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悪役令嬢、友達と会う

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 昨夜遅くに屋敷に着いた私は、そのまま眠りこけ、昼ぐらいに目が覚めた。

 しまった、半日無駄にしてしまった……と飛び起きた私は慌てて大広間へと向かう。

 そして"彼女"とすれ違った。

「あら、お姉様。帰ってましたのね」

 天使のような微笑をたたえるエミリア。しかし今の私には悪魔にしか見えなかった。

「ええ、おはようエミリア」

「うふふ、もうお昼ですよ」

「疲れが溜まっちゃって……ね」

 気苦労とでも言おうか。ちなみに証拠の数々はうっかりバレないように全てロキに預けている。
 私だとうっかりなくしそうだし……。

「学園生活ってやっぱり疲れますよね……」

「あら、エミリアも? 」

 するとエミリアの顔色が途端に曇った。え? 私何か変なこと言ったかしら。

「……私、ストーカー被害に遭ってたんです」

「す、ストーカー!? 」

 そんな話はミラン先生もレベッカもルドガーすら言ってなかった。まさかエミリアにそんなことが起きていたとは。

「3人の男の人にストーカーされていて……それで私……」

 3人の男……。あれ、3という数字にどこか心当たりが。

「私はそんなつもりじゃなくて、良いお友達として仲良くさせて貰っていたんですけど……」

 ビンゴ、絶対これリュカ、ルドガー、ルイスのことだ。
 いやー、友達とキスはしないでしょう……。

 潤んだ瞳で私を見上げるエミリア。

「だから私、このお屋敷に呼んで貰えて本当に助かりました。一人で……怖かったの」

「あ、あらそうなのね。それは気の毒だったわね」

 良く言うわ! と心の中の私がツッコミを入れる。

「女の子たちにも嫌われちゃってて……味方がいなくて……辛かったんです」

 そりゃ嫌われるでしょうよ……。

「だからお姉様は私と仲良くしてくださいね」

 私はあまりの恐怖で鳥肌がたつ気がした。この女、とんでもないやつだ。私の本能がそう言っていた。

「イリア様、エドワード様がお越しです」

「は、はーい。じゃあねエミリア」

 メイドに呼ばれて、私は逃げるようにしてエミリアと別れた。

◇◇◇

 婚約に向けて話し合いを進めるためエドワードと会っているのだが……。

 何だか今日は熱に浮かされたよにぽわんとしている。
 私がいない間、誰と一体何をしていたんでしょうね~? ……とは聞けないがそのトロンとした目が全てを語っている気がする。

「エドワード! 聞いてるの?」

「あ、あぁ。聞いてますよ」

「しっかりして下さいよ……あなたが国王になるんですよ。民を導く立場になるんですから」

「……すまない」

 しかし今度はぶすっとした表情でむくれる彼。そんなに私と話をするのが不満なのかこいつは……。

「お話進んでますか? 」

「エミリア!! 」

 案の定口を挟みに来たのはわが妹。手にはティーポットを持っている。

「ふふ、休憩にいかがですか? お入れ致しますよ……きゃっ」

 しかし彼女は地面の石に躓き、盛大にバランスを崩してしまった。

「危ない!! 」

 まるで風のような機敏な動きで走り寄ったエドワードが、彼女の体を支えると、そのままエミリアは彼の胸に倒れ込む。

「エドワード……」

「エミリア、大丈夫か!? 」

 はいまた始まりました二人のイチャイチャイベント。
 顔を真っ赤にした二人がしばらくそのまま抱き合う。まるで私の存在など最初からなかったみたいに。

 しかしそんな二人の空気を切り裂くように見知らぬ女の声が響き渡った。

「すいませーん、イリアさんいますか? 」

「は、はーい! ごめんなさいエドワード、学園で出来た友人なの。この辺りを観光したいみたいなんだけど、ちょっと案内してきても良いかしら? 」

「……構わないよ」

 浮気相手とのラブラブムードを壊されて明らかにイラついているエドワードが不機嫌そうに言った。

 私は誤魔化したように笑い、そのあまりのいたたまれない空気に逃げた。

 そしてそんな二人を置いて、私は来客を出迎えに玄関に向かう。私に会いに来た友人とは……。

「よ、やってるか」

 もちろんロキである。
 ただし二人に怪しまれないように完璧な女装をした、である。

「うわー、凄いクオリティ。どこから見ても女の人だ」

「俺を誰だと思ってる。見た目を変えるなど造作もないことだ」

 黒髪ロングの美人さんに変化したロキ。こんな格好しているのも理由があって、要は怪しまれない為らしい。

 色々誤解されても面倒だろ? とは彼の言葉である。
 
「ロキ子ちゃんか……うん良いじゃない」

「何が良いんだよまったく」

「えー、可愛いじゃない。ロキ子となら私一緒に寝ても良いかも」

「そりゃ有難いことだ」

 心底嫌そうな顔をするロキ。
 ふふふ、この前からかわれたお返しだと私は一人笑った。

「それで、二人きりにさせたけどこの後どうするの? 結構言い訳に無理があると思うんだけど……」

 ロキは待ってましたとばかりに得意気な顔をする。

「決まっている。放置だ」

 ほ、放置? 

「でも不審に思われて探しに来たり……」

「絶対にない。せっかくの二人きりだ。いつお前が帰ってくるか分からないスリルも相まってきっと盛り上がってくれると思うぞ」

 そ、そうなんだ……。 
 よく分からないけど浮気ってそういうものなのかな?

「よし、エミリアの部屋はお前の部屋の隣だったな? 一先ずお前の部屋で様子を見よう」

 私はこくりと頷き、屋敷の人にバレないようにこっそりロキを連れて部屋に戻った。
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