チートなかったからパーティー追い出されたけど、お金無限増殖バグで自由気ままに暮らします

寿司

文字の大きさ
46 / 64

第44話 取り戻した日常

しおりを挟む

 短い時間で色々なことが起きたな……。
 家に帰宅した俺は早速ベッドに寝転ぶ。

 ガーゴイルの後処理は騎士様たちに任せることにした。俺はただの一般人なのだから出来ることは何もないだろう、うんうん。

「ヨリーお腹空いたー! 」

 シエルがちょこちょこと近付いてくると、俺の横に寝転ぶ。顔色も良いし元気そうだ。しかしこうして見るとこの美少女が一人でガーゴイルを狩り尽くしたなんて信じられない。

「そうだな、ご飯にするか」

 昨日からまともに何も食べていない。
 でも作る気が起きないな……。

 年甲斐もなく走り回ったからか足腰が悲鳴をあげているのが分かる。

「ルーナの店にでも行くか? ……ああでも流石に営業してないか」

 ガーゴイル襲撃事件からそう経っていない。
 もしかしたら怪我をしてるかもしれないし、何ならまだ避難しているかもしれない。

「うーん、そうですね…… 」

 シエルもそう考えているのか顔を曇らせた。だからと言って他の店が営業しているとも限らない。
 もしかしたら当分はどこも閉まっているかも。

「しゃーない、有り合わせで何か作るか。シエル、手伝ってくれ」

「うん! 」

 ベッドから起き上がった俺たちは、おぼつかない足取りでキッチンに向かうのだった。

◇◇◇

「あー、残ってるのは小麦粉、卵、砂糖、牛乳ぐらいか。そろそろ食材を買い足さなきゃな」

 俺一人なら別にどんな食生活をしてたって構わないのだが、育ち盛りのシエルにそんなことを強いるわけにはいかない。

「パンケーキ! パンケーキを作りましょう! 」

 目をキラキラと輝かせるシエル。
 ぴょんぴょんと跳び跳ねてアピールする。

「ああ? パンケーキは食べたばかりだろ。甘いものばかり食べてると太るぞ」

「大丈夫です! その分運動しましたから」

「でもな……この前ハチミツを使いきったんだよな……」

「えー! 味のないパンケーキですか……」

 ああそういえば油は残ってたな。
 そうだ、と俺はとある食べ物を思い付いた。

「今日は別の美味しいものを作ってやるよ。じゃあ小麦粉と卵と牛乳と砂糖を混ぜ合わせてくれ」

「……? それってパンケーキと同じでは? 」

 違う違う、と俺はにやりと笑う。

「良いから。やってみてくれ」

 シエルは不思議そうな顔をしていたものの、直ぐに俺の指示通り作業を始めた。
 何度も作っているからか大分手慣れた様子だ。手早く卵を割り、生地を作っていく。

 そして俺は鍋に油を入れ、揚げ物を準備をする。
 まあ大体何を作るか分かるかもしれない、そう、ドーナツだ。

 疲れたときは甘いものが一番。
 それにドーナツは安く上がりだ。

 火の魔結晶を1つ割ると中火ぐらいの火がついた。ま、こんなものだろう。

「シエル、生地出来たか? 」

「うん! 出来ましたよ! 」

 得意気な顔をしながらシエルがボウルを差し出した。うん、上手く生地が出来ている。

「ありがとう、じゃあこれを揚げていくぞ」

 俺はその生地をリング状にすると、油の中に入れていく。ぱちんと油が弾ける音がして、一瞬だけシエルが体を震わせた。

「私もやりたいです! 」

 キラキラと期待に満ちた目で俺を見上げるシエル。
 ドーナツ作りに興味を持ったらしい。

「駄目だ駄目だ、油は危ないんだぞ。火傷したらどうする」

「えー!! 」

「油をひっかけたら危ないだろ、向こうで待ってろ」

 シエルは不服そうに俺をジトーと見つめる。

「ケチ」

「何て言っても駄目だぞ。ま、お前がもう少し大きくなったら教えてやるよ」

「……私、大きくならないですもん」

「え? 」

「私はずっとこの姿のままです。成長なんてしません」

 そう言うシエルはドキッとするような大人びた表情をする。

「そんな訳あるか」

 そんな軽口で返すのが精一杯だ。

「本当です! 私は多分永遠にこの姿なんですよ。死ぬことも老いることも出来ないんです」

「永遠に生きる? そんな生物はいないさ。シエルはきっと成長がゆっくりなだけだ。いずれお姉さんになるよ」

 そうかなーとシエルは首をかしげる。

「ヨリは私を置いて天国に行っちゃわないで下さいね」

「おいおい、俺はまだ若いぞ。そう簡単に死なないさ」

 良かった、とシエルは安心したように微笑んだ。
 しかしやはりその瞳には悲しみの色が滲んでいる。

「じゃ、もしシエルが本当に不老不死って言うなら俺も不老不死になってやるよ」

「本当ですか? 」

「ああ、これだけ金があれば不老不死になる薬だってどっかにあんだろ。それなら良いだろ? 」

「ふふ、そうなれば嬉しいですね。ずっと一緒です」

「お、丁度揚がったぞ。あち! 」

 油の海の中の浮き上がったドーナツを菜箸で拾い上げ、皿の上に載せる。狐色にこんがり揚がっている。

「うわぁ!! 凄いです!! 」

 キラキラといつもの子どもの顔になるシエル。
 俺の顔を見ると、これ食べても良いんですか? と遠慮がちに聞いた。

「良いけど、火傷に気を付けろよ。熱いから」

「はい! 」

 シエルは恐る恐るドーナツを掴むと、一口かじった。すると驚いたように目を丸くした後、興奮ぎみに俺の服を掴む。

「凄い!! 凄いですこれ! ふわふわででもサクサクで! 何て言うお菓子ですか? 」

「危ないから服掴むな。これはドーナツってやつだ」

「ドーナツ……美味しいです! 」

「どんどん揚がるからたくさん食べろ。揚げ立てが一番美味いからな」

「ふぁい! 」

 そう答えたシエルは、もう既に両手にドーナツを抱えていた。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...