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第21話 メイクアップ!
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医師に診せたところ、軽い脳震盪でしょうという診断を受けた。
休めば良くなるでしょうとのことなのでひとまずは安心することが出来た。
「良かった……」
アステルは依然として眠り続けている。
でも呼吸はしっかりしているし、医師もついているので安心であろう。
「まったく、人騒がせだね。ワンちゃんも大丈夫かい? 一応様子を見に来て良かった」
ヴァイスがふうと息を吐いた。正装に身を包んだ彼は初めて会ってときより高貴に見える。
まあそんなこと、どうでもいいのだけれど。
「……私のせいだわ」
きゅっとアステルの手を握る。
「私がここに来なければアステルがこんな目に遭うことはなかった。死の運命から救ってみせるなんて豪語しといてこのざま、恥ずかしくて彼の顔が見れないわ……」
「ふむ……」
ヴァイスは足を組み直すと、こう言った。
「貴族の集まる場とは、イコール自分の力を誇示する場でもある。そしてその指標の一つが奴隷だ」
「指標? 」
「美しい奴隷、強い奴隷、それを従えているということはつまり自分は凄いのだというアピールになるってことさ」
それに比べて君はどうだい? とヴァイスが私の顔を覗き込む。
私は不意に近くにあった鏡を覗き込む。
アステルの準備にかまかえて、まったく自分のことをしていなかった。
すっぴんにボサボサの髪、よれよれのローブ。
周りの綺麗に着飾った他の人と比べると、明らかに私の姿は浮いていた。
「……酷い顔ね」
思わず苦笑を浮かべる私。
「正解」
指を鳴らすとヴァイスだが、今の私には言い返す権利はない。
「でも、どうしたら良いか分からないんだもの。パーティーに着ていける服なんて持ってないし、化粧の仕方だって分からないの」
前世でも兄弟たちの世話に追われて、女の子らしいことは一切してこなかった。
キラキラしたクラスメイトを見て羨ましく思ったりもしていたが、あれは別世界の人間なのだと自分に言い聞かせた。
「……君は酷い顔だが、醜い訳ではない。僕は君の手伝いが出来る。どうだい? もし、君が僕に頭を垂れるなら……」
「お願いします! 」
ヴァイスが言い終わるより先に私は深々と頭を下げる。下らないプライドなんて捨てろ、私に出来ることをするしかない。
「……意外と素直なんだね君は」
「アステルの為だもの、何だってするわよ、何ならチューしてあげてもいいわよ」
ふん、と鼻を鳴らすヴァイス。それはご遠慮願う、と舌を出していた。
「じゃあこっちに来て。パウダールームと衣装をレンタル出来る所があるはずだ」
「頼りにしてるわよ」
私は眠っているアステルに小さく、頑張ってくる、と呟いたのだった。
◇◇◇
「へ~、これがチーク……頬に色をつけるのね」
「ああ、そうだ。血色が良く見える」
「アイシャドウって色がたくさんあるのね」
初めてみるたくさんの化粧道具に私は思わず興奮してしまう。
化粧をしたことがないだけで、別に興味がないわけではなかったのだ。
あれこれヴァイスに質問していると、彼が一度深くため息を吐いてこう言った。
「頼むから静かにしていてくれないか、作業に集中出来ない」
「あら、ごめんなさい。つい」
鏡の中の自分がみるみる変わっていく。
そう言えば、檻に閉じ込められていたときは鏡なんて見たことないから自分の顔も分からなかったけど、こうしてみると案外悪くないかも。白い髪に、金色の瞳。鏡の中の私はやっぱりファンタジーの住人だ。
少なくとも前世の私は冴えないオタク女子高生だったので、それに比べたら今の方がマシであることは確かだ。
耳と尻尾はついているけどね……。
「ふん、悔しいが素材は悪くないな」
「あら、そう?」
ヴァイスに言われるとちょっと自信持てるかも。
「化粧はこんなもんだ。さ、後はこれ着て皆に分からせてやれ」
と言って渡された衣装は……。
「なにこれ……」
黒と赤を基調にした豪華絢爛なドレス。胸元がグッと開いていて、中々にセクシーだ。
待て待て待て、こんなの私には似合わないって!!!
「そんなことない、お前の白い髪にはこういうドレスの方が良く映える」
「それはそうかもだけど……胸元開き過ぎじゃない……? 」
「豊満なんだからそれぐらい開けないとデブに見えるぞ」
ほ、豊満!?
確かに前世の頃よりも肩がこるなーとは思っていたけど……。
「分かったわよ……」
私は渋々ヴァイスの言う通りにすることにした。
そもそも私にファッションセンスなどないのだ。彼にお任せしよう。
「忠犬だな。……貴族どもを唸らせてやれ、そしてアステルの力を見せてやるんだな」
そんなこと私に出来ないよ……でもまあやれるだけのことはしなきゃね。
「……善処するわ」
私はそう答えて、いそいそとドレスに着替え始めたのである。
休めば良くなるでしょうとのことなのでひとまずは安心することが出来た。
「良かった……」
アステルは依然として眠り続けている。
でも呼吸はしっかりしているし、医師もついているので安心であろう。
「まったく、人騒がせだね。ワンちゃんも大丈夫かい? 一応様子を見に来て良かった」
ヴァイスがふうと息を吐いた。正装に身を包んだ彼は初めて会ってときより高貴に見える。
まあそんなこと、どうでもいいのだけれど。
「……私のせいだわ」
きゅっとアステルの手を握る。
「私がここに来なければアステルがこんな目に遭うことはなかった。死の運命から救ってみせるなんて豪語しといてこのざま、恥ずかしくて彼の顔が見れないわ……」
「ふむ……」
ヴァイスは足を組み直すと、こう言った。
「貴族の集まる場とは、イコール自分の力を誇示する場でもある。そしてその指標の一つが奴隷だ」
「指標? 」
「美しい奴隷、強い奴隷、それを従えているということはつまり自分は凄いのだというアピールになるってことさ」
それに比べて君はどうだい? とヴァイスが私の顔を覗き込む。
私は不意に近くにあった鏡を覗き込む。
アステルの準備にかまかえて、まったく自分のことをしていなかった。
すっぴんにボサボサの髪、よれよれのローブ。
周りの綺麗に着飾った他の人と比べると、明らかに私の姿は浮いていた。
「……酷い顔ね」
思わず苦笑を浮かべる私。
「正解」
指を鳴らすとヴァイスだが、今の私には言い返す権利はない。
「でも、どうしたら良いか分からないんだもの。パーティーに着ていける服なんて持ってないし、化粧の仕方だって分からないの」
前世でも兄弟たちの世話に追われて、女の子らしいことは一切してこなかった。
キラキラしたクラスメイトを見て羨ましく思ったりもしていたが、あれは別世界の人間なのだと自分に言い聞かせた。
「……君は酷い顔だが、醜い訳ではない。僕は君の手伝いが出来る。どうだい? もし、君が僕に頭を垂れるなら……」
「お願いします! 」
ヴァイスが言い終わるより先に私は深々と頭を下げる。下らないプライドなんて捨てろ、私に出来ることをするしかない。
「……意外と素直なんだね君は」
「アステルの為だもの、何だってするわよ、何ならチューしてあげてもいいわよ」
ふん、と鼻を鳴らすヴァイス。それはご遠慮願う、と舌を出していた。
「じゃあこっちに来て。パウダールームと衣装をレンタル出来る所があるはずだ」
「頼りにしてるわよ」
私は眠っているアステルに小さく、頑張ってくる、と呟いたのだった。
◇◇◇
「へ~、これがチーク……頬に色をつけるのね」
「ああ、そうだ。血色が良く見える」
「アイシャドウって色がたくさんあるのね」
初めてみるたくさんの化粧道具に私は思わず興奮してしまう。
化粧をしたことがないだけで、別に興味がないわけではなかったのだ。
あれこれヴァイスに質問していると、彼が一度深くため息を吐いてこう言った。
「頼むから静かにしていてくれないか、作業に集中出来ない」
「あら、ごめんなさい。つい」
鏡の中の自分がみるみる変わっていく。
そう言えば、檻に閉じ込められていたときは鏡なんて見たことないから自分の顔も分からなかったけど、こうしてみると案外悪くないかも。白い髪に、金色の瞳。鏡の中の私はやっぱりファンタジーの住人だ。
少なくとも前世の私は冴えないオタク女子高生だったので、それに比べたら今の方がマシであることは確かだ。
耳と尻尾はついているけどね……。
「ふん、悔しいが素材は悪くないな」
「あら、そう?」
ヴァイスに言われるとちょっと自信持てるかも。
「化粧はこんなもんだ。さ、後はこれ着て皆に分からせてやれ」
と言って渡された衣装は……。
「なにこれ……」
黒と赤を基調にした豪華絢爛なドレス。胸元がグッと開いていて、中々にセクシーだ。
待て待て待て、こんなの私には似合わないって!!!
「そんなことない、お前の白い髪にはこういうドレスの方が良く映える」
「それはそうかもだけど……胸元開き過ぎじゃない……? 」
「豊満なんだからそれぐらい開けないとデブに見えるぞ」
ほ、豊満!?
確かに前世の頃よりも肩がこるなーとは思っていたけど……。
「分かったわよ……」
私は渋々ヴァイスの言う通りにすることにした。
そもそも私にファッションセンスなどないのだ。彼にお任せしよう。
「忠犬だな。……貴族どもを唸らせてやれ、そしてアステルの力を見せてやるんだな」
そんなこと私に出来ないよ……でもまあやれるだけのことはしなきゃね。
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私はそう答えて、いそいそとドレスに着替え始めたのである。
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