チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

文字の大きさ
42 / 64

第40話 悲劇のヒロイン?

しおりを挟む

ーー蒼天の大賢者様だ  

 じゃないんだよ……。
 何だその背中がこそばゆくなるような二つ名は。

 そういえば中学生のときなんかは、学校に侵入したテロリストを華麗に打ち倒す妄想とかよくしたなぁ……。そのときの痒さに似ている。

 恥ずかしくなった俺は慌てて城を飛び出してシエルを探しに行くことにした。

 感動した目で俺を見つめる兵士のことは放置しといた。また変なあだ名をつけられたら溜まったもんじゃないからな。

 それに彼は俺があのすごい魔法を金の力で起こしていることをしたらどう思うのだろうか……。

「っとまあそんなことは良いんだ。シエルーーー!!! どこだーーー!! 」

 至るところにガーゴイルの死骸が転がっている。どれも黒焦げになっていて、どうやら雷が直撃したらしい。

 ぷすぷすとした焦げ臭さでどうにも気分が悪い。

 皆、避難したのだろうか?  住人らしき人は誰もいない。すれ違うのは騎士やら冒険者やら魔物退治に手馴れた者ばかりだ。

「シエルーーーー!!!! 」

 そしてあの少女の姿もない。
 おっかしいな……この辺りで別れたと思うんだけどな……。

 すると近くで話している騎士の会話が聞こえた。

「何だったんだ……? あの、奇跡みたいな雷は……誰かの魔法か? 」

「ありえねーよ! あんな天候を操る魔法があるとしても、そんなこと出来るのは神か悪魔かってもんだ」

「だ、だよな……。でもこのお陰で助かったな……」

「おうよ、神様は俺たちに味方してるんだな! 」

 ……え? まさか俺の魔法の話してる?
 神か悪魔って言われてるけどどれも違う! ただの金を持ってるだけの男だ!

 そのとき、僧侶の格好をした女の人たちが担架を持って通りかかった。

「ほらほらどいて!! 怪我人だよ! 小さな女の子、出血が酷いわ」

 小さな女の子……? 出血が酷い……?
 嫌な予感が俺の胸を駆け巡る。

「あ、あの!! 」

思わずそちらに話しかけてしまった。

「え、あ、あなた町の人? ここは危険だから……」

「人を探してるんです。白髪で、角がある、14、5才くらいの!! 」

 すると僧侶の女性が顔を曇らせて、担架にかかっている毛布をめくりあげた。

「……シエル。シエル!!! 」

 ーー紛れもなく、それはシエルの姿だった。
 顔や服は血液が赤黒く固まっている。硬く閉ざされた瞼に、すうすうと小さな呼吸を繰り返している。
 あまり状況は良くなさそうだ。

「危ないです、近寄らないで! 」

 思わずすがりつきそうになるのを止められた。
 
「あ、あの……シエルは……」

「お父さんですか? 今から仮設の治療所に運び込みます。一緒に来て下さい」

 俺に選択の余地はなかった。
 ぶんぶんと何度も首を縦に振り、ただシエルの無事を祈るばかりである。

◇◇◇




「……え? 疲れて寝てるだけ? 」

「はい。調べてみたところ、この付着した血はシエルさんのものではありません」
    
 治療してくれたのはベテラン僧侶のマインさん。
 若い頃は相当な美人だったのであろう、しかし老いた今でも、凛とした姿は目を奪われる。

 そしてすやすやと治療所のベッドに寝かされているシエル。血で汚れた部分を拭き取ると、傷一つないことが分かった。
 
「ええと……つまり」

「おそらくこれはガーゴイルの返り血です。発見された現場では多数のガーゴイルの死体が転がっていました。……にわかには信じられませんが、彼女が全て倒したのでしょう」

 俺は思わずシエルの方に視線を向けた。
 いつもと変わらない様子で、ただ眠り続けている。

「そして起きた神雷……」

「ええっとストップ」

「はい」

「その神雷とは……? 」

「あれは奇跡ですよ。突如起きた天変地異によりガーゴイルが全て全滅するなんて。この奇跡を私たちは神雷と呼んでいるのです」

「……は、はあそうですか」

 俺が吐きそうになりながら唱えた魔法が神雷なんて名前で呼ばれてるとは……。何だか恥ずかしいな。

「話を戻しますよ? 」

「はい」

 マインさんが不機嫌そうに眉間に皺を寄せた。

「神雷によってガーゴイルが全滅し、疲れきった彼女は眠ってしまったのでしょうね。大丈夫です、命に別状はありませんよ」

「良かった……」

 俺は思わず深く息を吐いた。
 するとマインさんから鋭い怒号が飛ぶ。

「しかし少女をあんな場所に放置するなんて貴方は親としての自覚があるんですか? 」

「……返す言葉もありません」

 事情があったとは言え、シエルを放置したのは事実だ。言い訳のしようもない。

「まあ、普通の女の子ではなさそうですけどね。それでも保護者として見守る立場なのですよ、貴方は。それを忘れてはいけません」

「……はい」

 ただ項垂れることしか出来ない俺。
 
「……泣いてるんですか? 」

 気が付くと俺は涙を流していたらしい。
 マインさんが驚いたように目を丸くした。

「な、何か。安心しちゃって。シエルが無事って聞いて、す、すいません。なんで泣いてるんだろ俺」

 ああもう、俺は何を言ってるんだ。
 口が上手く回らない。

 しかしマインさんには何とか伝わったようだ。

「……まあ大切に思ってるのは嘘ではないようですね。次から気を付けてください」

 心なしか最初に会ったときよりも表情が柔らかくなっているような気がした。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...