合ではない。
「ソフィア! どこから逃げれば良い? 」
「ええと、ここは多分、議会塔だから……いやでも下には追っ手が……」
そして僕はあるものに目を止めた。
窓だ!
「ソフィア、リオン、しっかり捕まって! 」
「うん! 」
元気良く返事をするリオン。
「は? 」
ぽかんと口を開けるソフィア。
そして僕は勢い良く窓をかち割ると、弾丸のように外に飛び出した。少々高さはあるものの、難なく着地する。
「あなた……結構無茶するのね……」
ソフィアが呆れたように呟いた。
「よし、外に出たぞ。ソフィア、次はどこに行けば良い? 」
飛び出したのはだだっ広い空き地のような場所。
辺りに建物は何もなく、ただ壁だけがぐるりと僕たちを囲むように建っている。
「もう無理よ」
苦虫を噛み潰したような顔でソフィアが言う。そして僕の腕の中からするりと抜け出すと、その壁に手を触れた。
とたんにバチッという音がしたかと思うと、一瞬だけ、魔法のベールのようなものがかけられているのが分かった。
「ここはアルカデラのはじっこ。アルカデラはね、魔法の壁で囲われた都市なの。出入り口は一つしかないし、それ以外の場所から脱出なんて不可能よ」
諦めたようにソフィアは地面に寝転がる。
「あたしたちは袋のネズミ。出入り口はきっと塞がれているだろうし、いずれ追っ手が来るでしょうね」
「……壁は壊せないの? 」
リオンが聞く。
するとソフィアは、あはははと口を開けて笑いだした。
「無理無理、だってこの魔法は太古にファリアス様がかけたものだ。神の魔法を破るなんて、それこそ神にしか出来ない」
「そんな……」
リオンががっくりと肩を落とす。しかし、僕はまだ諦めない。
「そんなの……やってみなきゃ分からないだろ」
「は? 」
僕は再び魔法を唱えると、ひたすら壁にぶつけ続ける。
何回、何十回、何百回繰り返してみよう。そうすればいつかは壊せるはず。
「そんなことしたって無駄! ノア、もう諦めて! 」
「僕は諦めない、例えMPが尽きたって、ここから逃げて見せる! 」
「どうして? どうしてそこまでするの? あなたは言わば巻き込まれただけ。なぜそこまで? 」
なぜだろう。ただソフィアの叫びを聞いて、居ても立ってもいられなくなったというのが正直な気持ちだ。
「そうだ、この本。ソフィアに見せたいと思ってたんだ」
僕はカバンからあの本を取り出す。
ーー太古の大罪人 ジョージ=ロアクリフが書いたとされる呪いの本
『愚者の遺書』
これの最後のページには、確か娘に会いたいという願いがかけられていたはず。
「何これ……? 」
ソフィアがその本に触れたとき、再び何者かの記憶が僕の脳内を駆け巡った。
「ジョージ……怖くはないか? 」
「怖くはないさ。別に俺たちは負けるわけじゃない」
これは……ジョージ=ロアクリフの記憶?
話しかけている青年の顔はまるで霧がかったように見えない。
「でも故郷に残してきた娘のマルカだけは気がかりだね。何も言わずに飛び出しちゃったからなあ」
「すまない」
「なぁに、×××が謝ることじゃねえよ。だからほれ、マルカに向けて手記を残すことにした」
そうしてジョージは一冊の本をかかげた。
「いつかあいつの元に届いてくれれば、俺はもう悔いはねえな」
そうやって笑うジョージの顔は確かにソフィアの面影があった。
「な、何これ!? 」
ソフィアの魔法生成機から、光が溢れ出す。
その眩しさに思わず目を背けてしまいそうだった。
そして僕たちが掴んでいるあの本、みるみる内にあのボロい表紙から記憶のなかで見た立派なものに変わる。
タイトルも書き代わり、大きな字で、『マルカに捧ぐ』という文字が浮かび上がった。
「今ならいける! ソフィア、魔法を唱えるんだ! 」
「無理だよ! あたしが作る魔法なんて子どもだましみたいなもんだし」
「大丈夫! 僕を信じて」
ソフィアはしばらく迷うように僕の顔を見つめていたが、やがて覚悟を決めたのか、唇を噛み締めると魔法を唱え始めた。
今まで見たことのないぐらいの魔力量。
ソフィアが不安そうにこちらを見るが、僕がその手を握る。
後ろの方では追い付いてきた追っ手がいたぞ! 捕まえろ! と声をあげているのが分かった。
「いけええええええ!!!!!! 」
そうして放った光の玉は、バリバリと音を立てて壁を破ったのである。
しかし一体ここはどこなのだろうか? まるで迷路のように入り組んでいる。
「ちょ……ちょっと……ま、待って……」
ぜーぜーと肩で息をするソフィア。ええい、こんなところで立ち止まってる場合ではないのに!
仕方ないと思った僕は、ソフィアをひょいと抱き上げると、そのまま走り出す。
「えええ!?!? ちょっと!!! 」
「早く逃げなきゃ、我慢して」
顔を真っ赤にしてばたつくソフィアだったが、今はそんなことをしてる場合ではない。
「ソフィア! どこから逃げれば良い? 」
「ええと、ここは多分、議会塔だから……いやでも下には追っ手が……」
そして僕はあるものに目を止めた。
窓だ!
「ソフィア、リオン、しっかり捕まって! 」
「うん! 」
元気良く返事をするリオン。
「は? 」
ぽかんと口を開けるソフィア。
そして僕は勢い良く窓をかち割ると、弾丸のように外に飛び出した。少々高さはあるものの、難なく着地する。
「あなた……結構無茶するのね……」
ソフィアが呆れたように呟いた。
「よし、外に出たぞ。ソフィア、次はどこに行けば良い? 」
飛び出したのはだだっ広い空き地のような場所。
辺りに建物は何もなく、ただ壁だけがぐるりと僕たちを囲むように建っている。
「もう無理よ」
苦虫を噛み潰したような顔でソフィアが言う。そして僕の腕の中からするりと抜け出すと、その壁に手を触れた。
とたんにバチッという音がしたかと思うと、一瞬だけ、魔法のベールのようなものがかけられているのが分かった。
「ここはアルカデラのはじっこ。アルカデラはね、魔法の壁で囲われた都市なの。出入り口は一つしかないし、それ以外の場所から脱出なんて不可能よ」
諦めたようにソフィアは地面に寝転がる。
「あたしたちは袋のネズミ。出入り口はきっと塞がれているだろうし、いずれ追っ手が来るでしょうね」
「……壁は壊せないの? 」
リオンが聞く。
するとソフィアは、あはははと口を開けて笑いだした。
「無理無理、だってこの魔法は太古にファリアス様がかけたものだ。神の魔法を破るなんて、それこそ神にしか出来ない」
「そんな……」
リオンががっくりと肩を落とす。しかし、僕はまだ諦めない。
「そんなの……やってみなきゃ分からないだろ」
「は? 」
僕は再び魔法を唱えると、ひたすら壁にぶつけ続ける。
何回、何十回、何百回繰り返してみよう。そうすればいつかは壊せるはず。
「そんなことしたって無駄! ノア、もう諦めて! 」
「僕は諦めない、例えMPが尽きたって、ここから逃げて見せる! 」
「どうして? どうしてそこまでするの? あなたは言わば巻き込まれただけ。なぜそこまで? 」
なぜだろう。ただソフィアの叫びを聞いて、居ても立ってもいられなくなったというのが正直な気持ちだ。
「そうだ、この本。ソフィアに見せたいと思ってたんだ」
僕はカバンからあの本を取り出す。
ーー太古の大罪人 ジョージ=ロアクリフが書いたとされる呪いの本
『愚者の遺書』
これの最後のページには、確か娘に会いたいという願いがかけられていたはず。
「何これ……? 」
ソフィアがその本に触れたとき、再び何者かの記憶が僕の脳内を駆け巡った。
「ジョージ……怖くはないか? 」
「怖くはないさ。別に俺たちは負けるわけじゃない」
これは……ジョージ=ロアクリフの記憶?
話しかけている青年の顔はまるで霧がかったように見えない。
「でも故郷に残してきた娘のマルカだけは気がかりだね。何も言わずに飛び出しちゃったからなあ」
「すまない」
「なぁに、×××が謝ることじゃねえよ。だからほれ、マルカに向けて手記を残すことにした」
そうしてジョージは一冊の本をかかげた。
「いつかあいつの元に届いてくれれば、俺はもう悔いはねえな」
そうやって笑うジョージの顔は確かにソフィアの面影があった。
「な、何これ!? 」
ソフィアの魔法生成機から、光が溢れ出す。
その眩しさに思わず目を背けてしまいそうだった。
そして僕たちが掴んでいるあの本、みるみる内にあのボロい表紙から記憶のなかで見た立派なものに変わる。
タイトルも書き代わり、大きな字で、『マルカに捧ぐ』という文字が浮かび上がった。
「今ならいける! ソフィア、魔法を唱えるんだ! 」
「無理だよ! あたしが作る魔法なんて子どもだましみたいなもんだし」
「大丈夫! 僕を信じて」
ソフィアはしばらく迷うように僕の顔を見つめていたが、やがて覚悟を決めたのか、唇を噛み締めると魔法を唱え始めた。
今まで見たことのないぐらいの魔力量。
ソフィアが不安そうにこちらを見るが、僕がその手を握る。
後ろの方では追い付いてきた追っ手がいたぞ! 捕まえろ! と声をあげているのが分かった。
「いけええええええ!!!!!! 」
そうして放った光の玉は、バリバリと音を立てて壁を破ったのである。
0
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました
小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。
しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!?
助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、
「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。
幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。
ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく!
ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー
剣ぺろ伝説〜悪役貴族に転生してしまったが別にどうでもいい〜
みっちゃん
ファンタジー
俺こと「天城剣介」は22歳の日に交通事故で死んでしまった。
…しかし目を覚ますと、俺は知らない女性に抱っこされていた!
「元気に育ってねぇクロウ」
(…クロウ…ってまさか!?)
そうここは自分がやっていた恋愛RPGゲーム
「ラグナロク•オリジン」と言う学園と世界を舞台にした超大型シナリオゲームだ
そんな世界に転生して真っ先に気がついたのは"クロウ"と言う名前、そう彼こそ主人公の攻略対象の女性を付け狙う、ゲーム史上最も嫌われている悪役貴族、それが
「クロウ•チューリア」だ
ありとあらゆる人々のヘイトを貯める行動をして最後には全てに裏切られてザマァをされ、辺境に捨てられて惨めな日々を送る羽目になる、そう言う運命なのだが、彼は思う
運命を変えて仕舞えば物語は大きく変わる
"バタフライ効果"と言う事を思い出し彼は誓う
「ザマァされた後にのんびりスローライフを送ろう!」と!
その為に彼がまず行うのはこのゲーム唯一の「バグ技」…"剣ぺろ"だ
剣ぺろと言う「バグ技」は
"剣を舐めるとステータスのどれかが1上がるバグ"だ
この物語は
剣ぺろバグを使い優雅なスローライフを目指そうと奮闘する悪役貴族の物語
(自分は学園編のみ登場してそこからは全く登場しない、ならそれ以降はのんびりと暮らせば良いんだ!)
しかしこれがフラグになる事を彼はまだ知らない
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる