チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

文字の大きさ
47 / 64

第45話 訪問者は誰?

しおりを挟む

「ふー、お腹いっぱいです。ごちそうさま! 」

 シエルが自分のお腹を擦りながら満足そうに笑う。
 作ったドーナツは大方食べられてしまっていて、俺は残りを食べければ。

「うっぷ……油が」

 だがアラサーの胃には揚げ物は結構キツイ。
 美味しいと言えば美味しいのだが、大量に食べると吐いてしまいそうだ。

「シエル、もう食べないのか? ……寝てるか」

 空腹を満たしたシエルはくうくうともう眠りについている。子どもって良いよな……直ぐに眠れて。
 最近は睡眠薬なしで眠れるようになってはきたものの、こんな風にすぐには眠れない。

「……冷凍して明日の飯にでもするか」

「何や、良い匂いがするのう」

 聞いたことのある声。

 窓から顔を覗かせたのはサクヤだった。肩に乗せているセイヤもぶんぶんと尻尾を振っている。

「丁度良いところに!!! 」

「ええ!? 」

 俺はサクヤを家に招き入れると、大量のドーナツを押し付けたのだった。

◇◇◇

「いやなんかすまんのう、おやつまでご馳走になってしもうて」

「良いんだ、作りすぎたから」

 サクヤとセイヤは嬉しそうにドーナツをかじっている。

「不思議な菓子じゃの、リング状で、揚げてあるんか? 見たことないわ」

「そうなのか? ま、俺が適当に作っただけだよ」

 異世界のお菓子だよ、とは言いづらくて、適当な返しをする俺。まあこの世界でドーナツを作ったのは俺が初めてだろうから嘘はついていないだろう。多分。

「凄いのう、ヨリは料理の才能があるんじゃね」

「別に、大したことじゃないさ。それはそうと、今日は何の用だ? ガーゴイル騒動を知らないわけないだろう」

「ああ知っとるよ。何とも神の雷が魔物を全滅させたとか」

「……そうなのか」

「まあそのお陰でうちは怪我ひとつしてないの」

 しかし俺はサクヤの足に切り傷のようなものがあるのを見つけた。出血はしていないものの、まだ生々しい。

「それどうしたんだ? 痛そうだ」

 サクヤははっとしたように傷跡を手で覆い隠す。

「あ、これは品出し中にうっかり転んでしもうての。そのときのものよ」

「そうか、大丈夫なのか? 」

「あら心配してくれるん?  平気よ、ただの切り傷や」

 そんなことは置いといて、とサクヤは慌てたように話を変える。

「今日は人に会いに来たのよ、ルーナ=レイモンドさんにね。でも訪ねてみたんじゃが、どうやら留守らしくての」

「まあガーゴイル騒動からそう経ってないからな。避難してるんじゃないか? 」

「かもしれんのう……で、ヨリの家で待たせて貰おうって訳よ」

「それは構わないけど……でもいつ帰ってくるか分からないぞ? 下手したら一週間後とか…… 」

「構わん構わん」

 ケラケラと笑うサクヤ。
 そこで俺はあることを思い出した。

「この家はルーナから買い上げたんだが、元々は彼女の父親のものらしい。もしかしたら何かしら本が見つかるかもしれないぞ」

 そう途端にサクヤの目がキラキラ輝き始めた。

「本当か! 」

「まあ、ルーナの父が本当にベルグさんなのかは分からないけどな。俺も結構探してみたんだけどそんなに良いものはなかったぞ」 

「いや、うちには分かる。この家には何かがあると! なあなあヨリの旦那、書斎、見せてもろうてもええか? 」

 猫なで声ですり寄ってくるサクヤ。
 こういうときだけ調子の良いやつだ。

「良いぞ、でも変なことはするなよ」

「任せときぃ」

 パチンとウインクを一つするサクヤだったが、俺はいまいち信用し切れない。
 まあ丁度シエルも寝ていることだし、サクヤの探し物の手伝いでもするか、という気持ちになったのだった。

「……ヨリ」

 何てことを考えていると、シエルが寝言で俺の名前を呼んだ。思わずびくりと体を震わせる俺。
 そんな俺を見てサクヤがにやにやと笑みを浮かべた。

「ビビりすぎよ、ただの寝言やんな」

「仕方ないだろ。呼ばれたかと思ったんだから」

「本当に大事なんやね~」

「う、うるさい!! 」

 しかしあるとき急にサクヤはからかうような笑みを抑え込むと、どこか遠いところを見るような目をした。

「……竜と人間が一緒に暮らす。ほんと凄いことやわ」

「そうか? 」

 そうよ、と柔らかい口許に笑みを浮かべてサクヤが言う。

「だからヨリもシエルも凄い人なのよ、自分たちじゃ気が付いてないかもしれないけど」

「別に凄くないだろ、普通だよ」

「ふふふ、でもまあ過保護過ぎるとは思うわ」

 そうなのか!? 俺って過保護なのか?
 子どもを育てたことなんてないから普通が分からない……。

「だって最近は竜殺しとかいうやつが現れてるらしいし、危ないだろ」

 俺は思わずはっとした。
 竜殺しというワードを聞いたサクヤの瞳が一瞬だけ揺れた。

「……竜殺しか。それは確かに危ないわ」

「……だろ? しかしどんなやつなんだろうな。顔も性別も何もかもが謎に包まれているらしいし」

「そうやね……もしかしたらイースの生き残りかもしれんね」

「イース? 」

 聞き慣れない地名に俺は思わず聞き返す。

「竜に滅ぼされた小さな国よ。一夜にして大量の竜に滅ぼされた、哀れな国」

「なるほど、確かにそれなら竜を恨んでいてもおかしくないな」

「……恨んで……なんてもん……ないわ」

「え?」

「いや、何でもない」

 サクヤが何か言った気がする。
 しかし俺には上手く聞き取れなかった。

「さあさあ、早速本探しでもしようや。時間が勿体ないからの」

 そう言って立ち上がるサクヤは、なぜか少しだけ小さく見えた。

 
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...