チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

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第26話 騎士ミシェル

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 店では迷惑になるからということで自宅に移動した俺たち。相変わらずその女騎士は不機嫌そうにじろじろと俺を見ている。

「で、あなたは? 」

 女騎士の前にビクビクしながらお茶を出す俺。
 シエルも俺の緊張がうつったのか、遠巻きにこちらを眺めている。

「失礼しました。私はガルダシア王国直属の騎士、ミシェル=ユクドラスと申します。今からいくつか質問をさせて頂きます」

「はあ……どうぞ」

 ルーナの言っていた人物とはこの人のことか。
 確かに美人ではあるが、気の強さが表情に表れていた。

 ミシェルは俺を真っ直ぐに見つめると、はきはきとした口調でこう言い放った。

「失礼ですが、ご職業は? 」

「え、ええと……無職ですか、ね」

 ふむ、と何やら手元のメモに書き写すミシェル。
 勘違いしないで欲しいが別に働く気がないわけではない。それに前の世界ではきちんと労働の義務を果たしていた! 

 ……なんてことをこの騎士には主張出来ないのが俺の情けないところである。

「それで、そちらのお嬢さんは? 」

 ミシェルはシエルにちらりと視線を移した。

「ええと……親戚の子を預かっていまして」

「ふーん、本当ですか? 」

 うわぁ……明らかに疑ってる。
 彼女の鋭い眼光に耐えられなくなった俺は、思わず本当のことを口にしてしまった。
 
「嘘です……奴隷として購入しました」

「やっぱり。嘘をついてもバレますよ。キチンと真実を話して下さいね」

 はい……と震えた声で答える俺。
 しかしミシェルは奴隷購入の件を聞きに来た訳ではないようだ。特に咎める様子はなく、淡々としている。

「無職で奴隷購入で、親戚も特にいない……と」

 ミシェルは一人呟きながら、さらさらとメモの空白を埋めていく。それにしてもこの人は一体俺に何を聞きに来たのだろうか?

「えっとミシェルさん、一体これは、何ですか? 」

 おずおずと聞いてみると、ミシェルははっきりとした口調でこう答えた。

「単刀直入に言います。貴方が出所不明な大金を持っているとの情報を入手し、その調査に参りました」

「出所不明な大金!? 」

「はい。貴方は職にもついておらず、援助してくれるような親戚もいない。それにも関わらず高価なものを次々に購入しているそうではないですか」

「そ、それは……」

 なるほど、つまり俺が何らかの犯罪行為に手を染めて大金を得ていると疑っているのか。うーん……しかし俺のチート能力だと説明して伝わるのだろうか? 

「失礼ながら貴方のデータを調べさせて頂きましたが、28才という年齢ながらまったくもって今までの経歴が存在しません。これはどういうことですか? 」

 召喚されたばかりだからですけど……。
 いや、この反応からするともしかしてこの世界の普通の人は外部から勇者を召喚していることを知らないのか?
 このミシェルという女もそこそこに身分が高そうに見えるが、その事実を知らないのかもしれない。

「答えられませんか? それなら今からここを調べさせて貰います」

「ま、待って! 」

 すくっと立ち上がったミシェルの腕を思わず俺は掴んだ。そのとき、まるで走馬灯のように様々な映像が脳裏を駆け巡った。

 見知らぬ少年が路地裏で倒れ込む。何か病気を抱えているのか、ヒューヒューとか細い息を繰り返す。

 そして次の場面は真っ白な病室。おそらくここは病院か?
 ベッドに寝そべる誰かにすがり付いて泣きわめいているのは……おそらくミシェル。

『ごめん、ごめんね……リュイ。私が……をしていれば』

 ノイズがかかっていて彼女が何と言ったのか分からない。

「ちょっと、大丈夫ですか? 」

 ミシェルに声かけられ、俺は正気を取り戻した。

「え、あ、はい」

 何だったんだ今の映像は?
 俺の妄想か……? いやそれにしてはリアリティーがあった。

「家を調べさせて貰いますよ? 良いですね? 」

「リュイ……って誰だろう」

 その名前を口にしたときミシェルの顔色が変わった。

「……なぜその名前を!? 」

「い、いや何でもない」

 あの映像のリュイという少年はミシェルの知り合いらしい。そしてあの映像が本当なら彼はもう亡くなっている……?

「何者なのですか貴方は……普通の人ではないですよね? 何が目的なんですか? 」

 明らかに敵意を剥き出しにして俺を見るミシェル。
 まあ普通の人ではないのは確かだ。ただその普通とは一体何を基準にするのかで変わってくると思うけど。

「俺は別に、何も企んじゃいないよ」

「……そうですか。貴方に関してはまだ綿密な調査が必要なようですね。荒くれものを半殺しにしたという噂も聞きますし」

 それをしたのは俺ではない! 俺は半殺しにされた側だ!

「あー、それは……」

「また来ます。必ず尻尾を掴みますからね、逃げても無駄ですよ」

 ミシェルはそう言うと、背筋をピンと正したまま出ていってしまった。

「はぁ~~……」

 何だか緊張の糸が切れたようにその場に倒れ込む俺。
 ああいうピリピリした空気、俺は苦手だ。

「怖そうな人でしたね」

 遠巻きに見ていたシエルがちょこちょこと近付いてきた。

「そうだな」

 そしてミシェルの頭にポンと触れたとき、再びあの映像が流れてきた。

 薄暗い洞窟、そして祭壇らしき台の上で目を閉じたまま動かないシエルの姿。

 そして近くにはあの、俺を捨てた勇者ご一行様。
 タクトにアズサ、カナ。もう記憶の彼方にいた彼らがそこにいた。

 そしてもう一人見知らぬ人物がいる。
 品の良さそうな衣を纏った男で、銀色の長い髪を垂らしいている。俺と同い年ぐらいだろうか、しかしその精悍な顔に貼り付いた笑みはぞっとするくらい恐ろしい。

「ヨリ? 」

「いや何でもない」

 何だ? 何なんだあの映像は?
 俺は数回自分の目をごしごしと擦る。
 シエルはタクトたちに会ったことがあるのか?

「なあシエル、タクトという名前のやつに会ったことはあるか? 」

「タクト? ……ごめんなさい、知りません」

「いや、それなら良いんだ。変なことを聞いてごめんな」

 ……だとするとあれは過去の出来事ではないのか?
 俺は不穏なその映像に、思わず冷や汗をかいていた。

 もしかしてあれは、未来の記憶?
 サクヤが忘れていたこの月読の神衣の能力とは、もしかして未来視のことだったのだろうか……?

「とんでもねえな……」

 俺はシエルを見つめ、一人そう呟いた。
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