転生したけどモブ奴隷だったので、悪役王子を更生させようと思います

寿司

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第20話 いきなり事件?

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「き、来ちゃったよ……どうしよう、俺お腹痛くなってきた」

 ついにシュタインの誕生日パーティー当日を迎えた私たち。
 ……本当はアステルだけのはずだったんだけど、どうしてもというのでついて来てしまった。
 
 やはり城は凄いなーと感動する。アステルのお屋敷ももちろん豪邸だけど、お城には到底かなわない。
 でも掃除とか大変そうね、とつい私は主婦目線で見てしまうのだった。

「しゃきっとしなさいよ、何度か来たことあるんでしょう? 」

「そりゃあるけどさ……」

 この日の為に綺麗な正装も用意したし、髪のセットも完璧。
 うん、今のアステルは乙女ゲームのパッケージを飾ってもおかしくないような王子様だ。

「でも何か笑われてない……? 俺やっぱり変なんじゃ……」

「変じゃないわよ、カッコいいよ。皆貴方に見惚れてるんでしょ」

 でも確かに視線は感じる。それも、良くない方の。
 人が多すぎるので流石の私も聞き分けられないが、何か言われている気がする。

「……ステラがそう言うなら」

 耳を真っ赤にして俯くアステル。

「ん? 良く分からないけど、ほら、さっさとお兄様に挨拶に行きましょうよ! 」

「ええ!? もう何年も会話してないよ」

 良い、アステル様!? と私は彼の耳に顔を寄せる。

「貴方は二年後にお兄様に殺される。だから、今のうちに仲良くなっておけばその可能性はぐっと低くなるわよ」

「そうだけど……そんな簡単にいくかな……」

 やってみなきゃ分からないじゃない、と私はウィンク一つ。

「そうかな……」

 なんとかアステルをなだめて、引っ張っていこうとしたそのとき、見知らぬおじさんに声をかけられた。
 身なりからして相当身分が高そうだ。傍らには綺麗な女性を連れている。
 緑色の高そうなローブに身を包み、少し太り気味なのかお腹がぽこんと出ている。

「おお、君はアステルくんか。大きくなったねえ」

「あ、あ、あ、こんにちは」

 アステル挙動不審過ぎ!!!

「落ち着いてよアステル様」

 私は小声でそう囁き、軽く彼の脇腹を小突く。

「……そうは言ってもさ!」

 小声でそう返すアステル。

「ほう、お母さんに似て随分な美青年に成長したね。私の娘の夫に欲しいくらいだ」

「こ、光栄です」

 お! 偉い人にもばっちり好印象!
 やっぱりアステル、素材は良いのよね素材は。
 何だか誇らしい気持ちになる私。その素材の良さに気が付いたのは私なのよね、と言いたくなってしまう。

「しかし……」

 ジロリとおじさんは私に視線を移す。
 
「汚らしい奴隷を持ち込むのは頂けないね~、しかも獣風情を連れ込むなんて」

「へ? 」

 一瞬何を言われているのか理解が追いつかなかった。
 それはアステルも同じだったようで、口をぽかんと開けておじさんを見ている。

「いいかい? 君も王族ならば彼女のような美しい奴隷を買わなければいけないよ」

 そしておもむろにおじさんの傍らで控えていたその女性の肩を抱く。濁り切ったその瞳から、彼女が日常的にどんなことをされているのか一目瞭然だ。

 呆れてものも言えない。私が思っていた以上に奴隷というものは地位が低いのか。

「それに先ほど、その獣は君にとんでもない口を利いていたではないか。いかんねー、きちんと立場の違いというものを分からせなければ」

 こういうものを使ってね、と彼が懐から鞭を取り出す。


 そして何のためらいもなく突然私に向かってそれを振り下ろした。

「え」

 唸りながら向かうそれを、いつもなら避けることなど造作もない。

 しかし今の私は油断し切っていた。
 もう間に合わない、固く目を瞑る。

 バチンという破裂音が響き渡った。
 ……あれ? 痛くもかゆくもない。

「くっ……」

 目を開けると、信じられない光景が広がっていた。
 なんと私を庇うようにアステルが鞭を受けてくれていたのだ。
 彼の額から鮮血が流れている。
 
「アステル!! 」

 思わず敬語を忘れてしまう私。

「なんと!!? 」

 流石のおじさんも血の気が引いたようだ。
 もごもごと言い訳をしながら辺りの様子をそわそわと見回している。

 大きな音に気が付いた他の貴族たちがざわめいている。
 
「おいおい、何をしてるんだ」

 そして集団の中から進み出たのはヴァイスだった。

「ヴァイス……」

 私は縋る様な目で、アステルを抱きかかえたままヴァイスを見つめる。
 早く医務室に連れていって、止血をして……。
 どうしよう、考えがぐちゃぐちゃして上手くまとめられない。

 私は一体何をすれば良いんだっけ……?

「行くぞ」
 
 彼は私たちを見て全てを察したのか、直ぐに医務室に連れ出してくれた。
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