チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

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第32話 アズサとの再会

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「結局買わされちまったよ……魔結晶の剣」

 あの後、サクヤの話術に騙されて何だかんだ品物を購入してしまう俺はやはり詰めが甘い。
 でもまあ俺も何らかの武器は思っておかねばと思っていたので構わないだろう。うんうん。

 それにインテリアとしても使えそうだし、良い買い物をした。

 家まではサクヤから貰ったカードで一っ飛びなのだが、何だか今日は歩いて帰りたくなってしまい、何となく帰路に着く。

 「はぁ、どうすれば良いんだろ」

 リュイを救うためには彼の病を治す必要がある。しかしミシェルに嫌われてしまった今、彼に干渉する方法はない。

 ……というか何で俺、よく知らない子どものためにここまでしようとしてるんだろう。

 ミシェルもリュイも俺には全く関係のない赤の他人だ。でも、なぜか気にかけてしまう。

「別に俺は関係ないのにな……」

 リュイが死ぬ未来が来たところで俺の生活は変わらないだろう。ミシェルはしつこく俺を追うかもしれないが、それも別の国にシエルを連れて逃げれば良い。そうすればミシェルのことも見なかったことに出来る。

 ただ一瞬だけ見えてしまったあの不確定未来、来ると分かっているのに何もしないのは、気分が悪い。

「はーあ、面倒ごとに巻き込まれたな」

 そのとき、誰かに服を掴まれた。

「グエッ」

 勢いよく首がしまり、鶏の鳴き声のような音を出す俺。

「お願いします……!! 助けてください……!! 」

 振り返ると、そこにはボロボロの服を着た若い女がいた。この顔には見覚えがあ……るような?

「えっ……?」

……そうだ、あのツインテールで気が強くて、魔法の才能に目覚めたアズサだ。
 俺は目の前の存在が信じられずに、ただアズサの顔を見つめた。

 以前のつんけんした態度は鳴りを潜め、まるで何かに怯えているかのように俺にすがりつく。

「お願いします! お願いします! 」

「お、おい。落ち着けよ」

 ま、まずい。周りに人だかりが出来てきた。

「何だ? 痴話喧嘩か? 」

 野次馬たちが口々に好き勝手なことを言う。
 あまり目立つのは不味いな……。
 俺は錯乱するアズサを何とか落ち着かせると、一先ず人気のない喫茶店に押し込むことに成功したのだった。

◇◇◇

 紅茶を一口飲んだアズサは、少しずつだが落ち着きを取り戻したようだ。
 しかし以前の姿とは見る影もない。サラサラだった髪の毛は酷く汗と油にまみれ、整った顔立ちも頬がこけていて一瞬誰だか分からなかった。

 そして女王様のような高飛車な態度は欠片もなく、何かに怯えているかのように周囲を警戒していた。

「おい、大丈夫か? 」

「……ありがとうございます」

 深々と頭を下げるアズサ。
 こいつ、こんなに礼儀正しいやつだったっけ……?
 あまりの変わりように、また俺をおちょくりに来たのではと無駄な心配をしてしまう。

「……あのときはごめんなさい。調子にのって、ヨリさんに酷いことをしました」

「まあそれは良いんだけど。何があったんだ? タクトやカナは一緒じゃないのか……」

 するとアズサは、タクトという単語に酷く反応した。それも悪い方向の。

「あたしは二人から逃げてきたんです。もうあんなの耐えられません……」

「逃げて来た? 」

 こくりと頷くアズサ。

「勇者だなんて持て囃されて調子にのってしまった報いです。もうあんな日々は嫌……!! 」

 どういうことだ……?
 二人から何か酷いことをされたと言うわけか……?

「……女神様の声が聞こえるんです。うっ……」

「お、おい! 」

 自分の頭を押さえて、荒い息を繰り返すアズサ。
 まるで何かに耐えているようにも見える。

「ヨリさんは聞こえませんか? 女神様の……いえ、あれは悪魔です。悪魔の声が」

「悪魔? 女神様? 悪い、何のことかさっぱり分からない……」

 そうですか、とアズサは呟いた。
 そのあまりにも無機質な声に、俺は思わず背筋が凍った。
 
 何だ……? まるで薬でもやってるのか? と思うほどの変貌。

「あああ……聞こえる……聞こえます。魔王を倒せ、魔王を倒せと……」

「落ち着けよ! 」

 そして俺がアズサの肩に触れたとき、見知らぬ映像が脳裏を駆け巡った。

 何もない白い空間、そしてそこに佇む見知らぬ女性。金色の豊かな髪を靡かせて、優しくこちらに微笑みかける。

『よう……そいら……しゃいました時空の……者様よ』

 男とも女とも言い切れない不思議な声音だ。

「は? どこよここ! 貴方は誰!? 」

 おそらくこれはアズサの過去。
 会話から察するに、召喚されたときのものか……?

 そういえばアズサたちはこんなことを言っていたな。
 
 女神様にギフトを授けられた、と。つまりこれはそのときの記憶か。

『全てを話し……いのですが、残念ながら私……は時間があ……ません。お願いします、勇者様。魔王を……し、私を解放し……欲しいのです』

「解放? 魔王? 一体何の話? 」

『そのた……に役立つ贈り物……貴女に授け……す。魔法の才能、きっと貴女……助けるでしょう』

「ちょっと!! 待ちなさ……!! 」

 ……我に帰る。
 今のはおそらく過去視。流石に神眼の能力と言ったところか。

 アズサが言う女神様とはこの人のことか……?

「もう駄目……あいつが……あいつが来る……」

「あいつ? なあ落ち着けよ。一体何があったんだ? 」

 そのとき、喫茶店の入店を知らせるベルがちりんと鳴った。
 そしてアズサはひいっと心底怯えきったような声をあげ、顔を背ける。

「何だ? 誰が来たって言うんだよ……」

 そちらに視線を向けると、そこには前と変わらぬイケメンスマイルでこちらに近づいてくる、タクトの姿があった。

 
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