チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

文字の大きさ
41 / 64

第39話 全てを倒せ

しおりを挟む

「一先ずは大丈夫ですね」   

 城内に入ることの出来た俺たちは顔を見合わせて頷き合う。
 城の中は既にたくさんの人で埋め尽くされていて、皆肩を寄せ合って魔物の恐怖に震えている。

 中には怪我をしたものもいるらしく、苦しそうな呻き声も聞こえてきた。

 俺も男を近くに寝かせると、シエルを探しに行かなければと踵を返そうとする。
 しかし、ソニアに手首を捕まれ、それを阻まれた。

「外に出るのは危ないわ、ここで待ちましょう」

「そういうわけにもいかない、連れが今でも戦ってるかもしれないからな」

「でも……!! 襲われるかもしれないのよ」

「自分のことぐらい自分で何とかするさ」

 早くシエルのところに行かなければ。
 もし彼女が怪我をしていたらどうしよう、最悪の未来が思い浮かんでしまい、俺は心臓が高鳴るのが分かった。

「でも、でも、受付嬢として見過ごせません。冒険者じゃない人を魔物の群れに放り込もうなんて」

 ソニアは心底心配してくれているのだろう、俺の手首をぎゅっと掴み、瞳を潤ませる。

「大丈夫、何とかなるさ」 

 無理やりソニアの手を振りきると、俺は大広間を飛び出した。

 待ちなさい! というソニアの声が聞こえたが、俺は聞こえない振りをした。

どうしよう、どうすれば彼女を見つけられる?

 足を必死に動かしながら考える。

「お、おい!! 外に出るな! 危ないぞ! 」

 護衛らしい兵士の一人が止めようとするが意にも介さない。

 そうだ、高いところだ。
 高いところからシエルの姿が見えれば……検討違いに探し回るよりはマシだ。

「すいません! 」

 俺は兵士の伸ばした手を華麗に避けると、階段を掛け昇る。

「そっちは立ち入り禁止だぞ!! 」

 ごめんなさいごめんなさい。後でどんな罰でも受ける、だから神様、シエルを助けてあげてくれ。

 ひたすら長い螺旋階段を、息が切れるのも構わずにただ走り続ける。
 そして明るい所に着いたかと思うと、どうやら屋上のようだ。

「ここなら……!! 」

 しかし俺は直ぐに絶望した。

 上空を埋め尽くすガーゴイルの群れ。
 軽く100は越えていそうだ。

 リーダーらしき個体は倒したはずなのに?
 一体どういうことだ?

 そして俺は一つの結論に至った。

 リーダーを倒したからこそ、ここまで集まってしまったのかもしれない。そうするとこれは最悪だ。

「シエルーーーーー!!!! 」

 彼女の名前を叫んでみたものの、返事はない。
 俺の声が反射して聞こえてくるのみだ。

 彼女を探そうにもこの数のガーゴイルを相手にしてちゃキリがない。不可能だ。

「使うしかないか……」

 俺はあの、禁呪が書かれた本を取り出した。
 敵を一掃できる、そんな魔法があれば使うのは今しかない。

 何かないか、何かないか、何か……。

 ひたすらページを捲っていくと、あるとき1つのページが俺の手を止めた。

「これだ……」

 ーー神の雷を喚ぶ禁呪

 悪いものを全て打ち倒す魔法らしい。おそらくこれを使えば……。

 しかし俺の魔力が耐えられるだろうか?

 生命を作り出すときでさえ俺は死にかけた。魔力を回復させれば大丈夫とはいえ、今度はアイテムの方が足りなくなるかもしれない。

「いや……それでも」

 シエルを助けるためには、やるしかない。

 俺はバッグの中からありったけの妖精羽の雫を取り出すと、全て飲み干していく。
 先に飲んでおけばある程度は保険になる。思わず吐き戻しそうになるのを何とかこらえ、俺はひたすらに飲み続ける。

 最後の一本を飲み干した俺はビンを捨て、本に書かれていた通りの文章を読み上げる。

「空を守る神々よ 我の前に立ち塞がる全ての穢れを払いたまえ! 悪を滅する裁きの雷ジャッジメント・ケラヴノス!」

 全身が引っ張られるような感覚がした。そして一瞬で意識が飛ばされそうになる。

「おえっ……!! 」

 何とも言えぬ吐き気に襲われ、思わず口許を抑える。しかし吐くわけにはいかない。
 せっかく魔力を回復したのだ。吐いてしまっては意味がない。

 足腰がガクガクと震え、立っているのも辛い。しかし俺は彼女を救わなければいけないのだ。

 頭上を見ると、見たこともないぐらい真っ黒な雲がどんどん集まっているのが見えた。
 大量のガーゴイルたちも流石の異常事態に気がついたのか、おろおろと辺りを警戒している。

「うっ……」

 魔力が足りない。
 俺は情けなくもひたすら魔力回復アイテムを摂取していく。ぐんぐん魔力が消費されていくのが分かる。
 一瞬でも気を抜けば命を持っていかれてしまいそうだ。

「おい!! 貴様!! 」

 ようやく追っ手の兵士が俺に追い付いたようだ。
 しかし直ぐに空の様子を見て絶句した。

「な、なんだこれは!? 」

 黒々と大蛇のように渦を巻く雲。辺りはまるで夜になってしまったかのような暗さに包まれる。

「げほっ……ごほっ……」

 口に血の味が広がる。
 もしかした吐血してしまったのかもしれない。

「これは君がやったのか!? どういうことだ!? 」

 そんな早口で捲し立てられても困る。
 何せ喋ろうにも口が回らないのだ。

 そのとき、ピシャアアアアアアと鋭い音がしたかと思うと、近くにいたガーゴイルの体を青白い雷が貫いた。

「……やった」

 俺は一人ほくそ笑んだ。
 魔法は成功したのだ。

 次々に天空から落ちてくる雷がガーゴイルたちを貫いていく。ギャッという短い悲鳴を上げて絶命していく魔物の群れ。全滅させるのにそう時間はかからないだろう。

 この世のものとは思えない幻想的な光景に、俺ですら驚いている。まさかここまで上手くいくとはね、死にかける価値もあるってものだ。

「こ、これは……」

 兵士が目の前の光景を信じられないと言った風に、目を丸くして固まっている。

 そして彼がぽつりと俺を見てこう呟いた。

ーー蒼天の大賢者様だ、と。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...