転生したけどモブ奴隷だったので、悪役王子を更生させようと思います

寿司

文字の大きさ
22 / 46

第22話 社交場に現れし魔物

しおりを挟む
ーーーとある名も無き貴族は見た

 美しい貴族が集まるパーティー。シュタイン王子に近づきたくて綺麗に着飾った娘たち。
 どこもかしもキラキラと輝いていて、目が滑ってしまうぐらい華やかな会場であった。
 しかし、そこにある一匹の獣人が入ってきたとき、皆その者に目を奪われた。

 さらさらとなびく雪のように真っ白な長い髪、黒と赤を基調としたドレスは普通はこういう場では選ばない。何故ならばそんな色味は地味過ぎるからだ。しかしそのドレスは彼女の白い髪と合わさってとても神秘的な美しさを引き立てている。

 そして獣人らしく引き締まった肉体に、おしげもなく開いた胸元。しかし下品さは欠片もなく、まるで芸術作品のようである。

 人形のように整った顔立ちに不似合いな耳と尻尾も今は不思議な魅了を醸し出している。その金色の瞳は、まるで未来を見通しているかのようであった。

「美しい……」

 会場にいる誰かが呟いた。
 この会場にいる全ての女たちが色あせて見える。

「あの人は何者だ……? 」

「どこかの貴族の娘か……? 」

 そして勇気ある一人の男が彼女に声をかけた。

「はじめまして美しいお嬢さん。私はこの国の護衛長を務めるライゼと申します。お名前を伺いしてもよろしいですかな? 」

 彼女はゆったりとした笑みを浮かべてこう言った。

「はじめまして。私はアステル=セリラムド様に買われております、ステラと言います」

 買われている!? つまり彼女は奴隷!? それも獣人の……。
 思わず開いた口が塞がらなかった。
 確かに良く見ると彼女の首には王族のエンブレムである星と狼がデザインされた首輪が無機質に嵌っている。

「ど、奴隷……!? い、いやこれは失礼した。まさかアステル様の奴隷だったとは」

 質問したライゼという男も困惑しているようだ。
 それもそうだろう、彼女の美しさ、気品さは貴族の娘と比較しても引けを取らない。いや、むしろこのステラという娘の方が勝っている。

「お気になさらないで下さいませ。アステル様が不慮の事故で今、眠っておりまして……私が代わりに挨拶に伺いに来ましたの」

「不慮の事故!? 一体何が起きたのですか? 」

 するとステラは悲しげに目を伏せる。

「アステル様は奴隷である私のことを庇って負傷してしまったのです。奴隷の教育、そう称して私を鞭打とうとして……」

「ひどい……誰がそんなことを……」

「いえ、アステル様は別に犯人を糾弾したい訳ではないのです。ただ私が代わりであることをお伝え出来ればそれで……」

 なんと慎み深い女性なのだろうか。そのとき、私と同じように彼らの会話を聞いていたのであろう一人が声をあげた。

「私も見たぞ! ズーク大臣様がアステル様に鞭を打ったのを! 」

 その声を皮切りにして、「私も見た! 」「僕も! 」という声が噴出した。

「ズーク大臣だと!? 」

 その正義感の強いライゼ護団長が大きな声をあげた。そしてどこからともなく、そのズークが引っ張り出されて彼女の前に立たされた。

 まるでそれは不思議な光景だった。奴隷であるはずの彼女の前で、大臣であるはずのズークがガクガクと震えながら頭を垂れている。立場が逆転してしまったみたいだ。

 しかしただの奴隷であるはずの彼女には確かに畏怖を抱いてしまう何かがあった。
 美しさ、気品、そういうことを超えた、女王の素質。そんな何かが確かに彼女には備わっていた。

「も、申し訳ありません……私はアステル様になんてことを……」

「ズーク様顔を上げて下さい。アステル様はそんなこと望んでいませんよ。そうかお気になさらずに」

「で、でも……」

 ふふっと、口元は笑っているがステラからは底知れぬ重圧が漂っている。

「今日はシュタイン様をお祝いをする日。こういうのはやめて、めでたい日を楽しみましょうよ」

 ね? と首をちょこんと傾げる彼女。

「ま、また後日謝罪に伺わせていただきます、失礼致します」

 そういうとズークは逃げるようにして会場から出ていった。
 そんな彼の後ろ姿を見てステラは小さく呟いた。

「……喉笛を噛み切られなくて良かったわね。おっさん」

 うん、あんな上品な彼女がそんな言葉遣いをするはずがない。
 きっと私の聞き間違いだろう……。

 そしてそんな彼女を見て、周りの人々は何と思慮深いのだろうと感嘆しているのだった。

しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

獣人の世界に落ちたら最底辺の弱者で、生きるの大変だけど保護者がイケオジで最強っぽい。

真麻一花
恋愛
私は十歳の時、獣が支配する世界へと落ちてきた。 狼の群れに襲われたところに現れたのは、一頭の巨大な狼。そのとき私は、殺されるのを覚悟した。 私を拾ったのは、獣人らしくないのに町を支配する最強の獣人だった。 なんとか生きてる。 でも、この世界で、私は最低辺の弱者。

『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』

透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。 「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」 そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが! 突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!? 気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態! けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で―― 「なんて可憐な子なんだ……!」 ……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!? これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!? ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...