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第47話 修羅場ってやつですか…?
しおりを挟む「なるほど、つまりサクヤさんはただのお知り合いなんだ……」
「危ないところやったわ。お嬢さんが来なかったらもしかしたら襲われてたかもしれん」
「サクヤ! 」
余計なことを言うなと俺が口を挟む。
「お、襲われる……」
ルーナが俺のことをまるで獣を見るような目で見つめる。違う!!! まったくの誤解だ!! 俺は善良な一般男性なのだ。
「なんてな、ただの冗談や。ごく普通のお客と店主よ」
ルーナはなぜかほっとしたように息をつく。
「そうなんだ。ごめん、私てっきり勘違いしてた」
「いや、すまない。誤解を与えるシーンを見せてしまった。しかしルーナはなぜここに? 避難してたんじゃないのか? 」
するとルーナは顔を赤らめてえっ……と口をもごもごとさせる。
「……いや、その……」
「無闇に動き回るのは危ないぞ。いくらガーゴイルがもういないからと言って……」
「……はい、そうね。ちょっと迂闊だったわ」
するとサクヤがストーップ!! と声をあげると、俺の耳元でヒソヒソと囁いた。
「駄目だわヨリ、女心ってものが分かってないわぁ。このお嬢さんはヨリのことが心配! で自分の身の危険も省みずに来てくれたんやろ? 」
「そ、そうなのか? でも俺のことなんて心配しなくても……」
するとサクヤがはぁーーーと長くため息をつく。
「もう駄目や……救えん」
「え!? 救えんってどういうことだ!? 俺そんなに悪いことした? 」
サクヤがやれやれと言ったように首を振った。
するとその様子を見ていたルーナが頬を膨らませて少しだけ不機嫌そうに足を組み直す。
「仲良いんだね」
「そ、そうか? 別に普通だと思うが……」
「ふーん、そういう清楚な子が好きなんだ」
「せ、清楚!? 誰が!? 」
俺は思わずキョロキョロと辺りを見回してしまう。シエルは別室ですやすや寝ているし、清楚な人物などこの部屋にいないような気がするが……。
そのとき右足にずきんと痛みが走った。
「うちに決まっとるやろ! 」
よく見ると、サクヤに思い切り足を踏まれているのではないか、俺。
「……いって! 」
「ここまで女心が分からん奴だとは見損なったわ! 」
うんうんと頷くルーナ。女二人が集まると怖いな……。早く話題を変えなければボコボコにされてしまいそうだ。
そう思った俺は半ば無理矢理、こう切り出した。
「そ、そうだ二人は初対面だろ? ここは自己紹介でも……」
ま、それもそうやね。と同意してくれたのはサクヤの方だった。
「うちは流浪の行商人 サクヤ。肩に乗ってるちっこいのはセイヤ。よろしゅう」
「……ルーナ=レイモンド。近所で定食屋をやってるの。よろしく」
サクヤの眉がぴくりと動いた。
「ふぅん、確かにこうして見るとベルグさんによう似とるわ」
するとルーナの表情ががらりと変わり、サクヤに掴みかからんばかりに身を寄せた。
「パパを知ってるの!? 」
「知っとるよ。……やっぱりここはベルグさんの書斎やったんやね」
それはつまりサクヤが探していたものはもうここにはないことを意味している。そのことを理解したらしい彼女は途端に表情を曇らせた。
「そうよ、でもサクヤさんは私とそんなに年は変わらないよね? 一体どういう関係で……? 」
「……ベルグさんはこの世界の神話を調べてたんよ。いやというより疑ってたという方が正しいかもしれん」
「疑っていた? 」
思わず口を挟む俺。
サクヤはこくりと頷いた。
「簡単に言えば女神テゼスについて調べていたんよ。その一貫でうちの住んでいた国に来た。そこで出会ったんよ」
「そうだったんだ……」
「うちの国はちょいと特殊でな、一風変わった神話を語り継ぐ民族やったん。おそらくベルグさんをそれを聞きに来たんやろね」
「一風変わった神話って? 」
「それは分からん。うちがそれを知る前に国が滅んでしまったからの。だからベルグさんだけがそれを知ってると思ってたんよ」
淡々と語り続けるサクヤ。
「ただどうしてもベルグさんの足取りは掴めなくての、かなり寄り道をしてしもうた。でもやっとこうして娘さんに出会えたという訳や」
ルーナはただ黙って話を聞いていた。
しかし何か思うことがあるのか、迷うように視線を泳がせている。
そしてあるとき、意を決したように口を開いた。
「……パパは誰かに追われていた」
「え? 」
「一応パパは仕事中に不慮の事故で亡くなった、と連絡が来たの。でも私は信じてない。……パパは殺されたんだ」
それは随分物騒だ。流石のサクヤも怪訝そうに顔をしかめている。
「ふむ、なんでそう言い切れるん? 」
「別に証拠なんてない。ただ娘としての直感よ。ただ亡くなる直前にパパは私にこう言ったの。『僕はもうすぐいなくなるかもしれない、だからこの書斎だけはルーナが守ってくれ』って」
「え、そうなの!? 」
そんな大事な場所を俺に売ってくれたの!?
まさかの事実に流石の俺も驚きを隠せない。
「そしてこうも言っていたな。『お前は真実を知らなくても良い。でもどうしても知りたくなったときはここに来い、もう戻れなくなるかもしれないが……』って」
「真実? 戻れない? 」
何だか物騒な単語ばかりが並んでいる。
ベルグさんはやはり何かを知っていたのか?
俺とサクヤは顔を見合わせ、首をかしげた。
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